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Side - 16 - 64 - うすばのひめぎみ にゅーよーくへいく -

Side - 16 - 64 - うすばのひめぎみ にゅーよーくへいく -


ざわざわ・・・


わいわい・・・


「それで、標的はどこですか?、天空てんくう様」


「・・・道を挟んだ向こう側・・・食事処にて肉料理を喰ろうておる乳が豊満な女がおるだろう・・・」


「あぁ・・・あの金髪ですか、それにしても下品な胸ですね・・・」


薄刃うすばの姫よ・・・そううらやむでない、人とはいつの時代も自分に無い物を望むものよのぅ」


「あ?・・・何か言いましたか天空様」


「いや、聞こえておらぬならそれでよい」


「聞こえております!」


こんにちは、私の名前は薄刃沙霧うすばさぎり、警視庁公安部に所属で役職は警部補・・・表向きはそうなっているのですが実際には世界中の諜報機関から黒猫と呼ばれ恐れられている男の補佐をさせて頂いています。


私の隣で話している男は狗神天空いぬがみてんくう、彼は人間ではなく、我が薄刃家を興した安倍晴明という名で知られているご先祖様が使役する式神・・・十二天将のうちの一柱。


では何故私が天空様と一緒にニューヨークに来ているのか・・・話は昨日の夜に遡ります。






「やぁ、沙霧ちゃん、今時間いいかな?」


久露鬼くろき警部補のオフィスで打ち合わせをしていた私達の前に突然アメリア様が現れたのです。


アメリア様というのは安倍晴明の本当のお名前です、彼女は不老不死で平安時代の日本に別の世界から転移魔法でやって来た異世界人・・・このオフィスには薄刃の一族に配られている指輪を目標に転移して来たようです。


「もう打ち合わせは終わりましたので私は席を外しましょうか?」


久露鬼くろき警部補が気を利かせて部屋から出て行こうとしています。


久露鬼くろき警部補にも関係する事だから一緒に聞いて欲しい、実は数日間沙霧ちゃんを貸して欲しいのだ」


「え・・・私ですか?」


お茶を淹れる為に立ち上がろうとする私をアメリア様が引き止めて更に説明を続けます。


「今私や薄刃の家が総理を暗殺しようとしていた組織を潰しているのは知ってるよね」


「はい」


もちろん知っています、暗殺実行犯のティナ・・・なんとかって娘のアパートで待ち伏せして、彼女を消そうと組織の仲間が押し入ったところを天空様が・・・アレしたの一緒に見ていましたから。


「天空は今アメリカに居て組織の人間を一人ずつ始末しているのだけど、ちょっと厄介な問題が起きてね、お手伝いを沙霧ちゃんに頼みたいのだ」


「それは・・・いいですけど、私、明日もお仕事が・・・」


「薄刃の家から交代要員を派遣してもらうように頼んだから大丈夫、事後報告になったけど久露鬼くろき警部補もそれで問題ないかな?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


私の代わりにアメリア様にお茶を淹れて来てくれた久露鬼くろき警部補が答えました。


「私が対処しても良かったのだけど・・・ちょうどマキシマの街・・・いや、向こうの世界で用事があって何日も離れるわけにはいかないのだ、天空の元へは私が転移で送るし帰りも迎えにいくから安心して」


「えと・・・それで私は何をすれば・・・」


「天空のいぬが食えない人間が居るんだよ、そいつの暗殺」


暗殺・・・それなら他の人間には頼めませんね、アメリア様や天空様の存在を知っていて人殺しの出来る人材なんてそう居ないだろうし・・・でも・・・。


「天空様でもダメな人物を私が始末出来るのでしょうか?」


「あぁ、力が強いとかそういうのじゃないのだ、標的は敬虔なキリスト教徒でね、どうやら元は聖職者の家系らしくて天空のいぬ・・・もののけの類や魔の者とは相性がとても悪い」


「・・・そういった理由なら、はい、分かりました」


「今あの組織は凄く警戒を強めていて常に複数人で行動してるし一般人を盾にしてるから天空が手を出すと関係ない人間も巻き込みそうなのだ、それは避けたいからしばらく行動を監視して人目の無い場所に誘い出すか・・・方法は任せるけどサクッと殺してもらえるとありがたい」


「あの・・・沙霧くんに人を殺させるのですか?」


久露鬼くろき警部補が心配そうな顔をしてアメリア様に尋ねました、そういえば私が直接人を殺してるところ、警部補には見せていませんでしたね。


「心配いりません久露鬼くろき警部補、私は薄刃家の次期当主なので「そういう」訓練は受けていますし、今まで十人ほど殺しています」


「なん・・・だと・・・」


驚く警部補にアメリア様が答えます。


「天空も一緒だから大丈夫だよ」


「いえ、勢い余って相手を殺しそうになっているところは何度も見ているのでそこは驚いていないのですが・・・沙霧くんが次の薄刃家の当主なのですか?」


「え、驚くのそこ?」


・・・確かに身に覚えがあります、でもあれは拘束しようとしたら暴れたり、私を襲おうとしたからつい手が出てしまって・・・それに次期当主という事も伝えていませんでしたぁ!。


「・・・えーと、私には兄が居るのですが彼は優し過ぎるというか、気が弱くて・・・成り行きで私に」







・・・その翌日、私はアメリア様の転移で天空様のところに送って貰いました。


天空様はティナなんとかさんのアパートに押し入った暗殺者にいぬを取り憑かせ、そのままアメリカに帰国させました。


組織内部に潜入した天空様といぬは暗殺者と接触した組織構成員を次々に始末していったようです。


「我が喰ろうた男の知識によるとあの乳女と右隣の男は仲間であろう、左隣の者は分からぬ、雇われた関係の無い者かも知れぬな」


私達は向かいのカフェから道を挟んだレストランを眺めています、天空様の不気味さもあって賑わっているカフェなのに私達の周りだけ空席・・・。


「では私が巨乳女を殺るので天空様は男の方を・・・」


「いや、男の方も臭うのだ・・・信仰深い異教徒の香りがする故、我のいぬが食らうのを嫌がっておる」


「アメリア様なら認識阻害の魔法で近付けるのになぁ・・・」


「我が主が「向こう」で多忙なのは誠の話であるが、姫君に此度の仕事を任せたのは別の理由がある」


「え・・・そうなのですか?」


星噛ほしがみの姫に脅され望まぬ散財をしたのであろう?」


なるほど・・・あの紗耶香クソニートに車を買わされて泣いていたのを見たアメリア様が私にお仕事を・・・お小遣い稼ぎ的なものでしょうか?、でも私は副業で結構儲けてるのだけど。


「それに・・・米利堅メリケン国を舞台とした物語を作っておろう、下調べの為に訪れたいと考えているが多忙な事もあり諦めていた・・・」


「なっ!、なんで知ってるのぉぉぉ!」


ざわっ・・・


いけない、静かなカフェで叫んじゃった・・・って!、そんな事より確かに次の新作はニューヨークっぽい大都会を舞台にした男同士のバディものを書いてたけど・・・。


「・・・何で天空様が私のBL小説の内容を知ってるんですか!」


「覚えておらぬか?、姫君の影に我が潜んでおった事があったであろう」


がしっ!


「こらこら、我の顔を掴むでない、痛いではないか」


「わ・・・わた・・・わた」


「ん・・・何だ?よく聞こえぬぞ」


「私の頭の中を読んだのですか・・・」


「うむ、姫君は見かけによらず煩悩の塊よの」


フルフル・・・


「あぁぁぁぁぁ!」









「今日のところはここまでにしましょう、周囲に組織の人間が居ないか調査する必要もあるでしょうし・・・実行は明日以降という事で」


「うむ、常に行動を共にしておる三人の他に男が二人離れた場所におるぞ、我の喰ろうた奴等の記憶には無いが怪しいのぅ」


「あぁ、私も気付きました、大柄な男性と痩せた女ですね」


「そうだ、隠れて警護しておるのだろうな、迂闊に顔を出せば攻撃されるであろう」


「他には居ないですかね?」


「我がほぼ喰ろうた故、主より命じられた対象は残り数人といったところよ、加えて雇われの連中が居るくらいか・・・奴等も喰って良いのだろう?」


「雇われていたとしても危険なら排除した方が良いかと・・・その辺の判断は天空様にお任せします」


アメリカにやって来た初日はターゲットの観察で終わりました、私達はカフェを出てパトカーや救急車のサイレンが遠くで鳴り響く大都会の通りを歩いています。


今夜はホテルに泊まってのんびりしよう・・・そう思っていた私の目に飛び込んで来たのは・・・。


「あれは姫君の書いた物語であろう」


隣を歩いていた天空様が指差した先には・・・「Double Down - The Black Cat」の文字が描かれた巨大なLEDパネルが強烈な自己主張をしています。


そう・・・あれは私の著書、「黒猫ダブルダウン」の海外版・・・日本では全く売れず絶版になったものの、ハードボイルドなアクション部分が海外出版社の目に留まり4年前に英語版を出す事になったのです。


編集担当からお話を聞かされた時、私が英語もネイティブレベルで出来る事を話したら是非英語で書いてくれと言われました。


向こうの編集者の意向でエロは全て排除しアクション描写を大幅に増した海外版黒猫ダブルダウンは予想外の大ベストセラー、勢い余って遂にハリウッド映画化の話まで・・・。


映画化プロジェクトは私を置き去りにして恐ろしい速さで決まり、制作はハリウッドの某著名なスタジオ、配給はアンブレラ・スカイネット・エンタテインメント・・・。


この会社はインターネットが登場して間もない1980年代後半に日本人エンジニアが設立して我が国を代表する巨大企業に育て上げ、現在はアメリカに本社を置いてグローバルな展開をしているアンブレラ・スカイネット社傘下のエンターテインメント部門です。


なので・・・当然日本人の従業員が沢山居て日本で期待の新星と言われている雌垣翔太めすがきしょうたの存在を知るスタッフの熱意で映画化プロジェクトが立ち上げられたようだ・・・と担当編集さんが言っていました。


あの小説の主人公は久露鬼くろき警部補がモデルでヒロインは超絶美化した私、Shouta MG名義で出版した英語版の時にはヒットするとは思わなかったので変更しませんでしたが・・・そのまま実写映像化されるのはマズいしあまりにも恥ずかしいので私の強い要望でキャラクターの全面変更をお願いしています。


そして約3年の歳月と1億4千万ドルの予算をかけて制作された映画は先月公開されたばかり・・・。


主人公は長身黒髪の東洋人男性からダッチという名前の大柄マッチョな黒人さんに、ヒロインは超絶美化した私からダイナマイトセクシーでとても顔の濃いラテン系美女へ・・・大胆にキャラクター変更が加えられたアクション映画として完成したのです。


「これなら久露鬼くろき警部補が見ても原作が「黒猫ダブルダウン」だとバレないでしょう、私はストーリー原案だけのクレジットにしてもらってるし、このままマイナーな映画で終わってくれたら・・・」


トントン・・・


「姫君・・・あれを見よ」


「え?」


天空様に促されて先程のLED看板を見ると・・・


どぉぉぉん!


ド派手に映し出された文字を読んで私は膝から崩れ落ちそうになりました・・・。


「え?・・・こっ・・・こっ・・・」


「鶏の真似などしてどうしたのだ?」


「・・・こっ・・・興行収益・・・初週全米二位・・・異例の大ヒット!」






・・・


「英語版の小説を日本語に再翻訳して出版決定・・・日本での映画公開決定・・・今後のスケジュールは・・・」


その夜、滞在先のホテルで担当編集さんからのメールを読んだ私はチベットスナギツネのような表情で眠りにつきました・・・。

読んでいただきありがとうございます。


初小説です。


諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。


趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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