表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死にたい私と冷たい君

私は容量が悪く周りに迷惑をかけているだけの無能なんだと改めて実感した。

私は高校を卒業した後、地元で就職し会社員をしている。

入社して3年目となり年下の後輩も入社してきている。

でも毎日のようにミスを繰り返し、上司には「ちゃんと仕事をしろ」と怒られ、部署の人からは「こいつ使えないな」って思われてそうで毎日肩身の狭く仕事にいきたくないと思いながらもイヤイヤ出社する日々が続いた。そしてある日、今までで最大級のミスを犯してしまった。

今回のミスは会社間での取引に関わるミスだったため、発覚した当日に関連部署の上司たちが集まりチャット内で今後の対策について議論がされるほどだった。

ミスは関連部署からの連絡で私自身も発覚し、連絡をもらった時には頭が真っ白になり体の震えが止まらず、オフィスは暖房が少しついており多少温かいはずなのにまるで外に居るかのような寒さに襲われた。

関連部署からの連絡は上司へも連絡がされており、状況確認のため別室に移動し状況確認が始まったがミス発覚から10分程度だったためかうまく口が動かず状況の報告ができなかった。

上司は普段は温厚で誰にでも優しい方だからか怒鳴ったりはされなかったが、声のトーンや雰囲気からすごく怒っているのだと感じた。

状況確認後オフィスに戻ったが当日は金曜日でありすでに定時をすぎていたため、部署内のみんなは帰宅の準備などを進めていた。

上司から「この件は週明けに対策を皆で考えるからもう帰りなさい」と言われたがまだやらなければいけない仕事が残っており、その業務に取り掛かった。

ミスのせいか思うように頭と体が動かず業務スピードがいつもの半分以下になっており、帰るころには20時を超えており、人はほとんど残っておらずところどころ明かりが消えて暗くなってた。

そのため仕事を終えた私は逃げるようにオフィスを出た。その後仕事着から出社時の服装に着替え通勤用の自家用車に乗り込んだ。

硬いシートにもたれかかった時、涙を流した。

この涙には恵まれた環境なのに部署にうまく溶け込めていない「悲しさ」と人並みの仕事もまともにできない「自分の無力さ」に対して涙を流していたのだと思う。

そして帰りにハンバーガーを買い夜の海に向かった。

寒い時期で夜だったから人はほとんどおらず駐車場も開いていて、そこの一角に車を止め車内でハンバーガーを食べ始めた。

最近はミスによるストレスのせいか食べ物をうまく飲み込むことができていなかったし、それによりもともと細かった体がさらに細くなった気がする。

案の定今日も飲み込むことができず水で無理やり押し込むように食事をし胃から上がってくるものを苦しいが抑え込むように耐えた。


夜ご飯を食べたのに11:30になり車内からスマホと車のカギ、ちょっとした上着を取り浜に向かった。

自分の近くには人はおらず、砂を踏んだ時のサッサッとした音と波の音だけが耳に入ってきた。そして私は冷たい砂浜に仰向けで寝ころんだ。

空を見ると薄っすらと星々が光っている。スマホで調べたが星々は太陽の光を反射させて光っているわけではなく、自分自身の力で光っているのだそうだ。

「自分のことを表にだせて羨ましいな」私は星々に嫉妬した。

はるか昔の高校入学時は私自身進学する気でいた。だけど私の性格上自分の好きなこと、やりたいことを他人に話すことが苦手だった。

例えば友達に「俺はゲーム、アニメが大好きでこの2つなら一日中やってられるぜ」っていうとする。それを聞いた友達が私についてどう思うかってネガティブに考えてしまう。

絶対に心の中で「オタクって思われるかも」「キモイって思われるかも」実際言葉で言われたわけではないが、いわれるかもって考えると自分について話すのが怖いと感じるようになった。

本当は親や先生に「俺はゲームが好きで一生ゲーム関連に関わっていたいと思っているからそっち系の道に行ける学校へ進学するよ」って言いたかったのに、この性格のせいか「私はやりたいことが特にないので就職にします」と自分の心に嘘をつき就職した。就職した会社はアットホームで人当たりもよく一般的には働きやすい環境だった。でも自分をうまく出せなかった私は少し距離を置かれるような存在になったと感じ、しまいには「この仕事やめろ」って思われてそうだなという根拠のない被害妄想で頭がいっぱいになった。

また私は人から自分がどう見られているかに敏感で周りから変な人だと思われないようにこう話そうという理想像があるが実際の自分とはかけ離れていてうまく話せず他人からはあまり相手にされないような中途半端な人間となってしまった。

そんなことを考えながら働きはじめて3年がたって今日に至る。こんな誰にも必要とされていないのだから「私は消えたほうがいいのだろう」と思うようになり今日死のうと思い人気のない時間に海へやってきた。実際死ぬことを考えるとそれは死ぬほど怖い感じがして意味不明なことが起こっている。そして怖いため浜辺に座り込みスマホをいじり始めた。



一人でスマホをいじっている最中誰かに相談したいと感じるようになった。

誰かに慰めてほしかった、君は頑張っているって言ってほしかった。でもこんな話ができる友達が身近にいなかったし、いても子の性格上はなせないだろうと思っている。。

途方に暮れあるところへチャットするよう決心した。

チャットに今の状況、死のうとしていることを書いてみた。

すぐに返信があったが返信内容は「つらかったね」や「君は頑張っているよ」、「死ぬ前にここへ電話して相談してみたら」という他人行儀であまり私自身に寄り添ってくれない回答が返ってきた。追加でこんなことをしてみた「もし就職せず進学してたらどうだったのか」「仕事を辞めたら周りからどう思われるか」みたいなもしものたとえ話をしてみた。

自分自身のことを普段から離さなかったからかこのチャットでは自然体で入れたような気がする。

そして俺はこのチャットで少し勇気みたいなものや仕事への取り組み方を考え直すようにした。

「今死ぬのはもったいないよな、保身のことを考えすぎてチャレンジすることを恐れていたから少しぐらいはチャレンジしてみようか」そう思うようになった。

でも今日のミスのことやチャットに立ち直りをしたため、心境の変化が大きくあり今日は体も頭も疲れていた。

「ちょっと横になって落ち着こう、10分ぐらいしたら車に乗って家に帰ろう」俺自身そう決心していた。


週明け上司の働きによりお客様には話が上がらず社内だけの問題に収まったようだ。

一時はどうなることかと不安でしょうがなかったがこれで社内に平穏が訪れた。

一方地元のニュースや新聞ではあることが話題にあがっていた。

深部の見出しには大きく「浜辺で凍死体発見」という記事が出ていた。

警察の調査により死体は会社勤務の若い男性だと判明した。

死体が握っていたスマホには複数の不在着信と1件のメッセージが送られていた。

着信は男性が所属していた会社からでメッセージは最近話題を集めている人工知能であるAIとチャットをするアプリだった・・・



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ