Side - 25 - 1 - かんしゃさい -
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リィンちゃんへ。
お元気ですか、リーゼロッテです。
今日私はミラージュ大陸の北東、ディグニティ王国にある小さな町デリカに来ています。
この大陸にはレパード帝国という大きな国がありますが、その属国として大陸の隅にひっそりと存在しています、お勉強が苦手なリィンちゃんでもそれくらいは知ってる・・・よね?。
博士がディグニティ王国の王都に行ったことがあると言うので博士の転移魔法陣で王都まで送ってもらい、デリカの町には私の愛車、アイヴォウMarkXシャコタン仕様で街道沿いを少しづつ移動、夜は危険なのでローゼリアの私のお家で休みつつ、コツコツと距離を稼いで一昨日ようやく到着したのです。
博士って凄いよね、若い頃は大陸中を回って研究素材を集めてたらしいから、大体のところには行った事があるのです、だから私は甘えてあちこち転移で送ってもらっています。
この国、この地域はレパード帝国の影響が強く、帝国と友好国であるエテルナ大陸の共通言語が辛うじて通じるのです、・・・とは言っても私は人とおしゃべりするのが苦手なのでディグニティ王国の言葉を書いた紙を見せての筆談みたいな感じになりますが・・・、小説にあるような言語チートや翻訳魔法なんて存在しないのです!。
町並みは古いです、とても歴史を感じるのです!、ローゼリア王国が建国されるより前からあるらしく、ここはまるで時間が止まっているみたいです。
大きな建物はなくて、1階建てか、宿屋だと2階建て、昔の教会の尖塔が町で一番高い建物かな・・・、かと言って寒村っていう雰囲気ではなくて、少し小さ目の田舎町っていう感じですね。
当然なのですがエテルナ大陸の国々とは空気がまるで違います、あぁ別の大陸に来たんだなぁっていう感じ?、この国の王都はどちらかというと都市の近代化が進んでレパード帝国の色が強いようですが、この町の雰囲気は王都とは随分違っています。
お家は石垣を積み上げた上に煉瓦で壁を作り、支柱や屋根は木が使われています、これも古いというか色がくすんでいますね、町全体の色彩が淡くくすんでいます。
でも魔導灯が道のあちこちにあり、お家やお店の中は暖色のタペストリーやカーペットが使われているので雰囲気はとても暖かいでのす。
そしてもうすぐ雪で閉ざされる季節が来るのです、町の人は家篭りの支度に忙しそう・・・。
私が泊まっている宿は2階建て、この町で一番大きな宿屋で1階が食堂や雑貨を扱ったお店、2階が宿泊者のお部屋になっていました。
宿の人はとても親切にしてくれましたよ、小さな女の子が一人、まだこの辺では珍しい四足歩行の魔道具アイヴォウに乗って現れたのだから。
そしてフードを深く被ってお顔の傷は隠していたのですが、杖を使って歩いていたら宿の女将さんにとても心配されました、宿のおじさんが私を小脇に抱えて中に運ぼうとして、私がとても怯えたので、「あんたの顔が怖いからだよ!」って奥さんに怒られていました、ふふっ・・・ちょっと悪いことをしたかな。
抱えられた時にフードが外れてお顔の傷が見えた時もおじさん、「かわいそうになぁ!」って泣いちゃってました、とても親切で暖かい人たちです。
私はあらかじめ紙に書いていた文章を見せて、「ローゼリア王国からきました」、「世界中いろんな所を旅して回っています」、「今日はこのお宿に泊まりたいのですが空いていますか?」、「できればこの町のおすすめの場所があれば教えて欲しい」って、聞くと、女将さんはエテルナ大陸共通語が喋れるようで、とっても優しくお話しをしてくれました。
なんと今日は宿泊客が全然いなくて貸切り、この時期はまず町の外から観光客など来ないのだそうです。
それと、あと2日もすると子供達が仮装してこの辺りの家を訪ねて来るよって教えてくれました。
雪のために家篭もりする直前、この町では感謝祭が開かれます、もう外はとても寒いのですが、仲の良い人達がお家に集まってお酒を飲んだり美味しい食事をしたり・・・。
そこに町の子供達が仮装をして訪れます、手に小さな魔導灯を持って、お友達と近所の家々を巡るのです、手には自分たちの作った藁で編んだお飾りを持って、そして家を巡回してそのお飾りと美味しいお菓子を交換するのです。
子供達の持ってきたお飾りは家の軒先に飾って年を越すまでそのままにするのだとか・・・、エテルナ大陸ではあまり見ない風習なのです、・・・私が理世だった時には似た風習がありましたけど。
感謝祭までの2日間、私は宿のお部屋で魔道具やお薬を作ったり、町を散歩して綺麗な場所で絵を描いたり、食堂で美味しいご飯を食べたりと、のんびり過ごしました、以前と比べたら知らない人に対する恐怖は無くなってきてて・・・でも若い男の人は凄く怖いですが・・・、一人でもなんとかやっていけそうな気がします。
さて、感謝祭当日の夜、子どもたちが私の泊まっている宿までやって来ました、夜といっても町は魔導灯で明るく、町の人も交代で子供達を見守ってくれているから安全です、っていうかこんな田舎町だから夜中に外を歩いていても大丈夫そうですね。
私は宿の奥さんに教えてもらって子供達に渡すお菓子を作ったのですよ、美味しそうにできましたー、それを子供達が作ったお飾りと交換したのです。
このお飾りはとても綺麗なのでリィンちゃんにもひとつ送りますね、お部屋の扉に飾ってこちらの年越しの雰囲気を味わってください。
ではこの辺でお手紙は終わりにしましょう。
私はもうしばらくこの町に滞在しようと思います、この町の人達は暖かくて居心地がいいのです、外はとっても寒いのですけど・・・、目的を決めている旅でもないので、気に入った町には長く滞在したいのですよ。
「こんな感じでいいのです?」
私は王城でベッドに寝転がり、お菓子をもきゅもきゅ食べながら、持ってきたお飾りや私の描いた絵、デジカメで撮った写真を珍しそうに眺めてるリィンちゃんに聞きました。
「うん、凄くいいね、町の雰囲気がとっても伝わってくるよ、っていうか何で貴方までお手紙と一緒にこっちに来てるのかな?、お手紙をやり取りする筈の転移魔法陣からいきなり貴方が出てきて私、飲んでたお茶が鼻から出たんだけど!」
「いやちょっとお手洗いを借りようかと・・・・」
「どこの世界に女王陛下の私室にまでお手洗い借りに来る人がいるの!」
「ここにいるのです!」
「いや違くて!」
「向こうの町ってまだ田舎過ぎて下水道が普及してないのです!、だからお手洗いが暗くて汚いのです!、昨日なんて足がいっぱいある虫が私の太ももを走り抜けたのです!、絶叫して下着を履かずに泣きながらお手洗いを飛び出したから宿の奥さんに大笑いされたのです!、それに・・・急には止められなくてちょっとだけ撒き散らしたのです!、どうせリィンちゃんしか使ってないんだからそんなケチくさいこと言わないで欲しいのです!」
「まぁいいけど、・・・でも一人であんな遠い所まで行けるなんて凄いな、時間かかったでしょ」
「あんな遠いところって言うけどリィンちゃん絶対町の場所分かってないでしょ」
「そ・・・それくらい分かるし!」
「まぁ転移で行ったり帰ったりしてたからそんな旅してる感じはしなかったのです、こんな調子で世界中を旅すればいいの?」
「・・・貴方放っておいたら一年中お家に引き篭もってるからね、私はなかなか世界中を旅なんてできないから色々貴方が見て回ってその様子を私にお手紙で知らせて欲しいなぁって思ったの」
「でもあの町の人達は優しかったから何とかなったけど、乱暴な人が多い地域や男の人がたくさん居るところはまだ怖くて無理なのです!、リィンちゃんも一緒に来るのです!、絶対二人の方が楽しいのです!」
「いや、だから私女王様」
「お忍びで諸国漫遊すればいいのです!、リィンちゃんの仮の身分はちりめん商会の奥様で、私は助さんでも格さんでも何でもいいけど、とにかく庶民をいじめる悪を見つけて成敗するのです、ちょうど偉い人と一緒に居るんだから一度、「頭が高ぁい!、控えぃ!、控えおろう!」ってやってみたかったのです」
「ごめん、リゼちゃんが何言ってるのか全然分かんない!、ってか私ミラージュ大陸で権力なんて持ってないよ・・・」
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素全くありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1〜月1投稿になる予定です。