vs角交換振り飛車
放課後。将棋部の部室である和室。
僕は将棋部の姫に告白した。
「好きです! 付き合ってください!」
「ごめん。角交換振り飛車の方が好き」
え?
顔を上げると、目の前の黒髪ロング美少女は片手をフリフリしていた。
まるで、将棋を指しているかのように。
「え、何それ」
「素振り。野球部は素振りをしてるでしょ? 将棋部もするの」
ほう、さすがプロを目指しているだけある。
「じゃ、そういうことだから」
姫は去っていった。
※※※
翌日。再び部室にて。
「好きです、付き合ってください」
「ごめん、角交換振り飛車のほうが……」
俺はそこで口を挟んだ。
「待ってくれ。俺は地下鉄飛車で、角交換振り飛車に勝って見せる!」
「……なんですって? いいでしょう。対局しましょう」
和室の中央に置かれた将棋盤を挟み、姫と相対する。
駒を並べる。お互い礼。
「「よろしくお願いします」」
数十分後。僕の王が詰んだ。
「ま、負けた……」
「ふん。またかかってきなさい」
※※※
翌々日。
「今日は振り飛車で勝負だ!」
「ふーん?」
「負けました……」
「ふふっ。まだまだね」
※※※
っていうことを、ずーっと繰り返していたら。いつのまにか彼女と僕はプロ棋士になっていた。
「あら、名人戦の相手はあなたなのね」
「いや、なんで当日顔合わせた時に初めて知るの?」
「冗談よ」
僕は目の前の和服を着た彼女を見る。いやあ、綺麗だなあ。さすが将棋界のアイドルとメディアで騒がれているだけある。美少女だ。
貫禄もある。もう彼女は、名人四期目だもんな。
「こんどこそ、角交換振り飛車を破って見せる!」
「やれるものならね」
僕だって頑張って七段まで昇段したんだ。やってやる。今日こそ勝つ! そして告白をOKしてもらう!