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15.相棒を求めて①

 それから数日、流石にまだゴドリックからの依頼はないみたいだ。


 って事で俺はいつものように森に入ってフリーの討伐をしている。襲い掛かってくるレッサーウルフやゴブリンを殴り殺し、森を彷徨う事半日、ようやく『強翼鳥』を見つけた。


 強翼鳥・・・通称「鳥」。見た目鶏だけどダチョウぐらいの大きさで翼がかなり強靭な鳥の魔物だ。180度回転しながらの翼攻撃と嘴による突っつきがメインの攻撃方法でまともに食らえば命の危険がある。


・・・まあ、こいつも牙タウロスと同じで足を折れば勝ちが確定するんだけどな。


「ケーーー!!」


 俺を見つけた瞬間、鳥が大声で鳴いて俺に向かって走ってくる。距離が詰まると、嘴の突っつき攻撃が来たのでそれを後ろに下がって回避する。盾持ちなら今のを盾で受けて反撃すれば終わりだ。ただ、俺は普段盾は使わねえから、今日は持って来てねえんだな。


 そういう時はこいつの攻撃を躱して距離をとる。すると・・・・・・。


「ケーーー!」


来た!飛び掛かり攻撃!


 5mぐらいジャンプしてそこから脚で踏みつけてくるこの攻撃、まともに受ければ趾に捕まれ、その後の突っつきでやられる。組合員の負けパターンだ。


 ただ俺は違う。鳥の足に向かって思いっきりこん棒をブチ当てる!脚の砕ける感触がこん棒ごしに伝わる。


「おらあ!一丁あがりだ!」


 両脚を破壊された鳥が地面で藻掻いているので、後は頭か首にこん棒ぶち込めば終わりだ。こうやって脚さえどうにかする方法を確立していれば、3級にとって美味しい獲物だ。


 ゲレロの所は盾持ちばっかりだから一番美味しい獲物って言ってたな。トレオンの所は4人で囲って後ろの奴が足を斬りつけていくってやり方らしい。


 ちなみにこの鳥、弓使いとすこぶる相性が悪い。脚も首も頭も細いから狙いにくいし、かといって体狙うと何発も撃ち込まないと殺せないから肉がズタズタになって買い取り額が大きく下がるそうだ。前にミーカが愚痴っていたのを聞いた。


 鳥を倒した後は首を落として、逆さに吊るして血抜きする必要がある。そこで登場するのがこの間拾ったこの大鉈。既に鍛冶屋で研いでもらっているから往年の切れ味を取り戻している。で、こいつを転がっている鳥の首に振り下ろす。


「おお!一撃かよ!すげえ!今までギコギコ首切ってたのが馬鹿らしくなるな」


 思っていた以上の切れ味に思わずにっこりだ。


 この大鉈とこん棒で二刀流ってのも、かっけえかもしれねえ。


 思い立ったが吉日!鳥を逆さに吊るして血抜きが終わるまでの暇な時間で軽く二刀流を試してみる。


 ガン!・・・・・・うーん。


 バシ!・・・・・・うーん。


 結論。刃の向きを意識するのが面倒だ!その辺の木を相手に振り回していると大鉈の背や腹で木を叩いてしまう。やっぱり何も考えず振り回しているだけで倒せるこん棒が俺には合っているな。この大鉈は移動の時の枝払いや血抜き用として使おう。




 鳥の血抜きも終わって帰ろうとした所で、男の死体が転がっている事に気付いた。


 あーあ、嫌なもん見つけちゃった。この傷・・・鳥にやられてるな。死んでからそう時間は経ってないみたいだから、俺が殺した鳥にやられたんだろう。


 状況を確認しながら俺は死体の遺品を漁って回収していく。追剥ぎみたいだけど、アンデッド化した時の為に、装備は全て剥いでいくってのが組合で推奨されている。推奨であって強制ではないが、組合員の鑑の俺は当然のように遺品を回収する。


 ちなみに回収した遺品はそいつのものになる。中には金目のものだけ回収していく奴もいるが、まあ、それはそれだ。それでも組合から罰せられる事はない。


 遺品に員証もギルドカードも住人証もなし。犯罪者か野盗って所か。


 まともな奴なら組合員の証である員証や商人ギルド発行のギルドカード、街や村の住人なら住人証を持っているはずだが、それを持っていないって事はそれらを取り上げられたか捨てた奴って事だ。員証やギルドカードを取り上げられたからといって、犯罪者って訳じゃないが、その時はすぐに住人証を発行するのが普通だ。じゃないと街への不法侵入で牢屋にぶちこまれて犯罪者になるからな。


 それにこんな森の真っただ中なのに大した装備も持ってない。今俺がいるのは3級以上が狩場にしている森の奥だ。なのにこの死体の装備は長剣とポーチのみで防具すら装備しちゃいねえ。だから可能性が高いのは街から逃げてきた犯罪者か、獲物か食い物探していた野盗だろう。


 一応組合には報告しておくが、身元を特定できるものがない以上、それで終わりだ。野盗だっていう確実な証拠があれば組合も動くが、今はまだその証拠が無いからな。


 死体はそのまま放置して土に還す。アンデッドになるかならないかは運次第。一応聖属性の浄化の魔法で防げるらしいが、そんな魔法使える奴が少ないし、当然俺も使えないから放置していく。首を落とせば防げるとか聞くが、首の無いアンデッドは普通にいるので、その話はデマだと思っている。



「承知しました。情報ありがとうございます」


 組合に戻ってリリーに報告したけど結局事務的な対応で終わっちまった。どうも野盗の情報は入ってきてないらしい。って事は俺が見つけたのは逃げた犯罪者だった可能性が高い。


 まあ、無理もねえか。野盗絶対殺すマンの『柔軟に行こう』がこの街にいるもんな。そのおかげでコーバス周辺に野盗はほとんど現れなくなったし、出ても『柔軟に行こう』が速攻で狩ってくるからな。


 報告も済ませてエール片手にぶらついていると、トレオンが手を振って呼んでいるのに気付いた。あいつようやく隣町のコムコムから戻って来たのか。


「よお、トレオン。護衛依頼すっぽかしたんだって?」

「チッ!もう知ってんのかよ。さっきまで組合長にこってり絞られてたんだ。あー、面倒くせえ」

「お前が悪いんじゃねえか。依頼中にギャンブルするなよ。で?どうだった?」

「しょっぱいながらも勝ちだ。そうは言っても宿代とかでトータルでマイナスになったんだけどな」


 結局真面目に依頼こなしていた方が稼げたんじゃねえか!やっぱりトレオンは馬鹿だなあ。


「そう言えばコムコムの組合に立ち寄るのはしばらくやめておいた方がいいぞ。あそこ雰囲気かなり悪くなっているからな」

「うん?何でだ?」


 あそこの組合はこっちとそんなに変わんない雰囲気で比較的のんびりしていたはずだ。


「キングが出やがった」


 その一言で全てを理解した。


 キング・・・・別に王様とか魔物とかではない、組合で調子に乗っている奴の蔑称みたいなもんだ。大抵は組合で一番の実力者パーティが組合員を次々自分の傘下に入れ金を巻き上げて、傘下に入らない奴は排除。簡単に言えばその街の組合員をキングが牛耳るって話だ。傘下に入らない奴と余所者に対して非常に居心地の悪い街になるってのが特徴だ。


 組合としては依頼をしっかりこなせば、口はだせないので非常に面倒な存在だ。


 ここコーバスだとティッチ達『柔軟に行こう』が街一番の実力者パーティだが、連中は真面目だし、そんな事しようなんて一ミリも考えちゃいないだろう。仮にもしそういう動きがあれば有能組合長がどうにかするだろうしな。


「全く、ああいうのって定期的に湧くよな?まあ、隣町の話だし近寄らなきゃいいだけか」

「多少こっちに流れてくる奴らもいるだろうが、まあ、ベイルの言う通り近寄らないのが正解だな」


 そう、キングってのは定期的に色んな街で発生するけど、そんな独裁体制は長続きしないってのは有名だ。それでも定期的に湧くのは何なんだろうな。まあ、近づかなければ害はないので、放置しておけばそのうち消えるだろう。

 


「そう言えば俺と入れ替わりでゲレロとモレリアが組合長に呼ばれてたんだけど、あいつらまた何かやったのか?」

「知らねえ。お前ら3人いつも組合長に迷惑かけるのやめろよ。あの人忙しいんだぞ!」


 この間助けてもらったから、ちょっとここで組合長の心象を良くしておこう。ちょっと大きめの声でトレオンに文句言うと、近くを歩いていた受付嬢がびっくりした顔して俺を見たのは何でだ?


「一番迷惑かけてるお前が言うな!今のデカい声で言ったのもわざとらしすぎるんだよ!」


 あれ?バレバレだったか?もうちょっと演技力身につけねえと駄目だな。


 そんなくだらない事を話しているとゲレロとモレリアがぼやきながらこっちにやってきた。


「ああ、くそ、何で怒られるんだよ」

「いやあ、怒られた。怒られた。組合長は心が狭いなあ」


 俺とトレオンの席に座りエールを頼んだ所で、詳しい話を聞いてみる。


「今、ちょうどトレオンとお前らの話してたんだけど、お前ら今度は何したんだ?」

「俺は何もしてねえよ。モレリアは怒られても仕方ねえと思うけどな」

「何言ってるんだい?ゲレロの方がよっぽど性質が悪いじゃないか」


 話を聞くと、モレリアは貴族の依頼を受けた時にそこの娘から「組合員は普段何をして遊んでいるのか」と聞かれたらしい。適当にジェリーとでも言っておけばいいのにモレリアは普段の自分の遊びを教えたそうだ。


 そう、娼館に行っているって事をだ。


 その娘さんは娼館は男が行くものだと思っていたけど、女も楽しめる娼館があると知って興味深々。聞けば馬鹿正直に答えるモレリア。たった一日でその娘の性知識は増大しドスケベ貴族娘が爆誕した。それを知った親が組合にクレーム入れてモレリアが説教食らったって訳だ。


「別にあの娘も16だよ?婚約者も決まっているみたいだし、そんなに怒る事でもないと思うんだけどなあ」


 そりゃあ普通の性知識ならそうだろう。ただお前が教えたのは娼館の特殊プレイの事だろう?普段聞かされている俺らでも「それはちょっと・・・」って引くプレイも多いのにそんなの教えたらそりゃあ怒られるわ。



 そしてゲレロ、てめえはもっと駄目だ!こいつは依頼先の貴族の息子をあろう事か娼館に連れていったそうだ。しかもその息子まだ14歳。こっちじゃ15で成人だからまだ未成年だ。


「連れていけって命令されたら平民は逆らえねえだろ?なーに四捨五入すれば15歳だ。問題ねえよ!」


 普通、四捨五入すればその子は10歳になるんだけど・・・ゲレロの頭では超理論で15歳になっているらしい。そしてプロデビューを果たしてしまったその子の親は当然烈火の如く怒って組合にクレーム入れてきたって訳だ。


 普通ならゲレロは牢屋にぶち込まれてもおかしくないんだが、当の本人がまた娼館に行きたいらしく、各方面に手を回しゲレロを守っているらしい。未成年の癖に親の手を悉く潰しているなんて、かなり知恵が回る将来有望な悪徳貴族の卵だ。

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