Side - 16 - 59 - れいあさん じゅうご -(挿絵あり)
今回「〜レイアさんはおかしな魔物に寄生されましたぁ!〜(魔法使いなのに魔物で双剣使い?)」で既出のお話を編集して投稿しています。
〜レイアさんはおかしな魔物に寄生されましたぁ!〜(魔法使いなのに魔物で双剣使い?)(R-18)
https://novel18.syosetu.com/n2479il
Side - 16 - 59 - れいあさん じゅうご -
〜カリンさんが魔物に覚醒する約60日前〜
「(ユッキィ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・)」
「どうしたのだレイア、何故泣いている?」
「(怖かったの・・・お家の裏の崖を降りて街道までの獣道、高いし道は細いし・・・あれ落ちたら死ぬよね!、途中道が崩れて無かったし!)」
「そうだな、落ちたら死ぬだろう、だが落ちなければ大丈夫だぞ」
「(わーん!、ユッキィの言ってる事が理解できないよぉ)」
こんばんは、レイア・ルミナスです。
今私達・・・私とユッキィは身体を共有してるから私とカリンさんは足を踏み外せば谷底に落ちそうな崖を降り、川に飲み込まれそうになりながら獣道を歩いて時々襲ってくる魔物を捌きマキシマの街にある宿屋に着きました。
宿の看板には「ソドムの宿」・・・ユッキィがこの街に泊まる時はいつも利用している宿なのだそう、この身体で泊まるのは2回目だけどね、後ろでカリンさんが死にそうな顔をしてる・・・うん、分かるよ、道があんなだとは思わなかったよね。
ユッキィは夕方からカリンさんと長い間お話ししていました、あのお嬢様との関係、お屋敷に住むようになった経緯、カリンさんが受けた酷い扱い・・・。
昨日までは我儘なお嬢様に振り回されても素直に従っていたけど、ユッキィの説得でカリンさんはお嬢様を捨ててこの街で生活する事になったのです。
「中に入るぞ」
ギィ・・・
年季の入った石と煉瓦造りの宿屋に入ると暖かな光を灯す魔導灯に照らされた雑然とした酒場が私達を出迎えてくれました。
酔っ払いを避けつつ、酒場を奥に進んで2階に上がると受付には胡散臭いおじさんと裏でパタパタと忙しそうに働く女の子、夜中なのに普通に営業してるし・・・。
「いらっしゃい・・・あぁ、この前泊まってくれた嬢ちゃんか」
「1人部屋を15日分、泊まるのはこっちのお姉さんだよ、名前はカリンさん、あ、このお姉さん言葉が喋れないの」
ぺこり
「・・・大丈夫だぞ、金さえ貰えばこちらからは何も干渉しない、朝夕の飯付きでいいのかい」
「うん、それでお願い、はいお金、これで足りるでしょ、少し多いと思うけど、時々私がお部屋でカリンさんとお話ししたり泊まったりするからその料金だと思ってね」
「あぁ、分かった、部屋は好きに使いな、ほれ鍵だ、出かける時はここに預けて行け・・・朝と晩に下の酒場でこの札を見せれば飯が出てくる」
「うん、ありがと・・・じゃぁカリン行こうか(ボソッ)」
こくり
宿のお部屋に入った後カリンさんには私とユッキィ・・・一つの身体に2つの人格が共存していることを打ち明けました、とても驚いてたけど信じて貰えたみたいです。
夜が開けるのを待ってお医者に行き腕を診てもらった結果・・・カリンさんは二度と剣が持てないと言われてしまいました・・・。
「ハンターギルドにようこそ」
「ギルド長に話があって・・・この手紙を渡して欲しい、魔女様からだよ、私のハンター身分証がこれね、このお姉さんは新規のハンター登録、喋れないし怪我をしていて字が書けないから私が代わりに手続きをさせて欲しいの」
「はい分かりました、この書類に必要事項を記入下さいね・・・それから・・・魔女様から?、もしかして新しい使用人の子かな?」
「うん、そんな感じかな」
「(それにしてもおっきなギルドだね、広さもエスティマのギルドの5倍はあるかも)」
「魔物狩りや遺跡へ入る最後の拠点だからな、自然とハンターもたくさん集まるし獲物も大きなのが居るからこれくらいでも手狭なのだ」
「(そうなんだ・・・)」
私達は病院を出てそのままハンターギルドに向かい、カリンさんのハンター手続きの後ギルド長のお部屋に呼ばれました・・・シシリィさんの姿じゃないのに魔女様の関係者っていうだけで扱いがすごく丁寧になったの、すごいな魔女様・・・。
コンコン・・・
「入れ」
「こちらです、どうぞ」
ガチャ・・・
「ようこそマキシマのハンターギルドへ、お嬢さん、・・・まぁ座りなさい」
「・・・」
「(筋肉ムキムキだったエスティマのハンターギルド長とは違ってローブを着た長身の中年男性、魔法使いっぽいなぁ・・・それにイケメンだ、目つきが鋭くてかっこいい)」
「8年ぶりだな、元気だったか、カルマ・・・」
「・・・やはり、魔女様でしたか・・・」
「(え、待って、この人ユッキィの事知ってるの?、聞いてないよ!)」
「・・・」
「・・・い・・・」
「い?」
「いやぁぁん!、ユキちゃぁん!久しぶりぃ!、わぁぁ、かわいい姿になってるぅ!、どうしたのこの子、まさかどこかから攫って来て無理やり乗っ取ったんじゃないでしょうね!」
「(・・・え、どういう事ユッキィ!、説明してよ!、なんでこの人私に抱きついて頬擦りしてるの!、いやぁぁぁ!、ちょっとだけ伸びたお髭がぁぁ!ゾリゾリって!)」
「やめろカルマ、私の宿主が気持ち悪がっている」
「んぅ・・・ごめーん、久しぶりだったからつい・・・、でも心配したのよぉ!、どこで何してたの!、それにその姿って事はシシリィちゃんは・・・」
「あぁ、お察しの通り、8年前に死んだ、肉食植物のフロリアーナに食われた」
「・・・シシリィちゃん・・・いい子だったのに・・・うぅ」
「その姿でメソメソ泣くな、気持ち悪いぞ」
「だってぇ・・・」
「・・・という訳で8年かかったがようやく草野郎の腹の中から出られたのだ」
「そうだったの・・・でもレイアちゃんかぁ、エスティマのギルド長からお手紙が来てるわ、石級の見習いハンターで強い子が居るからよろしく頼むって、ユキちゃんが入ってるんだったらそりゃ強いわよねぇ」
「まぁな、で、久しぶりに帰ってきたからカルマに挨拶しておこうと思ってな、それにちょっと訳ありの子が居るんだ、今日ハンター登録をしたカリンっていう奴なのだが・・・」
「やだぁユキちゃん!、カルマじゃなくてカーマって呼んでって言ってるでしょ、それからカリンちゃんかぁ・・・デボネア帝国の元貴族ね、首輪付きの」
「知ってたのか・・・」
「えぇ、魔女様のお家でうろうろしてる不審者を放って置けると思って?、信頼できる斥候に依頼して調べてもらったわ、首輪をした2人組、でも所作は高貴で洗練されてる・・・それならデボネア帝国から逃げて来た貴族だろうってね」
「そこまで知ってるなら話は早い、一人は上級貴族のお嬢様で性格がとてつもなく悪い、こいつは下級貴族でそのお嬢様に虐げられてた、お嬢様を見限ってハンターになりたいそうだ、剣の腕はは相当なものだったが・・・私を襲って来たから怪我をさせてしまった、剣はもう持てないだろうって言われてる、だが剣以外でも戦闘能力は高いし素質はあるからなんとかなるだろう」
「お嬢様はどうするの?」
「放置だな、そのうち飢えて死ぬんじゃないか?、街にやって来ても適当にあしらってくれ、性格がとにかく面倒臭い、殺して埋めても良かったのだがあんな奴を殺しても何の得にもならないからな」
「そう、・・・国がデボネア帝国の貴族を集めてるのは知ってるわよね」
「あぁ、奴隷と間違われると困るから保護してるって聞いたぞ」
「・・・保護ねぇ・・・まぁ保護してるには違いないけど・・・」
「何か知ってるのか?」
「えぇ、そんな面倒な人達に居座られては困るからギャラン大陸に送り返すんですって、それがこの国の方針、他国はまだどう扱うか意見が分かれていてね、保護して有能な人間は高待遇で働いてもらうとか、色々ね」
「送り返すって・・・そんなの全力で拒否するだろ、素直に言う事を聞くのか?、それに向こうはまだ国として機能してるのか?」
「国はほとんど崩壊してるわね、平民が貴族の生き残りを殺して回ってる、略奪や暴動も日常茶飯事って聞いてるわ・・・でも向こうの貴族なら抵抗しても首輪があるじゃない、無理にでも言う事を聞かせるのよ」
「それはデボネア皇帝の血族だけにしか出来ないよな」
「あまり知られてないけどお隣の国に皇帝の血族が居るのよ、先代皇帝の末の妹が密かにレオーネ王国に亡命してそこの上級貴族と結婚したの、だからその血筋の人間は首輪に魔力を流せるわ、今この国の皇帝陛下が向こうの国王と交渉中、金を払うから誰か1人貸してくれってね、お隣の国とは友好な関係だからそのうち派遣されて来るんじゃないかしら」
「(帝国から亡命の・・・皇帝の妹って・・・それ・・・うちのお婆様だ、だから私、お婆様に教わって少しだけどデボネア帝国語が話せるの)」
「なん・・・だと・・・」
「どうしたのユキちゃん、頭を抱えて」
「いやなんでもない・・・」
「なんでもないって顔じゃないけど」
「そのうち分かる事か・・・仕方ないな、私の宿主、レイア・ルミナスの祖母がその先代皇帝の妹らしい、私も今聞いて混乱してる」
「えぇ・・・面倒くさいわねそれ、・・・ルミナス・・・そうかぁ、レオーネの上級貴族、ルミナスかぁ・・・向こうの国王がその貴族の名前を明かさないから誰なんだってなってたのよね」
「紹介しよう、私の新しい相棒、レイア・ルミナスだ、今入れ替わる」
「わ・・・また急に、ユッキィ・・・」
「入れ替わったわね、表情が全然違うわ、初めましてレイアちゃん、私の名前はカルマ・カメレオーン、カーマって呼んでね、・・・驚いたでしょ、私、身体は男だけど心は女の子なの、ほとんどの人は知ってるけど、初対面の人は驚くからね、男性として接してるの」
「はい・・・あの・・・よろしくです」
「敬語は使わなくていいわぁ、普段通りでお願い」
「あの、カーマさんはどうしてユッキィ・・・ユキの事を知ってるの?」
「あら、まだ話してないの?、そうねぇ、この街を長い間魔物から守り抜いた英雄、フィッシュ様とモス様の養子、フレシュネス様も魔女様と呼ばれて街を長い間守って下さっているの、災害の時は街に多額の寄付もして頂いているわ」
「・・・」
「バーガー夫妻が亡くなる前にハンターギルドの長と街の領主にだけフレシュネス様の秘密を話していたのよ、私達に恩を感じてくれているのならこれは街の最重要機密として欲しいってね」
「・・・」
「まぁ、私たちも全ては知らないけど、フレシュネス様には元々身体がなくて、意識を他人の身体に入れる事で長い寿命を得ている・・・その宿主は超人的な力を手に入れて、相棒として同じ身体を共有している・・・こんな感じかな」
「そうなんだ、だから街の人達も魔女様には好意的なんだね」
「そう、こんな辺境の街だからね、何かあっても到着に時間がかかる国の騎士様はあてにならない、もちろん魔物が出た時には駆けつけて命懸けで守ってくれているから感謝はしてるよ、でも街に住んで、凶悪な魔物が出たら退治してくれる無敵の魔女様は魔物の巣窟がすぐ近くにあるこの街に住む人達の心の支えなの、・・・その正体がたとえ厄災級の危険な魔物だとしても・・・ね」
「え・・・」
「ふふふ、これ以上は私の口から話せないわぁ・・・」
※ユッキィのお家の裏、崖下の険しい道は「黒部峡谷・下ノ廊下」っぽい感じです。
ユッキィのお家(地下岩盤内)
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
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