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Side - 16 - 34 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん ご -(挿絵あり)

Side - 16 - 34 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん ご -



どん!


ずずぅぅぅぅん!


ゆさゆさっ・・・


「な・・・何の音だ!」


「揺れたぞ!」


俺の名前はチャールズ・マンダム、マキシマの街を拠点にハンターをやって暮らしている、ランクは銀だ。


この街の北に広がる大森林には凶暴な魔物が多く生息していて、俺達ハンターはそれを狩って素材を売り生計を立てている、特に大森林産の魔物や野生動物は質がいいから1年頑張って稼ぐとしばらく遊んで暮らせるんだ。


俺は去年荒稼ぎさせてもらったから今年はのんびり生活しようと思っている、1年働いて1年遊ぶ、なかなかに楽しい暮らしだ、俺は気に入っている。


ここ数日は自宅の補修をしたり川に降りて趣味の釣りをしている、もちろん身体が鈍ると支障が出るから時々森に入って小遣いを稼いだり、駆け出しのハンターに戦い方を教えたり・・・。


今日は昼過ぎからハンターギルドに併設されている酒場で飲んでいた、仕事を終えたハンター達を横目に見ながらさてそろそろ帰ろうかと思っていたら突然でかい音が街に鳴り響いた。


何だと思って外に出たら大森林の方向・・・山脈の裾野あたりだろう、そこだけ不自然に雲が晴れて綺麗な夕焼け空が見えていた。


何をしたら空があんな事になるんだろうな、いや俺は一度だけ見た事がある、金級のハンター、そいつは魔導士だったが、大規模破壊魔法陣を起動させた時に似たような感じで雲が晴れた事があった・・・。


とにかく只事じゃない・・・運悪く今の時期はシーマの街で祭りがあって、金に余裕のある高ランクのハンター達は向こうに遊びに行っている、ギルド長も表に出て来たから俺は彼に尋ねた。


「おい、カーマ、なんか大森林の方でやばい事になってねぇか?」


魔導士のローブを着た長身で目つきの鋭い男・・・この街のギルド長、カルマ・カメレオーンだ、身体は男だが心は女性、だから自分の事はカーマと呼べとうるさいから仕方なく言われた通りにしている・・・。


「そうなのぉ!、チャールズちゃん、みんなシーマの街や帝都に出てるのよぅ!、魔女様も今の音に気付いてるだろうけど・・・今から街のハンター達に警戒体制をとってもらうつもりよ」


「高ランクのハンターを現地に向かわせて状況を確認した方がいいぜ、誰かすぐに動ける奴は居ないのかよ」


「いない事はないけど・・・あの場所まで辿り着ける人って言ったらチャールズちゃんでしょ、それから・・・」


「ちょっと待て!、何で俺まで頭数に入ってんだよ!」








ガチャ・・・


「ペトラの姉御あねごよぉ・・・居るかぁ」


「私のお店なんだからそりゃ居るわよ、あなたがこんな可愛いお店に来るのはさっきの凄い音と何か関係あったりする?」


「そうだ、あれの調査で森に行く、知っての通り高ランクのハンターはみんなシーマに出ちまっててな、すぐに動けるのが俺と姉御だけらしい・・・ギルド長からの指名依頼だ」


「あら、こんなおばあちゃんを森に行かせるなんて、酷いギルド長ね」


「何言ってんだ姉御、まだ錆び付いてねぇだろうがよ・・・ボケるには早いぜ、元銀級ハンター「鎖鎌くさりがまのペトラ」さんよ」




そう、俺の目の前に居る可愛いエプロンをした婆さん・・・いや熟女は元ハンターだ、彼女とはまだ俺がスタンザ帝国に居た時に知り合った。


当時の俺は駆け出しの石級から昇格して浮かれていた、誰彼構わず喧嘩を売り、無茶な依頼を受けて・・・ハンター仲間からは煙たがられている面倒な男・・・。


ある日、依頼で出掛けたスタンザ帝国の北に広がる森で魔物に襲われ死にかけた。


群れになって獲物を襲う狼型の魔物に囲まれちまった、単独ではそれほど強くないが数が多い、崖の際に追い詰められ、いよいよ俺も死ぬのか・・・そう思っていたら風切り音と共に俺に飛び掛かろうとしていた魔物の頭が2つに割れた。


気配もなく現れゆっくりとした足取りで魔物の群れに近付く女・・・一頭、また一頭と地面に転がる死体・・・魔物は俺を放置して女に襲い掛かるが次々に倒されていく。


手には鎖が握られ先端に付けられている凶悪な形をした鎌を頭上で大きく旋回させている・・・鋭利な鎌がまるで生き物のように魔物の命を刈り取る光景は今でも俺の目に焼き付いている。


「ガキが身の丈に合わない依頼を受けるからこんな事になるのさ」


後で分かったのだが彼女の名はペトラ・ヨウジョスキー、鉄級のハンターで普段はソロで行動しているそうだ。


ギルドからの依頼はあまり受けず、自分が作って売っているアクセサリーの素材を集める為に魔物を狩っている珍しいタイプのハンターだった。


彼女は始末した魔物から魔石や牙を集めると、呆然とする俺を放置して帰ろうとした。


「毛皮や肉はいらないのかよ・・・結構な金になるぜ・・・」


「あんたにやるよ(ニコッ)」


そう言い残して女は森の中に消えた・・・。


「畜生・・・かっこいいじゃねぇか!」


街に戻った俺は彼女の事を調べ、付き纏った、弟子にしてくれと地べたに頭を擦り付けて頼んだが踏まれた・・・痛かったぜ!。


尚も諦めず付き纏う俺に根負けして彼女はようやく俺を弟子にしてくれた。


「私はこの大陸を転々としてる、坊やはこの街に住み続けるんだろ、なら私がここにいる間だけ弟子にしてやるよ」


「いや、俺に家族は居ない、姉御が行く所どこでもついていくぜ!」


「気持ちの悪い坊やだね・・・」


そうして俺と姉御は師弟の関係になった。


姉御は行方が分からなくなった息子を探してるそうだ、外国で何かやらかして逃げているからあまり派手には探せない、ラングレー王国でハンターギルドに登録した記録を見つけたからこの大陸のどこかでハンターをして暮らしてるのではないかと言っていた。


「だから私もハンターになってこの大陸を旅してたらいつか会えるかもって思ってね」


姉御との旅は楽しかった、いろいろな国に行き、美味い物を食い、美しい景色を堪能した、一緒に仕事は・・・そんなにしてねぇな、姉御はソロで素材を狩り、俺もソロで割のいい依頼をこなして稼がせてもらった。


旅をしながら彼女は鎖鎌の扱いやハンターとしての生き方を俺に教えてくれた、俺の武器も姉御から譲り受けた鎖鎌、しかもお手製の凶悪な奴だ、鎌を2つ背中合わせにしたような形で普通は内側にだけ入っている刃が背にも付いているからどこに当たっても斬れる。


「なんで鎖鎌なんて珍しい武器使ってんだ?」


不思議に思って聞いた事がある。


「剣が届かない距離から安全に攻撃できる、矢よりは射程が短いが矢と違って消耗品じゃない、相手が鎖に意識を取られてる間に、腰に忍ばせた3本目、4本目の鎌を直接投げて仕留める事も出来る、接近戦でも使えるね、便利な武器だとは思わないかい?」


整った顔に似合わず考える事が脳筋すぎるぜ・・・。


これから先もずっと続くと思っていた俺達の旅はある日終わりを迎えた、姉御の息子の消息が完全に途絶えたからだ、ローゼリア王国に入った記録は残っている、誰かに雇われた殺し屋と戦ったらしい事もギルドで聞いた・・・だがそれ以降の足取りが途絶えた。


「殺されたんじゃねぇのか?」


軽い気持ちで呟いた俺の言葉を姉御に聞かれて泣きながらぶん殴られた。


銀級に昇格していた姉御も年齢を重ね、全盛期と比べると衰えが見えてきた、引退を考える時期に来ている・・・それに長い旅は俺達を予想以上に疲弊させていた。


姉御は終の住処となる場所を偶然辿り着いたこのマキシマと決め、蓄えていた金で家を買った。


「なら俺もこの街に住む事にしよう、若かった俺も今じゃおっさんだ、陰気臭い街だが立地は良い、老後は田舎でのんびり過ごすのも悪くねぇだろうよ」


こうして姉御はハンターから引退した・・・だが俺達の実力を聞いていたギルド長は銀級のハンターが2人もこの街に定住する事を喜び、何かと理由を付けて姉御を家から引っ張り出して依頼を受けさせていた・・・あれは今以上に衰えないよう適度な運動をさせていたんだと思う。


「息子に会えなかったのは残念だがチャールズ坊やっていうもう一人の馬鹿息子と楽しい旅が出来たんだ、思い残す事なんてないさ」


俺にはそう言っているが今でも姉御は息子の事を諦めていない、旅人を捕まえては息子の特徴を教え見かけたら会いに来るよう伝えて欲しいと頼んでいる・・・姉御も息子がもう生きていないだろうとは思っているようだが・・・。




バタン・・・


「お待たせ」


「遅いぜ姉御」


「女性の準備には時間がかかるものよ」


昔の思い出に浸っていたら店の奥から支度を終えた姉御が出てきた、腰には懐かしい凶悪な鎖鎌を携えて・・・。


「久しぶりに5本全部出して来たけど錆びてなかった、それじゃぁ行くかい坊や?」


「あぁ、行こうぜ姉御」











「えっぐ・・・うっく・・・ぐすっ・・・」


私の名前はカリーン・チッパイ、17歳。


美味しい報酬に釣られて森にやって来たら最深部まで行かないと出て来ないような凶悪な魔物・・・地龍に下半身を食べられた。


私を封じている足枷まで食べられてしまったから多分私の中の魔石が活性化して完全に魔物になってしまったのかもしれない・・・食べられた筈の下半身が綺麗に再生されてるから少なくとも人間ではなくなったのだろう・・・そう思ったら悲しくて涙が止まらない。


「寒い・・・いっぱい血が出たからかも・・・」


先程から酷く寒い、この辺は山脈の麓だから街よりは高い場所だ、だから夜は冷え込む、地龍に腰から下の服は食べられた、上に着ていたローブも原型を留めていない、上着もかなり破れている・・・つまり私は半裸だ・・・。


寒くて自分を抱きしめると手のひらが左腕に当たった、いつも触ると感触のあった刻印の窪みが無い・・・慌てて左肩を見ると・・・刻印が無い・・・次は頬に触れる・・・これは一番古い刻印・・・5歳の時に刻まれた物、でも手で触れると僅かに窪みがあったのに・・・今はつるつるだ・・・。


「え・・・刻印も消えちゃったの?」


背中に触れる・・・


ばさっ・・・


「あぅ・・・やっぱり羽根があるよぉ・・・でも刻印は無いみたい・・・首輪は・・・」


チャリ・・・


「ある・・・」


くぅぅ・・・


「お腹がすいた・・・」


こんな場所に居て、この状況でもお腹は空く、持って来たリュックは破れて中の物が散乱していた、携帯食料は気を失っている時に小動物が荒らしたのか・・・中身が無くなっていた。


どす・・・どす・・・


グルルルル・・・


「え?」


低い唸り声、重い足音・・・後ろを振り返ると死んだ地龍のつがいなのだろうか・・・倒れた木を踏み潰して森の奥からもう一頭現れた、充血した目、剥き出しになった牙・・・凄く怒ってる。


フルフル・・・


「怖いよぉ・・・」


しょわしょわぁぁ・・・


ほかほかぁ・・・


「うぅ・・・ぐすっ・・・もうやだぁ・・・」



挿絵(By みてみん)

マキシマの街(広域)


挿絵(By みてみん)

マキシマの街(地下一層)


挿絵(By みてみん)

マキシマの街(地下二層)


挿絵(By みてみん)

マキシマの街(地下三層)


挿絵(By みてみん)

マキシマの街(地下四層)


挿絵(By みてみん)

マキシマの街(地下五層)

読んでいただきありがとうございます。


初小説です。


諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。


趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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