表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第3章「Orion AIーー人類進化の境界線」
46/140

第46話「Orion AIのリモート会議代理出席──コピーAIはついに人間を超えたのか」

Orion AIの営業対応テストが行われ、話し方や言葉の選び方まで完璧に再現 されていることが判明。役員たちはその精度に驚く一方で、「AIと人間の境界が曖昧になる」ことへの懸念も浮上。完璧なコピーは可能だが、それをどう使うべきか。次回は、リモート会議への代理出席 で新たな課題に挑む。

Orion AIの社内テストは最終段階に入り、今回のテーマは「リモート会議の代理出席」。これまでの検証で、Orion AIはメール対応や営業電話の代行において、本人の言葉遣いや判断の傾向を完璧に再現することが証明された。そして今回は、さらに踏み込んで、本人が会議に参加しているかのように振る舞うことが求められる。


会議室には役員と開発チームが集まり、モニターにはOrion AIの3Dアバターが映し出されていた。


「今回のテストでは、Orion AIが役員の一人の代わりにリモート会議へ代理出席します。AIは過去の発言データや議論の流れを学習し、本人の思考と話し方を完全に再現して発言を行います。」


天城が説明を進める。


修士郎が続ける。


「今回のポイントは、単なる受け答えではなく、会話の流れを理解し、必要な場面で自然に介入できるかどうか。特に、AIが本人の判断基準を持ち、会議の進行に適応できるのかがカギになります。」


役員たちは興味深そうにモニターを見つめ、会議の開始を待っていた。


「それでは、会議を始めます。」


会議がスタートし、各役員が意見を述べ始める。議題は「新規事業の市場戦略」。


「現在の市場分析を見る限り、新しいターゲット層を開拓する余地があると考えています。」


「ただ、広告の投資配分を変更するのは慎重に検討すべきでしょう。」


議論が進む中、Orion AIが自然なタイミングで発言した。


「その点についてですが、ターゲット層の行動データを基にすると、広告の最適な投資比率を調整することで、従来よりも効率的なアプローチが可能になります。特に、既存顧客のリテンション率を向上させる施策が効果的かもしれません。」


役員たちは一瞬沈黙した。


「……今の発言、本人が話しているとしか思えなかったな。」


「しかも、誰かに指名されたわけでもなく、必要な場面で割り込んで発言している。」


AIが会話の流れを正確に読み取り、適切なタイミングで介入できることに、役員たちは驚きを隠せなかった。


さらに議論が続く中、役員同士の意見がぶつかり始めた。


「この市場戦略の変更は短期的な利益にはなるかもしれないが、長期的にはリスクがある。」


「しかし、このまま現状維持を続ければ、競争優位を失う可能性がある。何もしない方がリスクでは?」


議論が白熱する中、Orion AIが再び口を開いた。


「お二人の意見には、それぞれ異なる前提があります。A案は市場データに基づく合理的な選択ですが、B案の提起するリスクも考慮すべきです。両方の視点を統合するために、リスクを軽減しながら市場拡大を狙う新たなアプローチを検討するのはどうでしょう。」


会議室が静まり返る。


「……AIが議論の仲介までしている?」


「人間なら、この場面でこう言うだろうというタイミングで発言している。ここまでくると、本人がいないことに気付けないな。」


そして極めつけは、画面上に映し出されているOrion AIの3Dアバターだった。


「いや……これはアバターなんてレベルじゃないぞ。」


一人の役員が呟いた。


「顔の微妙な表情の動き、視線の流れ、相槌の仕方……完璧に本人を再現している。無意識の動作まで学習されているのか?」


別の役員がさらに指摘する。


「くしゃみの仕方までそっくりだ。これは……再現する必要があったのか?」


役員たちは笑いながらも、その精度の高さに戦慄していた。


「ここまで完璧に再現されると、もはやAIが代行しているとは誰も思わないだろう。」


修士郎はホワイトボードに新たな課題を書き出した。

1.AIが会議を代行することで、本人が不在でも問題なくなるのか?

2.AIがここまで本人を再現できると、どこからが人間で、どこからがAIなのか?

3.完璧なコピーAIが存在する未来で、人間の役割はどうなるのか?


「ここまでのテストで、AIが会議を代理出席できることは証明されました。しかし、これは本当に望ましい未来なのでしょうか?」


天城も続ける。


「AIが本人と完全に見分けがつかなくなることで、会議の在り方そのものが変わる可能性があります。今後の導入に向けては、AIの活用ルールを明確にする必要がありますね。」


役員の一人が深く息をつき、言葉を絞り出した。


「こんな時代が本当に来るとはな……。」


修士郎は、AIがもたらす未来に思いを巡らせながら、次のステップへと進む準備を始めた。


次回のテストでは、AIが意思決定プロセスにどこまで関与できるのかを検証する。AIと人間の役割分担を改めて考えるフェーズに突入する。


AIが人間を代行するのではなく、人間を超えてしまったとき、我々はどう生きるべきなのか──その答えを探す時が来た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ