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46.ゴブリンホイホイ

 俺が地竜をぶん殴った事で、色んな所で事態が動いてるなんて考えられるはずもなく、今日も今日とて依頼を受けに組合にやってきた。


「リリー、ゴドリックからなんか依頼来てねえ?多分ゴブリン関係だと思うんだが?」


 依頼出すとか言ってたし、気にはなっているんだよな。


「ああ、来てますよ。丁度ベイルさんに話をしようと思っていた所です。こちらが依頼書になります」


 そう言って渡された依頼書を見たんだが、これまた不思議な依頼だ。


 ゴブリンの巣の討伐なんだが、まずは巣を見つける所から始めるっていう変わった依頼だ。しかも道中のゴドリックの護衛もあるからついてくるって事だろう。そんで一際変わってんのが、この『穴掘りしてもらう』って項目だ。何だ?これ?



「リリー、この『穴掘り』って何だ?」

「落とし穴を掘ってほしいみたいです」


???


 巣の討伐は?


「詳しくはまだ言えないそうで、こちらもこの依頼に困ってます。ゴブリンの巣と言っても規模が分からないので、人数設定が出来ない状況なんです」


 おお!また、リリーでも悩む依頼かよ。けどゴドリックの依頼だ。受けてみるか。


「ちなみに報酬は?」

「要相談としか・・・・普通はこんな依頼組合でも受けないんですけど、ゴドリックさんは特別だそうです」


 ああ、こりゃあ、駄目だ。報酬が『要相談』なんて書かれた依頼、まずは交渉から始めないといけない面倒事が発生する。それに相談の時点で普通より高くなる事はないと思うだろう。金にがめついあいつらじゃ誰も受けねえわ、これ。そうすると、俺一人か?


「うーん」

「やはりベイルさんでも受ける気にはなりませんか?」

「いや、ゴドリックがこの前、気になる事言ってたから、受けるつもりなんだが、ちょっと俺一人じゃ厳しいと思ってな」


 護衛しながら一人穴掘りとかキツすぎる。


「報酬さえはっきりすれば、受ける人もいるとは思うんですけど・・・」

「だなあ。まあ、ゴドリックの依頼だから報酬が安いはずはねえんだけどな」


 少しリリーと考え込んでいると、トレオンの馬鹿がやってきやがった。


「よお!ベイルとリリー何やってんだ?逢引の相談でもしてんのか?組合で堂々とやんなよ!隠れてやれ!」


 その言葉に明らかにリリーの機嫌が悪くなったのが分かった。


「おい!馬鹿トレオン!冗談でもリリーにそんな事言うな!リリーは今でも旦那とペアルック着てるぐらいラブラブなんだぞ」

「き、着てません!おかしな事言わないで下さい!!」


 ふっふっふ、嘘は良くねえぜ、リリー。こっちは目撃者からしっかり聞いたんだぜ。


「・・・カナ、後で話があります」

「・・・・・・・はい、ごめんなさい」


 しまった、こりゃあ、今後目撃者からの情報提供無くなるな。


「・・・・ええー」


 トレオンがドン引きしてる。俺も最初聞いた時と同じ反応だ。まあ、これでリリーにそういう冗談言わなくなるだろ。


「そういやあ、トレオン。お前今日暇か?」

「いや、今日は馬行かなきゃならねえ」

「よし、暇だな。ちょっと手伝え」

「お前、人の話聞いてるか?・・・いや、聞かねえ奴だったな」



「何だこの依頼?読んだだけでクソ依頼だって分かるじゃねえか。ベイル、お前この依頼受けんのか?」


 トレオンに依頼書を読ませると、この反応だ。まあ、あの内容なら誰でもこう言うわな。


「ああ、依頼主がゴドリックだからな。書き方はアレだが、報酬は結構いいはずだ」

「そうかー。ゴドリックかー。そう言われるとちょっと気になるな。俺も受けてみるか。そうだ、ベイル。マーティンとユルビルも誘っていいか?俺と違ってあいつら暇しているはずだ」


 馬に行くつもりだったトレオンに、暇してるとか言われたくねえだろう。


「そうすっと4人か、丁度いいか。ってあれ?ロッシュはどうしたんだ?」

「10日程留守にするんだとよ。人の少なくなったコムコムの連中が、慌てふためく様を肴に酒飲んでくるって言ってたぜ」


 相変わらず性格悪いなあいつ。


「って事でユルビルとマーティン連れてくるから、北村に先に向かっておいてくれ」


 そんな訳でリリーに依頼を受ける手続きをしてもらい。ゴドリックの所に向かった。


「そうですね。まずはゴブリンの巣を見つけて下さい。見つけたら僕たちを護衛してそこまで連れて行って下さい。そこから先はその時に説明します」


 ゴドリックの説明を受けたんだが、思っていたより面倒くさそうな依頼だ。これ結構日数かかるんじゃねえ?


「おい、どうするよ。ゴブの巣なんて見つかるときは見つかるけど、見つからねえ時はマジで見つからねえぞ?」

「文句言っても仕方ねえだろ、トレオン。もう依頼受けちまったんだ。4人で手分けして探すぞ」

「待てベイル。儂に良い考えがある。一度組合に戻ってゴブの巣討伐の依頼が無いか確認するんじゃ。あればそれを受ければいい」


 おお!ユルビルの奴賢いじゃねえか!


「いや、我らは3級、ゴブの巣討伐は2級の依頼だから受けれんだろう。だが、2級が受けた依頼についていくのは問題ないだろう」


 おいおい、マーティンも頭いいじゃねえか。このパーティ、頭悪いのトレオンだけだな。


 って事でまたコーバスに蜻蛉帰りだ。そして掲示板を見ると、結構2級の依頼が張ってあんな。


「そういや、この間の地竜で結構3級に昇格したらしいぜ。だから今2級の数が少ねえって言ってたな」


 知り合いの2級は・・・ショータンはこの前上がったか。そうすっとカルガーに頼むか。


「自分この前3級に上がったっす。ちょっと時間かかったっすけど、まあうちのパーティ4級がいるっすから、試験で厳しく見られるのは仕方ないっす」


 マジかー、後は、知り合いはアーリット達か・・・


「あいつら『快適』の護衛依頼についていったから、しばらく戻ってこねえぞ」


 探してたらその辺で暇そうにしていた組合員が教えてくれた。


「何でだよ!あいつら2級だからまだ護衛依頼受けれねえだろ?試験もまだのはずだ」

「報酬いらねえから連れていけって頼んだらしいぜ。野盗の対応とか学びたいとも言ってたな」


 おいおい、あいつら勉強熱心すぎんだろ。普通は話聞くだけだぞ。


・・・この間、ちょっとキツく言い過ぎたかな。


 しかし困った。知り合いの2級はほとんどが3級にあがってるし、2級の知り合いも不在だ。一応移籍してきた2級もいるんだけど、話をした事もねえから、頼みづらいぜ。


「誰か2級に知り合いいねえか?無駄にイキってる奴より、出来れば話の分かる奴がいいんだけど・・・」

「よっしゃ、任せとけ」


 流石トレオン。無駄に新人に絡んでるだけの事はある。俺の要望聞くと躊躇う事無く、とあるパーティに声をかけに行った。



「ちーっす。『沈黙の闇』リーダーのトリーです」

「・・・・ノア」

「サバクでーす」

「アミーナです」


 うーん。リーダーが男で他3人は女。典型的なハーレムパーティだな。取り合えずその中二病全開のパーティ名は何だ。トリーとサバクはどう見ても陽キャで沈黙しそうには見えねえ。フード被って下を向いた暗い表情のノアに因んでこのパーティ名つけたってなら分かる。そんでアミーナは眼鏡かけて真面目そうだから受付嬢の方が似合いそうだってのが俺の初対面の印象だ。


「こちらこそ宜しく。トレオンから話聞いたと思うが・・・」

「ああ、いいっすよ。なんかゴブの巣討伐の依頼受ければいいんすよね?後は皆さんが適当にやってくれるって聞いてます」


・・・・・おいおい、こいつ話の分かる奴じゃなくて、話適当な奴なんじゃねえの?トレオンに任せた俺が馬鹿だったぜ。でも今更断れねえからな。



 取り合えず今は、連中に依頼を受けてもらい巣の確認に向かっている所だ。向かいながらトレオン達がトリーに話を聞いている。


「へえ、お前らボートレット領から来たのか?」


 その領の名前は聞いた事ある。確かコーバスから王都に向かう時に通る領だ。そこ抜けたら王都って聞いてる。


「そうなんすよー。あそこもいい街なんすけど、やっぱり地竜倒したって夢あるじゃないすかー。俺らもなんか適当にしてたら竜狩れないかなーと思って移籍してきたんすよ」


 あっ、こいつら馬鹿だ。何も考えずに移籍してきやがったな。適当にしてて竜が狩れる訳ねえだろ。


「で、どうじゃ?コーバスに移籍してきた感想は?」

「いやあ、思ってたよりキツイっすね。なんせ2級がほとんどいないって、この街ちょっとおかしいっすよ」

 

 そりゃあそうだ。ほとんど3級にあがったからな。逆に無級と1級が馬鹿みたいに多くて、街がどんどんきれいになってるけどな。そうして話をしていたら、斥候のアミーナが戻ってきた。


「見つけました。恐らく中規模だと思います」


 案内されてついていけば、言われた通りゴブの巣を見つけた。そして巣の規模はアミーナの言った通り中規模って所だろう。恐らく上位種がいるはずだ。


「で?ここから俺達は指示があるまで、待ってればいいんすよね?」

「ああ、そうだ。こっちの依頼主を連れてくるから、それまで待機だ。明日までには戻ってくる」

「もし襲われたら、反撃してもいいからな」

「不安じゃったら、儂等の誰か残ってやろうか?」

「大丈夫だよー。ただ、待ってるだけでしょー。子供でも出来るよー」


 ユルビルの提案を陽キャ女のサバクが断る。


 だけどな、その子供でも出来る事が出来ねえのが、コーバスの組合員だ。あいつら報酬が出来高制の時は、どうやって相手を出し抜くかしか考えてねえからな。今回の場合だったら、俺らがいなくなったと同時に巣に攻め込むはずだ。


「やっぱりコーバスは碌な連中がいねえな」

「その筆頭がお主だろう」


 お?マーティン喧嘩売ってんのか?隙あらば絵を描き始めるお前に言われたくねえぞ。



 そんで翌日ゴドリックとシーワンを連れて戻ってきたら、『沈黙の闇』は巣に攻め込まずに大人しく待っていた。ちゃんと『待て』が出来るなんて、こいつら将来有望だ。

 それに比べて・・・・


「何でコーバスの連中は『待て』が出来ずに突っ走るんだろうな」

「その時、先頭を走るお前が何を言っておる」


 あれ?俺のイメージおかしくねえ?言われたらちゃんと『待て』してるぞ・・・多分。


「おお、いい大きさの巣ですね。これなら確実に良い結果が得られます」


 巣の様子を伺ったゴドリックは大喜びだ。


「そんでこれからどうすればいいんだ?」

「それでは今から皆さんで落とし穴を掘ってもらいます。場所は・・・・そうですね・・・あの辺りにしましょう」


 そこからゴドリックの指示に従い、穴を掘っていく。結構な深さと広さの穴だけど、ユルビルとマーティンの土魔法で、地面を柔らかくしてもらったから、そこまで大変ではなかった。


 それが終われば穴の底にレイピアの刀身部分に似た金属の棒を底に突き刺して並べていく。


 これ穴に落ちたら確実に突き刺さって死ぬな。


 そんな殺意マシマシの落とし穴が完成した・・・・


「あれ?これで完成?落とし穴バレバレだけどいいのか?」

「はい、これで大丈夫です。あとは穴の上あたりにこの布を吊り下げてもらっていいですか?」


 そいつは身軽なトレオンに頼めばすぐに終わった。終わったが何だろう、この子供だましの罠は・・・上の布に注意を向けている間に下の落とし穴に落とす、ってのは理屈では分かる。分かるが、シンプル過ぎねえ?馬鹿なゴブリンでも気付くと思うぞ?


「それでは次にあの辺りに布を下げてもらっていいですか?」


 な、何だ?そうやって布を使って誘導するんか?こんなんで上手くいくのか?と疑問に思いながらもゴドリックの指示の元、どんどん布を木に吊り下げていく。そしてゴブリンの巣からでも見える場所に布を吊り下げたら完成したようだ。


「それでは皆さん、最初の位置まで戻って巣を観察しましょう。上手くいけばこれで巣のゴブリンを殲滅近くまで持っていけるはずです」


 言われた通り、戻って巣を観察していると、一匹のゴブリンが巣から出てきた。そしてさっき吊り下げた布に気付くと、ギャー、ギャー言いながらそちらに向かっていく。そうすると次の布を見つけたのか、更に森の奥に向かったところで、ここからは姿が見えなくなった。


 そしてしばらく待つと・・・


「ギャアアアーーーーーーー」


森の中にゴブリンの叫びが響いた。


・・・・落ちたのか?


「よし!」

「やりましたね、先生!」


 未だに俺達は信じられないって顔しているが、ゴドリックとシーワンは手を合わせて喜んでいる。それが終わるとシーワンは紙に何やら書き始めた。今の結果だろう。


「な、なんか凄くない?」

「ちょっと信じられません」

「もしかしてウチ等、凄い場面に立ち会っちゃった?」

「・・・これがゴドリック」


『沈黙の闇』の連中も驚いている。当然俺やトレオン達も驚いてる。だってこのやり方マジで危険がねえ、物凄い画期的な方法だ。これを村の周りに設置しておけば、ゴブリンに襲われる事がかなり減るぞ。


 そんな驚いている俺達を他所に、さっきの叫びが聞こえたのか、今度はゴブリンが二匹巣から出てきた。そんで布に気付くと同じように騒ぎながら向かっていき、森の中に消えた。そしてすぐに・・・


「「ギャアアーーーーー」」


 二匹の断末魔の叫びが聞こえてきた。


「おいおい、これマジですげえぞ」

「ゴドリックは何故こんな事を考えられるのじゃ」

「やはり天才はいるのだな」


 それは多分可哀そうなゴブ一君のおかげかな。ゴブ一は何回罠に嵌められたんだろうな?今度肉でも持って行ってやるか。


「さて、皆さん。うるさいでしょうが、今日はここで野宿します。それで明日の朝、落とし穴を確認に行きましょう」


 そう言うとゴドリックとシーワンはさっさと布にくるまって目を瞑ってしまった。時々聞こえてくるゴブリンの断末魔の叫びを聞いて、「ウフフ」と笑う二人の姿には、流石の俺達でもドン引きだったよ。



そして翌日。落とし穴の前で俺達はもう何度目になるか分からない衝撃を受けていた。


「す、すげえな」

「な、何匹いるんでしょう?」

「分からん。分からんが、ホブがいるのは分かる」


 落とし穴の中には串刺しになったゴブリンが凄い数死んでいた。


「おお!ホブまでなら罠にかかるんですね」

「先生、この巣のボスを見ないと、その判断は間違っているかもしれませんよ」


 何で魔物殺すのが専門の俺達組合員よりも、ゴドリック達の方が普通にしてんだろうな。


「シーワンの言う通りですね。それでは皆さん、巣の探索に行きましょう。護衛お願いしますね」


 そう言って勝手にどんどん歩いていくから、驚いている場合じゃなくなった。慌てて後を追うと、また驚きの光景が広がっていた。


「いねえんだけど?」

「ここ、巣だったよね?」

「昨日見間違えたのかなー?」

 

 昨日確認した巣の中にはゴブリンが一匹もいなかった。マジであの落とし穴で全滅させたのか?


 と、思ったら巣の奥に一匹だけゴブリンメイジがいた。どう見てもこの巣のボスだろう。普通の巣のボスの周りには何匹か護衛や地位の高いのがいるんだが、一匹しかいねえパターンは見た事ねえ。他は全員落とし穴に落ちたのかよ。


 そんなボッチのボスはサクッと倒して巣の中を調べると、また奇妙な事が分かった。


「おい、子供のゴブリンもメスもいねえぞ?」


 巣の奥に隠された小部屋。普通ならここにメスゴブやチビゴブがいるんだけど、姿が見えねえ。部屋の匂いや雰囲気から、少し前までここに何匹かいたとは思うが、どういう事だ?


「多分ボスの指示で様子を見に行かされたんでしょう。それで他のゴブリンと同じで落とし穴に落ちた。後で調べてみましょう」

「先生、これだとボスが罠にかからない可能性が高い事が分かりましたけど、今回はメイジだったので、更に上位のキングがボスだった場合、手下のメイジやライダー、ジェネラルが罠にかかるか調べる必要がありますね」


 流石にその規模の巣を見つけるのは領内でも年に2~3回だから、検証は組合全体に依頼してくれ。


「しかし何でこうもゴブ共は巣に落ちてんだ?一匹ぐらい落とし穴に気付かなかったのか?」

「ベイルさん、それは連続して吊るした布に秘密があります。ゴブリンは巣では、待ち伏せする知恵はあるでしょう?」


 ああ、あるな。石を投げれば簡単に反応して、襲ってくる程度の知恵だけどな。


「最初の布を見つけた時は、ゴブリンは当然周りを警戒しています。ですが次の布を見つけると、そちらに注意が向きます。そして3枚目の布でゴブリンは次もどこかに布があると学習します。そうなるともう、意識は上にしかいきません。そうなったゴブリンは、後は落ちるだけです」


 すげえ!と思いたいが、そこまで至るに、どれだけゴブ一が罠に嵌められたのか考えると哀れみの方がでかいな。今度マジで肉の差し入れしてやろう。


 そんでこの罠って・・・


「ゴキブリホイホイみたいだな」


 思わず前世の記憶で似たものを考えてしまった。


「ベイルさん。『ゴキブリホイホイ』って何ですか?」


 ゴドリックに聞かれちまったか。まあ、誤魔化すもんでもねえか。


「ほうほう、そういう面白い罠もあるんですね。どういったものか分かりやすいし、考えた人は天才ですね」


 簡単に説明したらすげえ食いつきだ。確かに前世じゃ普通に普及してたが、最初に考えた奴は天才だろうな。


「そうだ!この罠は今後『ゴブリンホイホイ』と呼称しましょう」


 パクり商品みたいな名前だな。


「いやあ、今回の検証上手くいって良かったです。成功報酬で各自20万ジェリーお支払いしますね」

「マジかよ!」

「なんと豪気な」

「いいのか?儂ら穴掘っただけじゃぞ?」


 3日で20万。ユルビルの言う通り俺ら穴掘っただけ。ボスのメイジもトリー達が倒したし。やっぱりゴドリックの依頼はおいしいぜ!


そして更に、


「『沈黙の闇』の皆さんにも手伝ってもらったので各自に5万ジェリーお支払いしますね」


 その言葉に『沈黙の闇』の連中も大喜びだ。こいつらもメイジ一匹殺しただけの楽な依頼だからな。そこに追加報酬だ、そりゃあ喜ぶ。


「すげえ!ゴドリックさん凄いぜ!」

「・・・・一気にお金持ち」

「今日の宿は少し奮発しましょう」

「ゴドリックさん、マジ神じゃん!」


 サバクちゃんよー。コーバスにはエルメトラ神って女神が既にいるんだぜ。勝手に神を増やしてもらっちゃあ困るぜ。




今日の仕事を終えたジークは窓に一羽の小鳥が止まっている事に気付いた。


 なんだ、また報告かよ。今度は誰だ?


 『令嬢』の出現以降、街にスパイが入り込み、連日緊急報告が上がってきているので、今回も同じだろうと思いながらもジークは手紙を読む。


「『沈黙の闇』ボートレット」


 手紙に書かれていた内容はそれだけだった。ただ情報としてはそれで十分。


 中身を読むとその手紙を外に投げ、小鳥が飛んで行ったのを確認する。


 今度は大物から来たなあ。遂に痺れを切らしたか。まあ、『令嬢』調査ならこっちもやって欲しいから放置だが、もし組合に手を出せば潰す。


 そう思いながらも、連日の報告にげんなりするジーク。


 これでスパイ何組目だよ。ロッシュも令嬢の件で王都に行ってるってのに、いい加減あいつら仕事し過ぎで倒れるぞ。


 残っている3人を心配しながらも、俺じゃあどうしようも出来ねえなあと思うジークであった。

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