14.レッサーウルフ捕獲依頼おかわり④
「ベイル。済みませんでした。今回の件、完全に私達が悪かったです。許して下さい」
組合長から解放された所を待ち構えていた『ちょっと賢い』の連中に捕まり全員から頭を下げられた。全員ふてくされた感じじゃなくて本当に申し訳ないって顔をしている。こんなに組合員のいる前でこいつらが俺に頭を下げている・・・それだけでもこいつらにとって十分な罰だ。ただなあ、一応こっちも『いつものやつ』ってもんがあるんだよ。
「謝ってすむと思ってんのか?ありゃあ、言ってみれば依頼の横取りだぜ。4級のお前ならそれがどういう事か分かるよな!シリトラ!」
あっ!ごめん。そんな泣きそうな顔しないで。見た目子供のお前にそんな顔されると流石の俺も心が痛む。でも、一応これが『いつものやつ』だからな。お前らが頭を下げた理由をここでみんなに聞こえるように言っておかないと後で誤解が生まれる事もあるし、一発で許したら俺が他の奴に舐められるからな。
ただ、こいつらベテラン4級の癖にお利口さんパーティだからこういう『いつものやつ』って分かってねえんだ。その点俺は組合長に呆れられるぐらいこの手の経験は豊富だからな。慣れたもんよ!
「く!・・・はい、何も言い訳はありません。すみませんでした。完全にこちらが悪いです。私達に出来る事なら何でも聞きますのでそれで許して下さい」
ここで俺が『チッ、まあそんだけ悪いと思ってんならもういい!水に流してやる』でこの茶番も終わったはずだった。
・・・・
だけど・・・・
目に入っちまったんだ・・・
何故か防具を脱いでラフな格好になっている『ちょっと賢い』のメンバー。ちなみにこいつらは全員女だ。そいつらがそんな格好で頭を下げてたらどうなると思う。
見えちまうんだ。・・・・谷間が・・・・特にモレリアのはヤバかった。思わず口にでちゃったもん。
「揉んでみてえなあ」
「はあ?な、何を?」
ヤバいと思ったけど時すでに遅し。思わず零れた言葉をシリトラはバッチリ聞いていたみたいだ。慌てるように一歩下がり手で胸を隠す。いや、シリトラ、お前は揉めるほどないから。
「うーん。これかい?本当は僕の胸は美少年専用なんだけど・・・まあ今回は僕たちが悪いし、仕方ないね」
モレリアにも俺の言葉が聞こえていたようで、躊躇いなく胸を突き出してくる。
で、でけえ。いや、分かっていたけどこうやって改めてみるとマジででけえ。・・・・うん?美少年専用?仕方ない?こいつ遠回しに俺の事不細工だと言ってねえ?確かに目つきは悪いって言われるけど、トレオンやゲレロ程じゃねえだろ。
「ダメダメ!モレリアは駄目です!今回の件、悪いのは私とミーカにあります。揉むなら私達にして下さい」
慌てて俺とモレリアの間に割って入ってくるシリトラ。だから君は揉めるほどないんだよなあ。ミーカはまあ、あるけど小ぶりだな。弓射る時邪魔だもんね。そう言えばいつの間にか胸を揉む流れになっているけど、俺そんな事要求していないぞ。どうすんだよ、これ。
俺の前には今にも泣きそうな顔をして胸を張っているミーカとシリトラ。森で会った時と違いミーカはさっきから何も口にしない。組合長にこってり絞られたからか、ただ黙って従っているだけだ。明らかに嫌そうな顔して目をギュッと瞑っているから、よっぽど触られたくないんだろう。そして、その目からついに涙が零れた。
「おいおい、ベイルの奴何してんだ?」、「知らねえがシリトラ達が詫び入れてたぜ」、「胸揉ませろって言ってたぞ」、「おいおい、見た目ガキのシリトラでも容赦ねえな、ベイルの奴」、「ミーカの奴泣いてるぜ」、「流石に泣かせるのはやり過ぎだろ」「それでもやめねえってベイルの奴鬼畜すぎねえか」、「鬼畜だ。『鬼畜のベイル』だ」
「おいいいいいい!なんか俺が一方的に悪者になってんぞ!お前ら良く聞け!俺はこいつらに胸揉ませろなんて要求してねえ!こいつらが勝手に勘違いしてるだけなんだ!」
「ベイルさん!『ちょっと賢い』が謝ったらそれで全部水に流すって組合長と約束したのに何やってるんですか!」
さっきまで黙々と仕事をしていたリリーが騒ぎに気付いたのか事情を把握してないのに参戦してきた。ここで参戦されると更に誤解が生まれるんだけど・・・。
「組合長の約束を破ってまで胸を揉もうなんてあいつどんだけ胸好きなんだ?」、「しかもモレリアじゃなくてシリトラとミーカだぜ」、「モレリアとつるんでいるのに手を出そうとしねえ理由が分かった」、「あいつマジやべえ、貧乳好きかよ」、「貧乳好きのベイルだ!」
おいおい、俺への誤解が加速してやがる。やべえぞ、こうなった馬鹿どもは止められねえ。好き勝手言われて俺のイメージが更に悪くなっちまう。
「てめえら!うるせえぞ!少し静かにしろ!」
組合員たちが俺にボロクソ言って騒いでいたら組合長が怒りながら姿を見せた。ここまでみんなに勘違いされて、更にリリーまでとなるともう後は組合長しか俺を助けてくれない!
「組合長!助けて!みんなが僕をいじめるんだ!」
「おい!馬鹿!何やってんだベイル!抱き着いてくんな!気持ち悪い!」
「僕は大きいのが好きなんだ!夢が一杯詰まっている方が好みなんだ!成長に期待して待つよりも目の前の大きいのにすぐに飛びつきたいんだ!」
「何訳分かんねえ事言ってんだ!」
その言葉と共に頭にゲンコツが降ってきて、俺は気を失った。そして気付いた時にはすべての誤解が解けていた。流石組合長。未来からきたオーガ型ロボットも裸足で逃げ出す有能っぷり。・・・・・いや、マジで一回組合長に菓子折りでも持っていこうかと本気で考えるレベルだな。




