111.オーク検証依頼②
「さーて、ゲレロ。まずはどっちからにする?」
依頼を受けてコーバスに戻った俺達は、手伝い二人とブツを手に入れる必要がある。
「まずは組合で手伝いを探して、そいつに例のブツ集め手伝ってもらった方が良くねえか?」
「おう、そんじゃあゲレロの言う通り、まずは組合だな」
って事で組合に向かう。組合に行くと、いつも通り昼間から飲んでるダメ組合員が一杯だ。そんな組合員が多い中、仕事をしっかりしている俺は組合員の鑑だな。
「取り合えず誰にする?適当に石でも投げて当たった奴にするか?」
「ベイル、お前決め方適当過ぎるだろ。ここは信用出来る奴にまずは話をするってのが定番だろ?」
「おお!そうだな!で?信用できる奴ってどこにいるんだよ?」
「・・・・・・・」
俺のツッコミにゲレロが押し黙る信用なんてコーバスじゃ誰も出来ねえ。大事なのは金だ。金はコーバスじゃ何よりも優先されるし、儲けがあると分かれば組合員は裏切らねえ。
「・・・・金の亡者トレオン君にまずは話をしてみるか」
ゲレロも分かったみたいで、こう提案してくれたから、暇そうに誰かのジェリー勝負眺めているトレオンを捕まえるか。
「お?おお?な、何?何だ?おい?誰だ?」
暇そうなトレオンの首根っこを掴んでグイグイ引っ張って周りに人がいない席にまで連れてくる。トレオンが騒いでいるが、俺もゲレロも気にしねえ。
「ああ?何だ?ベイルとゲレロか?何の用だ?俺は忙しいんだ・・・・ムグ!!」
「黙れ!トレオン!極秘の依頼だ!受けるか受けないか今決めろ!」
騒がしいトレオンの口を塞いで、受けるかどうか確認する。
「ブハッ!いきなり何だよ!喧嘩売ってんのか?」
すぐに口を押さえつけた俺の手を乱暴に振り払い、トレオンが怒り出す。
「ゲレロ、トレオンはナシだな。こいつ判断が遅え」
「だな、せっかくの儲け話、不意にしたのはトレオンだからな。後から文句言ってくるなよ」
「おおーい。ちょっと待て。ベイルもゲレロも何言ってんの?いきなり過ぎて訳分かんねえよ」
「ったくトレオンは理解力がねえな」
「今の説明で何で分かんねえんだよ」
「分かる訳ねえだろ!理解力以前の問題じゃねえか!」
頭が残念なトレオンが可愛そうだから、もうちょっと詳しく説明してやるか。
「ゴドリックからの極秘依頼だ。受けるか受けないか選べ」
・・・・・・
「・・・・・・え?説明それだけ?」
これで十分だろ。これ以上トレオンは何が聞きてえんだ?
「ベイル。やっぱりトレオンじゃ駄目だ。この様子じゃ俺達の足を引っ張る。別の奴にしようぜ」
「ふざけんなよ、ゲレロ!お前らが俺の足を引っ張るの間違いだろ!いいだろう!よく分かんねえけど、ゴドリックの依頼なら報酬はいいだろうから受けてやるよ!」
よし、これで一人確保。あと一人は誰にしようかなあ。
「もう一人は・・・モレリアは・・・流石に無えな」
「何でだよ?モレリア暇そうじゃん。それにさっきからお前の方ガン見して仲間に入れてもらいたそうにしているぞ」
「トレオンお前は何も分かってねえんだから口を出すな」
「お前らが何一つ説明しねえからだろ!」
説明したじゃん。トレオンが理解力無いだけだろ。自分の無能を棚にあげて怒るなよ。
「怒るな。取り合えず今回の依頼は女はダメって依頼主から言われてるんだ」
「はあ?級や強さは分かるけど、性別でダメって初めて聞いたぞ。っていうかゲレロ、ちゃんと説明してくれよ」
「先にもう一人見つけた後でな。どうするベイル?」
どうすっかなあ。口の堅さは組合員なら問題ないんだけど、オークってなると3級だよなあ。お!暇人発見!
「おい!ヒビット!こっち来い!」
「ああ?・・・いや、いいわ」
俺達の顔見たらすげえ変な顔してどっか行きやがった。失礼な野郎だな。
「ショータン、お前、暇か?」
今度はゲレロがショータンを捕まえた。
「はい、暇ですよ。ジェリー勝負ですか?」
「いや、違う。ちょっとゴドリックからの依頼受けねえか」
「おお!噂のゴドリックさんの依頼ですか。いいですよ。受けますよ」
流石ショータンだ。話が早い。それに比べてトレオン君はダメダメだなあ。
「よし。ショータンお前は思った通り見どころがある。しっかり稼がせてやるよ」
「お前には期待しているぞ」
「ハハハ、ありがとうございます」
「・・・俺は?なあ、ベイル、ゲレロ。俺は?」
トレオンには何も期待してねえよ。
■
「受けなきゃよかった・・・・」
「なんて依頼だ。最悪じゃねえか・・・いや、でも稼ぎは良さそうだ。けど、キツイぞこれ」
追加依頼も強制的に受けさせて説明を聞いた二人は、顔を曇らせた。
「そんな顔すんなって。多分頼めば簡単に手に入るって」
「そう言うならベイルが手に入れて来いよ」
「おい、トレオン。その場合は20万は俺のものになるけどいいのか?」
「別に構わねえ」
「僕もいいですよ。むしろ頑張って手に入れてください」
トレオンもショータンも何なんだ?張り合いがねえなあ。組合員なら稼げる時は貪欲に稼がねえと駄目だぜ。
「そう言う訳にもいかねえだろ。俺も20万欲しいんだ。ここは公平に順番で行こうぜ。20万は最初に入手した奴のものってルールで勝負しようじゃねえか」
ゴドリックから話を聞いた時は乗り気じゃない様子だったけど、ゲレロは20万が惜しくなってやる気になったみたいだな。そっちの方が俺も張り合いがあっていい。
「勝負か。まあいいぜ。そっちの方が俺もやる気がでてくるしな」
「・・・・・勝負か・・・なら逃げるわけにはいかねえな」
ギャンブラートレオンは勝負となるとすぐに乗ってきた。ショータンはまだ納得してねえみたいだけど、強制参加だ。
「それじゃあ、最初は俺だな。お前らの出番は無くて残念だな」
くじ引きで順番を決めた結果、一番手は俺になった。
「その言葉は手に入れてから言え」
「いいからさっさと行け」
「別に手に入れても全然いいですからね」
ショータンだけはあんまりこの勝負乗り気じゃねえな。20万欲しくねえのかなあ?
というわけで、『蜂蟻撤退』の何人かと話をしているモレリアの所に向かう。
「モレリア、ちょっといいか?」
「な、な、何だい?」
何でこいつキョドってんだ?それよりも周りの連中が邪魔だな。依頼内容は極秘だから場所移動するか。
「ちょっと話があるんだけど、二人きりになれねえか?」
「ふああああああ!は、は、はお。はい。いいよ!もちろんだよ!みんなごめんね!」
慌ててがたがた音を立てて立ち上がるモレリア。周りの連中に断りを入れてから俺の後ろをついてくる。
・・・・こいつテンションおかしくねえ?・・・そんでミルシーって奴に凄い睨まれていたんだけど、俺何かしたっけ?
「この辺でいいか。姉ちゃんエール二つ」
周りに誰もいない壁際の机に腰掛けてエールを二つ頼む。報酬が20万だから、エールぐらいは俺の奢りだ。
「そ、そ、それで話って何だい?」
まだエールも届いてねえのに、モレリアは早速話を始める。せっかちな奴だ。でもまあこっちとしても話をしやすい。
「ちょっとモレリアに頼みがあってな」
「な、な、何だい?僕にできる事なら何でも言ってよ」
「お!マジで?そう言ってもらえると助かるぜ」
流石、モレリア話が早くて助かる。それならと俺は小瓶をポケットから取り出して机に置く。
「んん?何これ空瓶?これに何か詰めるの?もしかして僕の髪とか爪とか?詰めたらお守りにでもしてくれるのかな?」
いや、そんなもん瓶に詰めて持ち歩いている奴がいたら、怖えよ。
ニッコニコでそんな事言っているモレリアにちょっと恐怖を感じるけど、さっさと話をしよう。
「いや、違えよ。詰めてもらうのは合っているけど、髪とか爪とかじゃねえ。詰めて欲しいのは、お前のションベンだ。金は払う」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・
あれ?モレリアが笑顔のまま動かなくなった。また壊れたのか?修理ってどうやってするんだ?
「・・・・・うーんと。ちょっと待って、頭を整理させて」
勝手に直ったモレリアは頭に手を当てて珍しく困った顔をしている。
そんなに考える事か?
「・・・・・・うん。飲み込んだ・・・・飲み込めた。ベイルがそういう趣味だとしても僕は大丈夫。受け入れるよ」
何か勘違いしてねえか?
「お前変な勘違いしてねえか?俺がそういう変態趣味な訳ねえだろ。そいつは仕事で使うんだ」
「・・・・・・・・仕事?」
「そうだ。ゴドリックからの極秘依頼だから、誰にも言うなよ。そいつはオークに使うんだ」
「・・・・・・・・・」
あれ?何で何も言わなくなった?何で無言で立ち上がって去って行った?もしかしてダメなのか?モレリアなら娼館でこれ以上の事してたって聞いたから、大丈夫だと思ったんだけど・・・って考えていたら、背中に物凄い衝撃が来て、気付いたら壁に叩きつけられていた!
「痛ってえなあ!誰だよ!」
慌てて振り返ると、長い髪を逆立てているモレリアの姿。その顔・・・というか全身でモレリアは怒りを表現していた。
「・・・え?も、モレリア?何か怒ってる?」
「怒ってないよ。僕はおっとりした性格だから、怒る事は無いんだ」
そう言いながら一歩一歩ゆっくりと踏みしめてモレリアが近づいてくる。
「嘘つけ!めっちゃ怒ってるじゃねえか!」
「ベイルは目が悪いみたいだね。今度医者に行こうか。ついでに頭も治してもらおう」
「目も頭も良すぎて困っている・・・グハッ!!」
近づいてきたモレリアは何の脈絡もなく、俺の腹に蹴りを入れてきやがった。動揺していた俺は反応が遅れて、モロに蹴りをくらって、腹を抱えて蹲る。
「あ、あ、あの頼まれていたエール・・・」
「ああ、ありがとう。二つとも僕がもらうよ」
腹が痛くて蹲る俺の頭の上でモレリアと給仕の姉ちゃんの会話が聞こえてくる。そして直後にぐびぐび飲む音。
「プハー!」
エールを飲み切ったモレリアの声と共に俺の頭にガツンと衝撃が走る。・・・痛え。
チラリと床を見ればジョッキが転がっている。モレリアの奴、空になったジョッキ俺の頭に投げつけやがった。何て行儀の悪い女だ。
そして再び、ぐびぐび飲む音が聞こえてくる。
「プハー!ベイル!お代わりだよ!!」
その言葉と同時にまた頭に衝撃がくる。こいつまたジョッキ投げつけやがった。しかも俺のエールまで飲み干した。信じられねえ。
「・・・フン!!」
最後に俺に机を叩きつけて満足したのか鼻を鳴らしてモレリアは去っていった。
ションベン如きでここまで怒るのかよ。ちょっと俺の認識が甘かったな。
「モレリア、めっちゃ怒ってたな」
「ベイルの奴胸でも触ったか?」
「あいつは迂闊な奴だけど、そこまで馬鹿じゃ・・・馬鹿だけど、触ればどうなるか知ってるだろ」
「見てたけど、別に胸は触ってなかったな。何かモレリアの逆鱗に触れたんじゃねえの?」
俺とモレリアの様子を見ていた奴の話が聞こえてくる中、腹を抑えてみんなの所に戻る。
「失敗した」
「見てたっての」
「あそこまで怒るのかよ」
「こ、怖いです」
こいつら誰も心配してくれねえ。血が凍ってんじゃねえの?普通心配してくれるだろ。
「よーし、次は俺だな」
そう言ってゲレロが張り切って立ち上がる。
「そもそもベイルはあんな所にモレリアを呼び出して、大事な話みたいな雰囲気出したのがいけなかったんだ。こういうのはもっと気楽に行けばいいんだよ」
・・・・・色々言い返してやりたいが、実際失敗しているから黙るしかねえ。
「ガハハハッ。いいか、よく見てろよ。悪いが20万は俺がもらうぜ」
そう言ってシリトラと楽しそうに話をしているイーパの所に、自信満々でに向かっていくゲレロ。
「おおーい。イーパ!頼みがある。この瓶にお前のおしっこ詰めてくれねえか?タダでくれとは言わねえ。5000でどうだ?」
そうして、いつもの馬鹿でかい声でイーパにお願いする。
その声は組合中に響き渡った。




