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110/112

110.オーク検証依頼①

「ああ?ゴドリックからの依頼?」


 いつものようにフリー依頼を受けようとしたらリリーに呼び止められた。


「その前に早く3級にあげろよ!俺まだ2級だぞ!」

「すみません、色々忙しくて・・・この依頼達成すれば必ず3級に上がりますから、どうかお願いします」


 聞けばミミズやハンコでコーバス組合は色々大忙しらしい。・・・・それってどっちも俺関係してるな。


「・・・・まあ、リリーの頼みだし、ゴドリックの依頼だから報酬は期待できる。依頼の内容は?」

「・・・こちらが依頼書です。信じてもらえないかもしれませんが、本当に組合で受けた依頼です」


 申し訳なさそうに俺に依頼書を差し出すリリー。こういう時はあんまり良い依頼じゃねえんだよなあ。とか思いながら依頼書に目を通す。


 そうして内容を読んだ俺は目を丸くする。


「・・・・・・・おいおい、これって組合は依頼として受けていいのかよ?」

「すみません。通常であれば駄目です。ですがゴドリックさんの依頼は本部からの指示で特別なんです」

「本部??」


 本部って王都の組合の事だろ。何でそんな所から特別な指示がきてんだ?いや、そもそもこの依頼、『ベイルへの依頼。内容及び報酬はゴドリックが直接交渉。同行者はゲレロのみ。その他の同行は認めない』だぜ。こんなん依頼じゃねえよ。内容と報酬を明確にするのが組合の役目だってのに・・・。組合の取り分とか後で面倒になるんじゃねえの?


「ベイルさんは知らないかもしれませんが、ゴドリックさんはコーバスに来てから『魔物進化の証明』、『レッサーウルフ進化論』、『ゴブリンの対策について~ゴブリンホイホイ~』と立て続けに国を騒がす論文を発表した今や時の人ですよ!そりゃあ、本部からも指示が来ますよ!」


 リリーが興奮しているような、疲れているような何とも言えないテンションになっている。


 ・・・・ああ。悪い。リリー。その3つの論文全部俺絡んでるわ。っていうかゴドリックの依頼は論文関係だからな。そうなると、今回も論文か。



 ・・・・あ!そう言えば少し前にオークの変な依頼受けたぞ。ってことは今回オークに関連する依頼か?・・・もしかしてゴブ一の時みたいに、この間捕まえたオークで色々実験して、今回はその検証って事か?


 それだと、前回の依頼受けてた事だし、どうなったか少し気になるな。・・・仕方ねえ。話だけでも聞いてみるか。経験上報酬は悪くねえしな。



「ようこそ、お越し下さいました。お二人で来てくれたって事は依頼受けて頂けるって事ですか?」

「「・・・・・・・」」


 娼館にいたゲレロを無理やり引っ張ってゴドリックの家を尋ねたら、ゴドリックはいつも以上に満面の笑みで俺達を迎えてくれた。タロウが里帰りしてきた時に尋ねたけど、ゴドリック達と顔を合わせてなかったから、顔が変わっているなんて知らなかったぜ。


 俺もゲレロもゴドリックの顔を見て、何も言えないでいると、勝手に話を進め始める。


「・・・・では!お二人とも受けて頂けるという事で!」

「え?いや、ちょっと待って!このまま話進める?」

「お、おう?え?これ気にしちゃダメな奴なのか?」


 慌てて止める俺とゲレロ。だってゴドリックの顔パンパンに腫れてるんだもん。激闘後のボクサーかよ!ってぐらい顔が腫れている。両目とも瞼が腫れあがって前が見えてねえんじゃねえの?と思うぐらいだ。しかもゴドリックだけじゃねえ、男二人の弟子も顔がパンパンに腫れているんだよ。・・・で多分その元凶リーゴは以前よりも目が荒んでいるんだけど・・・お前ら一体何したの?


「うんしょ。うんっしょ。お茶になります」


 凄い異様な空気の中、小さい男のガキがよたよたしながらお茶を俺達の前に並べていく。


 この子は北村の子供で、ゴドリックの所で掃除や洗濯、来客対応を任せられている。シーワンが王都に行って更に忙しくなったから、雇ったそうだ。

 最近俺が遊びに来ると、この子が対応してくれるからゴドリック達の顔は見てなかったんだ。


「よお、レンソ。お茶の淹れ方上達したか?」

「ベイルさん。お久しぶりです。そんなにすぐには上達しませんよ」


・・・このガキ・・・レンソって名前で夢は商人になりたいそうだ。それで今はゴドリックの所で礼儀作法の勉強中だ。チラッっと聞いたけどゴドリックやシーワン、弟子達は結構いい家の出だそうで、働く代わりに礼儀作法を教えてくれるらしい。


・・・このゴドリックたちの惨状見て、礼儀作法出来るって言われても信じられねえけどな。


「ベイルさん。こちらの方は?」

「ああ、こいつはゲレロってんだ。名前ぐらい聞いた事あるだろ?」

「おお!あなたがカルガーさんのお師匠さんなんですね。レンソと言います。宜しくお願い致します」

「お、おう。ゲレロってんだ。宜しくな」


 普通に挨拶されただけなのに何故かゲレロが戸惑っている。


 ・・・後で聞いたら、ゲレロはその見た目から子供に懐かれる事はなく。レンソみたいに普通に話しかけてくるガキは初めてだったらしい。レンソはレンソで初対面でも普通に接する練習で普通の対応してたけど内心ビビり散らかしていたらしい。


「それでは挨拶も終わったみたいなので依頼の本題に入りましょうか」

「「・・・・・・」」


 おーけー。分かった。その腫れあがった顔はスルーって事だな。シーワンいなくても付き合い長いから理解したぜ。


「今回の依頼はオークに対しての仮説の検証と私達の護衛になります」


・・・・まあ、そうだろうとは思っていた。ゲレロにもその可能性は伝えてあったし、驚きはない。


「報酬は?」

「5万でどうでしょう」

「・・・少ねえな」


 2級組合員なら一日で終われば報酬に関しては十分だが、内容と釣り合っていない。それにゴブリンの時より報酬悪くなってるぞ。


「・・・ゴドリック。オークは3級相当だからその報酬じゃ誰も受けねえぞ」


 ゲレロの言う通り、状況にもよるが、オークの緊急依頼の時は一日で10万は稼げるらしいからな。それに3級は普通一日8万ぐらいの稼ぎを目安にしているから5万じゃ少ない。


「私の仮説が正しければ戦いというより、一方的な大量殺戮になると思います。危険はありません」

「・・・・・」


 普通ならそんな言葉信じられねえけど、ゴドリックの言う事はゴブリンで実績あるんだよなあ。


「更に討伐したオークの素材はそちらに全て譲ります」


 これは討伐依頼なら普通だ。みんな討伐した魔物の素材の金も見越して依頼受けているからな。逆にそれがねえともっと報酬は高くしないと誰も受けないだろう・・・だから普通ならこの報酬はクソ依頼だ。

 ・・・・けど、ゴドリックは『大量殺戮』って言ってるんだよなあ。この間のゴブリンと同じように巣を壊滅させたら・・・ゴブリンは一匹1000ジェリーぐらいだけど、オークは一匹5万ぐらいだから素材だけでもゲレロと二人、十分美味しいぞ、この依頼。


「この検証に失敗したら即時撤退して下さい。それでも報酬はお支払いします」


 ・・・・おいおい、まーた凄い事言ってるぞ。


「・・・それって検証初めてすぐに失敗だって分かれば、それで依頼達成って事か?」

「そうですね。私の仮説が間違っていたという十分満足な結果が得られますし、それ以上検証しても意味ないですから。当然また新しい仮説を考えて後日依頼を出すとは思います」


 ・・・・・行って帰ってくるだけでも5万・・・おいしい。更に検証が成功だったらゲレロと二人で大量のオークを分ける事になるから結構な稼ぎになるな。


「おい、ゲレロ!当然受けるよな!」


 俺はもう受ける気満々だぜ。


「・・・一つ聞きたい。護衛はゴドリックだけか?」

「いえ、この仮説に穴が無いか確認する為、全員で行きます。ああ、レンソは置いていきますよ」


・・・それでも4人・・・俺とゲレロじゃ厳しいな。


「どう思う?」

「あと二人は欲しいな」


 うーん。仕方ねえか。


「追加で二人増やしてもいいか?護衛の手が足りねえ」

「構いませんよ。ああ、当然この依頼の内容を話さない人でお願いします」

「そこは十分分かっているさ」

「それでは、依頼を受けて頂けるって事でいいですか?」


 改めてゴドリックが俺とゲレロに確認する。二人追加したら素材の分け前が減るが、失敗よりはマシだ。多分それでも十分美味しいから俺は当然受けるぜ。


「俺も当然受ける」


 ゲレロも当然だな。後は組合で暇そうにしている奴を捕まえて明日出発だな。



 何て考えていると、ゴドリックから驚きの話があった。


「それでは依頼を受けて頂いたので、追加の依頼についてお話させて下さい」

「「・・・・追加の依頼?」」


 え?何その依頼、聞いた事ねえ。ゲレロも戸惑っているから4級にもそういう依頼は無いみたいだ。


「ええ、この依頼を受けて頂いた方にお願いする依頼です」

「おいおい、聞いた事ねえぞ?」

「それよりも組合通さなくて大丈夫かよ」


 そうだ!組合通さねえと俺らまで怒られるじゃねえか!下手すれば俺1級に降格させられるぞ。


「それは大丈夫です。この追加依頼は組合にも話を通してあります」

「通してんのかよ!」

「っていうかこんな不意打ちみたいな依頼が通るもんなの?」

「うーん。組合長悩んでいたみたいですけど、通りましたね」


 ・・・・組合長何考えてんだ?・・・そう言えばリリーが本部から通達来ているとか言ってたな。だからこんなおかしな依頼でも通ったのか?

 

「その追加依頼って受けないって事も出来るのか?」

「当然できますよ。ただ、この検証の情報を少しでも抑えておきたいので、こういう風にしたんです。もしお二方が受けてもらえないなら、情報が洩れる恐れはありますけど、組合に正式な依頼として出そうと思います」


・・・・・・


「おい、どうするゲレロ」

「うーん。ゴドリックの情報漏らしたくねえって言い分は納得できる。ただ、もう少し話を聞きたい」


 そうだな、すぐに飛びついたら地獄を見るのは経験で分かっているからな、いくら信頼あるゴドリックと言っても情報は大事だ。


「その追加の依頼の内容は?」

「とあるモノの入手です」

「チッ!!」


 ・・・・・・


 えっと、リーゴが明らかデカい舌打ちしたんだけど・・・・。


 ゲレロと二人顔を見合わせる。


 おいおい、またパンツか?パンツでリーゴが怒っているのか?多分、この間捕まえたオークの検証で、リーゴのパンツかなり使われて、ついにリーゴがぶちギレて使えなくなったって所か。パンツなんてどうやって手に入れればいいか分からねえけど、トラスに聞けば余裕だろ。


「入手難度は恐らく5級・・・いえ、もしかしたら6級相当かもしれません。報酬は20万ジェリー」

「「はあああああ???」」


 ちょっと待て、おかしい。色々とおかしいぞ。パンツだろ?何でそんなに入手難度高いの?しかも報酬もパンツにしてはくそ高い。けど難度にしては安すぎる。何かゴドリックの頭バグってねえ?


「何でそんな報酬が高い?依頼より報酬良いってどういう事だ?」

「それは入手難度の高さからです」

「それってそう簡単に手に入らねえって事だろ?そんな簡単に見つかるのか?」


 ゲレロがゴドリックに質問している横で聞いていると、どうもパンツじゃなさそうだ。そうなると、何だ?入手難度高いって竜の素材とかじゃねえよな。


「見つけるのは簡単です。コーバスでも絶対あります。なんならこの村でも見つかります」


ドゴォ!!!!


ゴドリックが答えた瞬間、彼の座る椅子が大きな音をたてて激しく揺れた。



・・・・・・

 


 リーゴちゃん、バネの乗った中々良い蹴りだ。ここ最近で格闘スキルかなり上がった?


 静まり返る室内。ゴドリックと男弟子は何で目を下に向ける?


「・・・と、ここまでが追加依頼で教える事が出来る情報です」


 すぐに何事も無く普通に会話続けるゴドリック・・・凄いな。ただ、やっぱりリーゴの反応からしてパンツだな。違うかもと思ったが俺は分かった。それならトラスに言えば楽勝だ。


「俺はその追加依頼受けるぜ」

「おい!大丈夫か?」


 即答する俺にゲレロが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫だ。ゲレロ、前の依頼を思い出せ。そうすれば自ずと答えは見えてくる」

「・・・・・・・!!おお!分かった!それなら楽勝だ!俺も依頼受けるぜ!」


 よーし。ゲレロも分かってくれて依頼を受けるようだ。



「ハハハ、受けてもらって良かったです。ではこちらの書類にサインをお願いします」


 そう言って手渡された依頼書。『何』とは書いてないが、この依頼を受けた時点で任務失敗は認めない必ず入手する事。と中々厳しい事が書かれている。報酬は20万。入手出来ないモノでは無いと組合長のハンコまで押してある。


 普通ならこんな依頼受けねえが、ゴドリックの依頼だし、目的のブツは予想出来ているから、俺もゲレロも躊躇いなくサインをする。


「はい、ありがとうございます。それでは目的のモノについて話をさせてもらいます」


 俺らがサインすると何故かウキウキで話を始めるゴドリック。そしてゴドリックから話を聞いた俺達は・・・・。



「・・・・おっとお?ちょっと話が違いませんか?ベイルさん?」

「馬鹿野郎!ゲレロ!パンツとそんな変わんねえよ!」


 ゲレロは入手のブツが予想と違ってちょっとおよび腰だ。けどそんなに変わらねえと俺は思ってるぜ。


「いや、ちょっとお前軽く考えすぎじゃねえか?ゴドリックが難易度6級とか言うのも理解できるぞ」


 それなのにゲレロの馬鹿はビビっている。いつも馬鹿笑いで大抵の事に動じない鋼の心臓はどうした?


「お前は深刻に考え過ぎだ。多分そこまで難しくねえよ。なんならリーゴに頼めばすぐに「ああ??」・・・・・イエ、スミマセン。ナンデモアリマセン」


 こ、怖ええええ。リーゴめっちゃ怖い。特にあの目!あれは理不尽な命令で死ねって言われて従いたくなくても家族人質にされてヤケになって突撃していった連中と同じ目だ。何であんなもんでそんな目になるんだ?ゲレロの言った通り俺が軽く考えすぎ?そう言えばパンツの時以上にゴドリック達ボコボコにされているから、パンツよりは恥ずかしいのか・・・少し認識を改めておくか。


 けど、言うてリーゴもオークに何度も使われたから嫌になっただけだろ。多分少し金積めばみんな喜んでくれると思うぜ。










 なんて、その時の僕はそう考えていました。

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