Side - 16 - 41 - ぺとら・ようじょすきー -(挿絵あり)
Side - 16 - 41 - ぺとら・ようじょすきー -
「フンフン・・・フフーン♩♬」
くるっ・・・
「これも可愛いな、でもこっちの方が・・・いやこれは流石に肌が出過ぎだろう・・・」
ぬぎぬぎ・・・
・・・
ばさっ
「ふふっ・・・着ちゃった・・・意外と似合うね、それにお肌も張りがあってぷにぷにだ」
くるくるっ・・・
「・・・ご・・・」
「こうするともっと可愛いかも?・・・上目使いで・・・」
「おーい!、姉御よぉ!」
「ぴゃぁっ!」
ぽてっ・・・
「あいたたっ!、なっ・・・何だい坊や、人の家に勝手に入って来るんじゃないよ!」
「外から何度も呼んだぜ、これ以上は近所迷惑だと思って預かってた合鍵で入ったら姉御が鏡の前で踊ってるじゃねぇか(ニヤリ)」
「ひぅ・・・これは違うんだ!」
「何が違うんだよ、見た事も無えような笑顔で回ったり踊ったりしてたが?、いくら若返って嬉しいからってはしゃぎすぎだろ・・・」
ぽかぽか
「やめろ姉御、その体格で殴られても痛くねぇ」
「うりゅ・・・」
「おいおい泣くなよ、揶揄って悪かった、似合ってるぜその服」
俺の名前はチャールズ・マンダム、このマキシマの街を騒がせた魔物の大暴走が終わって3日になる。
馬鹿騒ぎをしていた街の住人は日常に戻っているがハンター達は事後処理で忙しい・・・っていうか楽して金が手に入る魔物の死体運びに浮かれてる。
街の北東・・・「刻を告げる砦」周辺から湧き出した魔物は1日で全部魔女様が倒したらしい、俺も少し拾いに行ったが川の向こう・・・森の奥まで死体だらけだった。
しかも俺でも倒すのに難儀しそうな巨大で凶悪な魔物の死体ばかり・・・綺麗に首を落とされてる奴もいたし真っ二つになってるのも居た、街の年寄り連中の話は誇張じゃなかったようだ、魔女様は確かに強ぇ。
街の西側・・・・マキシマ川本流の向こうから押し寄せた魔物は殆どカーマの奴が倒した、頭や体にでかい穴が開いてる死体だらけだ、もちろんこの穴はカーマの放った魔法によるものだ。
本人の予告通り昼過ぎにはカーマの魔力が尽きた、だが奴は最後に残り全部の魔力を使って森を切り裂いた、今も森の中には何本もその時の傷跡が残ってる。
魔女様もヤバいがカーマもとんでもねぇ・・・この2人が居れば街の安全は保証されたようなもんだ。
「フフッ・・・この私に膝をつかせるなんて流石は大森林の魔物ね・・・あとは頼んだわ」などと訳の分からねぇ事を言いながら倒れたカーマを運ぶギルド職員達を横目に見ながら俺と姉御は外に向かった。
カーマの魔法による大音響にも怯えて逃げなかった大物を倒す為だ。
この街に残っている高ランクハンターは少ねぇ、俺と姉御以外では10人程度だろう、それと領主の出してくれた騎士が数十名・・・この人数じゃぁ少しキツいか、そう思っていると魔女様の弟子・・・レイア嬢ちゃんが応援に駆けつけてくれた。
片刃の妙な剣を両手に持ち、信じられねぇ速さで魔物に斬りかかる・・・この嬢ちゃんもとんでもなく強いじゃねぇか!、確かハンターランクは駆け出しの石級って言ってなかったか?。
妙な剣と言ったがあれには見覚えがある、トンガリィのところの店頭に飾ってある奴だ、あんなに切れ味が良いのか・・・俺も欲しくなってきたから後始末が片付いたら1本買おうと思った。
街のハンター連中は川から上がって来る魔物を倒す為に出ようとする姉御を必死に止めた、誰も姉御が幼女になってるのを信じてないらしい、姉御が鎖鎌で次々に魔物を切り刻んでるのを見てようやく信じたようだ。
だが俺は「可愛いな」「家に連れ帰って撫で回したい」という変態どものヤバい発言を聞き逃さなかった、姉御に手を出したらタダじゃおかねぇからな!。
レイア嬢ちゃんの協力もあって川を渡って来た魔物どもは全部片付いた、暴走は終わっただろう・・・そう思ってると森の奥から炎龍と黒龍が飛んで来た、これには俺も肝が冷えたぜ・・・この大森林における最強種、龍族の頂点でもある黒龍が出て来やがった。
カーマの奴が倒れてるから今この街には空から来る魔物に対抗する武器は弓しか無ぇ、ヤバいな・・・そう思ってると黒龍は街の周りを旋回しただけで森に帰って行った。
他のハンターや騎士どもが黒龍に注目してる隙に炎龍の背中から全裸の・・・翼の生えた少女が飛び降りたのに気付いたのは俺と姉御、そしてレイア嬢ちゃんだけだった・・・。
まぁ・・・こんな感じで大暴走は2日で片付いた、死者は無し、軽傷者5名・・・魔物の大暴走の被害としてはありえねぇ数字だ。
あとは魔物の素材を取り出して利用価値のない部位を集めて焼くだけだ、ギルドに持ち込めば西側の魔物はカーマ、北東の魔物は魔女様に半分渡す金を引いた額を払ってくれるだろう。
「・・・で、私の恥ずかしい姿を見る為にここに来たわけじゃないだろう?」
鏡の前で浮かれる姿を俺に見られて恥ずかしいのか、涙目でフルフルと震えながら姉御が俺に言った。
部屋の中には買ったばかりの子供服が散乱してる、今は丈の短いスカートだ、おいおい足閉じろよパンツ見えてっぞ!。
「姉御が倒した魔物の報酬が出たから持ってきた、今朝俺の取り分を貰いに行ったら姉御の分も持って行けって言われてな、ギルド長が倒したのを拾ったやつは計算に手間がかかってるから10日後ギルドの口座振り込みになるってよ」
ギルドでは俺と姉御は一緒に扱われてる、2人の関係は師弟だと説明しているが姉御がギルドに行けば俺への伝言を頼まれるし、俺が行けば姉御の指名依頼を頼まれる・・・何故だ!。
「金は・・・思ったより多いね、それからお願いしてた大物の牙と魔石・・・私が森の奥から帰る時に拾った素材もあるから大儲けだね!」
姉御が輝くような笑顔で俺に言った、畜生可愛いじゃねぇか!、恩人で師でもある姉御に変な気を起こすつもりは無ぇが今より成長すると・・・成長するのかは知らねぇが・・・凄ぇ美女になるのは目に見えてる、ヤバいぞ大丈夫か俺・・・。
「姉御は素材拾いに行かねぇのかよ、まだ森には沢山死体があるだろ」
姉御が椅子に座り足を組んだ、だからパンツ見えてるって言ってるだろうが!。
「これだけでも数年遊んで暮らせるくらい稼いだから残りは金の無い若い連中に譲るよ、金が無くなればまた森に入って魔物を狩ればいいさ」
若い連中って言うが今ハンターの中で一番見た目が若いのは姉御だぞ・・・。
「・・・そうか、俺はまた昼から北の方で魔女様の殺した魔物を拾って来る、一晩森で野宿するから戻るのは明日の昼ごろになるかもしれねぇ、俺も10年は遊んで暮らせるくらい稼いだが金はあって困るものでもねぇからな」
「そうかい、まぁ・・・気をつけて行っておいで」
「カリン嬢ちゃんの様子はどうだ?」
「昨日服を買って来てやった、ギルドで死亡扱いになってるって言ったから今頃は顔を出しに行ってるんじゃないか?、しばらくここに住むように言ったんだが・・・宿の方が気楽だって言ってたよ」
黒龍が去ってから俺と姉御、レイア嬢ちゃんはマキシマ橋を渡り川の向こう・・・街の西側にカリン嬢ちゃんを探しに行った。
魔物の大暴走が起きる時には魔物が一斉に押し寄せるが、終われば生き残った魔物も大人しく元の縄張りに戻る・・・その行動は今も謎だ、だから3人がカリン嬢ちゃんのところに辿り着くまで生きてる魔物には遭遇しなかった。
俺達が見つけた時カリン嬢ちゃんは全裸で両手にはでかい葉っぱに乗せた何かの球根?を20個ほど抱えていた。
「ひゃぁ!・・・#’&”*@!`*+=!」
喋れないって聞いていたが悲鳴を上げてるじゃないか、それに聞き覚えのない言葉を喋ってる・・・俺達の姿を見て驚いたのか相当挙動不審だ。
背中には真っ黒な羽根、首には奴隷がつけてるのと同じ首輪、両手首には黒い枷が嵌っていて・・・。
「くぇぇぇぇぇ!」
隣にはでかい炎龍がカリン嬢ちゃんを守るように控えていた。
「#$=|+*”&`@`」
姉御がデボネア帝国語でカリン嬢ちゃんに話しかけた、そう、姉御は元デボネア帝国の人間だ、おそらくカリンちゃんも同郷人・・・しかも首輪を付けてるって事はデボネアの貴族か・・・。
後で姉御に聞いて分かったのはどうやらカリン嬢ちゃんは炎龍に食われて成り行きで眷属にした後、黒龍にも攫われたらしい。
空の上で炎龍と黒龍の壮絶な奪い合いの後、勝った黒龍が巣に持ち帰ってカリン嬢ちゃんを食い、また成り行きで眷属にしたそうだ。
街に帰ろうと思い炎龍に乗り、ついて来ると言って聞かなかった黒龍を連れて近くまで来たら大暴走で街の外が大変な事になっていた。
黒龍が皆の気を逸らしてその隙に炎龍と一緒にここで降り、騒ぎが収まるまで待つ事にした・・・ちなみに練習して少しは自分の翼で飛べるようになった・・・らしい。
姉御が炎龍を指差して言った。
「で、こいつはカリンちゃんの3番目の眷属で炎龍のロプロスちゃんだそうだ」
姉御に続いてカリン嬢ちゃんがカタコトのエテルナ大陸共通語で炎龍に向かって言った。
「ほら・・・ロプロスちゃん・・・みんなに挨拶」
「くえぇぇぇぇ!」
「よろしく・・・って言ってます」
その後炎龍は自分の巣に戻り、俺のシャツと上着で包んだカリン嬢ちゃんを抱き抱えて密かに街の中に入った、街に入る時俺は上半身裸だったしカリン嬢ちゃんの身体からはう⚪︎この匂いがしたが深く考えない事にした。
姉御とレイア嬢ちゃん、カリン嬢ちゃんを姉御の家に連れて行った後俺はギルドに戻ったから3人があの後何を話したのかはよく知らねぇ・・・後は姉御が上手くやるだろう。
「結局晴れたのは1日だけか・・・また雨雲が空を厚く覆ってやがる」
小雨の降る中、腰に下げた鎖鎌を確認した俺は魔物の素材を拾う為に街の外へ向かって歩き出した。
「恥ずかしいところを坊やに見られちまったね・・・」
私の名前はペトラ・ヨウジョスキー、61歳になるババァだが訳あって今は10代前半くらいの姿をしてる。
魔物の大暴走は落ち着いたしカリンちゃんは無事に戻ってきた、魔女様の弟子・・・レイアちゃんに頼んで魔女様と面会の段取りもつけてもらった、どうやら明日人と会う為に魔女様が街にやって来るらしい。
街の連中に知られると騒ぎになるから魔女様の来訪は黙っているように言われたのだがね。
雨の降る中、下層1階にある自宅から外に出て今は街の大通りを歩いている、エルと名付けられたこの通りは賑やかだ、人が行き交い温かな魔導灯に照らされた飲食店には次々と客が入っていく。
私が幼女になったという話は既に街の連中には知られてしまった、地上と地下1階層には私の知り合いがそれなりに居る、雑貨屋ペトラの店主で銀級の元ハンターが幼女に・・・こんな面白い話は伝わらない筈が無い。
この通りに出て来る迄に食堂の親父に可愛いと言われ武器屋の娘に頭を撫でられた・・・だが悪い気はしない、階段を上る足が軽いから一段飛ばしで駆け上がる、フード付きの雨衣と中に着ているワンピースは昨日買ったばかりの新品だ。
「・・・フフーン・・・ランラン・・・ルー」
鼻歌を歌いながら歩く道の先には目的の甘味店がある、若い子達で賑わう人気の店だがいい歳をした私は入るのが恥ずかしくて今まで行けなかったのだ。
「チョコレートパフェがいいかなぁ・・・この前店に来てくれた娘がホットケーキの蜂蜜添えが美味しいって友達と話してたね・・・ふふっ、凄く楽しみだ!」
とてとて・・・
「おっと!」
どん!
「きゃっ!」
ばしゃぁ!
ころころっ・・・
「うわぁ、嬢ちゃんすまねぇ!」
いきなり路地から出て来た大きな男にぶつかられて吹っ飛び私らしくない可愛い声が出た、歩道を転がり膝を擦りむく・・・あぁ・・・買ったばかりの服に泥水が染みて・・・。
「うりゅ・・・ぐすっ」
いつもの私なら「危ないね!」「気をつけな!」って怒鳴るくらいはするのだけど身体が幼くなったからなのか気持ちまで幼くなったようで不覚にも涙が溢れた。
「よそ見してた俺の不注意だ、嬢ちゃん大丈夫か?」
ぽたぽた・・・
両脇に手を入れて持ち上げられた私はずぶ濡れで泥だらけ・・・これじゃぁ甘味店どころじゃないね・・・。
「大丈夫?・・・」
中年男の後ろから銀髪の少女が顔を出した、眼帯をして足が悪いのか杖を持っている。
「これはおじさんが悪いなぁ、早くどこかで着替えさせなきゃ」
もう一人・・・いや、中年男には他に3人の連れが居た、先程の銀髪少女より少し年上の黒とグレーが混ざった髪で紅い目をした少女と褐色肌に金髪の少女、それから背の高い痩せた男だ。
「あれ?、嬢ちゃん、どこかで俺と会った事があるか?」
私は抱き上げられたまま男を見た、涙で霞んでよく見えないが髭を生やした冴えない中年男だ・・・知らない男だね。
「いくらこの娘が可愛いからっていつまでも抱き抱えてないで早く降ろして」
「だがこの嬢ちゃんずぶ濡れだ、放っておけねぇだろ・・・おい嬢ちゃんこのままじゃ風邪ひいちまう、ちょっと俺達と一緒に来てくれ」
「おじさんそれ他から見たら幼女を誘拐してるように見えるよ」
「うるせぇ・・・」
「あぅ・・・」
そう言って男が私を小脇に抱えた・・・最近私はよく中年男の小脇に抱えられる・・・。
ペトラさん1
ペトラさん2
ペトラさん3
読んでいただきありがとうございます。
初小説です。
諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。
趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。
面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。