Side - 16 - 66 - えんぜるぶらっど いちきゅうはちなな -
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俺の名前はミッキー・エンゼル、ニューヨーク市警の刑事だ。
今日は寝坊していつもより遅い出勤になっちまった、机に座ると山積みになった書類と乱暴に揉み消されたタバコの吸い殻が目に入り朝から気が滅入る・・・。
「ヘィ、ミック!、今日は遅かったじゃねぇか、所長がお呼びだぜ!」
同僚が俺に声を掛けた。
「なんだよ畜生!、やっと溜まった報告書片付けられると思ってたのに!」
そう叫んで所長室の方を見ると・・・やべぇ!、所長がドアの隙間から顔出して俺を睨んでるぜ!。
「はいはい・・・今行きますよー」
バタン・・・
「ノックくらいしたらどうだね・・・」
コンコン・・・
俺は入り口に戻ってわざとらしくノックする。
「・・・」
所長は無言で俺を睨んでやがる・・・何の用だろうな、嫌な予感がするぜ。
「座れ」
俺はソファに身体を沈め足を組み懐からタバコを出した。
「・・・ここは禁煙だ」
咥えたタバコをポケットに戻し、所長に話し掛けた。
「俺に何か用ですか所長、報告書を書くのに忙しいんですがね」
ダン!
「そんな事は報告書を出してから言え!、今月は一件も出てないぞ!」
「今日書こうと思ってたんですよ」
「・・・まぁいい、紹介しよう、今日からここに配属になったジョナサン・ランヴォーだ」
所長が顔を向けた方を見ると男が立っていた、すげぇ筋肉だな、シャツがパッツンパッツンだぜ。
「今日からこいつがお前のパートナーだ」
「ちょっ・・・ちょっと待って下さいよ所長!、俺は誰とも組まねぇって言ってるでしょう!」
・・・
「よぉ、聞いたぜミック、厄介者を押し付けられたんだってな!」
席に戻るとまた同僚が話しかけて来た。
「厄介者って?・・・あの筋肉野郎の事か?」
「聞いてねぇのかよ、あいつ、LAで何度も問題起こしてこっちに飛ばされたらしい、一般人を撃ち殺したって噂もあるぜ」
「・・・」
・・・
(エンゼルブラッド1987 第一話、冒頭で2人の出会い、会話シーン1(修正必要、街と警察署の様子を入れたい、ランヴォーの容姿の細かな描写もここに入れる?検討中)・・・)
・・・カタカタ・・・
カチッ・・・カチッ・・・
「保存っと・・・うーん・・・」
「何か悩み事か、姫君よ・・・」
「ぴゃぁぁ!、いっ・・・いきなり背後に立たないで下さい天空様!」
「我に悩みを言うてみよ、相談に乗ってやろうぞ」
「天空様に言っても仕方ありません・・・新作の小説でちょっと悩んでただけですので」
「しんさくびーえるしょうせつというやつか?、どれ聞かせてみよ、何か役に立てるかも知れぬぞ」
「そうですね・・・元々このお話の舞台は80年代後半のニューヨーク・・・腕は立つけど素行不良の刑事と、部下になった肉体派の若手刑事が主役・・・だけど80年代の街の雰囲気なんて映画や写真くらいでしか知らないし・・・いっそ現代を舞台にって思ったけど、それだとタバコ吸わせられないし、ハードボイルド路線で行きたいから刑事がパソコンでちまちま報告書って何か違うと思うの!、仲間を呼ぶ為に電話ボックスを探すシーンだって書けないよ、携帯あるもん・・・それに狭いボックスの中で濃厚で情熱的なキスをさせたら映えると思わない?・・・でね、この不良刑事は同性愛者で、80年代ってまだこういうのそんなにオープンじゃないでしょ、だから自分の性癖を必死で隠してるの、でも重い過去を持つ部下・・・マッチョさんの事だよ、彼と一緒に凶悪な事件を解決してるうちに友情が次第に恋へと変わって・・・あ、言い忘れてたけど不良刑事の方が攻めで・・・」
「・・・待て、一気に喋るでない!、それに言っておる事が何一つ分からんぞ・・・どうやら我のような凡才には理解できぬ世界のようだ」
ざわざわっ!
「・・・廊下が騒がしくなりましたね、誰かが死体を見つけたのかな?」
こんにちは、薄刃沙霧です、今私と天空様はニューヨークの中心にある高級ホテルの自室に居ます。
ここには今朝始末した2人も泊まっていました、一仕事を終えた私はシャワーを浴びて返り血を落とした後、持って来たノートパソコンに向かって新作小説の構想を練っていたのです。
余談ですがシャワーの時に確認すると巨乳女の回し蹴りを受けた腕は酷い青あざになっていました、これはしばらく痛みそうです。
一昨日この街に転移した私は2人の泊まっているホテルに滞在し、昨日一日かけて標的の周りに居る人員やホテルに設置された監視カメラの位置を調べたり、天空様の狗を使って2人の様子を監視したり・・・準備を整え今朝早くお仕事を決行しました。
標的の2人は政府が飼っている組織の構成員だけあってとても強かったです・・・でも私にはアメリア様から貰った秘密兵器がありました。
シャツの裏地に描かれた身体強化の魔法陣・・・起動させると常人の肉体と運動神経を10倍以上強化できるのです、魔力の供給源は単一乾電池程の大きさの金属塊、私は勝手に魔力弾と呼んでいるのですが・・・これを使うと3分間アメリア様の魔力が魔法陣に注がれる仕様です。
普通に考えて人間の拳はドラム缶を貫通できません、もちろん武術は是津林寺拳法伝承者の岳斎師匠に3年間鍛えて貰ったし、剣術も薄刃家に代々伝わる薄刃流を極めているので常人よりは強い自信がありますが・・・。
魔力弾は2つ使ったから残り3つ、悪い奴に襲われたとしてもある程度は使わずに対応できるだろうし、たぶん大丈夫だよね。
カタカタッ・・・
「ニューヨーク、危険区域、スラム街・・・行き方、検索っと」
・・・
「2人同時に・・・か、しかも護衛に付けたC I Aのエージェントまでが行方不明・・・」
カラン・・・
私は手に持ったグラスに口を付ける・・・ジャックダニエルの甘く豊かな香りが鼻腔をくすぐった。
「はい、昨日の2人に関しては謎の獣ではなく鋭利な刃物で斬首という事から別の者による犯行の可能性も・・・」
隣に座った男が私の質問に答えた。
「手掛かりは無いのかね?、痕跡くらいは残っているだろう?」
「ジョロキア・スコピルは素手で争った形跡がありました、壁や床に靴跡や拳の跡が残っておりましたので・・・身体には複数の殴打痕、死因は内臓破裂、絶命後に斬首されたものと判明、ムッチリーノ・ムッチンプリンは銃で応戦、その後弾切れで敗れたと推測されます、こちらの死因は斬首によるものです」
「報告ではボクシング元世界ランキング上位者と組織の中でも特に優秀な格闘技術を持った女・・・この2人をあっさり始末できる人間・・・そいつは化け物か?」
「彼女と争った場所にドラム缶が置いてあったのですが、調査班の報告では表面に拳の跡が確認されており、どうやら素手で缶を貫いたと思われ・・・」
「そのような事が可能なのかね?」
「常人離れした速さと力で突き入れれば或いは・・・武術の達人か何かでなければ不可能ではないかと」
「その前にも続けて2人か・・・生き残りは?」
「・・・一人です」
ワシントンDC、ホワイトハウス近くのビルでひっそりと営業を続ける酒場・・・貸切のカウンターに座って私はC I Aのエージェントと話している・・・ここは私が以前から使っている密会場所だ。
私か?・・・自己紹介がまだだったな、私の名前はクリボッチ・ルーズソクス、アメリカ合衆国大統領だ。
政府子飼いの組織に起きた連続怪死事件はより深刻な方向に進んでいた、これ以上弱体化せぬようにと私の命令で彼らに付けたC I Aエージェントにまで被害が及び始めたのだ。
「他に何か報告する事はあるかね?」
「2人と時を同じくして同組織のジャワティ武藤も例の獣によって殺害、ホテルの個室でした、そこに残されたメモに妙な事が書かれており・・・」
「妙な事?」
「はい、漢字・・・日本語で狗・・・現代ではあまり使われる事のない文字で犬の意味ですが・・・狗に憑かれた、どこに逃げても追って来る・・・と」
「意味は?」
「分かりません・・・ただ、死の直前にムッチリーノ・ムッチンプリンと通話していた履歴が残っていて、何かを彼女に伝えたのではないかと」
「彼女も死んだのだろう、分からないではないか!」
「・・・はい、それと、別の側面から事件を解明しようとしていた者からの報告があるのですが、あまりに非現実的で・・・」
「いいから報告しろ」
「日本の総理暗殺に向かったティナ・ブレットが失敗し、彼女を始末する為にゼンラ・マッパーノが日本に向かった事が全ての始まりで・・・帰国したゼンラが接触した者から順に殺害されているのではないかと」
「だがゼンラという男は早い段階で獣に殺されているのだろう?」
「はい、ですがそのゼンラと接触した人間が別の人間と接触後被害者に・・・その人間と接触した別の者が次の被害者に・・・まるでウィルスが人を介して伝わるように被害が伝播しているようだと言っております」
「そんな事がある筈がないだろう!」
「はい、私もそう思っておりますが、その者が言うには、未知の魔法・・・異世界人がこの件に絡んでいるのではないかと・・・」
「・・・」
そう、私は忘れていた、常識では考えられない事が起きている、事件の始まりは私が命じた日本の総理大臣暗殺だ。
異世界人は総理と会っているし地球人に対し友好的だと聞く、だがその異世界人が友人である総理大臣に危害を加えた者・・・我々に対し報復していると考えると・・・。
ぞくり・・・
「あの組織の人間と接触したC I Aエージェントを全員調べろ、接触後に誰と会ったか報告させるのだ、今すぐに!」
ガチャ・・・
「お前だけか?、遅くまで仕事ご苦労だな」
カタカタッ・・・
「あぁ、ボス、お酒臭いですね、どこでサボってたんです?」
「サボってなどない!、仕事の報告に行っていたのだ」
「そりゃ失礼しましたー、ニューヨークで死体の処理をしてた連中がさっき帰ってきましたよ」
「そうか、他には?」
「先ほどフロリダで最後の生き残りを警護してた4人のうちの2人が交代時間になっても来ないとラングレーの本部から連絡が・・・」
「何だって!」
「あの組織呪われてません?、うちに飛び火するの嫌だなー」
「今の時代に呪いなどあるわけ無いだろう・・・それからお前とジャックはすぐに警護してた連中が接触した人間を洗い出せ、「上」からの命令だ」
「ジャックさんは休暇でベガスに行ってますよー」
「ならエミーと・・・」
「ボス、どうしたんです?、急に黙って」
「お前・・・名前何だっけ?」
「わぁぁん!、ボス酷いですよぉ!、みんなの人気者ベラちゃんじゃないですかぁ!、疲れてるんなら仮眠室で休んだらどうです?」
「す・・・すまん、ド忘れしてたようだ、そうだな、ベラ・・・もう5年も一緒に仕事してるお前を忘れるなんてな」
「罰として今度ランチ奢って下さいねー」
ガチャ・・・
バタン・・・
「少しだけ横になるか・・・本当に疲れてるようだ、それに・・・今俺の影に犬みたいな耳が生えてるように見えたぜ・・・」
カタカタッ・・・
「・・・天空よ」
ずももももっ・・・
「呼んだか主殿、今我は薄刃の姫君とはんばぁーがーなるものを堪能しておったのだ、邪魔するでない」
「あの男が報告に行っていた「上」は分かったか?」
「あれに憑けた狗を辿って先ほど憑けた」
「何者か分かるか?、名前が分かれば尚良い、予想はついているのだが・・・」
「まだ彼奴の口から名が出ておらぬ・・・喰らえばすぐに分かるのだが」
「しばらく監視せよ・・・私は「向こう」で用事がある故ここには形代を置いておく、この組織の全員に狗を憑けておくのだ」
「皆喰ろうて良いのか?」
「いや、それは最後の手段になろう、できれば無関係の者は巻き込みたくない」
「主殿も丸くなったものよの・・・まぁよい、我は姫君の元へ戻るとしよう」
ずももももっ・・・
・・・
「明日からはマキシマで魔女と対面、理世ちゃんに会わせろと言っているが何の用だろうな、はぁ・・・最近忙しいなぁ・・・私の優雅なスローライフどこ行った?」
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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