第九話:多勢力入り乱れる争奪戦(アルトの決死の防衛)
禁じられた書架の奥で、かさねが「隠された魔導書」の写本を続ける中、図書館全体を揺るがす争奪戦は激しさを増していた。
王族の派閥、異国の商人の結社、そして図書館長に従うわずかな守護者たちが、それぞれの思惑を胸に、血とインクの飛び散る戦いを繰り広げていた。
その最前線に立っていたのは、第四王子アルトだった。
「これ以上、かさね殿に近づけるわけにはいかない!」
彼は叫び、手にした王族の剣を閃かせた。
その剣さばきは洗練されており、並の兵士を寄せ付けない。
しかし、彼の強さは、単なる武術だけではなかった。アルトは、図書館の複雑な構造を熟知していた。
迷路のような書架の配置、隠された抜け道、そして書物の重みに耐えるための構造的弱点まで、全てを頭に入れている。
彼は、追撃してくる異国の商人や、王族内の対立派閥の兵士たちを、意図的に書架の狭い通路へと誘い込んだ。
「そちらは崩れやすい! 迂闊に踏み込むな!」
アルトの声が響く。敵が足を踏み入れた瞬間に、彼は隠された仕掛けを作動させ、大量の書物が雪崩のように落下する。
書物の山が一時的に通路を塞ぎ、追手を足止めするのだ。