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103.『快楽亭』立て直し依頼②

 翌日、俺はゲレロと『快楽亭』に向かい報酬の交渉をする事にした。


 ペコー?


 あいつは何か緊急の依頼とかで、血の涙を流しながら仲間に引き摺られていった。


 それでゲレロと『快楽亭』の主人だという皺くちゃの妖怪みたいなババアと交渉を始めた。そのババアの隣には顔馴染の受付も座っている。


「あんたらの意見聞いて売り上げが伸びて、また他2店と争えるまでになれば、別に構わないよ」

「よっしゃあ!ババア!その時は今の言葉忘れたとか言わせねえぞ!ぽっくり死んだとかボケて忘れたとかってのも無しだからな!」

「ぽっくり死ぬのはどうしようもなく無いかい?」

「うるせえ!気合でどうにかしろ!」


 俺の言葉に受付は青ざめて、ゲレロは頭を抱えているが、ババアは楽しそうに笑っている。


「ヒーヒッヒッヒ、ゲレロ、中々面白い奴を連れて来たね。この私にこんな口を聞くのは他二つの妖怪ババアぐらいだ。若いのに私の圧にもビビらないなんて肝が据わっているじゃないか」

「・・・ああ、婆さん・・・こいつはちょっと変わってんだ。逆にこれで怒らねえ婆さんに俺は驚いてるぜ」


 ・・・・?何このババア?結構ヤバいババアなの?


 受付の兄ちゃんに目を向けると、目で何かを凄い訴えかけてきてる。何が言いたいか分かんねえ。


「おいおい、ゲレロと和んでねえでさっさと書面に残せ!そっちの受付の兄ちゃんも連名にしろよ」

「・・・おい・・・ベイル。あんまり舐めた口聞くな。この婆さんコーバスじゃ結構な顔役なんだぞ」

「そんなん知らねえよ。このババアがコーバスの顔だろうが、体だろうが、どうでもいいんだよ。大事なのはちゃんと報酬支払ってくれるかだ!」

「ケケケ。確かに言う通りだ、この坊主の言っている事は正しいよ。ヒーヒッヒッヒ、私を信用せずに担保求めてくる奴なんてどれぐらいぶりだろうねえ」

 

 にこやかに笑っていたババアだったが次の瞬間には鬼婆に変わった。


「言っておくが、くだらねえガキの遊びに付き合っている暇はねえんだ。くだらねえ提案だったら、お前スラムの奥でネズミの餌になるからな!」


 ふーん。流石顔役。ババアの癖して中々の圧じゃねえか。ゲレロ如きならビビるかもしれねえが、クロの近寄るなオーラに比べたら鼻くそみたいなもんだ。


「ハハハ、もう俺は既にひとつ良い案を思いついてんだよ。くだらねえかどうかは分からねえが、多分これをやれば『とあるもの』の概念が変わるぞ。まあ、受け入れられるかどうか分からねえけどな」


 ・・・・・


「・・・その顔・・・ハッタリじゃなさそうだね。話を聞こうじゃないか」

「今日は報酬の話をしに来ただけだから言う訳ねえだろ。俺としてはもう一つか二つ手を考えてから報告するつもりだ」


 ニヤリと笑う俺の顔をババアがジっと見つめる。本当かどうか確かめているんだろうけど、気持ち悪いからあんまり見ないでくれよ。そんなに疑わなくても大丈夫だ、俺には前世の知識だけはある。・・・倫理観?いらねえから捨てた。っていうか持ってたら俺多分死んでた。


 まあ、そういう訳でエロい知識はこの国でもトップクラスの情報量を持っていると思うから自信はある。


「・・・・・チッ!どうやら本当に無駄に自信はありそうだね。ダメ元で依頼してみようじゃないか。ヘックス、紙を用意しな」


 そうしてヘックスって名前の受付の兄ちゃんが紙を用意してババアとヘックスの名前入りで依頼書を書いてくれた。依頼の達成は、1年前と同じ売り上げに戻るか、依頼主が満足するかだ。


 満足するってのは主観で微妙だけど、1年前と同じ売り上げに戻すってのは明確で分かりやすい。こっちなら組合が調べてくれるから、報酬ゲット出来るぜ。


「へへへ、毎度あり。明日から受けるけどよ。まずは店の偵察したいからヘックスを貸してくれ」

「何故だい?ヘックスも何度も偵察で店を訪れている。今更分かる事も無いだろ」

「違えよ!俺もゲレロや他の連中から聞いたけど他2店と違いが分からねえ。だから店の中じゃなくて外から偵察したいんだよ!それで何か分かるかもしれねえ」


 何も分かんねえかもしれねえけど、まずは外から確認だ。そこから中の確認にしても遅くはねえ。


「・・・まあ、いいだろう。ヘックス、今日と明日はゲレロ達と行動を共にしな」


 ってなわけで、俺達は『健やかな宿』の従業員入口が見える場所まで移動して、入口の観察を始める。

 しばらく見ていると、ゴツイ男と不釣り合いな程きれいな長い金髪の姉ちゃんが二人で歩いて来た。


「お!来たぞ。あれがペコーのお気に入りのクッキーちゃんだ」


 へえー。あれが・・・確かにペコーが熱入れるの分かるぐらいきれいな姉ちゃんだ。胸がでけえしスタイル抜群だ。


「ゲレロさんの言う通り、あれが『健やかな宿』ナンバーワンのクッキーですね。何でも対応できる柔軟性が魅力と言われています」


・・・・うん?何でも対応できる?NG無しって事かな。


「ヘックス、あの子は俺知らねえ」


 続いてゲレロが聞いたのは赤髪のショートカットのこれまたきれいな姉ちゃんだった。当り前だけど、コーバス1、2を争う店だから娼婦もレベルが高い。ただ、少し細いな。まあ、あれぐらいなら許容範囲だけど。


「あれはこの間別の店から移籍したアリーですね。足技が得意です」

「へえー。今度指名してみるか」

「ゲレロさん。そりゃあねえぜ。ウチの店で指名してくれよ。イーリスとかどうだい?アリーと結構似てるぜ」


 


 ・・・・・・




 足技?


 疑問に思ったが、次にまた青髪を肩で切りそろえたむっちりして尻がデカい女が店に入って行った。


「あいつはあの髪の色まんまアオって呼ばれています。ケツ圧のアオで名前が知られています」

「ああ、知っている。前に指名したぞ。名前通りケツ圧が凄えんだ」


 ・・・・・・


 血圧?


 うん?あの子高血圧なのか?いや、そもそもこっちの世界で血圧測定できるの?聞いた事ねえんだけど。


 そこから、出勤してくる姉ちゃん達をヘックスとゲレロが俺の為に色々教えてくれるが、たまに訳分かんねえ話になるのは何でだ?脇が凄いとか股がヤベえとか言ってたけど、そいつらってそんな剛毛なん?そういう性癖もあるとは知っているけど、俺は剃ってくれている方がいいな。・・・いや、でも膝裏とか肘もいいとか言われている女もいたけど、あの辺って毛が生えるもんなん?


 何か色々疑問があるが、10人ぐらい姉ちゃんを観察した所で、おおよそだけど違いを理解した。これを確信持てるまでにするのに、明日は『夜中の夢』の観察だな。


 翌日、昼過ぎに組合に行くとリリーから呼ばれた。手には依頼書があるから『快楽亭』の依頼の事だろう。リリーは既に依頼書読んで報酬を分かっているみたいで、その目は冷たかった。


「ベイルさん。『快楽亭』から指名依頼が入っています。・・・ベイルさんは2級ですから指名依頼は出せないんですが、先方がどうしてもと言う事で最初にご紹介だけさせて頂きます。こちらが依頼書になります」


 そういってリリーが依頼書を手渡してきたので、内容をよく確認する。あのババアの事だ、話が昨日と違うかもしれねえからな。で、じっくり読んだ結果、不審な点は無し。約束通りなので、依頼を受ける事にした。


「今度はまた何をやるか知りませんけど、騒ぎは起こさないで下さい」


 リリーが冷たい目で言ってくる。



 ・・・・・こりゃあ、しばらくはリリーは俺に対して塩対応だな。時間が解決するのを待つしかねえ。あとはたまにお菓子の差し入れだな。


「ゲレロは?」

「ゲレロさんも同じような指名依頼が入っています。まだ今日は来ていないので、依頼が残っていますけど・・・あ!噂をすればですね」


 驚くリリーの視線の先に振り返ると、ゲレロとヘックスが面倒くさそうに歩いてくるのが見えた。こんな時間だ、受付待ちの人がいねえから、二人とも真っ直ぐこっちに歩いてくる。


「遅えぞ」

「バーカ、娼婦の出勤はまだまだ後だ。・・・っとそんな事よりリリー、俺に指名依頼入ってねえか?」

「ありますよ。こちらが依頼書になります」


 そう言ってゲレロにも依頼書を渡す。のぞき込めば内容はほとんど俺と変わらねえ。それを読み終わったゲレロは当り前だけど依頼を受けた。そこから時間を潰して、今日は『夜中の夢』の観察を行う。


 こちらも10人ぐらい見た所で、『健やかな宿』で思った事にほぼ確信が持てた。後は『快楽亭』で答え合わせだ。まあ、間違っていても俺の前世知識で十分依頼達成できるだろう。


「ほ、本当に分かったんですか?」


 俺の言葉を聞いてヘックスが驚く。


「だからそれを確かめに『快楽亭』に戻るって言ってんだろ」

「いや、流石にブラフだろ。ベイル、言っておくがマジであの婆さんおっかねえからな。報告はしっかりと考えてやれよ」

「分かってるっての。それに報告じゃなくて確認だっての!」


 ごちゃごちゃうるせえ二人を連れて『快楽亭』に戻ると、ババアが待ち構えていた。このババア、ヘックス以外に誰か見張りをつけてやがったな。


「観察は終わったのかい?なら、報告してもらうよ」

「バーカまだ終わってねえよ。それよりもババアまずは確認だが、この店って酒飲みながら気になる姉ちゃんがいたら、金払って部屋に案内してもらって楽しむってので合っているよな?」

「既に予約が入っていれば、別だけどまあ、基本はそんな感じだね」

「そうすると、今働いている姉ちゃん達は指名待ちって所か」


 チラリと仕事場を覗かせてもらうと、美人な姉ちゃん達がすげえエロい格好で客に酒を運んでいるのが見える。


 チラリと見たがそれで俺の考えが間違っていない事を確信した。


「よし。多分分かった」


 俺の言葉にババア達が驚いて大きな声をあげる。


「はあ?嘘だろ?」

「おい、ベイル。マジで嘘はやめとけ、今ならまだ婆さんも許してくれる」

「ベイルさん。流石に冗談きついぜ」


「冗談な訳ねえよ。取り敢えずどこか話が出来る場所に行こうぜ」


 俺の言葉にみんな胡散臭そうな顔しながらも、ババアが帳簿とか書いているだろう部屋に案内された。


「それじゃあ、話を聞こうじゃないか。『4落ち』」


 全員が席に着くとまずはババアが口を開いた。昨日は俺の事知らなかったみたいだけど、今の言葉で分かった。ババア、俺の事調べやがったな。調べても真面目な組合員ってだけで他は何も出てこなかっただろ。


「コーバスで一番イカレているって噂のあんたに少しは期待してやるよ」


 ・・・俺は真面目だっつうの!イカレてねえよ!ババア、嘘情報掴まされているな。まあ、いいや。


「まずは予約の方法だな。どの店も客からしたらリスクが高すぎる」

「それを言ったら、こっちもその為に体と部屋を空けているんだ。来ても来なくても同じだろ?」

「だから決めた時間までに来なければキャンセル扱いにすればいいんだよ。当然予約の金はかなり低めで設定して、来れば残りを支払ってもらうってのはどうだ?」

「それだとこっちのリスクが大きすぎる。残りの支払い無しで一晩娼婦を遊ばせておくのかい?売り上げが減るのが目に見えてるよ」


 ハハハ、店側ならそういう心配もあるな。けどそれは、予約された娼婦は一晩空けとかないといけないって固定観念に囚われてるぜ。


「違う、そうじゃねえ。キャンセルされた娼婦はそのまま店に出せばいいじゃねえか。そこで指名貰えれば予約金の分丸儲けだ。まあ、指名されないってリスクはあるけどな」

「そら、見た事かい。それなら私が言った事と同じじゃないか」

「店にとっちゃリスクはあるな。ただ、客にすればチャンスは今までよりはあるって事だ」

「チャンス?」


 俺の言葉にババアとヘックスは首を傾げるが、ゲレロだけは分かった顔に変わった。


「ああ、そうか。今までなら目当ての姉ちゃんが店にいない時点で可能性はゼロだったが、ベイルの言う方法ならキャンセルの可能性があって、指名できる可能性はゼロじゃねえって事か!」

「指名できる金があるなら予約すればいいじゃないか」

「だから、それはリスクが高すぎて出来ねえんだよ。当日に何かの用事で行けなくなったら大金捨てる事になるんだぞ。それにそもそも予約は常連にしか出来ねえんだろ」

「そうだな。俺もその可能性があるから予約はしてねえんだ。人気の姉ちゃんは常連の指名だけで予定が埋まっているから、いればラッキーぐらいだな」


 ゲレロの言葉聞いてババアとヘックスは腕を組んで考え始める。少しはアリなんじゃないかと考えてくれよ。


「それで客としては『人気の姉ちゃんは、行った所で予約でいないだろうな』から『もしかしたらキャンセル発生しているかもしれない』になると思う。そうなると来る客が増えると思わねえか?」


  ・・・・・。


 ババアとヘックスが眉間に皺を寄せながら無言で考えている。本当は時間制なんてのも思いついたんだけど、そういうのは店を持たない個人・・・いわゆる立ちんぼ・・・がやるものって考えで、店は一晩一人ってのが常識みたいだから、もし提案しても受け入れては貰えないだろう。今回提案したキャンセルも、一晩一人の考えから駄目と言われるかもと思ったけど、これはセーフらしい。


「・・・・ふう。中々興味深い話だ。予約が出来る常連からしてもリスクが大分減るだろうから、検討してみようじゃないか。ただし、これで依頼達成したと判断するまでに大分時間かかるよ」


 ああ、そう言われてみればそうだな。予約システムをいきなり全部変える訳ねえから、常連でも話の分かる奴に少しづつ話をしていく事になるんだろう。そうなると依頼達成どれだけ先になるか・・・俺も覚えている自信がねえ。



 そうなると、第2弾だな。元々こっちが本命だったし。


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ああ、ゴムないのか…
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