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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第2章「知の進化――教育とAIの共存戦略」
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第34話「AIを超える問い、アセスメントに向けた準備」

AIのChain of Thoughtを活用した問いの学習が進む中、新たな課題として「AIが作れない問いを考える」試みが始まる。AIは論理的な問いを生み出すが、未知や主観的な概念には弱い。生徒たちは**「AIを超える問い」**に挑戦し、思考をさらに深めていく。人間ならではの発想が試される新たな学びが展開する。

AIを活用した探究型学習の導入から数週間が経過し、生徒たちの思考力には明らかな変化が見られるようになっていた。AIを使うグループは問いの幅が広がり、より複雑な仮説を立てるようになってきた。一方、AIを使わないグループは、自ら資料を調べながら時間をかけて深く考える姿勢が定着しつつあった。


「いよいよ、AIを活用したグループと非活用グループの比較アセスメントを実施する時期ね」


橘沙織がそうつぶやきながら、修士郎と講師陣の顔を見渡した。


「AIを活用することで、思考力がどのように変化するのか。その結果が見える形になれば、今後の教育にとっても大きな示唆になるわ」


「ですね。ただ、比較するにあたって、評価の基準をどう設定するかが重要です」


修士郎はホワイトボードに「評価基準」と書き込み、議論を始めた。


「AIを活用したグループと、非活用グループを同じ尺度で評価するのではなく、それぞれの特徴に即した評価方法を考えたいですね」


「具体的には?」


橘が問いかけると、修士郎は三つの評価軸を挙げた。


「まず一つ目は“問いの多様性”です。AIを活用したグループは、幅広いテーマに対して問いを生み出す力が強くなっている。どれだけ新しい視点の問いを作れているかを評価します」


「なるほど。じゃあ、非活用グループには何を評価するの?」


「非活用グループの強みは、じっくりと考え抜くことです。だから、二つ目の評価軸として“問いの深さ”を設定します。表面的な疑問ではなく、因果関係を掘り下げて論理的に組み立てられているかを見ます」


講師の一人が頷いた。


「AIを活用しないことで、思考を深める時間が確保されるというメリットもありますからね」


修士郎はさらに続けた。


「そして、最後の評価軸は“応用力”です。これは両グループ共通の評価基準として、学んだことを別の場面にどう応用できるかを測るものです」


橘は腕を組みながら考えた。


「問いの多様性、問いの深さ、応用力… どれも学びの本質に関わる要素ね。AIの活用がどのような違いを生むのか、明確にできそうだわ」


「アセスメントの形式はどうする?」


講師の一人が尋ねると、修士郎は次のように提案した。


「両グループに同じテーマを与えて、探究型のレポートを作成してもらいます。テーマは『未来の教育はどうあるべきか』。AIを使うグループはAIを活用しながら議論を深め、非活用グループは従来の方法でじっくり考える。その結果を比較し、どんな違いが出るのかを分析します」


橘は少し考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。


「面白いわね。AIを使うことで視点が広がるのか、それとも情報に依存してしまうのか。逆に、非活用グループは、じっくり考えることでどんな独自の視点を生み出すのか。その違いが見えれば、今後の指導方針にも生かせるわ」


「ただし、生徒たちには単なる競争ではなく、それぞれの学びのスタイルを理解し合う機会にしてほしいですね」


「そうね。教育の目的は、どちらが優れているかを決めることじゃなくて、どうすればより良い学びを実現できるかを考えることだから」


そうして、アセスメントの準備が整った。


翌日、生徒たちにアセスメントの趣旨が説明された。


「これから、AIを活用するグループと、活用しないグループに分かれて、『未来の教育はどうあるべきか』というテーマで探究レポートを作成してもらいます」


修士郎がそう説明すると、教室内に緊張感が漂った。


「私たち、AIを使ってどこまで考えを広げられるか試されるんだ…」


「AIなしだと、情報を調べるのに時間がかかるな。でも、しっかり考えれば面白い結論が出せるかも」


生徒たちは、それぞれの立場で真剣に考え始めていた。


AI活用グループの生徒は、タブレットを手にしてAIに質問を投げかけながら、どのように議論を進めるべきかを模索していた。


「未来の教育にはどんな技術が取り入れられるの?」


「AIを使った教育のメリットとデメリットは?」


AIから得た情報を基に、さまざまな仮説を組み立てていく。


一方、AI非活用グループの生徒たちは、従来の方法で意見をまとめようとしていた。


「未来の教育って、そもそも何が変わるの?」


「AIのない時代の学び方と比べることで、違いが分かるかも」


彼らは自分たちの経験や書籍を基に、じっくりと議論を重ねていた。


こうして、AI活用と非活用、それぞれの方法での学びの違いが浮かび上がってきた。


修士郎は、その様子を静かに見守りながら考えた。


「このアセスメントが、AIと人間の学びの違いを明確にする一歩になるかもしれない」


いよいよ、AIと人間の思考の比較が本格的に行われる。


その結果は、果たしてどのような示唆をもたらすのか。

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