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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第3章「Orion AIーー人類進化の境界線」
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第52話「Human Evolution──AIによって進化する人間」

マーケティング戦略の決定打が見えない中、高梨の提案で型破りなマーケッター・須藤圭吾がプロジェクトに参画することに。修士郎は彼の破天荒な手法に苦手意識を持ちつつも、その実力を認め、依頼を決断。須藤の参戦で、Orion AIの市場戦略は一気に動き出す。

天城が待つ会議室の扉を開けると、須藤圭吾が先に足を踏み入れた。修士郎はその後に続き、静かに席に着く。須藤の存在感は相変わらず圧倒的で、場の空気を一瞬で変える独特の雰囲気を持っていた。


「さて、今日はOrion AIのマーケティング戦略についての提案と聞いているが、どのようなアプローチを考えている?」


天城が冷静に問いかけると、須藤は軽く笑いながらホワイトボードの前に立った。


「天城さん、まず確認したいんですが、今のAI市場って何がポイントになってると思います?」


「性能と精度の向上、業務効率化、そして汎用性の高さだろう。」


須藤は頷き、ホワイトボードに「AIの競争軸」と書いた。


「そう、現状のAI市場は“どれだけ賢いか”“どれだけ正確か”っていう話ばかりだ。でもな、それじゃOrion AIの本質を伝えきれないんですよ。」


天城が少し眉をひそめる。


「本質?」


須藤はニヤリと笑いながら、ホワイトボードに大きく「Human Evolution」と書いた。


「Orion AIは、人間の仕事を奪うAIじゃない。人間が“進化するためのツール”だ。つまり、売るべきはAIではなく、AIによって進化した“新しい人間像”なんだよ。」


会議室に静寂が訪れた。


修士郎は須藤の言葉を反芻しながら、続けた。


「つまり、我々が伝えるべきは『AIを使うことで何ができるか』ではなく、『AIを使うことで人間がどう変わるか』ということです。Orion AIは、ユーザーを拡張し、最適化し、成長させる。これをマーケティングの中心に据えるべきです。」


天城は腕を組み、考え込んだ。


「なるほど、競合との差別化の軸を“AIの性能”ではなく、“人間の進化”に置くということか。」


須藤は満足そうに頷き、ホワイトボードに次のように書いた。

1.AIアシスタントではなく、AIによる人間の拡張

2.業務の効率化ではなく、意思決定の進化

3.情報提供ではなく、思考プロセスの強化


「競合は『どんなAIを作るか』で戦ってる。でも、Orion AIは『どんな人間を生み出すか』で勝負するんです。」


天城はホワイトボードをじっと見つめた。


「確かに、従来のアプローチとは全く違う視点だな。だが、これを市場にどう伝える?」


須藤が即座に答える。


「メッセージングはシンプルにします。例えば、『AIを使いこなすのではなく、AIと共に進化する。Orion AIが生み出すのは、次世代の人間だ。』 こういうメッセージを前面に打ち出します。」


修士郎が補足する。


「さらに、エグゼクティブ向けとハイパフォーマー育成市場に合わせてメッセージを調整します。」


エグゼクティブ向け

「意思決定をサポートするAIではなく、経営者自身を進化させるAI」


ハイパフォーマー向け

「タスクをこなすAIではなく、スキルを拡張し、新たな能力を開花させるAI」


天城が少し微笑みながら頷いた。


「確かに、それなら従来のAIとは一線を画せる。だが、このコンセプトをどう実証する?」


須藤は待ってましたと言わんばかりに口を開く。


「デモンストレーションを行います。実際に、Orion AIを使った人間がどれだけ変化するのかを見せるんです。」


修士郎が資料を開きながら続けた。


「具体的には、Orion AIを使う前と後で、どれだけ意思決定のスピードや精度が変わるか、またどれだけ創造的なアイデアを生み出せるようになるかを実験します。例えば、ある経営者にOrion AIを1カ月間使ってもらい、最適な経営判断をAIと共に行った結果を比較する。」


天城がゆっくりと頷いた。


「実際のユーザーの変化を見せることで、市場に“AIがすごい”のではなく“AIと共に進化した人間がすごい”と伝えるわけか。」


須藤は満足げに頷く。


「そういうことです。AIの能力を証明するんじゃない。AIと共に進化した人間がどれだけすごいかを証明するんです。」


修士郎は天城の目を見据えながら言った。


「この戦略で行きましょう。Orion AIのポジショニングを“Human Evolution”に固定し、市場に浸透させる。」


天城は少し考え込んだ後、深く頷いた。


「面白い。これなら市場で十分なインパクトを与えられるだろう。では、この方向で具体的なキャンペーン戦略を立てていこう。」


須藤はホワイトボードを指しながら笑う。


「よし、ようやく面白くなってきたな。」


Orion AIのマーケティング戦略が、大きな転換点を迎えた瞬間だった。

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