2. 皇女は夜会に出たくない
短いです。
読んでくださり、ありがとうございます。
「ねえ、ケヴィン?」
「はい、何でしょうか。殿下」
真面目くさった返事をして、あえてアリシアの方を見ないケヴィン。
その視線は、窓の外で自由に飛ぶ鳥に向けられており、どこか憧れているようにも見えた。
そのケヴィンの視界に無理矢理入るように、ぐいっと身を乗り出して、さらには翡翠のような瞳の上目遣いで見つめるアリシア。
「これ・・・絶対に出なきゃだーーーー」
「駄目ですっ!」
今まで外を眺め、ぼんやりとしていた男とは思えないほど鋭く遮る。
ケヴィンは、目を怒らせてアリシアを見た。
「分かってますか?! 今月のは重要かつ皇帝陛下主催の夜会なんですよ?」
「別に、良いでしょ? あ、そうだわ、皇帝陛下に許可取ったら良いわよね?」
突如、きらりと輝くアリシアの翡翠。
ケヴィンには、それが不穏な光にしか見えなかった。恐れによって、顔をこわばらせる。
「駄目です! 本当にやめましょう?」
「何よ、別に良いでしょ。お父様が許可してくだされば、何も文句はないわよね」
「そう言う問題じゃありません! 国の主である皇帝陛下が主催なさっているんですよ。その国の第一皇女が出席しないとかおかしいでしょう!」
そっ、と唇をとんがらせる第一皇女。
その皇女らしくない仕草に、従者は疲れたように額に手を当て、ため息をついた。
皇帝が主催する此度のパーティは、他国からも来賓を招く、重要なものだ。
政治的な色合いとしても、大国として知らしめる色合いとしても。
(だからこそ。殿下には出席していただかなければならない)
ケヴィンはアリシアをじっ、と懇願するように見つめた。
アリシアは、そっと諦めたような美しいため息を落とすと、首を傾げて微笑んでみる。
「ねえ、ケヴィン? やっぱり、そんな大きな夜会に出るのって、危険が潜んでいると思うの。だからね、影武者をつくりましょう!」
「だーめーでーすー!!!! もう、何度言わせれば良いんですか! もう諦めてください」
ケヴィンは、実のところ、心の中では
(うっ、この人可愛すぎる)
と思っていたのだが、流石に口に出すわけにはいかない。更には、彼女を止めなければならないのだ。
はああっ、とケヴィンの大きなため息がやけに大きく、苦労の色を伴って響いた。
「わかりました」
「影武者っ!?」
「違います、その件じゃありません。僕がエスコートさせていただきます。そうすれば、婚約者だの何だのを言われなくて済むでしょう」
ケヴィンのため息混じりの提案に、アリシアはきらりと瞳を輝かせた。先程まで哀愁が漂っていたその顔は、喜びに満ち溢れている。
アリシアの夜会嫌いは、色々な家族にうちの息子をぜひ、王女配に! と言われ、かなり面倒くさいからでもあった。
それと、もう一つ。
(ケヴィンが他の女性をエスコートしているところなんて、見たくないもの)
アリシアは、胸の中でぽつりと呟き、ぱっと笑顔を浮かべてケヴィンに言った。
「良いの!? ありがとう、早速お父様に報告しましょう! 貴方の気分が変わらないうちに、許可を取ってしまわなければね」
アリシアがご機嫌で、他の補佐官に伝言を託す。
ところで、ケヴィンは、王女の側近を務めているくらいなので、かなりの高位貴族の令息なのでは? と思われる方もいるだろう。
その読みは正しく、ケヴィンはルミシエ公爵家の次男であった。いつも、アリシアに手厳しく注意して、声を荒らげることもあるものの、一応は公爵令息となる。
こう言ったこともあり、ケヴィンはパートナーになれるだろうと二人は踏んだのだ。
しかし、結果としてこの提案は、皇帝に認められなかった。
基本的にこのノリでいきます。




