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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第5章「AI医療の未来ーー医師は進化か淘汰か」
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第81話 「医療の未来を懸けた戦場」

LUX ROUXでのAIドリブン経営改革プロジェクトがついに完結。優奈の最終報告をもって、藤崎からも高評価を得た。修士郎はキャストたちに挨拶を済ませるが、最後にひなたから思わぬ別れのキスを受ける。AIが夜の世界を変えた今、新たな挑戦が待ち受ける。

都内のコンサルティングファーム、ライジング・ストラテジー・パートナーズの会議室には、重い空気が漂っていた。


「今回のプロジェクトは、厚生労働省のAIセカンドオピニオン導入に関する法改正支援だ」


プロジェクトマネージャーの高梨が、静かに口を開いた。ホワイトボードには「AIセカンドオピニオン導入による医療体制の変革」と書かれたタイトルが大きく記されている。


「厚労省が期待しているのは、医師の診断精度向上と、患者がより信頼できる医師を選べる環境の構築。しかし、日本医師会をはじめとする既存の医療機関側は強く反発している。彼らの主張は、医師の権威が脅かされること、診察の質にばらつきが生じること、そして労働の偏りを助長するというものだ」


高梨の言葉に、会議室の全員が真剣な表情を浮かべる。


「このプロジェクトの成功は、我々のキャリアにとっても大きな意味を持つ。特に、政府案件でありながら、日本医師会という強力な圧力団体と折衝しなければならない難題だ」


レイラが腕を組みながら口を開いた。


「私は日本医師会との交渉を担当する。彼らの懸念点を整理し、どこまで歩み寄れるのかを見極める。医師たちがこのシステムを受け入れるための条件を探ることが必要ね」


「俺は?」修士郎が問いかける。


「実証実験を担当する大学病院の医師たちとの交渉を頼む。彼らは最前線で診察を行い、AIがどれほど実用的かを直接体感する立場にある。だが、AIに頼ることに抵抗を持つ医師も多い。その壁を崩すのがお前の役割だ」


「なるほどな」修士郎は頷いた。医師たちの懸念を払拭し、AIセカンドオピニオンの意義を納得させることが求められる。


「そして、厚労省側との折衝は中堅の三浦に任せる」


三浦は今回のプロジェクトに抜擢された中堅コンサルタントだ。厚労省がどのような政策意図を持ち、どのように制度設計を考えているのかを把握し、調整役を担う。


「厚労省はAIセカンドオピニオンを医療の質を向上させるものとして推進しているが、制度の詳細はまだ固まっていない。彼らが想定している医師評価の仕組みと、医療業界の現状とを照らし合わせて、現実的なルール作りができるようにするのが俺の仕事だ」


三浦の言葉に、全員が頷く。


「それから、メディア対応も重要だ」高梨が続ける。「メディアはこの件に強い関心を持っている。国民にとっては、自分の命を預ける医師の実力が明確になるというメリットがある一方、AIによって医師の価値が測られることへの不安もある。報道の仕方によっては、このプロジェクトが世論から大きな反発を受ける可能性もある。俺が責任を持ってメディア戦略を管理するが、皆も適宜協力してくれ」


プロジェクトの骨子が説明されたところで、レイラが再び口を開いた。


「まずは現場の意見を整理しないとね。医師たちはAIにどう向き合っているのか、患者はどこまでAIの診断を信用するのか、そして厚労省はどのレベルまでの導入を望んでいるのか。そのギャップを埋めるのが、私たちの仕事よ」


修士郎はメモを取りながら、改めて今回のプロジェクトの複雑さを実感していた。医療という、人の命に関わる領域だからこそ、慎重なアプローチが求められる。一方で、変革を進めなければならないのも事実だ。


「まずは、大学病院の医師たちの意見を聞くことから始めよう」


修士郎がそう言うと、高梨は満足そうに頷いた。


「では、各自準備に取り掛かってくれ。次の会議で、それぞれのファーストアクションを共有する」


こうして、医療界の未来を左右する大規模プロジェクトが始動した。

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