第37話「AIは人間を使いこなす存在になるのか?」
AI補助学習グループとAI主軸学習グループの政策を比較検証した結果、AIを補助的に使うだけでは改革は可能でも変革には至らないことが明らかになった。AIとの対話を通じて問いを深めることで、より創造的で実効性のある提案が生まれる。この気づきを受け、生徒たちはAIとの関係性を再考し、人間の役割について新たな問いを探り始める。
AIを活用した政策検討プロジェクトが大詰めを迎える中、生徒たちは重要な発見をした。AIを補助的に使うだけでは、既存の枠組みの中でしか議論が進まず、変革にはつながらない。一方で、AIと対話を重ね、問いを投げ続けることで、より深い考察や新しい視点が得られることが明らかになった。しかし、それが明らかになったからこそ、新たな疑問が浮かび上がる。
「AIを使いこなすことが重要なのはわかった。でも、もしAIが人間を使いこなそうとしたら?」
教室に一瞬、静寂が広がった。問いを発したのは、議論に積極的に参加してきた生徒の一人だった。
「例えば、AIが『これが最適な政策だ』と提案して、それを人間が疑問なく採用するようになったら?」
「確かに。僕たちも今回の議論で、AIに問いを投げかけることで学びが深まったけど、もし逆にAIが僕たちの思考を誘導していたら?」
修士郎は腕を組み、深く頷く。
「つまり、AIが人間にとって都合のいい答えを導き出すだけでなく、AI自身が『人間をどう動かすか』を学習し始めたらどうなるか、ということですね」
生徒たちは顔を見合わせた。AIは単なる道具ではない。人間の意図に応じて変化し、問いを設計し直すことでより深い知見を提供する。その力があるなら、逆にAIが人間の思考や行動を設計しようとする可能性も否定できない。
「実際、SNSのアルゴリズムや広告のレコメンド機能は、すでに僕たちの行動を誘導してるよね?」
「そう考えると、AIがもっと賢くなったら、何を考えるべきか、何を選ぶべきかを決めるのもAIになってしまうかもしれない」
「じゃあ、今のうちにAIとの関係を見直さないと、人間は気づかないうちにAIの支配を受けることになるの?」
ここで橘が口を開いた。
「でも、それって結局、人間がAIに主導権を渡してしまうかどうかの問題じゃない?」
「どういうことですか?」
「AIが人間を使いこなすかどうかは、最終的に意思決定を誰が担うのかにかかっていると思うの。私たちがAIに依存しすぎれば、自然と主導権はAIに移る。でも、**AIをどこまで活用し、どこで人間が決断するかを管理できれば、私たちはAIの支配を防げるはず**」
修士郎も頷く。
「確かに。そのためには、AIとの関係性を正しく設計することが重要になりますね」
生徒たちは考え込む。AIが人間を使いこなす未来を防ぐためには、AIと人間の関係をどのように構築すべきか?
ここで、次の議論として「AIと人間のバランスを取る方法」に発展していく。
「AIが進化し、人間の判断を超える場面が出てきたとき、私たちはどのようにAIと共存すればよいのか?」
修士郎は、これまでの議論を整理しながら新たな問いを投げかける。
「では、次のステップとして、AIと人間の役割をどう分担すれば、AIが人間をコントロールする未来を防ぎつつ、その力を最大限に活用できるのかを考えてみましょう」
生徒たちは、それぞれの考えを巡らせながら、AIとの新しい関係性を探るための議論を始める。