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98.女王蜂蟻討伐依頼①

「ねえ、私達自己紹介いらないって言ったよね?」

「うん、言った」

「言ったはずですが・・・・俺達は何を見せられているんだ?」

「それよりも筆頭のあの服のビラビラ何の意味が・・・」


 『転がった剣』の面々が何か言っているが、気にせず俺の半生が描かれた木の板を一枚めくる。いわゆる紙芝居的なものを『転がった剣』の面々に見せている所だ。


「はい!ここで俺がコーバスに来て組合員になった頃の絵だ!多分6、7年ぐらい前だ!この絵を見て貰えば分かる通り、この頃俺は布の服一枚で依頼をこなす辛い日々を送っていたんだ」


「布?全裸にしか見えない」

「いや、何で毎回全ての絵が万歳しているんだ?」

「え?これ、もしかして組合長?大きさが違うだけで顔同じじゃねえか。しかも裸だし」

「この上に浮いている三角が、もしかして組合を表現している?」


「・・・って事でここまでが俺の半生だ。後はまだ残念だけど出来上がってねえからまた今度だ」


 俺がそう告げるとみんな拍手してくれた。ご清聴ありがとうございますって所だ。そもそも何故俺が紙芝居で自己紹介をするって思いついたのかと言うと、例の一張羅の使い道を考えてピンと来たからだ。

 あの一張羅は当り前だけど戦いには向いてない。一番いい使い道はパーティーとかだけど、平民にそんなイベント発生する訳がない。だったらどうする?




 大道芸人の真似事だろ!衣装的にも問題ねえ。


 ただ俺は芸は出来ねえから色々考えた結果、昔の日本でやってた紙芝居をやってみようと思いついた。題材は俺の知っている童話でも良かったが、試しにその辺のガキ捕まえて反応見たが、つまらねえとか言いやがった。

 じゃあ、どんな話が聞きたいんだと聞けば、『組合員の話!』って言うもんだから、軽く俺の人生を話せば大うけだった。


 これはイケる!!


 ってんで暇さえあれば俺の半生を紙芝居風にして作っていた所に自己紹介のチャンスが来た。取り敢えず一度宿に戻って着替えてから完成している所まで見せてみたが反応は上々だな。



「すみません、個人的にはこの後の方が聞きたかったです」


 まあ、ガキと違って現役組合員ならそっち聞きたいよな。フェイローの言う通りだ、先にそっち作ればよかったぜ。こりゃあ俺の失敗だ。


「・・・あ、あの・・・え、絵が!もうちょっと分かりやすければいいなと思いました。」


 ああ、それも自分で分かってるぜ。もうちょい練習していくつもりだ。どんどん描き直してして3回ぐらいすればティモから文句も出ねえだろう。


「・・・ぱ、パン一つで殺し合いとか、スラム知らないと理解出来ない話があった」


 あちゃあ、そっか普通の奴らじゃその辺は分からねえか。この辺はランの言う通り、もうちょい分かりやすい説明がいるなあ。


「全体的によくまとまっていたと思いましたが、ここで半分だと子供は飽きるかもしれませんね」


 ・・・そうか?けど、これ以上簡潔にまとめられねえしなあ。イシュカの案は保留だな。


「えっと、後ろだと絵が見えづらいと思います。」


 おっと、これは盲点だった。ダイサの言う通り今度からはもうちょい大きな板に書いて後ろからでも見えやすくするか。


「・・・・・え?俺?言おうと思ってた事、全部お前らに言われたんだけど・・・取り敢えずまとめると、絵も話もつまんねえ・・・・グハッ!!!」

 

 おっと?アブブどうした?いきなりお腹痛くなったか?


「あっぶねえー。下手な事言わなくて良かった」


 お?フェイロー何か言ったか?俺の拳欲しいか?・・・・・・首振ってるから何も言ってないみたいだね。


 取り敢えず他にも反応見たいな。顔馴染の連中は脳味噌ゴブリンだから大人しく話を聞くなんて出来ねえだろう。そうすると・・・・リリー達か!





「うわ、こっち来た」

「カナ、黙りなさい」

「せ、せんぱいいいー」

「全員書類から顔を上げずに手を動かす。後は私が対応します」

「リリー先輩、流石です」



「よーす!リリー暇?暇だろ?」

「見て分かりませんか?今はみんな手が離せません」

「・・・・・・・え?でもみんなグリグリ〇描いているだけだぜ?」

「・・・・・チッ!・・・・ベイルさん。何かご用ですか?」

「あれ?今舌打ちした?」

「何か御用ですか?」

「・・・・・舌打ち・・・まあ、いいや、それよりもこれ見てくれよ。俺の半生を書いた紙芝居」

「ああ、先程フェイローさん達にお話していましたね。しっかりと聞こえていましたよ」

「お!マジで!?それならもう一回聞いて改善点を・・・・」

「概ねフェイローさん達と私も同じ意見です。もう少し踏み込ませてもらいますと、絵はマーティンさんや孤児院の院長先生。内容や構成は4級リーダーの方々に相談して決めた方が良いかと思います。4級のリーダーともなれば話す内容や順番等しっかり考えてメンバーに話す事が多々あると思いますので」

「ちょ!!」

「リリー!何言ってんの!!」

「売った!俺達を売ったぞ!あいつ!」



・・・・・・・・・



「売ったとか皆さん何を言っているんですか?おかしな人達ですねベイルさん?」

「・・・・・・・・あっ、はい」


俺を見るリリーの目に何故か光が無かった。怖い。


「取り敢えず私達受付嬢は忙しいんですから、そういった雑事は今後は組合員だけでお願いします」

「・・・・・・・・あっ、はい」



・・・・・・・・




「うーんと、取り敢えず受付嬢は忙しいみたいだな。誰か他の人に聞こう。うん」

「リリーさんの圧に負けないでよ!」

「負けるぐらいなら僕達にもしないで下さいよ!!」


 『転がった剣』の連中が何か喚いてるが無視して4級リーダーに・・・・あれ?いねえ。さっきまでシリトラとクワロ、オールズいたんだけどなあ。どこ行った?


 ・・・・お!ロッシュ達が戻って来た!全員揃っているなんて珍しくパーティで仕事してたのか?まあいいや、マーティン捕まえよう。


「よーす!マーティン、暇?」

「ベイル。君、ついに頭が・・・」

「ロッシュには話してねえよ!」


 人の顔見るなり失礼な奴だ。


「リーダーはビラビラ見るの初めてか?なら仕方ないのう」


 仕方ないってどういう意味だ?ユルビルに問い詰めたい所だけど、先にマーティンだ。


「マーティン暇ならちょっと付き合ってくれ」

「王都はいいぞ」

「ああ、分かった分かった。取り敢えずその辺座ろうぜ」

「ちょっと待て、ベイル。依頼の報告が先だ」


 依頼の報告じゃ仕方ねえ。取り敢えず待つか。・・・・ってあれ?あいつら組合長室に入って行ったぞ?何か特別な依頼でも受けてたのか?


「あいつら多分『蜂蟻』の巣の偵察でもしてたんだろう」


 組合長室の扉をボケッと眺めていると、向かいにペコーが座った。


「ああ、昨日の撤退の原因か。そう言えばペコーの所はそれで昨日依頼駄目になったのに、今日依頼受けねえのか?」

「ああ、取り敢えずロッシュ達の報告聞いてからになるが、巣の規模が300匹以上なら女王蜂蟻の討伐依頼受けるかってパーティ内で決まった」


 よく見れば昨日依頼が駄目になって荒れてた連中も、そこそこ残って組合長室をしきりに気にしてるな。数が多いしそんなに美味しい依頼か?これ?他の連中は蜂蟻の巣とは逆方向の依頼を受けてたりする。


「バーカ。こっちは多分5パーティぐらいで相手するんだ。300匹でも1パーティ60匹相手だ。俺の所は10人いるから一人6匹。2級の魔物6匹相手で報酬60000って考えたら中々美味しい依頼だろ?まあ、実際は荷物持ちの報酬をそこから引けば50000ぐらいだ。それでも美味しい」


 そう考えれば中々美味しいな。でも、俺はいつものフリー討伐の方が気楽でいいからそっち受けるぜ・・・・ってそう言えば大八車無かったんだ!そうだった、そうだった。だから『腐れ花採取』依頼受けようと思ってたんだった。


「ありませんよ」


 掲示板に『腐れ花採取』依頼が張り出されてなかったので、リリーに聞きに行ったらこの言葉だ。


「え?何で?あれ不人気依頼だろ?」


 いっつも掲示板の端っこの方に依頼書が貼ってあって、誰も受けない依頼のはずだ。


「いえ、今ではあの依頼があれば、朝から争奪戦が起こるぐらいの人気依頼ですよ?」

「何で?」

「ベイルさんが、臭いの解決方法気付いてくれたからですよ。あの依頼は臭いが残るっていうデメリットが大きすぎて今まで避けられていたって知っているでしょう?」

「いや、でもそれって香水使うじゃん。そうなるとその匂いが今度は狩りに影響するよな?」

「そうですね。でも採取して運ぶ人を決めておけば、他のメンバーは匂いがつかないので狩りに行けます。で、残った一人は匂いが無くなるまで街の依頼か採取依頼をしている方が多いですね」 

 

 おお!そんな裏技が!ソロの俺じゃあ絶対に無理だな。それなら今後『腐れ花採取』依頼は受けれねえって考えていた方がいいな。そうなると、誰かの依頼に一緒させてもうか。


「クワロとシリトラの所って次の依頼決まってる?」


 たまに誘ってくれるから、次の依頼一緒に受けさせてもらえねえかな。


「依頼内容を詳しくは言えませんけど、ベイルさんの嫌いな貴族依頼ですよ?」

「ああ、じゃあ無しだな。さっきオールズ見たけど『全力』は?」

「次は貴族の護衛依頼ですね」


 それも無しだなあ。


「『快適』は?」

「一昨日護衛依頼で街を出たので戻りは7日以上は後かと」


 うーん。タイミング悪いなあ。そうすると・・・採取系・・・は、どうも物欲センサーが働いて苦手なんだよなー。それとも今から張り出される蜂蟻の依頼でも受けるか?ソロの俺があんまりこういう合同依頼に参加するのは喜ばれねえんだけど、依頼が張り出されて他の連中の様子見てから決めるか。


 そう決めてしばらく待つと、組合長が依頼書を手に持って部屋から出てきた。後ろからはロッシュ達も続く。


「お前ら女王蜂蟻の討伐依頼だ!受けるパーティのリーダーは手を挙げろ!」


 組合長が大声で叫び依頼書を掲げるが、誰も手を挙げない。


「い、いや、組合長、まずは巣の規模教えてくれよ」

「・・・ああ、ロッシュ達に見てきてもらったが、巣の規模は恐らく200匹程度・・・おいおい、まだ最後まで話しを聞け!」


 組合長が巣の規模を言った途端、座っていた連中が立ち上がり、掲示板の方に向かうのを慌てて止める。


「ロッシュ達も巣の中まで確認してねえから200ってのは予想でしかねえ。もしかしたら巣の中に思っていた以上にいるかもしれねえぞ」


 組合長のその言葉に続々と席を離れる3級の連中。まあ200匹程度じゃ3級には報酬が美味しくねえ依頼だ。組合長も『仕方ねえか』って感じで肩を竦めている。で、残ったのが俺以外2級ばっかり・・・って俺も2級じゃん!


「あちゃあ、2級しか残ってねえ。出来れば3級が2パーティぐらい欲しい所だけど・・・お!ベイルがいるな。珍しい。あいつがいるなら後1パーティでいいか。・・・ロッシュ?」

「嫌!昨日休みだったのに無理やり呼び出して仕事させた癖に、まだ仕事させるつもり?絶対嫌だから!今日からしばらく仕事しないから!」


 おっと、ロッシュの働きたくない病が出たな。こうなると、ロッシュはしばらく姿見せなくなるからな。多分趣味の悪い覗きしながら酒を楽しむんだろう。


「チッ!真面目に働けよ。全く。そうすると、おお!よく見れば『慎重に着実に』と『腹いっぱい』がいるじゃねえか。おい!ショータン、ペコー、お前ら受けるか?」

「組合長。巣まではどれぐらいだ?」


 仲間内で相談していたペコーが組合長に尋ねる。


「多分、明日朝出発すれば昼前には着くはずだ。・・・いや、今回は荷物持ちの1級がいるから荷車もいらねえな。そうなるともっと早く着くと思う」

「そうなるとその日のうちに帰ってくる事も出来るか」


 組合長の答えを聞いたショータンが、手を顎に当てて何か言いながら考えこんでいる。


「ちょっと報酬が気に入らねえが、蜂蟻って奴を相手してみてえから、俺等は受けるぜ」

「そうですね。良い経験になると信じて僕らも受けます」


 どうやらショータン達もペコー達も受けるみたいだ。組合長が勝手に俺が受けると思っているけどどうすっかなあ。残っている2級結構多いぞ。


「それじゃあ、残りの2級を決めるか。2級のリーダーは前に出てこい」


 そう言って前にでたのは7人だ。意外に少ない。


「ああ、ウトリとケーレは駄目だ」


 だと言うのに何故か組合長が前に出てきた二人を除外した。


「な、何でですか!!」

「俺等も2級ですよ!!」

「分かってるっての。お前らの仲間昨日先走ってまだ戻って来てねえんだろ?受けたいなら人数揃えてからにしろ。どうしてもってんなら1級の荷物持ちなら受けさせてやる」


 ああ、あの二人の仲間昨日撤退の合図聞かずに突っ走ったのか。で、探したいから一緒に依頼受けたいって所か。仲間欠けた状態なんて、他の連中の足引っ張るだけだろう。


「「・・・・・」」


 組合長に言われて素直に引き下がる二人。ここでごねると組合長からぶん殴られるからな。


 そうして残ったのは5人のパーティーリーダーだ。ここから何人選ばれるんだ?って思っていたら・・・・


「メンバー全員足しても50いかねえな。よし、お前ら全員この依頼受けていいぞ」

「やった!」

「よし!」


 言われて喜ぶ2級の面々。


「それじゃあ、一番メンバーの少ないパーティはペコー達と組め、その次に少ない所がショータンとだ。一番人数多いパーティは次に多い所と組め。そして余ったパーティはベイルと組め」


 なんか俺も勝手に受ける事になって、チーム分けに入れられてるんだけど?まあ、誰からも文句なさそうだし受けるけどね。


 組合長はと言うと、もう既に1級の荷物持ちを選び始めている。1級にはかなり報酬が美味い依頼だからかなりの人数いるな。っていうかいつの間にあんなに人が増えたんだ?


 不思議に思っていると、『転がった剣』の面々が俺の所にやってきた。


「僕たちが筆頭と組む事になりました。よろしくお願いします」

「おう、よろしく。って言っても級は同じで俺はソロだから、基本お前らの指示に従うぜ」


 俺の言葉に少しだけホッとした顔になるメンバー。ソロで先輩の俺が仕切るとでも思ってたんだろう。周りの様子気にかけながら戦うの好きじゃねえんだ。それならまだ指示出して貰った方がいい。


「よし、荷物持ちも決まったな。いいか、お前ら!今回の依頼のリーダーはペコーだ。あいつの指示にはちゃんと従え。あと『蜂蟻』の倒し方もちゃんと頭に入れておけよ」

  

 そう言うと組合長は部屋に戻っていくと、ペコーから明日の事について話が始まる。


「お前ら、明日は開門と同時に出発する。一応その日に戻ってくる予定だけど、念の為、飯は二日分用意しておけ。明日遅れたら置いていくからな!ベイル、お前明日そのビラビラで来るんじゃねえぞ」



・・・・・



「来る訳ねえだろ!」

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