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47.領都最強

「ああ!くそ!今日は駄目だ!」


 まだ昼間だというのに、組合内ではエールを飲んで騒いでいる組合員がいる。その光景は特別珍しくもない。そして、その中の一人トレオンが、機嫌悪そうにしているのを、周りの組合員がニヤニヤしながら話を聞いている。これも珍しい光景ではない。


「今日は見切りが早えじゃねえか?」

「俺は最初の2レースで続行か撤退か決めてんだよ。そんで今日は全然ダメ、カスリもしなかった」


 その言葉に何が面白いのか周りの連中が大声で笑う。その様子はコーバスの組合では、ありふれた日常だった。


 だが、組合の扉が乱暴に開かれ、見た事無い連中が入ってきた事で、その日常が大きく壊される事になる。


「ここがコーバスか。何かショボくねえか?連中の顔も辛気臭えな」

「本当にこいつらだけで地竜倒したんか?例の女の手柄かすめ取っただけじゃねえの?」

「雑魚顔しかいねえ」

「やっぱり領都の方がいいな」


 組合に入ってきた20人ぐらいの連中は、装備から級の高い組合員だと一目で分かる。


「見ねえ顔だな」

「また移籍かなあ?」

「結構良い装備してんな。3か4って所か」


 ここ連日同じような光景を何度も目にしているコーバスの組合員は、チラリと視線を送るだけで誰も反応しない。単純に何度も同じ事があって飽きたからだ。ただ、それを勘違いした連中が更に煽り始める。


「おいおい、これだけ馬鹿にしてんのに、ビビッて誰も反応しねえじゃねえか?」

「コーバスの連中は腰抜けしかいねえのか?」

「わざわざ領都から来たのに無駄足だったな」

「やっぱりこいつらが地竜倒したって嘘だったんじゃねえか?」


 更に大声で煽る領都からの組合員を、面倒くさそうに眺める組合員達の中、数人の組合員がようやく立ち上がった。トレオン含む新顔に絡むのが好きな組合員5人だ。


 トレオン自身も新顔に絡むのは好きだが、スパイかどうかの調査も含んでいるというのは、誰にも知られていない。そしてここ連日で分かった事は、スパイ連中は入ってきて早々喧嘩売ってくる奴はいないって事だ。基本スパイは目立つ事はせず、普通に受付まで行き移籍手続きをしていく。こいつらみたいに大人数で来て、早々喧嘩を売る奴らはシロと判断していいだろう。


 ただ、万が一という事もあるので、『面倒だけど話はしねえとなあ』と心の中で思うトレオンだった。


「よお、来て早々元気だな。お前ら。こっちに移籍しに来たのか?」


 トレオンがにこやかに笑いながら連中に近づいていく。それを聞いた連中は鼻で笑う。


「ハッ!そんな訳ねえだろ。領都最強の俺らが、なんでわざわざコーバスなんて田舎に移籍しねえといけねえんだよ」


 領都最強・・・確か『さらに先へ』だったか?全員4級で領都でも威張り散らして、あんまり行儀がよくねえとは聞いたが、間違ってないみたいだな。


 自分の持っている情報を確認するトレオン。


「その領都最強様がわざわざコーバスまで何の用だ?観光でもしに来たのか?」

「そうそう、地竜をここの組合員だけで倒したって聞いたから、顔を見にきたんだが、時化た面の奴しかいねえ。なんか良いのがいたら俺たちのパーティに入れてやろうと思ったんだが、無駄足だったぜ」

「緑竜如きにビビッて、王都に助けを求めた連中よりはまともな顔してると思うぜ」


 隣に立つ組合員の言葉に、領都からの連中は殺気立つ。それを見て心の中でトレオンは大きくため息を吐く。


 くそが、やっぱり喧嘩になるのかよ。コーバスの連中もこいつらも煽り耐性低すぎんだろ。ここんとこ毎日知らねえ奴と喧嘩してんぞ。


「おい、始まるぞ」

「机と椅子どけて場所開けろ。これ以上備品壊したら組合長にどやされる」

「はあー、毎日毎日、何でこうなるんだ?」

「昔は良かった。毎日穏やかに過ごせてたのに・・・」


 そうか?昔も毎日誰かが喧嘩してたよな?


 周りの組合員の言葉に昔を思い浮かべ、そんな事無かったよな?と考えるトレオン。周りでは既に喧嘩が始まっている中、ボーっと突っ立っているトレオンは、当然殴られて吹っ飛ばされる。


「いてえ!くそが!今殴った奴誰だ!!」


 先ほどまでは冷静だったが、トレオンも組合員。殴られれば当然頭に血が昇り熱くなる。即座に殴った奴に殴りかかるトレオン。そこからは5人対20人の乱戦となった。



・・・・・


「おいおい、トレオン達負けたぜ」

「あいつら結構やるな。領都最強ってのは嘘じゃねえみてえだ」


「ハハハ、少しはやるみてえだけど、俺らの敵じゃなかったな」


 トレオン達を踏みつけて威勢のいい事を言っている『さらに先へ』のリーダー。だが彼は気付いていない。防具を身に着けた4級組合員20人相手にして5人も道連れにしたトレオン達の異常な強さに・・・。


 そして連中が調子に乗っている所に、3人が組合に戻ってきた。


「よーす。ただいま!今日は大勝だぜ、ガハハハッ!」

「負け犬トレオンはいるかあ?俺ら3人とも大勝だったぜ。初めてのモレリアでも勝ったのに、お前馬の才能ねえんじゃねえのか」

「・・・お?また喧嘩かい?毎日元気だねえ」




 さっきの喧嘩を面倒くさそうに見ていた組合員や職員全員が思った。


・・・・・・最悪だ。と。



「あん?喧嘩してたのか?」

「おいおい、トレオン負けてんじゃん。本当の負け犬になってんじゃねえか」

「へえー、って事は君ら結構強いんだねえ」


 この光景に動じる事無く、組合に入ってくる3人。


「おい、ゲレロ!なんか書く物持ってねえか?トレオンの顔に落書きしようぜ」

「ガハハハッ面白いじゃねえか!書く言葉は当然『負け犬』だよな」

「アハハ!いい!それ最高!俺らの今日の勝ち額も書こうぜ。ついでにトレオンの負けた額もな」


 突然現れ勝手に盛り上がる二人に、動揺し動きを止めていた『さらに先へ』の面々はようやく、気を取り直してベイル達に声をかける。


「お前ら、何勝手に・・・」

「だあああ!分かった!領都最強!」

「お前らの勝ちだ!お前らは凄えよ」

「頼む!頼むからその3人は気にしないでくれ!」


 リーダーが声をかけようとすると、周りの組合員が立ち上がり、慌てた様子で止めに入る。


 だが、連中がそれで止まる訳なかった。

 


「おらああ!てめえら!何勝手にしてんだ!」


 『さらに先へ』の一人がベイルを蹴り飛ばす。


「おい!こら!クソ禿!でけえ図体して邪魔だ!」


 別の一人がゲレロの頭を殴りつける。


「おいおい、いい女じゃねえか。乳もでけえな」


 更にもう一人がだらしない顔でモレリアの胸を揉み始める。



「よーし。誰だ?今俺を蹴った奴は?」


 脇に避けられていた机や椅子の山に蹴り飛ばされたベイルは、ゆっくりと立ち上がる。


「イキのいいのがいるな。ちょっとは楽しませろよ」


 殴られた所を摩りながらゲレロが立ち上がる。


「フフフ、僕の胸は美少年専用なんだよ」


 怪しく笑いながら胸を揉む手を優しく包む。次の瞬間、モレリアはその手をクイッと捻ると同時に手の平の痛みのツボも押さえつける。


「イテテテ!!!」


 たまらずだらしない顔をした男の顔が下がる。そこにモレリアの膝が突き刺さり、今度は逆に男の顔が跳ね上がる。


「ガハッ・・・」


 そこから更に男の股間に向かって前蹴りを放つ。躊躇いも遠慮も容赦もない一撃に男が声にならない声をあげて蹲る。そこに更にモレリアは追撃で頭に回し蹴りを叩き込み男の意識を刈り取る。


「フフフ、久しぶりに運動しようかな」


 何事も無かったように微笑むモレリアを見て、周りの組合員は恐怖した。


「やべえええ!モレリアがキレた!」

「誰か!シリトラ連れてこい!あいつじゃねえと止められねえ!」

「く、組合長は?」

「馬鹿野郎!ベイルとゲレロもキレてんだ!組合長はそっち止めるのにいるだろう!」


 周りの組合員が大騒ぎしている中、ベイルは既に蹴り飛ばした奴を殴り飛ばしていた。


「ちっ、何だよもう終わりか。雑魚助じゃねえか」

「て、てめえ!」


 仲間の一人がベイルに殴りかかってくるが、それを躱して腕をとり一本背負いの要領で床に叩きつける。


「ガハッ・・・」

「防具つけて喧嘩とはとんだ卑怯者だな、お前ら。まあ、それぐらいハンデなきゃ楽しめえねえか」

「な、何を・・・・ま、待て!お前そ、それは・・・」


 床に叩きつけられた男が状況判断出来るようになった時には、気を失った仲間がベイルによって高く持ち上げられていた。慌てて止めるが、それを聞くベイルではない。そのまま仲間を叩きつけられて気を失うのであった。



「な、何だこいつ!みんな!このハゲには捕まるなよ」


 既にゲレロによって仲間二人が投げ飛ばされ倒れている。


「ガハハハッ!それなら逃げ続けろよ!」

「うわあああああ!」


 注意を受けたが狭い組合内で、更に周りに仲間が倒れている足場の中、逃げ続けられる訳もなく、一人、また一人とゲレロに捕まり投げ飛ばされていく。掴まれても抵抗してゲレロを殴ったり蹴ったりしているが、ゲレロにダメージが入っている様子はなく、止まらない。


 気付けばリーダーとモレリアが相手をする一人のみとなっていた。


「な、何だ?てめえらのその強さ!俺らは領都最強なんだぞ!分かってんか?」

「知らねえよ。喧嘩売ってきたのはてめえらだろ」

「これが領都最強?嘘だろ?」


 騒ぐリーダーに詰め寄るベイルとゲレロ。と、そこにようやく仕事に一段落ついた組合長が部屋から出てきた。


「ったく、うるせえな。毎日毎日喧嘩ばっかりして楽しいのか?」

「く、組合長!あいつら止めてくれ」


 部屋から出てきた組合長に、何故かリーダーが足に縋り付いてお願いする。


「はあ?何で俺が止めねえといけねえんだ?お前らが喧嘩吹っ掛けたんだろ?煩くて嫌でも聞こえてきてたぞ」


 組合長はそう言ってリーダーの首を掴み、持ち上げてベイル達の前に投げる。その時キレているモレリアが目に入った。


 あちゃあ。モレリアがキレてんじゃねえか。あいつ足癖悪くて、妙な関節技使うから、真っ向から向かってくるベイル達より止めるの面倒なんだよな。


「ほら、お前らリーダー倒したら大人しくしとけよ」


 モレリアに気を取られた一瞬で床に倒れているリーダーを見ながらモレリアを止めようとジークは動くが、そこに立ちはだかるベイルとゲレロ。


「何の真似だ?」

 

 立ちはだかる二人に少しイラッとくるジーク。普段は冷静に努めているが、元組合員だけあって、ジークも喧嘩っ早いのだ。


「いやあ、こいつら手ごたえ無くてちょっと、物足りないんですよ」

「組合長、今日こそは勝たせてもらうぜ」


 5級になってからは、こうも真正面からジークに喧嘩を売ってくる奴はいなくなった。それが少し残念でもあったが、まさか引退して組合長になってから、そういう奴が出てくるとは思っていなかった。


 現役の時に二人には会いたかったぜ。そう思いジークは笑いながら構えをとる。


「いいだろう。久しぶりに相手してやる!二人同時で構わん!かかってこい!」

「ゲレロ!今日こそ一つ目オーガを討伐するぞ!」

「当たり前よ!ベイル!てめえ足引っ張んなよ!」





「あ、当たらねえ・・・何だてめえは?何で当たらねえんだ」


 モレリアと対峙している男が動揺しながらも、パンチや蹴りを繰り出しているが、その全てをモレリアは躱している。そしてその足元には股間を抑えた格好で気を失っている男が、3人転がっている。


「うーん。もういいや」


 そう呟いたモレリアは男のパンチを躱しながら側頭部にハイキックを決める。崩れ落ちる落ちる男に、そこから背を向け後ろ蹴りを放つ。


 決まった。誰もがそう思ったが、その蹴りは腕をクロスして飛び込んできたエルメトラによって止められていた。


「邪魔だよ、エル」

「師匠、落ち着いて下さい。この人気を失ってます。今の追撃はいらなかったでしょう!」

「必要だよ。これぐらいはやっておかないと何度も絡まれるからね。エルにも教えただろう?」

「で、でも。ただの喧嘩でここまでしなくても!」

「うるさいなあ、なら僕を止めてごらん」

「師匠!!!」


 そう言ってモレリアはエルメトラに襲い掛かる。



そこから始まった二人の闘いを見て周りの組合員が驚きの声をあげる。


「すげえ、エルメトラ。モレリアと互角に戦ってる」


 互角じゃないわよ!


 その声が聞こえたエルメトラは心の中で抗議する。


 師匠の訓練で動きを予想できるし、対処法も教わっているから何とか対応できているけど、訓練と違って一撃一撃が重い。ガードしている腕も痺れてきた。このままじゃマズいわね。


 攻撃はせずに、防御に徹して何とかモレリアの動きに対応できているエルメトラ。だが、


「やるねえ、エル。それならこれはどうだい?」


 そう言うと、モレリアの雰囲気が変わった。さっきと何も変わらないのに、エルメトラは先程以上の威圧感を感じた。


 な、何?この感じ・・・もしかしてこれが師匠の本気?・・・ヤバい、明らかにさっきと全然違う。


 エルメトラの背中に冷たい汗が流れる。




「モレリア!!!」


 だが、そこに組合に飛び込んできたシリトラがモレリアを大声で呼ぶ。


「・・・・・・・・シリトラか。どうしたんだい?」


 その声は先程の低く冷たい声では無く、いつもの師匠の声に戻っていた。エルメトラはそれを聞いて気を緩める


「どうしたんだいじゃありません!馬鹿!モレリア!あなた、またキレましたね?」


・・・・


「・・・・いや、キレてないよ。僕はコーバスで一番心が広いからね。キレる訳ないじゃないか」


「・・・・そこで股間を抑えて気を失っている男達は何ですか?」


 シリトラが冷たい目で、足元に転がる男達を指差す。


「彼らは性病持ちなんだよ。・・・・・多分今発病したんだろうね」


 モレリアの馬鹿な言い訳を無視してシリトラはビョンと飛び、モレリアの長い耳を掴む。


「い!痛い!痛いよ!シリトラ!エルフの耳は乱暴に扱っちゃいけないんだよ」

「いう事聞かない耳は、エルフだろうが人だろうが要りません。だから少しぐらい乱暴に扱ってもいいんです」

「ええー。暴論すぎない?」


 モレリアの抗議の声を無視してシリトラはエルメトラに声をかける。


「エルメトラ。あなたもこっちに来なさい。二人でモレリアに説教しますよ」

「は、はい!」


 何で師匠はシリトラさんの声を聴いただけで普段通りに戻ったんだろう?その疑問が頭を埋め尽くしていたエルメトラだったが、素直にシリトラの言う事を聞いて二人でモレリアに説教を始めるのであった。



「おらあ!おらあ!おらああああ!くそがあ!何で倒れねえんだよ!」


 さっきからボディ連打してんのに、組合長は気にした様子も無くゲレロと殴り合ってやがる。俺のパンチが軽いのか?な訳ねえ!これでもキングや足元の領都最強に殴り勝ってんだぞ!


「な、何でこれだけ殴ってんのに倒れねえんだ!あんたバケモノかよ!」


 ベイルも驚いているが、ゲレロも当然組合長の強さに驚いている。


「ハハハハハ!お前らは俺が喧嘩した奴の中じゃトップ3に入る強さだ。自信持っていいぜ」

「その自信が今褒めてくれた奴のせいで粉々になりそうなんだけどな」

「ったく、マジで何かインチキしてんじゃねえのか?」

「してねえよ。俺は昔から力と打たれ強さで負けた事はねえんだよ。引退して弱くなったが、そこだけはまだ国一番だって自負してるぜ」

「くそがあああ!いい加減国一番から陥落しろよ!」

「ハハハハハ、まだあと10年はお前らの前に立ちはだかってやる。それじゃあ、もう寝とけ、ベイル」


 そう言って組合長は両手を振り上げ、ベイルに叩きつける。


 攻撃に意識を集中していたベイルは、それをまともにくらい地面に叩きつけられ、そのまま、気を失った。


「よし、ベイルは終わったぞ、次はてめえだ、ゲレロ」

「チッ!今日こそはぶん投げてやるぜ!組合長さんよお!」


 そう言って組合長とがっぷり四つに組む。


「ぐおおおおおおおおお!!!」

「ハハハハハ、大分強くなったじゃねえか。だが俺を持ち上げるのはまだまだだな」


 そう言いながらジークが力を籠めると、ゲレロの巨体が持ちあがる。


「う、うおおおおお!!」

「そんじゃあ、ベイルと仲良く寝とけ。後はこっちで適当にやっておく」


 持ち上げられたゲレロは、そのまま壁に投げつけられ気を失った。



■■

「・・・っ!い、痛ええ」


 目が覚めると見慣れた天井が目に入ってきた。そこが組合だと分かった瞬間体に痛みが走った。


「お、起きたか?ベイル」


 横からゲレロの声が聞こえてくる。見なくても分かる。それに体が痛えから動かしたくねえ。


「ああ、こうなってるって事はまた負けたのか?」

「そうだ、お前は叩きつけられて、俺は投げられて気を失った。あの人マジでバケモンだな」


 マジで組合長に勝てねえな。『身体強化』を使ってんじゃないかと疑った事もあって、例の魔道具見せて貰った事もあったが、マジで素の状態で俺ら二人相手してんだよな。

 いい加減、あの人に素の状態で勝つのは無理なんじゃねえかと思う今日この頃。


「そう言えば、領都最強とか言ってた連中はどこ行った?」


 見ると、組合はいつもの様子と変わった風には見えない。


「モレリアが街の外に捨てにいったらしいぞ」


 そう言えばあいつもキレてたけど、落ち着いたんだな。


 そう思っていると、タイミング良くモレリアが戻ってきた。


「やあ、負け犬のお二人。連中は身ぐるみ剥いで外に捨ててきたよ」

「誰が負け犬だ!」

「負けてねえだろ!ふざけんな!」 


 俺とゲレロで抗議すると、モレリアは鏡を取り出し、それを俺らに突きつけてくる。


 そこには当り前だけど、イケメンと厳ついスキンヘッドの大男の姿が映っているんだが、二人の顔には『負け犬です!組合長には今後逆らいません』と大きく書かれていた。


「ああ?何だこりゃあ?」

「ちょ!これ全然落ちねえぞ!」


 慌てて顔をこすって鏡を確認するが、さっきと全く変わっていない。


「なんか明日まで絶対落ちないらしいよ」


 はあ?マジかよ?


「ひ、ひでえ。人が気を失っている時に、何でこんな酷い事出来るんだ?」

「信じらんねえ。組合長は人としての心を持ってねえのかよ」

「・・・・いや、君ら、トレオンに同じ事しようとしてたよね?」


 うるせえ!トレオンはいいんだよ!

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