Side - 16 - 68 - ぜふぃりす -(挿絵あり)
Side - 16 - 68 - ぜふぃりす -
・・・
「誰も居ないね・・・」
ぬぎっ・・・
「寒っ!・・・」
ばさっ!
私の名前はカリーン・チッパイ、17歳。
今は真夜中、私は街を囲む外壁の上に立って翼を広げている、何故そんな事をしているのかというと・・・これから飛ぶ練習をするのだ。
激臭を放っていた封印の枷は何度も洗って臭くなくなった、その枷を外すと私の背中に生えている羽根が3倍ほどの大きさになる・・・まるで鳥人間だ。
「昨日はもうちょっとで対岸だったのに力尽きて川に落ちちゃった、死ぬほど寒かったから今日は頑張ろう」
空を飛ぶのは楽しい、地上から飛び立つのはまだ無理だけど高い場所からだと鳥が滑空するように飛べたのだ・・・。
本当は川のある方に飛ぶのは怖くて嫌なのだけど、魔導灯が少なく薄暗いここが誰にも気付かれずに練習できる唯一の場所・・・。
「さて・・・飛ぼうかな」
ばさっ・・・ばさっ・・・
「とぅっ!」
さぁぁぁ・・・
森の中の吊り橋を渡る時には怖くて震えたのに、落ちて死ぬ事がないって分かったら高い所でも恐怖を感じなくなった。
ばさばさっ!・・・
「あとちょっと!、頑張れ私、今日は服を着てるから絶対川に落ちちゃダメ!」
ばさっ!
とすっ・・・
「たっ・・・対岸まで・・・飛べましたぁ!」
街の外壁の上から広いマキシマ川を超えて遂に対岸へ降り立つ事ができた!。
枷を付けて上着を着る、これから魔物の死体を見つけて素材を回収するのだ、街のハンター達は昼間にやっているのだけど私は魔物に覚醒して暗闇でも普通に行動できるから誰も居ない夜中の方が動きやすい。
腕もすっかり元通り、剣も振れるし多少強い魔物が出ても問題無い・・・っていうか大暴走の後は本当に生きてる魔物を見かけない・・・でも30日も経てばまた森の奥から出て来るとペトラさんは言っていた。
頑張って稼いでユッキィさんに借りたお金を返さなきゃ・・・。
がさっ・・・
目の前で気配がした、剣を構える・・・。
がさがさっ・・・
(ますたぁ・・・)
ひょこっ・・・
「あ、ゼフィリスちゃん?」
(今日も遊びに来たのだぁ!)
「わぁぁぁ!、なんで服を着ないの!、昨日あげたでしょ!」
(だって・・・服は邪魔なのだ・・・)
「人の姿の時は着なきゃダメ!」
(巣に置いて来たの)
「・・・」
私の目の前に現れた全裸の女の子・・・に見える男の子の名前はゼフィリスちゃん、実は黒龍が人に変化した姿だ。
・・・
3日前の深夜、私は今日のように飛ぶ練習をしていた。
あと少しのところで川を越えられず、水に濡れた身体を拭いて防水仕様のリュックに入れていた服を着ていると今みたいに木陰から彼が現れた。
「誰だっ!」
「ぴゃぁ!」
まだ着替えの途中で半裸だった私に剣を突き付けられ、驚いた彼がこけた。
(ますたぁ・・・我なのだ)
頭の中で声が聞こえる・・・私が眷属にした魔物達との会話は・・・念話というらしいのだが・・・このような方法を取る。
でも人間を眷属にした覚えはないし、無意識にしたのであれば大問題だ!。
(ますたぁ、我が分からないのか?・・・これなら分かるだろ)
ぶぉっ!
私に向かって強い風が吹いたと思ったら目の前に「彼」が居た。
「ゼフィリスちゃん?」
「ぐるるるる・・・」
私の前には見上げるほど大きな漆黒の龍・・・黒龍、大森林の頂点に君臨するこの魔物は最悪な事にアンデッドドラゴンになっている、もし存在が知られたら大陸中の国に非常事態宣言が出されて騎士団が動く事になるだろう。
(そう!、我は黒龍ゼフィリス!、ますたぁの忠実な下僕なのだぁ!)
彼は炎龍のロプロスちゃんの次に眷属にした子だ、名前も私がつけた。
「わぁぁ、こんな所に来ないで!、ここ街のすぐ近くだよ、誰かに見られたら大変な事に・・・」
しゅるるる・・・
「あ、また人の姿に・・・でもゼフィリスちゃんって男の子だよね、どうして女の子の姿に・・・」
そう言いかけて私は彼の股間に視線を向けた・・・ちっちゃいのが付いてるし!。
(この姿は昔、一人で我を倒そうとした人間がいてな!、そいつの姿を真似ているのだ、人間の男は股の間にこれくらいの突起が付いているらしいから想像で付けてみたのだ!)
「そうなんだ・・・」
(本物を見ればもっと似せる事ができるぞ!、今度人間の男を襲って見てやろうかと・・・)
「それ絶対やっちゃダメだから!、それと・・・ゼフィリスちゃんと戦った人間って女の子だよね・・・その子はどうなったの?」
(知りたいのか?、なら教えてあげるのだ、我が頭から美味しく・・・)
「わぁぁぁ!、それ以上聞きたくない!」
(その人間の知っている事は全部ではないが我の中にあるぞ、だから我は少しだけ人間の生活に詳しいのだ!)
「・・・」
彼の話をまとめると、長く生きた上位の龍族は口にした事のある生物に身体を変化させる事ができるらしい、あの大きな身体がどうして人間・・・私と同じくらいの大きさになれるのだろう。
(我にもよく分からないぞ!、身体を・・・こう、ぎゅうーってすると、うにゅにゅーって小さくなるだろ、それから食った奴の形を思い浮かべるとできるのだ!)
「なるほど全然分からないよ・・・」
(ふむ、ますたぁはあの壁の上からここまで飛んできたのかぁ、だが我がこの前教えた通りにすればもっと遠くに飛べるだろう?)
・・・私はこの子を眷属にした後、短時間だったのだが飛び方を教わっていたのだ。
「龍と人間の身体は違うから同じにしてもこれが限界だよ」
(それで、ますたぁはこれから我と遊んでくれるのだよな!)
「いや、私はこれからお仕事・・・って、そんな悲しそうな顔しないでよ!、私は借金を返さないといけないから」
(しゃっきん?というのはよく分からないのだ、それは美味いのか?)
「食べ物じゃないよ、お仕事、働いてお金を稼ぐの」
(ますたぁはこれから・・・おかねをかせぐ?のか、我に何かできる事はないか?、お手伝いするぞ!)
キラキラ・・・
そんな期待に満ちた目で見られても・・・。
「うーん、ここよりもう少し奥の森に魔物の死体って無いかな?、この辺は他のハンター達に拾われてほとんど無いの、だから奥に行こうと思って」
(我はここまで飛んできたから分かるぞ!、ここからずーっと向こうの谷に羽根の生えた奴が落ちて死んでるのだ、ここに来る前にお腹が空いたから少し齧って来たぞ!)
「翼龍・・・ワイバーンかな、ギルド長が撃ち落としたって言ってたやつかも?、ねぇゼフィリスちゃん、私をそこに連れて行ってくれるかな?」
(もちろんいいぞ!、我は元の姿に戻るから背中に乗っていくのだ!)
ゼフィリスちゃんは人間の知識が少しだけあるようだけど言動は幼い、まるで小さな子供と話してるようだ、見た感じこの大きさの龍だと1000歳は軽く越えてる筈なのに。
・・・私にもし弟がいたらこんな感じかな?。
「そういえばロプロスちゃんとは一緒じゃないの?」
私はゼフィリスちゃんの背中に乗り、炎龍の女の子・・・ロプロスちゃんの事を聞いた、特に話題もなかったので世間話みたいな感じだったのだが・・・。
(ロプロス?、あぁ、我を齧ったあの赤い奴か?、喧嘩しちゃダメって言われたから我の方からは何もしてないぞ!)
「え、もしかして仲が悪い?」
(ますたぁを取り合った時に齧られたのだ、とても痛かった!)
私はロプロスちゃんを眷属にした後ゼフィリスちゃんにも攫われた、取り返そうとしたロプロスちゃんと壮絶な空中戦を繰り広げた挙句、私は勝利したゼフィリスちゃんの巣に連れて行かれてまた食べられてしまったのだ。
「あの時は私を咥えたまま空で戦うから死ぬかと思ったよ」
・・・
「凄く深い谷だね」
(我は目が良いから深くても上からこいつが落ちて死んでるの分かったぞ!)
「そうなんだ」
私はゼフィリスちゃんと一緒に魔物の死体があるという谷底にやって来た、ここは深い森の中で近くに道も無い、予想していたより街に近いけれどハンター達にも知られていない場所だと思う。
そこに折り重なるようにして2体の炎龍が死んでいた、お腹や頭に穴が開いているからギルド長の魔法でやられたのだろう。
龍族の死体は金になる、魔石や牙、逆鱗は特に希少部位なだけあって買取価格も凄く高い、鱗や爪も高価だ、それが2体も・・・これを持ち帰れば借金も殆ど返せるだろう。
「今日は高額なものを優先してリュックに入るだけ入れて帰ろう、残りは・・・ゼフィリスちゃん、明日の夜もここに連れて来てもらえるかな?」
(もちろんいいぞ!、早くおかねをかせぐ?を終わらせて我と遊んで欲しいのだ!)
「うん、この素材を換金したらいっぱい遊んであげるよ」
(我はあの壁の中にも行きたいぞ!、この前は上を飛んだだけだったが人間がいっぱいで楽しそうだったのだ!、この身体の持ち主によるとあそこの「けぇき?」というものはとても美味いらしい、我も食べてみたいのだ!)
「・・・でもゼフィリスちゃん、その頭の角をどうにかしないと街には入れないと思う、魔族と間違われそう」
私の言葉を聞いたゼフィリスちゃんが凄く悲しそうな顔をしたよ!、今にも泣き出しそうだ・・・。
(我は・・・まち?に入れないのかぁ?)
フルフル・・・
「角が目立つの・・・」
(これを消せばいいのだな!、凄く疲れるができるぞ!)
「できるの?」
(我に不可能は無いのだぁ!・・・んぐぐ・・・ぬうぉぉぉぉぉ!)
「ゼフィリスちゃん本当に大丈夫?、無理しないで、顔が紫色だよ!」
(もうちょっとなのだぁ!・・・きぇぇぇぇっ!)
しゅっ・・・
「あ、消えた」
ぷるぷる・・・
「だ・・・大丈夫かな?、凄く無理してるみたいに見えるけど」
(大丈夫っ・・・なのだぁ・・・ますたぁ心配するなっ・・・)
私はゼフィリスちゃんのお腹をつついた・・・。
つん・・・
(わひゃぁぁ!)
にょきっ!
「あ、角が生えた」
(まっ・・・ますたぁ何をするのだぁ!)
「お腹をつついたらどうなるかなって・・・でもこれくらいで角が出てたらダメだよ、街の中で急に角が生えたらみんな驚くと思う」
ゼフィリスさん(服+角)
ゼフィリスさん(服)
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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