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79.竜と買い物

「おいおい、この宝の山は何だよ!」

 クロの住む島に戻った俺の目の前に竜素材の山が広がっていた。これだけでもとんでもない数だってのに、竜共が飛んできて次から次に素材を置いていく。そしてその隣には見た事ない魔物の死体も積み上げられている。


「貴様が集めろと言ったのだろう。何を驚いている」


 だと言うのに、クロは興味無さそうに住処に戻っていく。


 いや、集めろって言ったけど、この量は凄くねえ?想像の10倍以上だぞ。


「ギャオ」


 俺を中心に集まった竜共が何か言いたげだ。けど、竜のままだから言葉が通じねえ。


「・・・・何言っているか分からねえ。代表一人出して後は下がれ」


 俺がそう言うと、一匹の水竜を残して他は後ろに下がったので、そいつに俺がつけていた仮面を鼻の先に乗せる。


「フハハハハハ!我!参上!」

「却下!次!」


 変身した水竜が最初に放った一言で仮面を剥ぎ取り蹴り飛ばす。


「貴様!黒竜様のお気に入りだからといって、調子に乗るなよ」

「殴りかかってくんな!駄目!次!」


今度の緑竜は変身するなり殴り掛かってきたので、却下だ。


「・・・あ、あの・・・わ、私・・・」

「ちゃんと喋れ!次!」


 地竜はどもって満足に話すら出来ねえ。


 ・・・・・竜共にまともな奴いねえのかよ!これじゃあ、あのジジイでもかなりマシな部類じゃねえか!


「ギャオオオオオオン」


 困り果てていると空に叫び声が聞こえた。その声に顔を上げてみればデカい赤竜がゆっくりとこっちに向かって来ていた。



「いやあ、すみません。みんなどう対応していいか、分からなかったみたいです」


 アハハと俺の目の前で笑うのは赤竜のジジイだ。今は仮面をつけて話をしている。


「別にいいけど、せめてまともな会話出来るぐらいにはしとけよ」

「そう言うあなた様に一つお願いなんですが、しばらく私達に指導して頂けませんか?」

「指導?何をだ?」

「私達が人の世に紛れ込む立ち回りをです」


 ええー。面倒くせえ。そういのは何度も失敗しながら学んでいくもんだぜ。


「もし、受けて頂けるなら、あそこの素材をいくつかお渡ししましょう」


 そう言ってジジイが指差すのは竜の素材の山。


「よーし。受けてやるぜ。お前らをどこに出しても恥ずかしくない竜にしてやる」


 ・・・いや、だってあれ一つでもかなりの金になるんだよ。そりゃあ受けるぜ。


「竜にして欲しい訳ではないんですが・・・元々私達竜ですし」

「ハハハ!細かい事はいいんだよ。取り敢えず今日中に仮面作っておくから、明日街に行って素材の売り方から教えてやる」


 翌日俺はジジイと一緒に海沿いの別の街に潜り込んだ。


「へえー。ここが人の街なんですね。騒がしいからいくつか間引いてもいいですか?」

「やめろ、馬鹿。その顔で危ねえ発言するんじゃねえよ。もしそれしたら、その時点で俺の指導は終わりだ」

「ハハハ、分かってますって、冗談です。絡まれたら手を出さずに逃げればいいんですよね」


 何だ、俺の言っている事ちゃんと理解してんじゃねえか。いまいち言っている事が冗談か本気か分かんねえんだよな。


 そうやって歩く俺とジジイだけど、今は二人ともマスク型を使って変身しているから街を歩いていても騒ぎになる事はない。特に俺は今回何の変哲もない、おっさんに変身しているからな。


 それというのも昨日仮面作っている時に『ドルーフおじさん』が他国にも知られている事を思い出したから、似たような仮面だと騒ぎになると思い、急遽マスク製造に変更したんだ。


 各地で仮面付けた怪しい連中が現れて、コーバスから注目を逸らすってのが当初の目的だったけど、別に竜の素材を売って空飛んで逃げれば、見た奴らが勝手に深く考えて動くだろって思ってジジイ達にマスクを渡す事にした。すごい雑だけど、空飛ぶなんて『ドルーフおじさん』と『令嬢』ぐらいしかいねえだろって雑な作戦だ。


 そんな事を考えていると商業ギルドに辿り着いた。


「着いたぞ。ここが商業ギルドだ。この金のマークはどの国でも共通だからちゃんと覚えておけ」


 今回も安定の商業ギルドだ。竜共は自分達の素材の価値が分かってねえが、商業ギルドだとカモられる事もねえからな。ただし当然買い取り額は他の店より安くなる。ただ、隙あらばボったくろうとする個人店よりは安心だ。


「おい、ジジイ。空いていれば受付に向かえばいいけど、こうやって人が多い時はこの列の一番後ろに並んで、自分の順番が来るのを待つんだ」


 この街はちょっと商業ギルドが忙しそうだな。10人ぐらいが順番待ちしているので、その列の最後尾にジジイと並ぶ。


「こいつら全員殺せばすぐに順番回ってきますよ?」

「馬鹿野郎!それしたら終わりだって言ってるだろ!暴力禁止!トラブルがあれば逃げろ!これが約束だぞ!」


 まったく、隙あれば殺そうとするな!当り前だけど竜共の価値観違いすぎるぜ。


 そうしてしばらく待つとようやく順番が回ってきた。


「これの買い取りを頼む」

 

 そう言って差し出すのは小さい赤竜の牙。大人になる時に生え変わって抜けた奴だ。ジジイ達にとって何も価値が無いものだけど、人にとってはとても価値あるものとなる。


「こ、これは・・・幼竜の牙・・・ど、どこでこれを・・・・」


 俺も良く知らねえけど、こいつは大人の竜の牙より加工しやすく、更に煎じて飲めば薬にもなるという、商人には喉から手が出るぐらいの逸品だ。


「言う訳ねえだろ。いくらになるんだ?」

「・・・・本物なら1000万ジェリーになります。ただし鑑定はさせてもらいますよ」



 おお!すげえ。こんな小さな牙でこんな値段になるのかよ。それなら鑑定が必要になるのも分かるぜ。


「支払いは細かいので頼むぜ」


 手を振って、商人に鑑定を許可すると、すぐに別室に持っていった。


「な?こうやって極力情報は渡さねえのがコツだ。聞かれても『言う訳ねえだろ』って言ってればいい。あとは白金貨とか大金貨で支払われると、ギルド以外じゃ使えねえからな。細かいのが欲しい時は前もってそう言っておけばいい」


 俺の言葉にジジイが納得したかのように頷く。


「ほうほう、参考になります。でも今、牙を裏に持って行かれましたけど、偽物だって言われたらどうするんですか?」

「何かの間違いでそう言われる事もあると思うが、そん時は売らなきゃいい。返してもらってから、面倒だけど、近くの別の街でまた同じ事するんだ。そん時は前の街で偽物だって言われたって言っておけ。お前らが集めたものだから確実に本物だろ。それを偽物と言ったその街のギルドの信用はガタ落ちだ」

「もし今、すり替えられたらどうすれば?」

「基本ギルドならそう言う事は無い。もしその時は暴れてでも奪い返せ。ただし、殺しちゃ駄目だからな」


 ギルドの情報網は俺が思っていた以上だからな。万が一騙そうとしてもすぐにジジイ達の情報は広まって、騙そうとはしなくなるはずだ。 


 っと、そんな事話していたら戻ってきやがったな。このギルドは騙そうとするのか真面目に対応するのかどっちだろうな。


「本物と鑑定されました。こちらが1000万ジェリーになります」


 おお!当り前だけど真面目に対応してくれるギルドだったか。しかもお願いした通り小金貨100枚での支払いか。たまに言う事聞いてくれないギルドもあるけど、これなら普通の店でも使える。


「おい、ジジイ。この街のギルドは問題なさそうだ」

「承知しました」


 って事で、受付が何か聞いて来ても『言う訳ねえだろ』で通してギルドを後にした俺達は酒場に向かった。こいつらには、『島に攻め込む話がないか調べろ』とクロから命令されているからな。情報集めの基本と言えば酒場だ。


「あのジョッキの看板がついている建物が酒場だ。取り敢えずお前らはギルドと酒場、この二つを覚えておけばいいだろう。で、順番としては先に酒場で情報集めしてからギルドで素材売って、必要な物買って帰るって方がいいな」


 じゃねえと、今みたいにギルドの連中が後をつけて、鬱陶しいからな。


でも、今は我慢だ。何故か?食べたいと思っていた海の幸の料理がようやく食べられるからだ。


「久しぶりに食う海の幸はやっぱり美味いな」

「そうですか?」

「何でお前も食ってんの?お前ら別に食う必要ねえだろ」


 ジジイ達竜もクロと一緒で、大気中の魔力を吸っているから食事はいらないはずだ。


「別にいらないですけど、食べようと思えば食べれますよ」 

「そんな無理して食わなくてもいいんだよ。酒だけ飲んでいればここじゃ文句言われねえからな」

「へえー。それなら無理する必要もないですね」


 やっぱり無理してたんじゃねえか!


 そうしてしばらく料理と酒を堪能したって事で、島に帰る事にする。もちろんお土産のエールを忘れずに注文する。少し待つと用意が出来たのか、店の親父が話しかけてくる。


「お客さん。言われた通り外に樽を4つ置いときましたぜ。本当に荷車とかに乗せなくても平気なんですか?」

「ああ、大丈夫だ。ごちそうさん」


 店の親父に礼を言って、外に出ると、俺の指示通りエールの入った樽が4つ置かれていた。当り前だけど、俺等を見張っていた連中もさり気なく後をついてきているが気にしない。何故なら今から俺達が帰る所をしっかり見せておきたいからだ。


「俺が二つ持つから、ジジイも二つ持てよ」

「承知した」


 そう言って樽を掴んでジジイと空に浮かぶと、後をつけてきた連中だけじゃなく、周囲からも注目を集め、軽く騒ぎとなるが、俺等は気にせずクロの島に向かった。竜の素材、空を飛ぶ、樽を持って帰る。これだけヒントがあれば俺達が『ドルーフおじさん』の仲間と考えつく奴もでてくるだろう。

 後はマスクをたくさん作って、竜共に各地で同じ事させればコーバスから少しは目が離れるはずだ。

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― 新着の感想 ―
最新話追いつきましたが、ずっとおもろいです。
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