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90.オーク捕獲依頼②

「取り敢えずゲレロ、どこに行く?」


 北村を出て森へ向かいながら、ゲレロと狩場について相談する。


「それなら森の奥のコムコムとの縄張りの境界あたりに行こうぜ」

「何でそこなんだ?」


 迷いなく答えたって事はゲレロには何か考えがあるっぽい。


「コーバスの獲物はみんなでほとんど狩り尽くしたからな。最後の方はみんな余所の街との縄張りとの境界辺りでこっちにくる魔物狙ってたんだよ。そんで、キングのせいか知らねえが、コムコム側からくる魔物が一番多くて効率良いって人気だったんだよ」

「へえー。ならそこら辺で狙ってみるか。それにしてもあれは何なんだろうな?」


 そう言って大八車に乗せている皮袋を確認する。もう何度目になるか分からないが、見た所普通の皮袋だ。別段おかしな臭いもしねえ。まあ、皮袋よりもあの中にあるアイテムが重要らしいから、おかしな所が無いのも仕方ない。


「気にはなるけど、それよりも少し急ぐぞ。このままじゃ日が暮れちまう」


 確かにちょいとのんびりし過ぎたか?って事で少し急いで向かい、何とか日が暮れる前に目的地に到着した。

 

 少し開けた場所で川も近く3級や4級の良狩場の一つだ。ただ、唯一の欠点はコムコム側に魔物が逃げたら、縄張り超える訳にも行かないから見逃すしかねえって場所だ。


「取り敢えずその袋の中身確認してみるか」

「そうだな」


 狩場に着くとゲレロも気になっていたようで、野営の準備をする前に二人で袋の中身を確認する。


「ああ?何だこりゃあ?また袋?」


 そう、袋を開けたらまた中に同じ様に堅く紐で締められた皮袋が入っていた。そしてそいつも同じように開くと、また同じような皮袋が入っていた。


「おいおい、これ一体どんだけ厳重に包まれてんだ?ヤバい臭いのするもんとか毒とかじゃねえよな?」

「怖い事言うなよ、ゲレロ。ゴドリックの依頼だからそんな物騒なもん渡してくる訳ねえだろ」


 そうゲレロに言いながらも、俺も少し不安だった。けど3つ目の袋を開けた所でその不安は不要なものだと分かった。


「・・・・・?布?」

「白い布っきれだな・・・これが特別なアイテム?」


 二人で袋をのぞき込むと中に入っていたのは、何の変哲もない白い布だった。


「その布に包まれているのかな?」

「いや、特に何もねえぞ」

 

 ゲレロが袋から布を取り出し確認するが、特に何も無いみたいなので、俺は最後の袋をひっくり返しもう一度中をよく確認する。が、特に何も入っていない。試しに他の袋の中も確認するが、何も入っていない。そうなると、その白い布が特別なアイテムって奴なんだろう。


「袋の中には何も入ってねえぞ」

「そうすると、こいつがゴドリックの言う特別なアイテムって奴か?」


 そう言いながらゲレロが布を広げた所で、俺達はそれが何か気付いた。


「「パンツじゃねえか!!!」」


 そう、見た所何の変哲もない女物のパンツ。ゴドリック、いよいよ頭おかしくなったのか?


「間違えたって事はあるのか?」

「こんなもん間違えるか!っていうかこれ誰のだよ。まさかゴドリック、普段から女のパンツ履いているとか言わねえよな?」

「ベイル、お前気持ち悪い事言うなよ。軽く想像したじゃねえか」

「わ、悪い」

 

 これは流石に俺が悪いな。素直に謝っておく。


「これを木に吊るせばいいのか?これ、誰かに見られたら、俺達頭おかしい奴らだと思われそうだ」


 大丈夫だ、ゲレロ。お前はもう既にみんなからそう思われているからな。


「そんじゃあ、木に吊るしてくるから貸してくれ」


 ゲレロからパンツを受け取り、木に登って手ごろな枝にパンツを引っかける。


・・・いや、俺も組合員になってそこそこ経つから、色んな変わった依頼受けてきた。けど、流石にパンツを木に引っかけるのが必要な依頼なんて初めてだぞ。ゲレロを見ればあいつも何とも言えない顔してこっちを見上げている。


「これで一日待ってればいいんだろ」

「ああ、オークが来たら捕獲、来なけりゃ帰還。楽な依頼だ」


 枝にぶら下がっているパンツを見上げながら、依頼内容を確認するベテラン組合員二人。


 ・・・・何だこのシュールな画は。



「このまま突っ立ってても仕方ねえから野営の準備するか」


 ・・・・そうだな、このままパンツ見てても何も始まらねえ。


 二人で手分けして枝を集めて火を点ける。野営と言っても一日しかいねえし、こんなもんで十分だ。


「オークってこんなんで釣れるのか?」

「知らねえ。ただ、ゴドリックの事だ。何かしら考えがあるんだろう」

「そうだなあ。信じて待つか。それでベイル、寝ずの番っているか?」

「いらねえだろ。オークなんて夜は巣に帰っているから、来るとしたら日が昇ってからになるはずだ。他の魔物は気配に気付いた方が起こすでいいんじゃねえ?」


 基本ソロの俺は狩りにきたら普通に寝てるからな。


「じゃあ、それでいいか。・・・・それにしてもあのパンツ誰のだと思う?」

「落ち着いて考えればリーゴのもんだって分かるだろう。そう考えればあの態度も理解できる」


 そりゃあ検証の為とは言え、パンツ使うってなったら怒るよな。ゴドリック達殴られて当然だわ。それでもパンツ差し出したリーゴも、羞恥心より探求心が勝つぐらいなんだ、相当な魔物馬鹿なんだろう。


「そう言えばゴドリックが『鮮度が命』とか言ってなかったか?」


 おっと、ゲレロ君。余計な事に気付いてしまいましたね。俺もその言葉で気付いてしまいましたよ。ただ、俺はその話深掘りしたくねえ。


「・・・・・・ゲレロ、もういいじゃねえか。リーゴが可哀想だろ。これ以上触れてやるな」

「ああ、うん。そうだな。・・・・今度高級パンツでも買って持っていってやるか」


 お前、それ火に油注ぐ事になるからやめとけ。こいつ気の使い方よく間違えるからな。それでカルガーとかイーパをブチ切れさせてるんだから、いい加減気付けよ。



そんな感じでその日はそのまま寝た。




・・・そして、夜明けとともにそいつは現れた。



「うお!な、何だ?」

「て、敵か?」


 まだ日が昇り切らない中、夢の中にいた俺達だったが、森の奥からデカい叫び声が聞こえてきたので、慌てて跳ね起き武器を構える。


 警戒していると、姿は見えないが、声は真っ直ぐこっちに近付いてきているから、向こうはこっちを既に捉えているんだろう。


「ゲレロ!分かっていると思うが、オークだったら無傷で捕獲だからな!」

「分かってるっての」


 こっちに向かってくるのが何か分からないから武器を構えているが、これがオークだったら武器捨てて素手でかからなきゃならねえ。念の為ゲレロにも注意したけど、ちゃんと分かっているみたいだ。


 そうしていると、本当にオークが姿を現した。全力疾走でこっちに向かってくる。


「ベイル、俺が盾で勢いを止める!そしたら捕獲開始だ。大八車準備しておけよ」

「了解!」


 返事しながら大八車をゲレロの近くまで運ぶ、上には拘束用の手枷足枷や、縛り付ける鎖が既に準備されている。風俗用のは持って来てねえ。ゴブ一の時のような失敗は繰り返さねえよ。


 準備完了した所で、オークはもう目の前だ。全力疾走のオークは勢いを緩める気配はない。このままの勢いでぶつかってくるつもりだ。


 そしてぶつかる直前にゲレロが力を入れたのが分かった。ゲレロなら地竜の攻撃受ける力があるから力負けする心配はしてねえ。


・・・・・ねえ・・・・ねえ?


「おい、あいつ何してんんだ?」

「いや、俺に言われても分かんねえよ」


 ゲレロにぶつかる!!そう思っていたんだけど、何故かオークは俺達の脇を走り抜けていきやがった。そんでとある木の下で万歳してジャンプしている。


「・・・・・これって釣れたって事でいいのか?」


 そんなオークの姿に戸惑いながらもゲレロが聞いてくる。


 「・・・多分な。ゴドリックこうなるって分かってたのか?あいつどんな頭してんだよ」


 俺も驚きながらゲレロに答える。そんな呆気にとられる俺達を気にせず、オークは木に吊るしたパンツを何とか手にいれようとさっきから何度もジャンプしている。


「お、おい、ベイル。これどうする?」

「どうするってこのまま見てても仕方ねえだろ。捕まえるぞ」


 ゲレロに足枷を渡してオークに近付こうとすると、ようやくジャンプしても届かない事を理解したのか、今度は木に登り始めた。木に登るって考えは回るんだな。


 そしてパンツの吊るされた枝まで登ると、今度は枝の上を器用に歩いていく。その平衡感覚は凄いと思うが、そんな勢いよく歩くと、その枝の太さじゃ・・・。



 ・・・俺の心配した通り、途中で枝が折れてオークが木から落っこちた。それでも、その落下中にパンツを捕まえようとするその根性は凄いと思うぜ。

 ただ、そっちに意識が行き過ぎて受け身の事何も考えてなかったんだろうな。そのまま頭から落ちたオークはピクリとも動かなくなった。


「やっべえ、死んだ?」

「なんちゅう間抜けな死に方だよ。こんな死に方したオークこいつだけだろ」


 慌てて駆け寄る俺とのんびり歩いてくるゲレロ。死んだら捕獲報酬貰えねえんだぞ。分かってんのか?


 慌てて駆け寄るとオークの胸が上下しているのが分かった。

 

「良かったあ、気絶しているだけだ。そんじゃあ、今がチャンスだな。ゲレロ、こいつ縛り上げるぞ」

「はいはいっと」


 そう言って二人でオークに枷を嵌めて大八車に鎖で縛りつける。捕獲するのは、もうちょっと苦戦すると思ったけど、簡単に終わっちまった。


「これで終わりだな。ゲレロ帰ろうぜ・・・ってお前何見てんだ?」


 オークもゴブリンと同じで羞恥心があるのか腰に襤褸布か蔦を腰に巻いて葉っぱをくくりつけて汚ねえもんが見えねえようにしているんだが、当然そんなもん暴れたりすれば無意味になり丸見えとなる。

 そんでたった今捕獲したオークも上半身は鎖で縛りつけてあるが、身長が2mぐらいあって下半身までは鎖が足りていない。更に、落下の時に巻いていた葉っぱがどこか行ったみたいで、汚ねえもんが丸見えだ。

 それを何故かゲレロがマジマジと眺めてやがる。頭おかしくなったか?


「いや、俺さあ、娼館でよくオーク並とか言われるんだ。だからどんなもんかと思ってな」

「ハハハ、馬鹿じゃねえの?娼館じゃ金払ってるからそう言うに決まってるだろ。そんな営業トークを本気で受けとんなよ」

「何だとお!だったらよく見比べてみろよ!俺のはオークと比べても遜色ねえって分かるだろ!」


 そう言って下半身の装備を脱ぎだすゲレロ。組合員っていうかこの世界、男連中は川で裸で普通に水浴びとかするから、裸になるのに抵抗ねえんだよな。


 そんでこうなると、ゲレロは引かねえだろう。見たくはねえがゲレロとオークのを見比べてみる。


「どう見てもオークの圧勝じゃねえか!ゲレロ、現実をちゃんと見ろ!」


 もうね、ゲレロのはポロンって感じ、そんでオークのはデロンって感じだ。何でこいつこれで勝負になると思ったんだ?


「ああ?それならお前も『ユニーク』とか『賞金首』とか言われてるらしいが、実際は大した事ねえだろ」


 おいおい、そりゃあ、馬鹿エフィルが言った事じゃねえか。俺が言いだした事じゃねえよ。ただ、売り言葉に買い言葉。俺も馬鹿にされて素直に引き下がる訳にはいかねえよ。って事で俺もズボンを下げベイル君を露わにする。


「だったら、よく見てみろ!これが俺の『賞金首』だ!どうだ!オークよりでけえだろ」

「ハッ!!!鼻で笑うぜ。俺にもオークにも勝ってる要素ねえよ」

「はあああ?ふざけんな、どこに目つけてんだ、ゲレロ。てめえのには勝ってるだろ!!」

「ガハハハッ。言ってろ。ダブルスコアで俺の勝ちだろ」

「お前ふざけんなよ。帰ったら第3者に公正な判断してもらうからな。そん時泣いても知らねえぞ!」

「おう、望むところだ・・・・・っておい、目を覚ましたみたいだぞ」


 俺達の言い合いが五月蠅かったのか、オークが目を覚まして自分の状態に気付くと大声で騒ぎ始める。


「うるせえな。猿轡とかねえのか?」

「あ!悪い。いらねえと思って置いてきちまった」


 しまった。風俗用だけど猿轡だけは持ってきとけば良かった。


「しょうがねえな。だったら布切れでも口に突っ込んでおくか」

「手ごろな布・・・・・これは流石にリーゴ怒るかな?」

「大丈夫じゃねえ?リーゴもオークの餌にされたパンツ返されても困るだけだろ。多分返してもそのままゴミ箱行きだ」


 それもそうかと思い、リーゴのパンツをオークの口に突っ込んでおく。これで静かになったな。よし!


 ふとゲレロを見れば青ざめた顔である一点を見つめていた。


「どうした?顔色悪いぞ?」

「べ、ベイル。俺のがオーク並とか言うの娼婦たちの営業トークだったみたいだ。流石にアレに勝てるなんて思わねえ」


 そう言ってゲレロの指差す先にはオーク君の全力全快の姿が・・・・。


 ・・・・見た瞬間、俺も勝てねえと思った。見ただけで負けを認めるなんてクロでさえ思わなかったのに・・・・それぐらいオークは圧倒的だった。思わず「馬あああああああ!!!」って叫びそうになった。それぐらい衝撃だった。


「っていうかこいつ何でいきなりオッ立てたんだ?」

「リーゴのパンツで興奮したんじゃねえ?」

 

 そっか。こいつパンツに夢中だったもんな。

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