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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第7章「創造の境界線ーーAIと人間のアート論争」
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第122話「AIアートは芸術か?」

デジタル絵画コンクールの主催者・遠藤からの依頼を受け、修士郎はAIによるアート作品の評価基準を検討することになった。作品のクオリティだけでなく、制作プロセスの重要性が浮かび上がる中、AIと人間の創造性の境界をどのように定めるべきか、議論が始まる。

デジタル絵画コンクールの審査基準を見直すため、修士郎はクライアントである遠藤俊哉と宮本沙織との初回ミーティングに臨んでいた。


「今年の応募作品のうち、AIを使用している可能性のあるものは約四割を占めています。しかし、どれがAI作品で、どれが人間の手によるものか、現段階では見分けがつきません」


コンクール運営責任者の宮本が、事前に整理したデータを見せながら説明する。


「それ自体は問題ではない。しかし、審査員の間でも意見が分かれているんだ」


遠藤がそう言うと、修士郎は資料を見つめながら質問を投げかける。


「具体的には、どんな意見の対立が起きているのでしょうか?」


「審査員長の原田は、AIが制作した作品を芸術と認めるべきではないと考えている。一方で、私や宮本は、優れた作品ならば作者が誰であれ評価すべきだと思っている」


「なるほど……」


修士郎は資料に目を落とし、過去の受賞作品を見比べる。確かに、近年の作品のうち、特にデジタル技術を駆使したものが増えていることがわかる。しかし、どの作品がAIによるものか明確な区別はない。


「そもそも、AIが制作した作品が芸術かどうかという問題は、技術が進化するたびに繰り返される議論ですよね。写真が登場したときも、CGアートが発展したときも、同じように伝統派と革新派の対立がありました」


「その通りだ。しかし、今はAIが『創作の主体』になりつつある。これが問題なんだよ」


遠藤は腕を組みながら言った。


「修士郎さん、あなたの視点では、AIアートと人間のアートの違いはどこにあると思いますか?」


「……創作の過程にあるのではないでしょうか?」


修士郎は思案しながら答える。


「人間のアーティストは、自らの経験や思想、感情をもとに作品を生み出します。一方で、AIは膨大なデータをもとに最適解を算出し、作品を作り上げる。この違いが、本質的な創造性に影響を与えている可能性があると思います」


「つまり、作品の出来栄えではなく、その過程を審査すべきだと?」


「そうです。仮にAIが完全に自律的に制作したとしても、そのAIを活用した人間の関与度がどの程度かを測ることで、公平な審査が可能になるかもしれません」


遠藤と宮本は顔を見合わせる。


「確かに、作品の美しさだけでなく、どうやって作られたのかを評価の一部に取り入れるのは面白い視点かもしれませんね」


「しかし、それをどのように判定するかが問題ですね。作成プロセスを記録してもらう方法は考えられますが、それが公平かどうかも議論になるでしょう」


宮本が指摘する。修士郎は頷きながら言葉を続けた。


「そこで、まずは過去の受賞作品と今年の応募作品を比較し、AIの影響がどの程度あるのかを分析してみるのはどうでしょうか? AIが関与した作品の傾向が明らかになれば、審査基準を決めるための有益なデータになるかもしれません」


遠藤は少し考えた後、頷いた。


「なるほど。まずはデータを分析して、AIアートと人間の作品の違いを浮き彫りにする。その上で、評価基準を再考するということか」


「そうです。AIアートが芸術かどうかという議論は結論が出にくい問題ですが、少なくとも公平な審査基準を作るための客観的なデータは必要です」


「わかった。それで進めてみよう。宮本さん、応募作品のデータを整理して、AIの関与が疑われる作品をリストアップしてもらえますか?」


「了解しました。では、次回の会議でデータを共有できるように準備します」


こうして、修士郎はAIアートの審査基準を模索する第一歩を踏み出した。芸術の本質とは何か。AIがもたらす新たな創造の形を、彼はこれから解き明かしていくことになる。

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