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創造の砦:AIを超える思考とは  作者: Ohtori
第6章「AI選考革命ーー選ばれる者と淘汰される者」
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第102話「AI選考基準の策定」

修士郎は世界トップレベルのMBAを提供する大学院の選考改革プロジェクトに着手した。AIを使いこなす学生を、AIで選考する「AI vs AI」の戦いが始まる。エッセイや研究計画書の評価だけでなく、AIとの対話を通じた思考の深さが問われる。単なる知識ではなく、AIを超える発想力が試される選考方法とはどのようなものになるのか。

修士郎は大学院側の担当者と初回のミーティングを終えた後、早速AI選考システムの設計に向けた基準の整理を始めた。会議室のホワイトボードには、大学院の求める学生像や、現在の選考方法が詳細にまとめられている。


「現状、エッセイと研究計画書が選考の中心になっているが、問題はAIを利用して作成された文章をどう評価するか、だな」


修士郎はノートPCを開き、大学院が過去に合格者として選んだ学生のエッセイと研究計画書のデータを確認する。明らかにAIが生成したと思われる文章もあれば、人間らしい独自性が光るものもある。


「AIが作ったかどうかを見抜くことが重要なのではなく、AIをどう使いこなしているかを見極めるべきだ」


修士郎は独り言をつぶやきながら、AI選考システムのコンセプトを整理していく。


そこへ、今回のプロジェクトで修士郎と共に動く大学院側の担当者、橘教授がやって来た。彼はAI技術にも造詣が深く、これまでの選考プロセスにも関わってきた人物だ。


「AIを使いこなす能力と、その上でどれだけ自分の思考を発展させられるか。ここが重要になるんじゃないか?」


橘教授の指摘に、修士郎も頷く。


「つまり、AIに頼るだけでなく、それをどう超えていくかがポイントですね。ただ、従来のエッセイや研究計画書だけでは、その能力を正確に測るのは難しいかもしれません」


「そうだ。だからこそ、AIを相手にした思考テストを導入するのはどうかと考えている」


「AIとの対話を通じて、どれだけ深い思考ができるかを試す、ということですね」


修士郎はノートにメモを取りながら、新たな選考プロセスの構築に向けたアイデアを整理していく。


「例えば、出願者にAIとディスカッションをさせて、その内容を評価するのはどうでしょう?エッセイの内容をもとに、AIが疑問を投げかけ、それにどう応答するかを見ることで、その人の思考力や論理的展開の巧みさがわかるはずです」


橘教授は腕を組んで考え込む。


「確かに、エッセイや研究計画書だけでは本当にその人が考えたかどうかを判断するのは難しい。だが、リアルタイムの対話なら、即興的な思考力や応用力が試される」


「ええ。しかも、AIが相手ならば、全員に公平な条件で評価ができます。評価基準としては、AIの質問に対してどれだけ的確に回答できるか、独自の視点を提示できるか、そして論理展開の整合性も考慮に入れるべきでしょう」


「なるほど。これは興味深いアプローチだな」


橘教授はそう言いながら、ホワイトボードに「AIとの対話型選考プロセス」と書き込む。


「ただし、問題もある」


修士郎が付け加えた。


「AIの質問のレベルをどのように設定するかです。あまりにも簡単だと差がつかないし、難しすぎても測定が困難になる」


「それならば、出願者のエッセイや研究計画書の内容に応じて、AIの質問レベルをカスタマイズするのはどうだ?」


橘教授の提案に、修士郎は即座にノートに書き留める。


「いいですね。個別最適化された対話形式の選考。これなら、事前にAIで書かれたものを準備しても、その場での応答力が試される」


「となると、AI選考システムの開発にはいくつかのステップが必要になるな」


ホワイトボードに新たな要件を書き込みながら、橘教授は整理を進める。

1.出願者のエッセイや研究計画書を分析し、その内容に応じたAIの質問リストを作成

2.出願者がAIと対話する環境を構築し、その内容を記録

3.AIの質問に対する応答を評価し、論理性、独創性、思考の深さを判定する評価基準を設定

4.AI選考の結果と従来のエッセイ評価を統合し、総合的な選考指標を策定


修士郎はその内容を見つめながら、今後のスケジュールを確認した。


「次は、このプロセスがどの程度実用的かをテストする必要がありますね。まずは試験運用を行い、実際にどのような評価結果が得られるかを確認した方が良さそうです」


「そうだな。では、次回の会議までに、試験的にAI選考を実施するためのモックアップを作ってみるか」


「了解です。まずは、テストデータを用意しましょう」


こうして、AIを活用した新たな選考プロセスの構築が本格的に動き出した。AIを使いこなす学生を、AIによって選別するという未知の挑戦が、ここから始まる。

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