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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第4章「夜の革命ーーAIに弄ばれる男たち」
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第62話「セクハラ客、修士郎」

キャバクラ「LUX ROUX」のAIドリブン改革が始動。優奈が主導し、修士郎はサポート役として現場検証に参加。玲奈の提案により、修士郎は“セクハラ常習客”役を演じることに。黒服の指導付きで、模擬接客と同伴・アフターの疑似体験を行うことが決定。破天荒なプロジェクトの幕が上がる。

夜の帳が下りる前、キャバクラ「LUX ROUX」の店内はまだ準備段階にあった。キャストたちは鏡の前でメイクを仕上げ、黒服たちはホールの最終チェックに忙しい。そんな中、修士郎はソファに座り、深いため息をついていた。


「本当にこれをやるのか…?」


隣で資料を確認していた優菜が顔を上げる。


「やるに決まってるじゃないですか。データだけでは現場の問題は見えません。修士郎さんには、キャストが日々どんな接客をしているのか体感してもらいます」


「体感って、お前な…俺は普通の客じゃないだろ?“セクハラ常習客”だぞ」


「はい。なので、しっかり演じてください」


「真顔で言うな」


「黒服の黒木さんが、適切なセクハラ指南をしてくれますのでご安心を」


「いや、全然安心できないからな」


そうこうしているうちに、黒服の黒木直樹が近づいてきた。


「準備できましたよ、修士郎さん。さあ、セクハラの極意を学びましょう」


「学びたくない!」


しかし、優菜の鋭い視線が飛んでくる。修士郎は観念した。


「……やりますよ、やればいいんだろ」


「意気込みが足りませんね。お客様になりきらないと、リアリティがありませんよ」


黒木がイヤホンを渡してくる。これをつければ、黒木からの“セクハラ指導”がリアルタイムで届く仕様になっていた。


「さあ、行きましょう。まずはNo.1キャストのひなたさんとの接客からです」


修士郎はしぶしぶ立ち上がり、キャストたちが待つ席へ向かった。


テーブルには、すでにキャストたちが座っていた。桜井ひなた、朝比奈美咲、藤宮玲奈、そして他のキャストも揃っている。彼女たちは状況を理解しており、あくまで研修の一環としてロールプレイに臨んでいるとはいえ、修士郎はこの場にいるだけで気まずかった。


ひなたが笑顔でグラスを手にしながら言う。


「じゃあ、修士郎さん。今日はお客様として楽しんでいってくださいね」


「え、ああ…よろしく…」


すると、イヤホンから黒木の声が飛んでくる。


「修士郎さん、そんな普通の挨拶じゃダメですよ。“ひなたちゃん、俺のことだけ見てよ”ぐらい言ってみてください」


「無理だろ!!」


「やらないと研修になりません」


優菜が冷静に言い放つ。修士郎は頭を抱えた。


「……ひなたちゃん、俺のことだけ見てよ」


ひなたは微笑を浮かべたまま、シャンパンを手に取る。


「もちろん、今は修士郎さんだけ見てますよ。でも、他のお客様にもそう言われると困っちゃうなぁ」


「これは見事な交わし方ですね」


黒木が感心した声をイヤホン越しに送ってくる。


「じゃあ次は、ひなたさんの肩に自然に手を置く流れを作りましょう」


「絶対無理!!」


「自然にですよ、自然に」


ひなたは笑いながら首をかしげた。


「修士郎さん、なんか怖がってません?」


「いや、まあ…」


その時、隣の美咲が口を開いた。


「私がやりましょうか? AIのデータによると、こういう場面では軽く触れられるのが最も自然な流れなんです」


美咲は軽く修士郎の腕に触れた。たったそれだけなのに、修士郎の体は一瞬硬直した。


「……うまいな」


「AIによる分析の結果です」


「AIでセクハラの最適解を探すな!!」


その後もロールプレイは続き、修士郎は黒木の指示に従いながら、キャストたちの接客スキルを試す役割を果たした。美咲や玲奈はデータを活用して巧みに対応し、ひなたは従来の接客術で切り返す。


しかし、最大の問題が最後に待っていた。


「じゃあ、次は優菜さんの番ですね」


優菜は予備キャストとして体験入店していたが、当然、修士郎と接客する予定はなかった。しかし、流れで彼女とのロールプレイも行うことになってしまった。


「修士郎さん、私のこと口説いてみてください」


「……は?」


「さっきまでの流れですよ? お客様として接客されるのを体感しないと」


優菜がニヤリと笑った。


「いや、お前は違うだろ!!」


しかし、黒木の指示は容赦なかった。


「修士郎さん、これは教育の一環です。思い切っていきましょう」


修士郎は完全に追い込まれていた。


「……優菜ちゃん、俺のことだけ見て?」


「へぇ、そういうのが好きなんですね?」


「おい、やめろ」


「で、シャンパン入れてくれるんですか?」


「そういう流れかよ!!」


ひなたは楽しそうに笑っていた。


「修士郎さん、優菜ちゃん相手だと意外と余裕ないんですね?」


「お前が仕組んだんじゃないのか??」


ロールプレイが終わった後、修士郎はぐったりとソファに倒れ込んだ。


「……コンプライアンス的に問題はなかったか?」


「大丈夫ですよ。むしろ修士郎さんが一番被害者だったかも」


優菜が笑いながら言った。


「ただし、次は“同伴とアフター”の模擬体験が待ってますからね」


「……マジか」


修士郎の試練は、まだまだ終わらなかった。

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