Side - 15 - 8 - みなとまちにかくれるのです -
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こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳でございます。
私は今、愛車のアイヴォウMarkⅡでシェルダン領の田舎街に向かっています。
あ、アイヴォウというのはオーニィ商会から発売されている馬形四足歩行魔道具で、私が生まれた頃に初号機が発表されて、モデルチェンジを繰り返しながら最近は馬や馬車から置き換わっている人気の乗り物なのです!。
私が9歳の時に設計して特許を取った魔素による音声伝達技術とオーニィ商会の技術力で共同開発、発売されて若者を中心に大人気となっている「魔導ラディーオ」の売り上げが予想以上に大きくて、魔導ラディーオ発売5周年を記念して社長のジェイムスおじさんからご褒美で新品の最新型アイヴォウを1台もらったのですよ!。
それを私がかっこよく魔改造したのです!、魔導回路の徹底見直しによる効率化で大幅な出力向上と装備の無駄を排除した軽量化、理世のお母さんの愛車トヨタMarkⅡを参考に足を切り詰めて体高を低くした私だけのシャコタン仕様なのです!、ボディ色は紫にしたかったのですが、現物を見たらオリジナル色の白もかっこよかったので悩んだ末に白にしました。
でも私の魔改造したMarkⅡの本体を見たジェイムスおじさんは試乗した後、シャコタン以外の仕様をぜひ市販化したい!って目をキラキラさせて私に迫ってきたので仕方なく了承しました、・・・っていうかあの時の社長の目がガンギマリですごい怖かったから断れなかったのです・・・、私だけの仕様だったのに・・・、別にお金はいらなかったのですが、私が改造した魔導回路にいくつかの特許が取れそうな項目が入っていたようで魔導回路の特許使用料までもらっちゃいました、いいのかなぁ・・・。
それはさておき、私はアイヴォウMarkⅡに跨り風を切って天気のいい田舎の道を走っています、海が近いのか風に乗って潮の香り、サイドの荷物入れにはポータブルの魔導ラディーオ、そこからは最近開局した放送局から流れる爽やかな音楽、曲間でDJさんの軽快なおしゃべりを聞きながら・・・。
そうなのです!、これが私の目指した音楽のある優雅な生活なのです!、まだ音楽は放送局のスタジオで吟遊楽団さん達に頼んで演奏してもらってる生放送なのですが、そのうち魔素を使った記録媒体で録音出来ないかなって試行錯誤中なのですよ!。
あ、ちなみにこの時間の番組スポンサーは私個人なのです!、お昼ちょうどに流してもらってます、「お昼休みはうきうきリスニング!」なのです!。
「お嬢様ぁー、この辺で休憩しましょうよー」
後ろから馬(これは生きているやつなのです!)に乗った私の専属護衛をしてもらってるシャルロットさんが声をかけてきます。
そうでした、私のアイヴォウMarkⅡは魔力が動力源なので疲れ知らずなのですが、お馬さんは定期的に休まないといけないのです。
「・・・・うん」
私は答えます、シャルロットさんは女性騎士さんで、騎士の名門のブルナカノン家のお嬢様なのです。
男性を怖がる私のためにお父様が雇ってくれました、でもちょっとこの人見た目が男性より怖いのです!、普通にしてたらすっごい美人さんなのに周囲を威嚇するためって言って、髪を逆立て、怖そうなメイクをしています、私、最初は怖くて挙動不審になりましたが、お話ししているうちに少しずつ仲良くなったのです!、なんでも可愛いものが大好きなんだとか。
「ふー、疲れたぁー、ところでお嬢様ぁー、もうすぐドック先生の作ってる常時発動する防御結界の魔道具、完成するんですよねー、そしたら私、お役御免になっちゃうんでしょうか?」
「・・・いえ、・・・一人でどこかに行くの・・・私・・・怖くて無理なので・・・魔導具出来てもお世話になると・・・思います・・・」
「そうっすかー、よかったぁー、実はここお給料すっごい良いんで!、それにお嬢様が遊びに行く所ってどこもご飯が美味しいんっすよ!、できれば末長くよろしくお願いしますねー」
「・・・はい・・・よろしく・・・です」
「お嬢様ってばほんとに人見知りですよねー、ご家族の前だと普通なのに・・・、まぁ挙動不審なお嬢様も可愛いんですけどねー」
「声が大きかったり・・・・乱暴な・・・男の人・・・怖いの・・・シャルロットさんは、・・・優しいから・・・・好き・・・・だよ」
「かー、嬉しいこと言ってくれちゃってー、もうずっとお嬢様についていきますんでよろしくー」
道の横に作られた休憩スペースでお茶を飲みながらそんなことを話していると、私たちが通ってきた道を馬車が走ってこちらに向かってきます、休んでいる私たちの前に止まると馬車の扉が開き・・・。
「ヒャッハー!」「フウー!」「オラオラァー!」
ひぃ!、またなのです!、また私を狙った刺客なのです!。
「やかましい!」
シャルロットさんが大剣の一太刀で3人の刺客を葬ります、って言っても峰打ちですよ、アバラの骨は全部逝ったかもしれないですが・・・。
呪いの刃の論文が私に無断で発表された頃から私は散々な目に遭っているのですが、その後、空間転移魔法陣と時空転移魔法陣が完成してその技術と開発者の名前が発表されてからは更に酷くなったのです!、毎日がとても怖いのです!。
呪の刃事件でリィンちゃんを守ったのが知れ渡ってからはそれを逆恨みした帝国の刺客に襲われ始めたのですが、それに加えて転移魔法陣の技術を盗む為に私を拉致しようとしたり、いらないって泣いて嫌がったのに無理やり押し付けられた褒賞や名声に嫉妬した貴族さんたちに消されそうになったり・・・、もうチベットスナギツネみたいな表情でお家に引き篭もりたくなるくらいしつこく狙われるのです。
今日も一時的に身を隠す為に領地の田舎の小さな街にお家を確保してそこに向かっていたところだったのです。
王都から領地のお屋敷までは私の空間転移魔法陣を使ってシャルロットさんと一緒に来たのですが、避難場所のお家がある街には行った事がなかったのでこうしてアイヴォウMarkⅡに乗って移動していました、どうやら領地のお屋敷にも内通者が居るようで、どこから私の行動情報が漏れたのか分からないのでしばらく身を隠す事にしたのです。
「リゼたん・・・大丈夫?、こいつらちょっと叔父さんのところでごうも・・・いや、おしおきして来るから気にせず旅を続けてね」
どこから現れたのか、シルベスター叔父様が気絶した刺客の体を馬車に放り込みながら言いました。
「どこから湧いてくるんだろうねー、鬱陶しいなぁ、手足の1本か2本くらい貰わないと怒りが収まらないな」
ナイフを舌で舐めながら物騒なことをシルベスター叔父様が呟いていますが聞かなかった事にしましょう。
気を取り直してさらに道を進んでいくと、先程から漂う潮の香りが強くなり、上り坂だった道の先が開けて前に見えるのはゆったりとした下り坂、どうやら山を超えたようなのです、その先には青い海と空、灰色の壁と赤茶色のかわいい屋根のお家がいくつも海に向かって続いています、なだらかな斜面を背にして2つの港がある小さな街、地球で似た感じのところだと建物の雰囲気はテレビで見たクロアチアの港町っていう感じでしょうか。
「・・・わー、かわいくて綺麗な街!」
「シェルダン領北端の港街コルト、私も初めて来ましたー、ここはお魚が美味しいらしいですよー、お嬢様食べすぎて太らないようにしなきゃですね!」
「・・・それ、・・・シャルロットさんが食べたいだけですよね・・・」
これから私はこの町でしばらく身を隠すのです!、もちろん日本のお父さん達とは連絡を取りながら生身の身体で日本に行き来できるように実験は続けますけどね。
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素全くありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1〜月1投稿になる予定です。