表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第4章「夜の革命ーーAIに弄ばれる男たち」
72/140

第72話「水瀬りおと南條カレンの対比」

黒崎舞は営業効率を最大化するため、AI活用の秘訣を修士郎から引き出そうと接近。営業メールの自動化や太客選定を合理的に活用しつつ、自分の接客スタイルを維持する方法を模索する。AIに頼りすぎず、データを活かしながら柔軟に対応する重要性を学び、実践に移すことを決意する。

LUX ROUXの営業支援AIが本格的に稼働し始めてから、キャストごとの適応度に差が出てきていた。AIを全面的に受け入れたキャストの中でも、その活用方法には違いがあり、特に水瀬りおと南條カレンの対照的な姿勢が際立っていた。


「最近、カレンの売上すごいですね」


営業終わりのバックオフィスで、りおはモニタに表示された営業データを見ながらつぶやいた。カレンはAIの指示を忠実に実行し、無駄のない営業スタイルを確立。結果、売上は急上昇し、トップキャストの座も目前に迫っていた。


「カレン、すごいわね。AIをここまで完璧に使いこなすなんて」


美咲が感嘆の声を上げると、カレンは自信満々に微笑んだ。


「AIが最適解を示してくれるんだから、それに従うのが一番効率的でしょ?」


「確かに。でも……」


りおは何か言いかけたが、言葉を飲み込んだ。


「でも、何?」


カレンが興味を持ったようにりおを見つめる。


「ううん、ただ……すべてをAIに頼るのは、ちょっと怖いなって思っただけ」


「怖い?」


「うん。だって、もしAIが間違った判断をしたら?それに、お客様の気持ちって、必ずしもデータ通りじゃないでしょ?」


カレンは少し考えた後、肩をすくめた。


「でも、それは私たちも同じじゃない?完璧な接客なんて、人間には無理。でもAIは、膨大なデータを分析して最適な対応を教えてくれるの。むしろ、私たちが余計なことを考えずにAIを信頼することが、これからの時代の“新しい人間らしさ”なんじゃない?」


カレンの言葉に、りおは少し戸惑った表情を見せた。


「うーん、私は逆かな。AIを活用するのは賛成だけど、結局のところ、最終的に判断するのは私自身でありたいって思うの」


「へえ、それはどうして?」


「だって、お客様一人ひとり違うし、データだけじゃ見えないこともあると思うの。AIの提案を参考にするのはいいけど、完全に頼り切るのは危険かなって」


カレンは少し考え込んだ。


「つまり、AIをツールとして使うか、それとも信頼して従うか……ってこと?」


「うん、そんな感じ」


「でもね、りお。AIを信じられないっていうのは、結局のところ、データを信じられないってことなのよ」


カレンはAIの示すデータを指しながら続けた。


「AIが提案するのは、すべて過去の成功例に基づいてるの。感覚に頼るよりも、AIの判断のほうが確実なことが多いわ」


「それは分かるけど……」


りおは苦笑しながら頷いた。


「でもね、カレン。お客様って、いつも論理的に動くわけじゃないでしょ?」


カレンは少し考え込んだが、すぐに自信ありげに答えた。


「だからこそ、AIが人間のバイアスを取り除いて、最適な接客を導き出すのよ。人間の感覚に頼ってミスをするより、AIに判断を任せたほうがいいと思うわ」


「……そうかもしれない。でも、私はまだ、AIにすべてを委ねるのは抵抗があるな」


そのとき、修士郎がオフィスに入ってきた。


「どうした?何か議論してるのか?」


「修士郎さん、私とりおで意見が分かれたんです」


カレンが説明し、修士郎は少し考え込んだ。


「なるほど。AIを信頼して従うか、ツールとして活用するかってことか」


「修士郎さんはどう思います?」


カレンが尋ねると、修士郎は少し笑いながら答えた。


「どっちも間違ってはいない。ただ、AIにすべてを委ねることのリスクも考えておくべきだな」


「リスク?」


「たとえば、AIはデータのパターンを分析するけど、データには表れない人間の感情や直感的な判断は反映されない。カレンの言うことも正しいけど、それがすべてじゃないんだ」


「でも、それを言ったら、人間の判断も完璧じゃないですよね?」


「その通り。でも、AIに頼りすぎると、自分で考える力が失われる可能性がある。AIはあくまで補助。最終的に判断するのは、人間自身であるべきだ」


カレンは少し納得したように頷いた。


「なるほど……確かに、何も考えずにAIの言うことを鵜呑みにするのも問題ですね」


りおは安堵したように微笑んだ。


「私も、やっぱりバランスが大事かなって思う。AIを活用しながら、自分の感覚も大切にしたい」


カレンはしばらく考えた後、頷いた。


「分かったわ。でも、私はAIを信頼するスタイルを貫く。私は私のやり方で、新しい時代のキャバ嬢としてNo.1を目指すわ」


「うん、お互い頑張ろうね!」


こうして、りおとカレンの考えの違いは明確になった。それぞれの営業スタイルの違いが、今後のLUX ROUXの未来をどう変えていくのか——それは、次第に明らかになっていくだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ