Side - 15 - 30 - わたしのつみ -(挿絵あり)
Side - 15 - 30 - わたしのつみ -
私の名前はリーシャ・ユーキ、17歳です。
ギャラン大陸にあるデボネア帝国の貴族令嬢・・・でした。
・・・今、お屋敷の外にはたくさんの武器や、農具を持った人達が居て、お父様やお母様、このお家に残ってくれた2人の使用人の方達が家具を集めて扉が開かないように頑張っています。
元々このお家で働いていた使用人の何人かは、・・・私に親切にしてくれた人も・・・お外で他の人達と同じように武器を持って、このお屋敷の扉を破ろうとしています・・・うぅ・・・ぐすっ・・・怖いよぅ・・・。
2年前、この帝国の皇帝陛下や皇族の人達が誰かに殺されてしまいました。
皇帝陛下は私たち貴族や平民の人達に酷い事をしていたのでとても恨まれていました、誰もが皇帝陛下が死んだ事を喜んでいたのです、これで自由になれる・・・って。
でも怒りをぶつける人が急にいなくなり、虐げられていた平民の人達の怒りは生き残った私たち下級貴族に向かいました。
皇帝陛下に引っ付いて、利益を得ていた上級貴族も同じ時期にみんな殺されたのに、・・・下級貴族は平民の人達と同じように虐げられていたのに、・・・ただ国民が虐げられているのを何もできずに見ていただけ・・・他の貴族も同罪だ、殺せって、・・・誰かが言ったのをきっかけにして大規模な暴動が起きたのです。
・・・ひぃっ・・・下の階でガラスが割れました・・・怖いです・・・お父様やお母様は大丈夫でしょうか・・・。
この帝国は皇帝陛下を頂点にして、その陛下の側近の上級貴族達が中心となって、・・・下級貴族や平民の人達を力で従わせていました、まともな状態じゃなかったのです。
でもそんな事を知らない多くの国民は、「貴族=我々を酷い目に遭わせた悪」って思っています。
生き残った私達下級貴族は平民の人達に紛れて逃げる事ができません、私たちの左頬、左肩、それと背中には帝国貴族の証である赤い刻印が刻まれています。
それに皇帝陛下への絶対服従を意味する外れない首輪も、・・・外を歩けば貴族だとすぐに分かるのです・・・。
私達は運が悪かったのです、扉が破られなくても、このままお屋敷に閉じ込められて・・・、食料が尽きて飢えて死ぬか・・・火を放たれて焼き殺されるかもしれません、・・・うぅ・・・こんな人生・・・あんまりです・・・。
「もう少し・・・もう少し皇帝陛下が死ぬのが早かったら・・・お前だけでも逃がせたのに・・・」
お父様が涙を流しながら私に言った言葉です。
そうなのです、皇帝陛下が死んだのは私が15歳の時、私がお城に連れて行かれ首輪の儀式を受けて、背中にも大きな刻印が刻まれた10日後だったのです・・・。
この首輪が無ければ、顔の刻印はお化粧で隠して、難民に紛れてエテルナ大陸に逃げる事もできたのです。
エテルナ大陸ではこの首輪を付けている人は重犯罪者の奴隷だけ、首輪を付けた私達がエテルナ大陸に逃げても人間として扱われないと言われています、・・・それならここで優しいお父様やお母様と一緒に死んだ方が楽なのです・・・。
外の人達が叫んでいるのが聞こえます、「俺達が飢えているのにいい物食いやがって」「贅沢な暮らしをしてきた報いを」「俺らの家族を返せ」・・・。
わからないのです、・・・ぐすっ・・・いいものって何?。
飢えて死んでいなかっただけで罪なのでしょうか、毎日私たち家族はお腹を空かせていました。
配給の食料が長く滞って、薄くて具のちょっとだけしか入っていないスープ、お庭で育てたわずかなお野菜や小麦を練って作った小さなパンが一切れ、これを1日一回食べた事が私の罪なのでしょうか?。
贅沢な暮らしなんてしていません、でも・・・雨風を凌げるお屋敷で寒さに震えながら薄いシーツにくるまって寝たのがいけなかったのでしょうか。
小さな頃から上級貴族の子供達から酷いいじめを受けました。
頭から泥水をかけられたり、靴を舐めろって言われて泣きながら跪いて舐めた事もあります、それに・・・首輪の儀式が済んたからと、お城の地下に無理矢理連れて行かれて、上位貴族の男の子達に・・・酷い事をされました・・・。
皇帝陛下が死んで話が無くなりましたが、16歳になったら辺境の・・・加虐癖のある太ったおじさん貴族に嫁ぐ事になっていたのも・・・、外の人達が言う贅沢で良い暮らしなのでしょうか・・・もう・・・分からないのです・・・。
怖くて泣いていると下の階が静かになりました。
大好きなお父様は、お母様は無事なのでしょうか、絶対に出ちゃダメだって言われていた私のお部屋、朝から動けず怖くてお漏らしをしてしまいましたが・・・、着替えるお洋服がもうありません、寒くて全部暖炉で燃やしてしまったのです、・・・怖いけど・・・様子を見に行こうかな・・・。
そう思った時、私のお部屋の扉が乱暴に開かれました、・・・あぅ・・・あんなこと言ってたけど怖いです・・・死にたくないです・・・ひっく・・・死ぬなら一度でいいからお腹いっぱい食べて・・・。
「誰かいるのか?」
ひぃっ、誰か入って来ました、ここで居るって返事をするバカは居ないのです、・・・私の命はここまでなのでしょうか・・・上位貴族の男の子達に何度も汚されて綺麗じゃなくなった身体ですが・・・、これ以上恥ずかしい思いをするくらいならお父様に持たされているこの小刀で自害を・・・。
あぅ・・・手首をちょっと切っただけで凄く痛いです!・・・ぐすっ・・・怖いよぉ・・・。
入ってきた人が私のお部屋の奥に移動します、お部屋の扉が開いているので今なら廊下に逃げられます、動くでしょうか、私の足、震えてうまく走れなかったらどうしよう・・・、昨日から何も食べてないから力が出ないよぅ・・・、でも最後にお父様とお母様のお顔を見てから死にたいです・・・。
私は隠れていたベッドの隙間から廊下に飛び出しました、壁に体をぶつけながら廊下を走って階段を転げ落ちるように1階へ、・・・あぅ、最後に足がもつれて階段を4段くらい飛ばして顔から転がり落ちましたぁ・・・。
「リーシャちゃん!」
お母様が私の名前を呼びます、もし神様がいるのなら・・・お願いです、死ぬ時はお母様と一緒に・・・、そう思って顔を上げると目の前には見た事もないような大きな男の人、どこかの国の騎士様でしょうか、鉄の兜を被ってこちらを睨んでいます。
・・・あぅ、怖くて、・・・またお漏らしをしてしまいました・・・恥ずかしい・・・もう・・・涙と鼻水でお顔がぐちゃぐちゃです。
お父様が捕まっていた腕を振り解き、私を庇って大男さんの前に立ちます、お父様かっこいい・・・ちょっと前ダサいって言ってごめんなさい・・・、リーシャはお父様の娘で幸せでした・・・。
男の人が口を開きました、訛りのある聞き取りにくいデボネア帝国語・・・声だけで震えるほど威圧感があります・・・。
「我々はローゼリア王国騎士団・・・暴動は制圧した・・・貴様等に危害は加えない・・・食料と引き換えに・・・この屋敷を借りたい・・・国の復興を手伝ってくれ」
そこで私は空腹と恐怖で意識を失ったのです。
リーシャさん
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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