Side - 15 - 25 - みなとまちでおみせをひらくのです -(挿絵あり)
Side - 15 - 25 - みなとまちでおみせをひらくのです -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です。
「はい、確かに、・・・こちらは家の全ての鍵と権利書になっております」
「・・・ありがとう、・・・ございましゅ」
「ありがとうっすー」
今、私はコルトの町の不動産屋さんに来ています。
私達がこの街で借りている海の見える素敵なお家、遂に購入する事にしたのです!。
最初は長く住む予定じゃないから勿体無いなぁって思ってお父様と相談した結果、しばらく借りて気に入ったら買う事にしていました、・・・それで住んでみて・・・とても気に入ったのです!、この街が気に入ったし、このお家も大好きになりました、だから私が一生懸命貯めた自分のお金で購入したのです!。
私のお家の財力からすれば、この街の半分くらいの土地や家を買っても痛くも痒くもないのですが、私の家族は超お金持ちなのにそんな意味の無いお金の使い方は誰もしません、私もこの街周辺の土地やお家、全部あげるって言われたらいらないって言うだろうし・・・。
私はお家の権利書が入ったカバンを抱きしめてご機嫌で不動産屋さんを後にしました、あとは役場で所有者手続きと、・・・滞在手続きを終了して住民登録すれば、私はこの街の正式な住民になれるのです!。
「・・・ふふふ、買っちゃったぁ、・・・僕のお家・・・」
「良かったっすねー、前の持ち主の売り手さんも希望どおりの金額で売れて喜んでたし、・・・でも旦那様が買ってくれるって言ってるんだから買って貰えば良いのに・・・」
「・・・いいの、これは僕が魔道具を開発したり、・・・特許を取ったりして貯めたお金で買った僕のお家なの、・・・領民の人たちの税金や・・・お父様がお仕事をしたお金じゃないの、・・・僕が自由にできる、・・・僕のお家がこの素敵な街に欲しかったの!」
「・・・うーん、なんとなく分かるっすね、リゼルくんの立場なら欲しい物ってほとんど手に入るじゃ無いっすか、でもやっぱり自分のお金で買った時の嬉しさって良いもんっすからね、私も自分のお金で初めての剣買った時は嬉しくて抱いて寝ちゃいましたから」
「・・・剣を抱いて寝たら切れて怪我するんじゃ・・・、でもやっとお家をもっと可愛く改装できるね、・・・お休みの時はこのお家で海を見ながらのんびりするんだぁ、・・・ふふっ・・・楽しみだなぁ・・・」
とても可愛い私のお家なのですが、外観が少し古臭くて、茶色に塗られた塗料が所々剥がれてきていたのです、だから、タダーノみたいな真っ白でおしゃれな色に塗り替えたいし、内装にも手を加えたいなって思ったの・・・。
次に訪問した役場ではカルロ町長さんが手続きをしてくれました、この街に住みたいから正式に住民登録したいって言ったら驚いていましてけどね、やはり自分の生まれ育った街に愛着があるのか、その後はとても喜んでくれました。
登録は私の今の性別、リゼル・フェルドでやってもらいましたから、この街でいる時の私は男の子です、普段と違った性別で暮らすのも楽しいだろうし、この街でもっともっと楽しいことをやって過ごしたいなぁ、それと、お家の横にある納屋を改装してそこで薬草やお薬を売るお店をやる予定なのですよ、ちゃんとその為の手続きもやっちゃいました。
これからの私はお薬屋さんのリゼルくんなのですよ、・・・ふふふ、正体を隠して2つの顔を持つ女って言うのもかっこいいのです!、スパイ映画みたいなのです!。
「この街にはお医者が1人居るのですが、本格的な薬を売る店がなくて、売店で売ってる簡単なやつを買うか、特殊な薬は隣町まで買いに行っていましたから助かりますよ」
「・・・一応、体が弱いって言う設定で、・・・最初のうちは7日のうち3回くらい、午前中だけ開店する感じかなぁ、暇な時や他のお仕事が無い時はお店開けてもいいし・・・」
「それでも大丈夫です、お年寄りなんかは手数料払ってお仕事が終わった漁師さんや駆け出しハンターの人達に隣町まで買いに走ってもらってましたから、・・・あと街のお医者さんも結構な年齢になっていまして、後継者をどうするかって話が出てたんですよ、簡単な治療ができて、医療免許があるって言うだけでも大助かりなんですよ」
そんな事を言いながらカルロ町長さんとお話ししていると、この前トシを襲った3人の子達の話になりました。
「まさかあいつらがそんな事をやらかすとは・・・って感じですね、大人達に対して普段はいい子の仮面を被っていたようです、他の子供達に聞くと出るわ出るわ・・・、悪さして他の子達に罪を被せていました、罪を被せられた子達は報復が怖いから言い出せなかったようでして、・・・トシローさんだけは反発して喧嘩を売っていたようですね、だから目を付けられて今回の事件に至った訳です」
とんでもない悪ガキだったようですね、私に刃物を向けて殺そうとしたのです、捕まったのは自業自得、いい気味なのです・・・、そう思っているとシャルロットさんが。
「あぁ、人を傷つけるの手慣れてたみたいっすから、他にも余罪がありそうっすね」
「えぇ、魔物寄せを撒いた2人組は隣町で捕まりました、その2人の証言もあって彼らを街に連れてきた3人は有罪確定、これで慈悲の星が1つ消えて2年ほど・・・未成年だから・・・更生施設送りになる予定でした、余罪を調べると一番多い奴で18件、一番少ない女の子でも12件、これでまた3人とも星が一つ消えます、まぁちょっと重めの軽犯罪の積み重ねだから更生施設は半年くらいかなぁ?、そんな事を考えてた矢先にあいつらやらかしましてね」
また何かやったのでしょうか?、本当に懲りませんね、子供だから罪が甘くなるとでも思ってるのでしょう・・・。
「役場の隣にある衛兵の留置場に3人別に入れていたんですが、あいつら脱走したんですよ、警備してた衛兵が1人重傷、主犯は1番の悪ガキのあいつです、靴の裏に鍵開け用の針金と刃物を隠し持っていたようです、見習いハンターで斥候やってたらしくて、・・・我々も油断していました、女の子の居る鉄格子の鍵を開けて仲良く脱走、残った一人の男の子の鍵も開けて一緒に脱走しようって誘ったようですが、そいつはもう罪を重ねるのはヤバい、嫌だって拒否して殴られて留置場の中で少しの間ですが気絶、気付いてすぐ上の衛兵詰所に知らせに行きました、こいつはまだ更生の余地がありますね」
「せっかく私達が被害届、取り下げて無かった事にしてあげたって言うのになんてアホな奴らなんっすか!」
シャルロットさんが怒ってますね、私達貴族への殺人未遂は問答無用で重罪なのです、星が一つ消えて、3年くらい監獄行きです、未遂だしいくらなんでもそれは可哀想だからって私が町長さんに頼んで私たちへの傷害罪は取り下げてもらったのです!、なのにそれが無駄になったのです!、私があの時町長さんに下げた頭を返しやがれ!、なのです!。
「それだけじゃないんですよ、重傷を負った衛兵の人なんですが、利き腕をやられましてね、もう剣が持てないって事で衛兵の仕事は退職、奥さんに子供が生まれたばかりだって言うのに可哀想でね・・・、それに被害者はタダーノさんの友人でして、タダーノさんはそりゃもう怒ってましてね、リゼル様と同じようにまだ未成年で可哀想だからって取り下げる事になってたトシローさんへの殺人未遂の被害届、出しちゃったんですよ、」
「・・・え、それって・・・」
「お察しの通り、魔獣寄せで1つ、軽犯罪の積み重ねで1つ、脱走と傷害で1つ、星が全部消えてトシローさんの件で4つ目、捕まったら奴隷落ちになります、彼らの親も・・・前から時折問題を起こしていた人達なのですが・・・自分達が可愛いのか、賠償金を払いたくないのか、切り捨てたようです、もう息子、娘の縁は切ったから好きにしてくれってね、今日の朝、街を出て引っ越すからって手続きに来ましたよ、賠償金の事があるから退出届は受理しなかったんですが・・・先ほど職員が訪ねて行ったら家は空っぽ、早々に街から出ていったようです、逃げ足の早い事で・・・、そのうち彼らも捕まって賠償金を毟り取られるでしょう」
「・・・奴隷落ち・・・」
「そうです、奴隷落ちです、捕まったら間違い無くそうなるでしょう、どうします?、取り下げた被害届、出しますか?、ここまでクズな奴ら庇う必要無いでしょうし、賠償金も少ないでしょうが入ると思います、名前は出さず貴族2人に対する殺人未遂って事にできますけど・・・」
「リゼルくん、どうしましょうか、私はどっちでもいいっすけど、・・・怖い思いしたんだから出しましょうよ」
「・・・そうだね、・・・カルロ町長さん・・・出しておいてもらえるかな・・・、ただ、逃げなかったもう一人の男の子には出さないで欲しいの、・・・できるかな?」
あいつら反省すると思ったのに・・・もう絶対に許してやらないのです!、慈悲は無いのです!。
色々あって、3日ほど街を留守にしていたのでタダーノの味が恋しいのです、ちょうど夕方だしお昼じゃなくて夕方の料理も美味しいのでお店に寄るのです!。
「シャルロットさん・・・お腹空いたから、・・・今日の夕食は、タダーノで食べない?」
「いいっすね!、あそこの夜ごはんも美味しいっすよね!」
「・・・うん、夜は自分で作ったり、屋台の食べてたから・・・久しぶりだね」
タダーノの前まで行くとちょうど夕陽が沈むところで、後ろの海と、お店の白い壁が真っ赤に染まってとても綺麗です、お店に入るとマスターが驚いています。
「おぅ!、坊主とシャルちゃん、3日もお昼来なかったから心配したぞ、・・・ちょっと待っててくれ」
慌てて外に出て向かいの宿屋に走って行きます、・・・何人かテーブルでお客さんが食べていますが、お店を放っておいていいのでしょうか?。
「はい、ミートパスタとシーフードリゾット2つ、貝の煮込みスープ1つで、・・・1820ギルっすよー、毎度ありがとうっす!」
マスターなかなか帰ってこないからシャルロットさんが食べ終わったお客のお勘定をしています、店員さんがサマになってますね・・・。
「うぉー、遅くなっちまった、シャルちゃん勘定してくれてたのか悪い悪い!、ちょっとこの前の礼をって言っててな、連れてきた!」
「あ、マスター遅いっすよ、はいこれ、さっきまでの伝票3つと、預かってたお金ね、一応確認しておいて欲しいっす!」
「すまん、・・・それにしてもシャルちゃん接客うまいな、ウチの店で働く気はないか?」
「えー、そうっすかぁ、でも私一応別にお仕事あるっすから・・・」
「シャルロットさん、・・・もし僕が落ち着いたら・・・時々でいいから、やってみれば?」
「えー、リゼルきゅん、私クビっすか?、ひどいっす!」
「冗談だよ・・・、でもなんか・・・シャルロットさん、生き生きしてたから、こういうお店、合ってるのかなって・・・つい」
「おっと、忘れてた、トシと・・・こいつの親父で俺の弟、トゥーリックだ、道の向かいで宿屋をやってる、この前のトシの件で・・・遅くなっちまったが礼を言いたいそうだ」
「・・・初めまして、私はトシローの父親で、トゥーリックと申します、呼びにくければリックとお呼び下さい、先日はウチの息子の命を救っていただきありがとうございました、ほら、トシもお礼を言いなさい」
「あぁ、リゼル、あの時は本当に助かった、感謝してる、ありがとうな・・・」
「・・・うん、いいの、・・・トシが無事でよかった・・・むかつく奴だけど・・・死んでほしくなかったの」
「・・・ムカつくは余計だろ!、まぁ事実なんだけどな」
トシのお父さんの方を見ます、・・・うわぁ、お上品でダンディなおじ様・・・でもどこかで見た事が・・・あ、そうだ、あの人に似てる!、お父さんの持ってた漫画で胸に7つの傷の漢が活躍するやつのイチゴ味の方で「粟立つ」とか「童貞が」とか言ってたヒゲのおじさん、確か・・・修羅の国の・・・羅将ハン!。
「トクン・・・」
あ、恋に落ちる音が聞こえてきたのです、まさか、・・・私、このおじ様に・・・恋しちゃった?、・・・って言うのは無いのです!、私の恋愛感情は枯れ果てているのです!、だったら誰が・・・って後ろを見ると・・・。
「しゅてきな方・・・しゅき・・・」
わー、シャルロットさんが小説みたいな恋しちゃってるのです!、顔が真っ赤なのです、足をもじもじさせてるのです!、こんなシャルロットさん初めて見たのです!。
「・・・あの、ごめん・・・リックさん、・・・この人、シャルロットさん・・・普段はこんな感じじゃ・・・ないの・・・」
役に立たなくなってるシャルロットさんをフォローしようと思って、リックさんの方を見ると・・・なんで顔を赤くしてシャルロットさんをガン見してるんですかぁ!。
「おやぁ・・・リック、お前・・・まさか・・・」
マスターさんまで、なんでニヤニヤしてるのですかぁ!。
「親父、ここじゃ邪魔になる、テラスには誰も居ねぇ、向こうで話そうぜ・・・」
呆れながらトシはお父さんのフォローに入りました、私はシャルロットさんですね。
「・・・シャルロットさん、・・・大丈夫?、向こうでお話し・・・しよ」
私達はシャルロットさんと、リックさんをテラスに放り込んでお店の裏に行きました。
「・・・やばい、・・・あの親父が・・・一目惚れしたようだ・・・」
「・・・うん、シャルロットさんもポンコツに・・・なっちゃった・・・」
「お前は良いのかよ、あのお姉さん、お前のとこの護衛・・・従業員か何かだろ」
「良くないのです、・・・お仕事あるのに、・・・あんなにポンコツになったら・・・お父様に怒られるのです」
「なぁ・・・あの人やリゼルって・・・何者?」
「・・・訳あって、言えないのです、・・・名乗るほどの者じゃ・・・ないのです」
「お前らって一時的にここに滞在してるだけだろ、あんなになった2人、これからどうするよ・・・」
「・・・僕は・・・ここで、・・・お薬のお店を開くのです・・・さっき、役場で手続きしてきたの・・・だから、・・・ここでしばらく暮らすのです」
「・・・そっか、じゃぁしばらくは兄貴分として面倒見てやるよ、休みの時は遊びに行こうぜ!」
「うん、・・・僕は、・・・トシの・・・子分だから・・・ついて行ってやるのです・・・」
「で、あの2人の事、本当にどうするつもりだ?、何も喋らないで見つめあってやがるが・・・」
後ろからマスターが悪そうな顔して割り込んできました、本当にどうしたらいいのですかぁ・・・。
コルトの街のレストラン・タダーノ
コルトの街のリゼルの家
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素全くありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1〜月1投稿になる予定です。
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