Side - 15 - 9 - みなとまちにすむのです -(挿絵あり)
Side - 15 - 9 - みなとまちにすむのです -
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳です。
「やーっと着きましたねー、お嬢さまぁー」
ハンター風の服を着たシャルロットさんが言いました、実は私達はコルトの街の入り口手前にある小屋の中でお着替えをしていました、小屋を準備してくれたのはシルベスター叔父様です。
入れ替わりに小屋で待機していたシャルロットさんに似た背格好の騎士さんがシャルロットさん風のメイクと髪を逆立てた状態で、私に似せたお人形(お母様作!)を抱いてこの隣の街をいくつか経由して領地のお屋敷に戻ります。
この騎士さんはノリノリで、私のお人形を腹話術の人みたいに操って、まるで私が生きて動いてるように見せています、そこまでしなくてもいいのに・・・。
もちろんこれは敵を欺く偽装で、これからしばらくの間私達は変装してこの町で暮らす事になっています!。
「・・・遠くから見ても綺麗だったけど・・・本当に素敵な街だね」
半ズボンにシャツ、首に巻いたマフラーの中に長い髪を隠して男の子の服を着た私がシャルロットさんに答えます。
髪は一度短くしてもいいかなって思っていたのでこの機会に髪を切ろうと言ったらお父様やお母様に泣いて止められたので仕方ないのです。
そんなわけで、今の私は男の子です!、せっかく異世界転生したのだから別の性別になりたかったなーって何度か思った事があって、だから今のこの格好はとても楽しいのです!。
左腕と左足の傷は白いタイツのようなものと長い手袋のようなもので隠しています、「ようなもの」って言ったのはこの世界には石油製品がなくて、ナイロン繊維やポリエステルがないのです!。
だから伸縮性が悪くて動きにくかったり窮屈だったり・・・、今私が付けてるのはその中でもかなりマシな魔虫の出す糸を紡いだ物、・・・地球のシルクみたいなやつ?・・・で、私が試行錯誤して作った編み方で作る事によって本物のシルクみたいな感触が出ました。
私はそんなにお洋服の布について詳しくないのですが、理世だったころBamazonの通販でお洋服を買う時に生地の拡大写真が載ってるのを見た事があるのです、それを精一杯思い出してこんな感じかな?、っていくつか作ってもらってたらできちゃいました!。
異世界転生ものの小説みたいに都合よく魔法でお洋服の生地なんて出せないのです!、実はこれはお母様のファッションブランド、「リーゼ」の超人気作品にも使われているのです。
黒い眼帯、男の子のような服装、マフラーをして片手だけの長手袋・・・、私の中で眠っていた中二病心が目覚めます!。
「ククク・・・我の左手と左目に封印された龍が騒ぐわ・・・」
・・・言ってて鳥肌が立ちましたぁ、自分の中の大切な何かを失いそうな気がします・・・。
「・・・ふふっ、・・・自分の呼び方は何にしようかなぁ・・・」
「我も捨て難いけど、僕もいいなぁ、わーい、憧れてた僕っ子だぁ・・・、妾は・・・私、放っておいてもロリババアになるんだから、もっと年取ってからでもいいなぁ・・・」
「お嬢さまぁー、本当に楽しそうですねー」
シャルロットさんが私の独り言に割り込みます、シャルロットさん本当に例のお化粧してないと美人さんだなぁ・・・これで金属の鎧着たら「くっ殺」騎士さんだよー、お胸は控え目だけどね・・・、今度お家でやってもらおうかなぁ・・・。
「うん・・・僕・・・とっても楽しい・・・よ」
あれ、シャルロットさんが口元抑えて蹲ってるよ・・・なんで?。
「お嬢様・・・それ破壊力すごいんでやめてください可愛すぎて私昇天してしまいますやばい可愛いもう無理大好き」
一息でセリフ言い切りました・・・、シャルロットさんの耳元で囁きます。
「シャルロットさん・・・誰が聞いてるか分かんないから・・・お嬢様いうのダメ、ボクの名前は・・・リゼル・・・だよ」
ぼたぼたぼたー。
あぁーシャルロットさんが鼻血を出してしまいましたぁー。
街の入り口は特に警備もなく、街の中央にある役場に行って受付で身分証を見せたら滞在申請は完了です。
ゆるい坂道を上って役場に到着しました、石畳の雰囲気も王都とは違うし道のあちこちに貝殻を埋め込まれていて、今日はいいお天気なので光が当たると宝石みたいにキラキラしてとても綺麗です!。
いよいよこれから街に住むための滞在手続きなのです、私が領主の令嬢だとバレたらまずいのでどうするのかと思ってたら、領主代行であるシルベスター叔父様が手を回してくれていて、手続きを町長さんがしてくれたのです。
なんでもシルベスター叔父様が騎士団の部隊にいた時の戦友らしくて、とても信頼できる人なのだそうです、私の滞在先にこの街が選ばれたのもそれが理由なのだとか。
役場の瞳水晶があるお部屋に通されました、町長さんが人払いをした後優しく微笑んでいます
「リーゼロッテ・シェルダン様、コルトの街にようこそ、私、町長を務めさせて頂いている、カルロ・ミテコイと申します、滞在手続きは私が全て行いますのでご安心を、こちらでは男性のお姿で過ごされるようですね、念の為にこちらで過ごされるお名前をお聞きしても?」
シャルロットさんが答えました。
「お嬢様はこの町では「リゼル・フェルド」という名前で過ごされます、ある商会の跡取りお坊ちゃんという設定でー、私はお世話係のただのシャルロット、家名もいるならシャルロット・カノンとでもしておいてくださーい」
「かしこまりました、このことを知るのはこの町では私だけです、ご安心してお過ごしください」
「・・・あ、ありがとうございます・・」
「おや、お可愛らしい声ですな、何か町でトラブルがあった時には私のところへいらして下さい、滞在されるお家の方はこれから私がご案内します、あなたの叔父上には昔大変お世話になりました、賊に農具で襲われた時に命を救われたこともありましたね、なので遠慮なくお申し付けください」
そして私とシャルロットさん、ミテコイ町長さんとで借りているお家に向かいました。
「お嬢様ぁー、お家に荷物置いたらお食事に行きましょうよー」
「では、私がお勧めのお店を紹介いたしましょう」
「・・・あ、ありがとうございましゅ・・・」
新しい街、新しいお家で、これから何かとても楽しい事が起きそうな予感がするのです!。
理世だった頃に読んでいた小説だと、街の中でお財布を盗まれて捕まえた孤児の子供が実は優秀でお屋敷に迎えて将来の側近になるとか、街のならず者に絡まれて、それを私(正確にはシャルロットさん)が制圧、だけどならず者は実はいい人達で、そのうち「お嬢!」とか言って慕ってくれて、後々私の力になってくれたり。
闇の組織を作るのもいいなぁ、街の有力者の娘さんとお友達になったり!、そうだ!、先に確認しておきましょう。
「ミテコイ町長さん・・・・あなたのところに・・・・娘さんって・・・いる?」
町長さんが答えます。
「カルロでいいですよ、うちは今年16歳になる息子がおりますね」
「・・・そう・・・」
ダメでしたぁ・・・、いえ、まだまだ先は長いのです!、これからいっぱい楽しいことをするのです!。
お店に案内してくれた後、カルロ町長さんはお仕事があるので帰ってしまいましたが、シャルロットさんと2人で食べたお食事は本当に美味しかったのです!。
海に面したレストラン!、ちょっとお高そうな感じでしたがお値段は手頃で王都で食べるよりずっと安いのです!、この街は田舎なので観光で来る人は少ないから地元の人のためのお店ばかりなのです。
そして美味しいのです!、お魚のムニエルやパエリアみたいなご飯!、そう、お米なのです!、王都ではお米はあるのですがパンが主流であまり食べられなかったのです!。
それと魚介スープ、理世だった時はうどんの国に住んでいたのでカツオやイリコみたいな魚介の出汁は大好きなのです!。
「お嬢様ぁ!、・・・じゃなくてリゼル君!、これ!、これ美味しいですー!」
美味しいものが大好きなシャルロットさんのテンションが爆上がりなのです、一応まだ警戒もしてて、私の席は壁際一番奥、この街自慢の綺麗な海が見えないのです!、でもシャルロットさんに負担をかけたら申し訳ないので我慢です。
そのうち領内に潜む刺客ををシルベスター叔父様が全部プチッってやってくれると思うし、防御結界の魔道具が完成したらテラスで海を見ながら食べられるのです!。
「・・・あー、眠い・・・」
「博士ぇー帰ったよー、あれ、居眠りしてるし」
「・・・おう、嬢ちゃん、戻ったか、なんだ男みたいな格好して」
「あー、向こうで隠れて暮らしてる時は私男の子っていう設定なんだぁ、どう?、似合う?」
「まぁ、モテそうではあるな、・・・で、こっちと向こうを転移で行き来できるようになったんだな」
「うん、でも行った事ないところには転移できないって仕様なんとかならないかなぁ、街に向かってる時に2回も襲われちゃったよー、そうだ、これお土産ね、向こうの街で人気らしいの、小魚を煮詰めて干したやつ、頭からボリボリいけるからお酒のおつまみにでもして」
「この仕様は変わらんなぁ、新しく魔法陣構築し直したらいけるかもしれんが・・・、なんだこれ美味いじゃねぇか!」
「ねぇねぇ博士ぇー、防御結界の魔道具、まだできないの?」
「もうちょっと待て、大体できたがまだ微調整が残っててな」
「そっかー、それができたら襲われても安心だね、護衛の騎士様には付いていてもらってるんだけど、次はいつ襲われるんだろって毎日怖いんだぁ・・・」
「・・・これからの嬢ちゃんの予定はどうなってるんだ」
「2〜3日おきにこの研究室に来るつもり、日本で解析してもらってるこっちの水の検査結果がもうすぐ出るらしいから、この後避難先の街に戻って・・・一度日本と通信して、・・・いろいろやってまたこっちに戻ろうかなって、あーん忙しいなぁ」
「俺も自分の研究やってるから頻繁に来なくていいぞ、ここも安全とは言えんからな、来るときはまた連絡くれや」
「安全じゃないって・・・博士めっちゃ強いじゃん、じゃぁこっちと避難場所の転移ができるようになった報告はしたし、とりあえず今日は帰るね」
リーゼロッテさん(リゼル・フェルド 男装)
※イラストはCHARAT GENESISで作成しました。
https://charat.me/genesis
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素全くありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1〜月1投稿になる予定です。