Side - 16 - 70 - ごきげんよう -
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ざわざわ・・・
わいわい・・・
「ごきげんよう、お姉様」
「ごきげんよう」
・・・
「あらシェルダンさん、ごきげんよう」
「真理様、おはよ・・・じゃなくてごきげんよう」
「タイが曲がっていてよ」
「え?・・・タイ・・・曲がってる?」
「ふふっ・・・直して差し上げましょう、私も入学してしばらくはお姉様方によく注意されていましてよ」
「そう、なのですか?・・・ひぅ、お顔が近い・・・」
「・・・綺麗になったわ、身だしなみには気をつけてね」
「はい、ありがとうございます・・・」
セーラー服のタイを直してくれたのは雁城真理様、一つ上の先輩で15歳、彼女は風紀委員のお仕事で校舎の入り口に立って生徒達の服装に目を光らせています。
昨日に続いて2日連続で服装の乱れを注意されてしまいましたぁ・・・。
靴箱のところで上履きに履き替え趣のある校舎の廊下を進みます、教室に入るとふわっと漂ういい香り、すでに沢山の生徒が楽しそうに会話をしていました。
とてとて・・・
「あら、リーゼロッテさん、ごきげんよう」
「・・・ごきげんよう、・・・えと」
「夢寧ですわ、平泰夢寧」
「あ・・・夢寧さん、ごきげんよう、まだみんなのお顔と名前が覚えられなくて」
「リーゼロッテさんはまだ登校3日目ですから仕方ありませんわ、でも災難でしたわね、転入早々風邪を拗らせて入院なんて・・・もうお身体は大丈夫?」
「は・・・はい、もう大丈夫です」
「同級生なのだから敬語は必要ありませんわ、分からない事があれば遠慮なく聞いてね」
「うん、ありがとう」
この教室は着席自由、重厚な3人掛けの長机が教壇に向かって並んでいます、手に持っていた鞄を長椅子に置き夢寧さんの隣に席を下ろします、あ、スカートがシワにならないように注意しなきゃ・・・。
こんにちは、僕の名前はコナンザ・シェルダン、現在日本に留学中の14歳です。
この学校は大蛇宮女学院といって中高一貫教育の女子校です・・・そう、女子校なのです!、しかもお金持ちのご令嬢が通うお嬢様学校・・・。
僕は今その学校の中等部に通っているのです、薄いグレーのセーラー服を着て、お姉ちゃんの名前で!。
何故このような事になったのか・・・話は15日ほど前に遡ります。
「そういえば理世ちゃん、新学期が始まったけど偽装の為に留学扱いにしてあげた学校には行ってるのかな?」
「一番最初に学院長に会ってからは行ってないのです、学校には良い思い出が無いし・・・」
「でも短期間でも顔を出さないと卒業にならないよ、私の家・・・薄刃家の親戚が経営しているお嬢様学校だからある程度の配慮はできるけど卒業の条件だけは厳しいのだ」
ふるふる・・・
「嫌ぁ・・・学校怖い・・・」
「えぇ・・・」
これは田中家に遊びに来ていたアメリア様とお姉ちゃんの会話です。
「・・・学校」
何気ない会話の中にあった学校という言葉に僕は反応してしまいました、だってパパさんに借りたアニメのDVDや漫画には日本の学校の楽しそうな光景が描かれていたから。
「コナンザくんは学校に興味があるのかな?」
「うん、楽しそうだなって・・・僕は小さい頃から家庭教師の先生に教わってたから学校へは行ってないしお友達もできなかったの」
「学校行かなくてもコナンザは優秀だしお友達はラングレー王国に留学した時にできるだろうって話だったから・・・あ、そうだ、私の代わりにコナンザ学校通ってみない?」
「いいの?」
「うーん、コナンザくんの体格は理世ちゃんよりちょっと大きいから用意してた制服入るかなぁ・・・でも入らなかったらまた作ればいいか・・・」
「大蛇宮なら結衣ちゃんが通ってるなぁ、一度会ってコナンザの事を説明しておこうか」
「結衣さん?」
「コナンザは知らないよね、私の従姉妹の娘だよ、瀬良真衣・・・今は姓が変わって麗樫真衣になってるけど、真衣姉さんの下の娘さんが結衣ちゃん、今年で16歳だから高等部の2年生かな」
「麗樫真衣って・・・アンブレラ・スカイネット・エンタテインメントのやり手社長だよね」
「うん、もう亡くなってるけどアンブレラ・スカイネットを作った瀬良大樹は私の伯父さんで、その娘が真衣姉さんだよ」
「本家は徳島県で次男が継いでたから分家の方の瀬良かぁ・・・先祖としては一度挨拶しておきたいなぁ」
「今の家長の海斗兄さんはアンブレラ・スカイネットの本社があるアメリカに居るけど志麻伯母さんが引退して相談役になったから日本に居ると思う」
まだ会った事の無いお姉ちゃんの親戚の話が出ました、パパさんの一番上のお兄さんかな、徳島に居る従兄弟の大介お兄ちゃんの家族とはあの旅行から帰っても頻繁に連絡をとっています。
「アンブレラ・スカイネットは星噛の家とは取引があると言っていたが薄刃とは縁が無かったな、今後の事もあるから挨拶に行くのなら私も連れて行って欲しいのだ」
「うん、いいよ」
お姉ちゃんとアメリア様の話をまとめると、瀬良の長男、大樹さんはとても優秀で、一代で自分の作った会社をこの国を代表する巨大企業に育て上げたのだとか・・・。
その企業の名はアンブレラ・スカイネットと言って、傘下には同じ名前を持った不動産、製薬、証券、製鉄、電気、銀行、エンターテインメント・・・と数多くの企業を抱えているそうです。
元々は日本にあった本社をアメリカという国のサンフランシスコに移して20年、本社の周辺は傘下の企業が集まってラキューン・シティという一つの街のようになっているみたい・・・凄いなぁ。
実はパパさんの会社や龍之介さんのWebデザイン会社もアンブレラ・スカイネットの子会社、孫会社だったりするのです、でも本当ならグループ企業の社長にもなれた筈のパパさん、それから龍之介さんや大介お兄ちゃんは都会に出るのを嫌い、地元での生活を選んだみたい。
「まぁ、伯父さんの家は大金持ちだけど、うちはメイドや護衛に囲まれた窮屈な生活なんてしたくないから・・・特にお母さんは絶対に嫌だって言ってるし、一線を引いて普通の中流家庭っぽい生活してるの、あ、もちろん伯父さんの家族とは仲良しだよ」
うまい棒を齧りながらお姉ちゃんが言いました。
「瀬良の本家も地元の大地主だからお金持ってるよね」
アメリア様がコーラを飲みながら言いました、ちなみに今日のアメリア様の姿は美少女魔法騎士?リベラ・ロリータで王国騎士団の制服?を着ています。
「うん、周囲の山林は全部本家の土地だし、街の方にも不動産持ってるみたいだよ」
お姉ちゃんの親戚は大金持ちでした!。
ざわざわ・・・
わいわい・・・
キーンコーン・・・キーンコーン・・・
「あ、朝礼の時間だ」
「私、朝礼って苦手です・・・」
「あぁ・・・学院長のお顔、怖いですものね」
僕は席に座り、教卓の上にある大画面モニターが点灯するのを眺めています、これから学院長の朝の挨拶があるのです。
ぱっ・・・
モニターに映し出されたのはお髭を生やした筋肉隆々の中年男性・・・。
「わしが大蛇宮女学院学院長、御鬼厳妖である!」
きーん・・・
夢寧さんに聞いた話だけど、この学院長の挨拶で新入生の何人かは入学式初日に気を失うのだとか・・・僕はお父様のいかついお顔で慣れているので大丈夫だけど・・・。
「皆、しっかりと学業に励むように!、以上であるっ!」
それにしても声が大きいなぁ・・・。
・・・
あ、先生が教室に入ってきた。
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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