29.タロウ達と散歩
「本当に申し訳ないっす。ベイルさん」
あれから数日ある程度組合に平穏が戻った頃にカルガーが俺に謝罪に来た。
聞けば、あの日は斥候の練習を兼ねてパーティから離れて行動していたカルガー、そこにあの光景を目撃してしまったそうだ。
当然前回俺との約束を忘れていないカルガーはゲレロに相談せず、かといって目の前の俺は怖くて相談する事が出来なかった。ただ、自分の理解をはるかにぶっちぎった光景を前にしたカルガーは、混乱して組合に泣きながら駆けこんだそうだ。
そして同じぐらいの時間にアーリット達も暗い顔で戻ってきたので、心配した組合員が事情を聞いた事で話が広まった。
当然いきなりカルガーが消えてゲレロ達は大騒ぎだ。まあ、すぐに組合からカルガーを保護している連絡が来て、その時カルガーを探すのを、手伝っていたモレリア達と一緒に組合に戻る事に。
戻ると、一人泣いているカルガーを見つけて話を聞くが、何も答えてくれない。そこにリリーが現れ状況を説明し理解した面々。そこで終わればいいのに終わらねえのが性質の悪い3人だ。どこからか現れたトレオンが俺の様子がおかしい事を聞いて、周りの組合員に更に話を聞くと、どうやらこのまま俺が何も無いように過ごそうとしていると推測。
更にエフィルが一人で依頼の確認に組合を再び訪れ、リリーの話を補強する。この頃になると、カルガーも落ち着いてきて、話をするようになったそうだ。
そこからの行動は・・・まあ知っての通りだ。普段は自己中の集まりの癖して組合員ってのはこういう時だけ、団結力はすげえんだよ。嫌になるぜ。
「まあ、過ぎた事だ。取り敢えずしばらく俺は大人しく過ごすからよ。出来ればいつも通り接してくれるとありがたいぜ」
頭を下げるカルガーだったけど、よく考えたら今回あんまりカルガー悪くねえんだよな。どっちかというと、馬鹿3人が悪いよな。まあ、レッサーウルフの時と違って今回はあんまり誤解されてないみたいだし、俺も怒りを抑える事にしたんだ。まあ、一部俺がゴブリンに盛っていたって噂が流れているけど、いずれ消えるだろう。受付嬢達にはお菓子も配っているしな。
「それなら今から自分とタロウ達の所に行かないっすか?」
「タロウ達?この間会ったばっかりだろ?それにゴドリックからの呼び出しもねえし」
「何言ってるっすか!もう5日以上タロウに会ってないんっすよ。そろそろ自分限界っす!それにベイルさんが自分と出かけたら変な噂もすぐに無くなるッス」
確かにカルガーと出かけたら、俺がゴブリンにしか興味ないとかいうふざけた噂も減ったりするかもな。それに片道鐘半分だし、今日は特に依頼受けずにダラダラ過ごすつもりだったからそれもアリだな。
「それじゃあ、行くか」
「ハイっす!」
元気よく返事するカルガーは道中でも滅茶苦茶ご機嫌だった。別に俺と出掛けて楽しいとかではなく、マジでタロウ達に会えるのが嬉しいみたいだ。
「おや?今日はどうしましたか?」
「カルガーがタロウ達の顔みたいんだってよ。少し遊ばせてもらっていいか?」
ゴドリックの家に着いて呼び鈴を鳴らすとシーワンが出てきたが、その顔は酷いものだった。
「いやあ、今先生と学会に発表用の論文を書いてまして、徹夜続きなんですよ。タロウ達も餌は与えているんですけど構ってあげる時間が無かったので、逆に助かります」
「だったら今度から自分が暇な時遊びに来てもいいっすか?」
「え、ええ。構いませんが、私達あんまり対応できないかもしれませんよ?」
「全然いいっす!タロウ達と遊べたら満足っす!」
カルガーって本当に犬好きなんだなあ。そう言えば、こっちじゃあんまり動物好きな奴っていないから珍しいな。
「ああ、そうそう。タロウ達と遊ぶ前に一度2階から見て下さい。面白いものが見れますよ」
そう言われていつもの2階の部屋から庭を見るとこの間まであった塀が撤去されていた。そしてそこには一際大きなワイルドウルフが一匹とその周囲で寛いでいる普通の大きさの2匹。そして周囲を走り回っている一匹、そしてその背には・・・。
「・・・ライダーっすね」
「・・・だなあ」
その背にまたがっているゴブリンが一匹。外で見たらゴブリンライダーと呼ばれる魔物が目の前にいた。
「おいおい、シーワン。あのゴブリン俺が捕まえた奴だろ?ゴブリンライダーになっているじゃねえか。って事はジロウ達より強いのか?」
俺の質問にシーワンが首を振る。
「普通乗っている方が強いって考えますよね?でも逆なんですよ。立場的にはジロウ達が上で当然『ゴブ一』より強いですよ」
『ゴブ一』ってまーた名前つけたのか。
「あのゴブリンも懐いたっすか?」
「いえ、懐いてません。いまだに襲い掛かってこようとしますけど、タロウ達が守ってくれるんですよ。・・・・説明するよりも見た方が早いでしょう」
って事で庭に行くと、タロウ達が尻尾を振って駆け寄ってくる。ついでにゴブ一もギャアギャア言いながら近づいてくるが、明らかにこっちを敵視している。ただ、シーワンが言った通り、ある程度の距離に来た所でタロウ達がゴブ一を威嚇するかのように唸りだしたので、動きを止めた。
「言った通りタロウ達が守ってくれるでしょう。これ以上近づくとタロウ達から攻撃を受ける事を学習したので、ゴブ一は寄ってきませんよ」
おいおい、そりゃあすげえな。魔物が守ってくれるなんて聞いた事ねえぞ。これもすげえ発見とやらになるんじゃねえか。
「おおー。タロウ達は偉いっすねえー。ほら、わしゃ、わしゃ、わしゃ、わしゃ」
カルガーはタロウ達を構うのに夢中で、この凄い出来事に気付いているのかいないのか。
「それでは申し訳ないですが、仕事が残っているので私はここで失礼させて頂きます」
そう言ってシーワンは俺達を置いてどこかに行ってしまった。言っていた通りかなり忙しいみたいだ。帰りも勝手に帰って下さいって言われてるし。
そこからはタロウ達を構って俺達は遊びまくった。その間ずっとゴブ一は庭の隅に座って俺達をただ眺めているだけだった。そこに妙な不気味さはあったが、後日ゴドリックに聞いたら、これが通常だそうだ。紛らわしいな。
「ハハハ、めっちゃ楽しいっす!みんな元気ありすぎっす!」
「ゼハー、ゼハー!ほ、ほんとにな。・・・・げ、元気良すぎだぜ」
結構な時間構ったから俺は体力の限界なんだけど、カルガーやタロウ達はまだまだ元気いっぱいで走り回っている。俺も組合員だから普通の人より体力多いはずなのにカルガーはそれ以上ってどうなってんだ?・・・・そう言えばくそ重い鎧装備しているから体力は馬鹿みたいにあるのか。
「いやあ、タロウ達もまだまだ元気一杯だなあ。流石にこの庭でも手狭になった感があるな」
「そうっすねえ。特にタロウは全く疲れてないんで外を走り回りたいと思うっすよ」
だよなあ。ジロウ達は少しは疲れたのか息を乱しているけど、タロウ全く息を乱してないもんな。
「外連れていってやりてえな」
「・・・・・さ、流石にそれはマズいっすよ」
ゴドリックの許可なく外に連れて行くのはマズいよなあ。そもそもタロウ達を村の人が見たら大騒ぎになるから、諦めるしかないか。
「ああ、別に構いませんよ。村の中ならいつも散歩に連れていってますし、みんな知っていますよ」
カルガーと話した結果、聞くだけ聞いてみようとなり、忙しいゴドリックを見つけて聞いて見ると、驚くほど簡単にOKしてくれた。
「ああ、でもゴブ一は駄目ですよ」
去り際ゴドリックに注意されたけど、俺でも今のゴブ一を外に出すのはマズいって分かる。って事でゴブ一以外を村に連れ出す事にしたんだけど・・・
「おや、今日はゴドリックさんやシーワンさんじゃないんだねえ。新しいご主人様かい?」、「わああ!ジロウ達だ!またお背中乗せてええ」、「おお!タロウ、また大きくなったんじゃないかい?」
村に連れ出した4匹は村人から熱烈な歓迎を受けていた。誰もタロウ達を恐れていない。
聞けばしょっちゅうゴドリックとシーワンが散歩に連れ出しているらしい。しかも背中に小さい子供を乗せて遊んでくれるので、子供たちから大人気だそうだ。見れば今もジロウ達の背中に小さい子供が乗って大喜びしている。
「思った以上に受け入れられてんな」
「そうっすね。多分北村がコーバスに近すぎて誰も訪れないってのもいいのかもしれないっす」
言われてみればそうか、立地的にコーバスまですぐだから知らない奴が村に来る事はほとんどない。しかもコーバスの近くだから村もしっかりした塀で囲まれて外から見えない。そして全員顔見知りだからタロウ達を怖がる奴も、タロウ達が威嚇する奴もいない。まさかそこまで考えてゴドリック達はここで暮らす事に決めたのか。
ただ、村じゃあ人や物が多くてタロウ達が思いっきり走り回るにもの厳しい気がする。もう少し広い所で走り回らせてやりてえけど・・・
「流石にまだ村の外に散歩はマズいよなあ」
「流石にそれはマズいっす。ゴドリックさんの許可貰わないと駄目っす」
「ああ、もうそろそろ外の散歩の依頼をしようと思っていたんで丁度良かったです。でもしっかり見張っておいてください。逃がしたりしないで下さいよ。」
ダメ元でゴドリックに聞きに行ったら普通にOKしてくれた!
「任せろ!何があっても俺がしっかり最後まで責任みてやるよ」
・・・・・って言ったんだけどなあ。
「おーい。カルガー!タロウ!ジロウ!サブロウ!シロウ!」
何故か森の中で一人取り残された俺。
・・・
いや、理由は分かっている。カルガーのせいだ。あいつ外に出たら俺を置いて、タロウとそのまま走り出していきやがった。そして喜んで後を追いかけたジロウ達。一人置いてけぼりの俺。
カルガーの奴普段は大人しい癖に、タロウ達の事になると意外にアグレッシブに行動するな。しかも凄え足が早えし、・・・マジで一人放置された俺はどうしたらいいんだ?
その後しばらく森の中を探し歩いたけど、見つからなかったので俺は村に戻り、カルガーを待つ事にした。
結局、カルガーが戻ってきたのは、日が暮れようかという時間だった。そして流石に長時間森を走り回ったタロウ達も息を切らして疲れた様子だった。
「ベイルさん、申し訳ないっす。ちょっとはしゃぎ過ぎたっす」
「・・・・・ちょっと?」
鐘4つは余裕で遊んでたけど、カルガーにとっては「ちょっと」らしい。でもタロウ達も楽しんだみたいだし、文句はない。
「そう言えば何か問題なかったか?」
「別に何も無かったっす。みんなちゃんとついてきてたし、森の浅い所でしか遊んでなかったっすから」
そうか、そりゃあ、良かった。タロウ達も大満足だっただろう。
で終われば良かったんだけどな。
「おい!北村を中心にかなりの広範囲だ!探索方向はある程度組合から指示する!勝手に出発するなよ!」
「3級でどなたか調査依頼受けて頂ける人はいませんか?」
「2級は2パーティで組んで街道の見回りになります!相手は恐らく未知の『ネームド』です。強さは分からないので見つけたらすぐに撤退してください」
「1級以下は外に出るなよ。調査が終わるまで待機だ」
組合に戻ると、中では組合のスタッフと組合員が大騒ぎしていた。大声で叫ぶ組合長、走り回るスタッフ、緊張した顔つきの組合員。
「なんかあったんすかね?」
組合の様子を見て呑気に答えるカルガーだが、俺はこの光景は2度程見た事がある。コーバス周辺に見慣れない魔物が出た時の騒ぎにそっくりだ。
1度目は俺がまだ無級だった時、『二刀』って呼ばれている賞金首のオーガが出た時だ。こいつは王都周辺で目撃情報があったのに、いきなり遠く離れたコーバスに現れたってんで、大騒ぎになった。そん時は組合長が出て討伐したけど、俺は無級だったから討伐隊に参加させてもらえるはずも無く、気付いたら終わってたって印象だ。
2度目ははぐれの飛竜が出た時だ。この時は騎士団まで街の防衛に狩りだされた結構な大騒ぎだった。結局たまたま森にいた組合員が何人か犠牲になったぐらいで、街を襲ってくる事もなく、その飛竜はどっか行ったけどな。
あれから3年以上は経っているから、その当時いなかったカルガーが分からなくても無理は無い。
「おおい!カルガー!こっちだ!」
組合に入るとすぐにカルガーはクワロから声がかかった。見れば『守り抜く』の連中が集まっている。集まっているって言ってもゲレロもいねえし、他に何人かはまだいないみたいだ。
「何があったか俺も聞いていいか?」
「ああ、どうせベイルにも話がいくんだ。聞いてもらった方が早いだろう」
呼ばれてないけど、俺もカルガーの後をついていってクワロに聞くと、特に断られなかったので、一緒に話を聞かせてもらう。
「どうもワイルドウルフの群れが森の浅い所に出たみたいだ」
「ワイルドウルフっすか?森の浅い所に出るのは珍しいっすけど、でも全くでないって事も無くないっすか?」
「俺の説明が悪かったな。ワイルドウルフの群れでもそれを率いていたリーダーがヤバい奴だったらしい。そのリーダーはかなりデカくてな普通のワイルドウルフの3倍は大きかったそうだ」
「3倍ってデカすぎだろ!何喰ったらそんなにデカくなるんだよ!見間違いじゃねえのか?」
3倍って言ったら今のタロウの倍じゃねえか!そんなでけえワイルドウルフ見た事も聞いた事もねえぞ。そりゃあ、組合が大騒ぎになるはずだ。
「いや、目撃者が複数いるんだ。大きさについては人によって少し異なるが、群れの構成は同じだから同じ群れだと組合長は判断している。俺も同じ意見だ」
「へえー。群れの構成数えられるって事はそこまで数はいないんっすね。そんな大きいのが率いている群れなら数えられないぐらいいてもおかしくないっすけどね」
「ああ、構成はワイルドウルフがたった3匹で、あとはリーダー入れて4匹だけだ。カルガーの言う通り普通の群れだとしても少ないな。だからこそ不気味でもある」
「そうっすねえ。リーダーの言う通りちょっと不気味っすね・・・・・・うん?」
「どうした?カルガー?・・・何か顔色悪くないか?」
見ると、さっきまでの元気な様子から一変、カルガーは汗をダラダラ流して、真っ青な顔をしている。
「ち、ち、ち、ちなみになんっすけど。そ、その群れ、ほ、他に変わった事はなかったっすか?」
「ああ、これは目撃者によってバラバラなんだが、どうも、もう一匹『何か』がその群れにはいるって話だ。人によっては群れのリーダーの上に跨ってたからライダーだっていう奴もいれば、そんなのはいなかったって奴も、一緒に走っていたって言う奴もいて意見が一致しない。ただ、その群れから不気味な笑い声が聞こえるってのは全員共通しているから『何か』がいるんだろう・・・って、本当に大丈夫か?カルガー、体調悪いならホームで休んでていいぞ」
カルガー、どんどん顔色悪くなってるな。風邪でも引いたか?
「だ、大丈夫っす・・・べ、ベイルさん。ちょ、ちょっと」
全く大丈夫には見えない顔色のカルガーから何故か俺は腕を引かれて隅につれていかれる。
「ど、ど、どうしましょう。騒ぎの原因絶対自分っす!みんなタロウ達の事探してるっす」
「はあ?何言ってんだ?話聞いてたか?でかさが普通のワイルドウルフの3倍だぞ。タロウじゃまだ2倍もないだろ?」
「見間違いに決まっているじゃないっすか!群れも構成もピッタリですし、得体のしれない不気味な笑い声って多分自分のっす。楽しくてずっと笑ってたんで」
ええ?タロウ達と遊んでる間、カルガーずっと笑ってたの?そっちの方が怖えんだけど。
「どうしましょう・・・・」
俺がドン引きしていると、不安そうにカルガーが聞いてくる。ただなあ・・・。
「うーん。もしそれが本当で、噂の主がカルガーだったとしよう。で?俺にどうしろっていうんだい?」
「・・・・・・え?」
「俺は今日置いてけぼりにされて、一人北村でダラダラ過ごしていただけなんだよなあ。」
そうなんだよ、この件俺全然悪くないんだよ。悪いのはカルガーだからなあ。・・・ヤバい、顔がニヤケてきちまう。
「・・・ま、まさか、ベイルさん・・・自分の事見捨てるんっすか?」
おっと、顔に出ちまったか。カルガーが信じられないって顔で俺を見てくる。でもなあ、今回悪いのはカルガーなんだぜ。俺は全く怒られる要素がないんだ。
「・・・た、頼みます。お願いします。こんな時ベイルさんならいっつも何とかしてるじゃないっすか!自分をどうか助けて下さい」
・・・・いや、いつも何ともなってねえんだよ。毎回組合長に怒られてんだけど、カルガー知っているはずだよな?
「まあ、可愛い後輩の為だ、参考になるか分からねえが、俺はこういう時は黙っておくな。だって、その噂の主がカルガーだって証拠はどこにもねえんだもん。バレた時は『ああ、それ自分のことだったんっすね』とか言っておけばいいんじゃねえか」
「・・・・・組合のこの騒ぎ見てもよくそんな事言えるっすね」
「バーカ。あいつらが勝手に大騒ぎしているだけだろ。やらせておけばいいんだよ。そんで調査依頼が回って来たら適当に調査して報酬貰ってこの話は終わりだ」
「・・・・・ベイルさんが組合長にしょっちゅう怒られる理由が良く分かったっす」
おいおい、何、呆れ顔してんだ?俺の事より自分の事だろ。
「組合長の説教は長えし、怒ると怖いぜえ。黙ってやり過ごした方が賢いと俺は思うぜ」
「・・・・っ!!・・・で、でも、じ、自分は・・・正直に」
迷ってる。迷ってる。まあ、カルガーが正直に言っても言わなくても俺には関係ないからな。カルガーと組合のこの騒ぎを肴にして酒でも楽しもうかね。
「おう?何だこの騒ぎ?」
「何か賭けでもやってんのか?」
組合の騒ぎと葛藤しているカルガーを肴にエールを飲んでいるとゲレロとトレオンが組合に入ってきた。今日は二人で馬にでも行ってんだろう。入ってきた二人にすぐに近くの組合員が騒ぎの理由を説明している。
「・・・・ああ?変なワイルドウルフの群れ?・・・4匹・・・・・それってカルガーじゃねえのか?」
・・・・・・・
ゲレロの言葉に、大騒ぎだった組合が一瞬で静まりかえる。
「・・・おう?な、何だ?俺何かヘンな事言ったか?」
全員からの視線を浴びて珍しく戸惑っているゲレロ。
「げ、ゲレロ、今の話は本当か?」
「組合長、俺の勝手な予想だから、本人に聞いてみねえと本当かどうか分かんねえよ。・・・ってそこにいるじゃねえか。どうなんだ?カルガー」
ゲレロと組合長のやりとりで今度は全員の視線がカルガーに集中する。
「・・・・げ、ゲレロさん・・・・ハハハ」
視線を浴びたカルガーは汗をダラダラ流しながら今にも泣きそうな顔だ。
「はあー。お前ら解散していいぞ!そしてカルガー!お前はちょっとこっちに来い!」
何かを察した組合長がカルガーを呼び出す。これはお説教コースですね。カルガー頑張れ!
「ベイルもだ!」
「はあ?何でだよ!俺関係ないだろ!」
今回俺は何もしてねえのに怒られるなんて納得がいかねえ!
「お前今日カルガーと一緒にいただろ。話を聞かせろ」
ああ、事情聴取って奴か。それならいいかって話をしに行ったんだけど、結局カルガーとまとめて説教くらった。酒を飲んで騒ぎを楽しんでいたのをバッチシ組合長に見られていたからだ。事情が分かってたならさっさと報告しろだってさ。




