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27.ゴブリン捕獲依頼①

「フフフ、今回凄く良いデータが取れました。ゲレロさんありがとうございます」


 しばらくタロウと遊んでいたら、検証が終わったらしくゴドリック達は凄く良い笑顔で迎えてくれた。


「いや、逆にあんなんで報酬もらっていいのか?」

「いいんですよ。ただ、最後にもう一度だけ検証にお付き合い下さい。出来ればカルガーさんも参加してもらいたいんですが、いいですか?」

「自分っすか?」


 聞けば最後は3匹同時でも有効かどうか検証したいとの事。本当なら2匹で検証する予定だったが、たまたまカルガーも来てくれた事なので3匹でやってみようって話になったみたいだ。

 当然、カルガーは二つ返事で了承し、俺以外の4人で庭に向かっていった。そして検証の結果、4日前までの肉なら、投げると3匹ともゴドリック達じゃなくて肉を優先する事が分かった。マジでジロウ達どんだけ食い意地張ってんだ?


 そんな呆れる俺にゴドリックは次の依頼を持ち掛けてきた。


「次の依頼は『ゴブリンの捕獲』。お願いできますか?」

「・・・・ゴブリンか・・・」

「・・・やはり厳しいですか?」


 俺が即答せず悩んだ素振りを見せていると、ゴドリックが不安そうに聞いてきた。


「その前にゴブリンを懐かせる方法とかって何かあるのか?」

「・・・いえ、色々調べてみましたが、ゴブリンを懐かせたという話や記録は見つかりませんでした」


 だよなあ。って事は懐かないって事も考えないといけないか。そうなると檻に入れて運ぶ・・・ってのは現実的じゃねえなあ。四肢拘束して大八車で運ぶ方がいいか。


「そうなるとゴブリンは結構無事じゃ済まねえと思うんだが、それは流石に駄目なんだろう?」


 タロウ達は飛び掛かりに頭に盾ぶつけて脳震盪させたから拘束は簡単だったけど、

ゴブリンは頭から突っ込んでこねえからな。頭殴って気絶・・・は俺が殴ると頭が弾け飛ぶからなあ。力加減調整するのに苦労しそうだ。


「そこを何とか出来ないでしょうか?」

「うーん。まあ、試しに明日行ってみるか。拘束具は今回もいくつか借りていくぜ・・・って何でこんな付属品がついてんだ?」


 そう、ゴドリックの家にある拘束具は以前より増えていたが、何故か獣耳や尻尾がついた、そういった店でしか使わないようのもが多数混じっている。


「ああ、それは、この前、拘束具を商人に頼んだら勘違いして風俗用のを持ってきたんですよ。まあ、拘束するって道具本来の用途は何も変わらないので、そのまま買取ましたけど」


 いや、普通に買うなよ。


 取り敢えず戻る前にジロウ達はゴドリック達に懐かせておいた。何故かカルガ―も一緒だったけど、ゴドリック達が何も言わなかったからいいんだろう。そんでゴドリックの家にある拘束具を適当に袋に入れて俺達は街に戻った。




・・・この時



・・・何で俺はしっかり選ばなかったんだろう。



・・・ああなると知ってさえいれば俺は適当に選ばなかった。



・・・・・・・





で、翌日森にきた俺はゴブリンの死体の前で悩んでいた。


「うーん。思っていた以上に手加減が難しいな。無理やり拘束した方が早いかもしれんな」


 森の中を彷徨いながら、出会うゴブリンの頭を注意して殴っているんだけど、どうにも力加減が難しく必ず頭が弾けてしまう。そこで作戦を変更して無理やり拘束具を嵌めていく事にした。身体強化を使うと力加減間違えて殺してしまいそうなので、素の状態で捕まえる事にする。引っかかれたり、噛み付かれたりするだろうけど、そこは我慢しよう。ケガ治療のポーション代は経費として払ってもらえる事になっているしな。


 方針を変えて歩き出すと、すぐに2匹のゴブリンが襲ってきた。取り敢えず最初に襲ってきた一匹の攻撃を躱して顎を殴ると、首が曲がっちゃいけない方に曲がってゴブリンは沈黙した。


 よええ。身体強化使ってない素の状態でも気をつけねえと間違ってゴブリン殺しちまうな。


 そして残った一匹だが、まずは手に持つ木の棒を攻撃の隙を見つけて奪い取る。そこからは取っ組み合いになりながら、拘束具を無理やり嵌めていく。


「いて!クソ!引っ掛かれた!・・・いたあああ!噛みついてくるな!」

「ギャ!ギャああ!ギャ!ギャ!」

「おい、これマジで難度高えぞ。くそがああ!大人しくしろ!」


 流石にゴブリンが雑魚だと言っても向こうは必死で暴れ回るし、こっちは加減しないといけないしで動きを止めるのがかなり難しい。


・・・・


 しばらく悪戦苦闘して、ようやくゴブリンの四肢と口を拘束する事が出来た。こっちはケガはそこまでないけど、服や下着が引き裂かれたり破れたりでボロボロだ。この辺も経費として認めてもらえないかゴドリックに交渉しねえとな。


 さて、このボロボロにされた服はどうしようか。ここまで破れたらゴブリンの腰布ぐらいにしか利用価値がねえよな。


・・・


 取り敢えずトランクス型の下着もビリビリに破れて、俺のベイル君が『こんにちは』しそうなので、破れた服を腰に巻いて、万が一の事故を防いでおく。見た目が腰布以外は裸だけど、こういう見た目の奴もたまにいるから大丈夫だろ。


 自分の身なりを整えた所で、改めてゴブリンを見ると、無我夢中だったせいか使った拘束具が全て風俗用のもので、色々付属パーツがジャラジャラして大八車に積むのに邪魔になっている。



 それを見た俺は・・・・。


・・・何で


・・・何で


 そこでシンプルな拘束具に付け替えるって考えなかったんだ!



 何でしっかり装着させようなんて思っちまったんだろうなあ。






「ああ?これどうなってんだ?・・・・ああ!これがここで・・・って事はこいつがここか・・・うわ!これ正しく装着したらこの尻尾が丁度ケツにくるようになってんのか・・・すげえ、よく考えらて作られてんな」


 次は頭か・・・良く分かんねえから、ゴブリンがうるせえけど一度外すか。


 頭の方も付属が多すぎて、こっちはどう装着していくのか想像もつかなかったので、一度外して装着方法の当たりをつける。


「・・・これが、猿轡だろ・・・・で、こうなって・・・これ目隠しになるのか・・・はええ。すげえな。犬耳ついているけど、これいるのか?」


 装着中もギャアギャアうるさいゴブリンを無視して、ようやく全てのパーツを使ったゴブリンが完成した。


・・・・頭に犬耳ついて、目は黒い布で覆われ、口は猿轡、更に後ろ手で両手を拘束され、左手は右足首、右手は左足首に鎖がつながっている。そしてその鎖は膝を曲げないと届かないぐらい短かった。これなら立ち上がる事は出来ないだろう。更にその鎖のクロス部分に尻尾がついて、丁度尻の所に来るようになっていた。


 そして完成したのが摩訶不思議な格好で四つん這いになったゴブリンだ!




・・・・・




「自分でやっといて何だけど、こいつは凄えな。中身は普通のゴブリンだけど、何かヤバい雰囲気が醸し出されている」


 完成した拘束ゴブリンを眺め一人感想を言っていると、自分の腕から血が流れている事に気付いた。


・・・・あ、こんな所ケガしてやがる。結構な血が流れているのに気付いてなかったわ。一応塗るタイプのポーションでも塗っておくか。


 そう考えて荷物からポーションを取り出し、手に垂らした所で、声が聞こえてきた。


「この辺からゴブの声が聞こえ・・・・え?」


 森の中から姿を現したのは、『全てに打ち勝つ』のザリアだった。組合員なら森の中にいるゴブリン如きに驚く事はないが、流石に超進化型拘束ゴブリンは見た事ないらしく、見つけると、動きが止まった。そうしてしばらく固まっていたザリアだったが、ようやく目を動かし俺に気付く。


・・・まあ、俺もほら、上半身裸、腰に布巻いている姿だ。更に塗る用のちょっとドロリとしたポーションを手につけて、目の前には四つん這いのゴブリンが俺に尻を向けている。当然さっきの捕獲の勢いで本来のゴブの腰布はどこかにいき、ケツは丸出しだ。これはもう盛大な勘違いしても仕方がないな。更にタイミングよく俺が巻いている腰布がハラリと落ちて、ボロボロのトランクスからベイル君が『こんにちは』迄しちまったんだ。


・・・・・


「へ、へ、変態だあああああ!!!!」


 なんか懐かしい光景を思い出させるザリアの叫びが森に響き、ザリアはあっという間にどこかに行ってしまった。


「ザリア!どこに行くんだ!」

「なんかヤバいものでもいたのかもしれないぜ」

「それなら警戒よ。クイト先にいかない!」

「そんな危険な魔物いるとは思いませんけど・・・」


「「「「・・・・・・・」」」」


 ザリアが逃げていった方向から次々と『全てに打ち勝つ』の連中が目の前の光景に絶句する。


「・・・中々の強敵・・・『ネームド』か『賞金首』って所ですか?ベイルさん?」


 拘束ゴブリンと俺を見たアーリットは真面目な顔で聞いてくる。・・・相変わらずそっち方面に考えはいかないみたいだ。・・・いや、お前ザリアとエフィルの3人で楽しんでんのにまだ疎いのか?いや、まあそっち方面に考えがいかれても困るんだけどな・・・あれ?・・・え?もしかして俺のベイル君の方に冗談でそう言ってんのか。どっちの意味で聞いてんの?



「・・・ベイルさん、流石にその趣味は頂けねえぜ!もうちょっと森の奥でやってくれ」


 おっ!クイト君すっかり元気になったみたいだ。そしてまあ、君はあんまり変わらないね。


「いやあああ!馬鹿!ベイルの変態!何てことしてんのよ!」


 エルメトラ神は俺に背を向けているので見えないが、多分顔を真っ赤にしながら文句言っている。良かった、この様子ならまだクイトのクイト君にクイッとされていないみたいだ。・・・まあ、付き合いだしたって聞いたから時間の問題だろうけど・・・。


「うわああああ。わあああああ」

 

 そして新メンバーのエフィル。こいつ純真無垢で穢れなんて知りません。って顔している癖にて顔を隠している両手の隙間からがっつり見ている。まあ、スラムならそこかしこで場所を気にせず盛っている奴がいたからな。こういうのに耐性はあるんだろう。


・・・いや、流石にこの状況でスラム云々は関係ないか。ただのムッツリってだけだな。


「取り敢えず何も問題ないみたいだ。ザリアを追いかけよう」


 アーリットはそう言うとザリアの後を追っていってしまった。・・・自分で言うのもあれだけど、これ、俺がそっちの立場ならかなり問題な場面だと思うぞ?アーリットは馬鹿なのか大物なのかよく分かんねえな。


 そんなマイペースなアーリットの後をすぐにみんな追いかけていってしまった。


・・・・・


 まあ、流石にこの光景は誰に話しても信じて貰えないだろうから口止めは依頼を終わらせてからでもいいか。それに前回のレッサーウルフで俺は学んだのさ!下手に騒がずどっしり構えておいた方がいいって事をな!って事でそのままゴドリックにゴブリンの納品に向かった。




「ふふふ、流石ベイルさんです。頼んだ次の日にもう達成してくれるとは・・・ああ、私達は結果だけ求めてますので大冒険の話は結構です」


 摩訶不思議な格好したゴブリンの見た目には全く興味がない様子のゴドリックとシーワン。どうしてこなったのかも聞く気もないみたいだ。ある意味凄いなこいつら。俺なら気になって根掘り葉掘り話聞くけどな。 


 本当に興味ないみたいで、依頼書に達成のサイン書いたら二人でゴブリン担いで、どこか行きやがった。

 ・・・俺もここまで大八車にゴブリン乗せてきたから、村でかなり好奇の目に晒されたし、自分でもやべえ絵面になっているのは分かってた。でも摩訶不思議なゴブリンを二人で担いで運ぶ姿はそれ以上にやべえ絵面だ。「今から悪魔召喚するんだ」とか言われても絶対信じてしまう。


 でも、まあ、俺はゴブリン捕獲するって依頼を達成しただけだから、後はあのゴブリンをどうしようがゴドリック達の勝手だ。俺が口出す事じゃねえ。用意して貰った替えの服に着替えて、俺はゴドリックの家を後にした。

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