Side - 12 - 12 - しつじさんこわい -
※2024年2月1日 内容を加筆修正しました。
Side - 12 - 12 - しつじさんこわい -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳でございます。
今日は博士の所で魔術じゃなくて一般教養のお勉強です・・・私は魔法ばかり勉強してたから一般教科が遅れているのです。
博士も専門じゃないから適当だけど、学校に行ってる子が使ってる教科書を読んで分からない箇所を質問しながら進めています。
「えと・・・この大陸の住民は、全員生まれてすぐに役場に行って瞳水晶に手を当て・・・一人一人異なる魔紋を国に登録、それと同時に、「慈悲の3つ星」と言われる星を割り当てられる・・・」
「そうだな、瞳水晶を使って国籍や住民登録を一括でやってくれる便利な仕組みだ、この星の意味は知ってるか?」
作業机に向かって怪しい魔道具を組み立てながら博士が私に説明してくれます。
「うん、お父様から教わったの、重大な犯罪を犯すと星が一つずつ減って、3回目で全部無くなるの、無くなった状態で更に犯罪を重ねると・・・奴隷落ち?」
「そうだな、あれは役場で水晶に手を翳すと星の数が派手に表示されるから犯罪歴があるとすぐにバレる」
「博士ぇ、重大な犯罪って言うけど、その線引きはどうやってるのです?」
「その辺は法律家になる奴が詳しく勉強するやつだな、待ってろ」
博士が椅子から立ち上がって書棚の奥にある古い本を出して来ました。
「刑事罰の種類を書いてる本だ、これを読んでおけ」
「うん」
「単なる喧嘩・・・人を殴ったり怪我をさせたくらいじゃ星は減らない、もちろん訴えられて裁判で負けると治療費や慰謝料、罰金は取られるがな、軽犯罪を10回繰り返して有罪になると重犯罪1回と見做されて星が一つ減る、正当防衛や決闘を除く殺人は状況にもよるがほとんどの場合星が減る、もちろん強盗や強姦も減るぞ」
「正当防衛って?、盗賊に襲われて返り討ちとか?」
「相手が犯罪者の場合は殺人に数えられない、討伐依頼が出てる奴や指名手配されてるなら逆に報奨金が出る」
「命が軽いなぁ・・・」
「嬢ちゃんの前世?では違ってたのか?」
「うん、法律に従って刑罰を決めてたよ、奴隷になる事は無いし、死刑も余程の事をやらないとならない」
「それでよく治安が維持できてたな」
「有罪になったら長い間刑務所に入らないとダメだけどね、私が住んでた国は治安が良かったなぁ、でも他の国はかなり治安が悪い所もあったよ」
「そうか・・・この大陸は奴隷落ちする恐怖で住民を脅してるから治安は良いだろ」
「うん、日本・・・前世で住んでた国と比べても軽犯罪も凶悪犯罪も少ないね」
「奴隷になると首輪を嵌められて魔力が使えなくなるし、服を着る事も許されず生殖能力も奪われる、一度奴隷になると平民に戻る事は無い、しかも死んだとしても物扱いだから弔ってもらえずゴミと一緒に焼却処分だ、奴隷は見た事あるだろ」
「うん、子供は10歳になるまでに一度は奴隷見学体験があるよね、その時に商会で力仕事させられてるの見たよ」
「人間扱いされてないしあれを見たら誰だって奴隷にはなりたくないと思うだろ、ちなみに重犯罪を4回重ねる前・・・星が3つ無くなった時点で奴隷の首輪は装着できる、一般人にはあまり知られてないが魔導具師の間では常識だから覚えておけ」
「あの首輪は外れないの?」
「一度嵌めたら外れないようになってる、古代遺跡から出土した首輪を元に建国の大魔導士が改造を施して量産出来るようにしたらしい、付けられた人間の魔力と強く結び付くから無理に外しても首輪を身体から離した瞬間死ぬようになってるな」
「わぁ・・・」
「さて、出生届と役場での手続きはこれくらい覚えていれば良いだろ、分からなければ役場で聞いたらその都度教えてくれる」
「うん」
「明日は俺の研究を手伝ってもらうとして、明後日は休んでもいいし、ここに来たらハンターギルドや商用ギルドの事について教えてやろう、これもギルドに行って聞けば済む事だから完璧に覚えなくてもいいと思うぞ」
「別に休まなくていいよ、ありがとう博士、じゃぁまた明日」
「あぁ・・・お疲れ」
そしてまた博士は作業机に向かって魔導具を組み立て始めました、私は勉強道具を片付けてお父様が迎えに来たらそのままお家に帰ります。
コンコン・・・がちゃ
「リゼたん、帰るよー」
「あ、お父様!、ちょうど終わった所だよ」
「おかえりなさいませ旦那様、お嬢様」
お屋敷に帰るといつものようにセバスチャンさんが出迎えてくれました。
うちは家に戻って来ても多くの貴族家でやっているようなメイドさんや使用人さんを整列させて「おかえりなさいませ!」なんて事はしていません。
仕事の効率も悪いしそんな事してもらっても嬉しくないのです、お祖父様が当主だった頃はやってたみたいですが、お父様が「非効率的だ」と言ってやめました。
ガチャ、・・・バタン・・・
「ふぅ・・・疲れたぁ」
さて、お部屋に戻った事だしお夕食まで時間がありますね、今日は何の話をしましょうか、そうですね・・・私のお家に居る執事長さん・・・セバスチャン・アッツ―シーさんについてお話しするのです!。
元々は私が今よりもっと小さかった頃から「じぃじ」って呼んでいたとても優しい初老の執事さんだったのですが、私が呪いの刃で重傷を負って少し経った頃から持病の痔が悪化したらしくて息子さんと交代したのです・・・それが去年の話で・・・。
その執事長さんはとても怖いのです、お顔は理世だった頃によく聴いてた「バクチク」で歌っている人によく似ています。
いつも気配を消して私の背後をとるのです!、・・・それは前のじぃじの時も同じなのですがお顔が怖いので心臓に悪いのです。
普段は警戒しているから大丈夫だけど、寝起きで油断している時にいきなり背後から「おはようございますお嬢様」ってとても良い声で話し掛けるのです。
私は、朝はいつもおしっこに行きたくなったら目が覚めるのですが、そこで突然声をかけられたらびっくりして・・・お、・・・お漏らしをしてしまうのです!。
この前なんかお布団から出ていなかったから・・・お布団を濡らしてしまって、・・・その後お部屋のお掃除に来たメイドさん達に、「あら?、お嬢様ー?、あらあらー、・・・ふふっ」って生暖かい目で見られたのです!、とても恥ずかしかったのです!。
寝起きを襲うとは卑怯なのです!、何度も気配を消して後ろに立たないでって言ってるのに・・・うぅ・・・ぐすっ・・・酷いのです・・・。
それに・・・私がお着替えしてる時も、扉に鍵をかけている筈なのにいつの間にか私の背後にいて、「よくお似合いですお嬢様」って言うのです!、どこから入ってくるのでしょう?、気味が悪いのです!。
お父様に、「あの執事長さん怖い、鍵をかけても私のお部屋の中に入ってくるの・・・」と訴えても「大丈夫、彼は無害だから居ても気にしないでいいよ」って言うのです。
お着替えを見られたら気にするのです!、そう言うと、「お着替えやお風呂ならマリアンヌとコナンザも一緒に覗いてるじゃないか」ってとんでもないことを言い始めたのです!、私のお着替えは見せ物じゃないのです、それに何でお父様がそんな事知ってるのですか!。
それはさておき、執事長さんが怖いのはそれだけじゃないのです、執事長さんのプライベートなお部屋は元々このお屋敷の3階だったのですが、今は地下にあってそこで寝起きしているのです。
いつも寝起きに驚かされるから一度くらいは驚かせてやろうと早朝に執事長さんのお部屋に行ったら、・・・お部屋に棺桶が置いてあって、そこから出てきたのです!、それで・・・目が笑ってない笑顔で・・・「おや、おはようございますお嬢様」って言ったのです、怖かったのです!、血を吸われるかと思ったのです!。
お父様には「あの執事長さん変だよ、棺桶から出てきたし・・・」と訴えても、「ははは、彼は朝に弱いんだよ、気にしないでいいよ」ってさらっと流されたのです!、・・・仕方ないのです、今は見逃してあげますが、いつか私が正体を暴いて灰にしてやるのです!。
それにしても、前の執事長だったじぃじのことが心配なのです、健康に見えたのに持病の痔が悪化したそうで、領地の田舎で狩りや釣りをして余生を過ごすらしいのです。
そのじぃじにはとても可愛がってもらっていて、昔から薬草や調薬について教わっていたのです、じぃじがこのお屋敷を後にする少し前に・・・。
「お嬢様はとても優秀でいらっしゃるのでじぃじが教える事はもうほとんどありませんが、この本を差し上げましょう、ここに我が一族が長い時間をかけて編み出した暗殺・・・いえ調薬技術の全てが書かれています、どうか大切にしてくださいね、お嬢様」
と言って一冊の大きな本をくれたのです。
中には今まで教えてもらった薬草の知識やお薬を作る手順が詳しく書かれていました、一族という事はじぃじの息子さんであるセバスチャンさんにも貰った事を言っておかなきゃ・・・と思ってこの本を見せたのですが。
「私は調薬や毒についての才能が無いようで、どちらかというと暗器を使う方が得意なのですよ、一族の知識は私の弟が全て受け継いでおります、この本は写しですので、お嬢様が保管下さい、今まで一度も一族以外に出したことのない秘術も入っております、親父殿はよほどお嬢様が大切なのでしょうね、危険なものもありますので、どうかこの本は他の人間に見せない様お願いしますね」
などと訳の分からないことを言われたのです、どうやら私が持っていても良いようですね。
コンコン・・・
「お嬢様お夕食の準備が出来ました」
セバスチャンさんが呼びに来てくれました。
「はーい、お腹すいたぁ、今日のお夕食は何かなー」
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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