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Side - 16 - 33 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん よん -

Side - 16 - 33 - かりーん・ちっぱいさんのだいぼうけん よん -



「ふぁぁ・・・よく寝たぁ、今日も相変わらず雨だね」


こんにちは、私の名前はカリーン・チッパイ、17歳。


マキシマの街を拠点にして駆け出しのハンターをやって暮らしている。


私が長期滞在している「ソドムの宿」の一室で朝目が覚め、毎日のように降り続く雨に濡れた街並みを窓からぼんやりと眺めていると寝ぼけた頭が次第に冴えて来る、ちなみに私がこの街に来てから晴れた日は一度も無い。


怪我をしていた両手の調子は悪くない、だけど痛みが無くなってきたから試しに鉄の棒を握ってみたが力が入らず落としてしまった、これでは魔物と戦えない。


「しばらくは駆け出しハンターらしく薬草の採取に専念するしか無いかな」


力の弱い者や初心者の為にハンターギルドが出している常時依頼の薬草採取・・・私は比較的良質なものが採れる森の奥まで入る事が出来るから稼ぎは悪くない。


毎日の採取依頼だけで宿代と食費は賄えている・・・だが借金は減らない!、そう、私はユッキィさんに多額の借金があるのだ。


ユッキィさんは私に催促をしない、返せる時に返せば良いと言ってくれている、だが私はその言葉に甘える訳にはいかない、ましてや踏み倒そうなどとは思っていない。


理由はユッキィさんに「分からせ」られたあの女、私が今まで仕えていたデボネア帝国上級貴族の娘、ベアトリス・ハイヴォウルの変貌だ。


何だあれは!、分からせられる前とはまるで別人のように幼児化している・・・一体何をされたのか・・・借金を返さないと私も分からせられるかもしれない・・・それは絶対に嫌だ!。


「だから早く強い魔物を狩って、金を稼がなければいけないのに・・・」


これから寒い季節になる、薬草も減るだろう・・・そうなれば稼ぎが減ってユッキィさんが私の口座に入れてくれている金に手を出さなければいけなくなるかも・・・借金がまた増えるじゃないか!。


「これからの事を考えていたら不安になってきた、朝食を食べて今日はそのままギルドに行こう、もしかしたら駆け出しの私でもこなせる依頼があるかもしれない」






「今日の食事も美味しかったぁ!」


私は満腹になったお腹を撫でながらギルドに向かっている。


あの宿の食事はとても美味しい、今までの食生活が酷かったからそう感じるのかもしれないが、他の店より明らかに味がいい、ここを教えてくれたユッキィさんに感謝しないと・・・。


雨が降っているからユッキィさんから借りている魔法使い風の服の上に防水のローブを羽織っている、このローブ、いくら雨に濡れても下に染みて来ない、おそらく超高級品・・・これもユッキィさんから借りたものだ。


破ったりしたら弁償しないといけない・・・そんなの気にするなと彼女は言いそうだ、ユッキィさんはとても優しいのだがどこか恐ろしい、底知れない恐怖を感じるのだ・・・何かを間違えて分からせられたら堪らない。


ガチャ・・・ギィ・・・


「よぅ、カリンちゃん、今日は早いな」


ぺこり・・・


たまに顔を合わせるお髭を生やした渋いおじさんハンターだ、確か・・・チャールズ・マンダムさん。


ペトラさんにエテルナ大陸の言葉を教わり始めて、挨拶や簡単な会話は分かるようになった、でも私は喋れないという設定になっているから笑顔でお辞儀をするだけでいい。


いつもより時間が早いから壁に貼り出された依頼がまだ沢山残っている、それを眺める・・・ほとんど意味が分からないから分かる単語だけを拾って読む・・・そうしていると一つの依頼が目に入った。


「フロスト・・・リコリス・・・球根・・・小金貨10枚?」


え、依頼料高っ!。


フロストリコリスは知っている・・・デボネア帝国でも高額で取引されていた、寒い場所にしか生えていない希少な花だ。


ここだと・・・森の奥・・・いや、もう少し寒い所に行かないと・・・今は気温が低くなったから森の奥を進んで・・・山脈の裾野辺りに生えてるかも・・・どうせ暇だしちょっと行ってみようかな。


依頼を剥がして受付のお姉さんに見せると・・・どうやらこの辺りでは知られていない花らしい、街に住んでいる学者が欲しがっているらしく誰も知らないので困っていた・・・と、私の乏しい語学力で何とか理解できた。


期限は無いようで希望数量は10個、沢山あれば何個あってもいいらしい、追加分の金額は相談して決めたいとの事。


私はこの依頼を受けた。






宿に戻って早速装備を整える、ここから山脈の裾野までは余裕を持って片道3日、森を抜けるから武器は縄の先に石を付けたものを4つほど持って行く。


魔物は襲って来ると思うけど殺せなくてもいい、殺しても素材が増えれば荷物になるだけだ、持てる量にも限りがある、威嚇して怯んだ隙に逃げればいい。


武器は持てなくなったが身のこなしには自信があるのだ。


「それから携帯食料往復8日分と・・・非常時の薬を少し・・・よし、すぐにでも出発しようか、小金貨10枚、くふふ・・・美味しいお仕事見つけちゃったぁ」


この街に来てから初めての長期遠征、宿に置いていく荷物を預け8日ほどで戻るからと言って部屋を仮押さえしておく、宿泊料金の5分の1を先に払っておけば留守の間は他人が使うけれど私が戻れば優先して泊まれる仕組みだ、この方法はユッキィさんに教えてもらった。


宿を出て街を歩き外壁の外に出た、やはり今も雨が降っている。


「この街って晴れる日あるのかなぁ・・・」






慣れた道を歩いていつも薬草を採取している森に着いた、時々襲って来る小型の魔物を躱しながら更に奥へ進む、ここから先は危険地帯・・・サウスウッド大森林の入り口だ。


オースター帝国の北に広がる大森林、何故「南の森」サウスウッドと呼ばれているのか不思議だったが、山脈を超えて更に北にある超大国、ローゼリア王国から見て南にあるからサウスウッドと名前が付けられたらしい、これもユッキィさんに教わった知識・・・。


大森林の道・・・と呼ぶには荒れているが・・・ハンター達が使う道沿いには野営場所がいくつかある、先客が居る場合もあれば誰も居ない事もある、ここはすでに危険な大森林、野宿するにも他のハンターと一緒の方が安心できる・・・そんな理由で自然と出来た場所のようだ。


逆に素行の悪いハンターと一緒になると同業者同士で揉めて殺し合う・・・なんて事件もたまに起きるらしい、その時は不運だったと諦めるしかないそうだ、ここは魔物が住む大森林なのだから・・・。


「先客は5人、男女混成の4人パーティとソロの男・・・か」


「お嬢ちゃんもここで野宿かい、よろしくな!」


4人パーティの男が話しかけて来た、私は軽く頭を下げて挨拶をする。


ぺこり・・・


ささっ・・・


私はいつも携帯している会話カードを見せた。


「なんだ、お嬢ちゃん喋れねぇのか・・・夜中に何か異常があれば叫べって言おうと思ったんだが・・・とりあえず何かあったら物を叩いて大きな音を出してくれ」


こくり・・・


夜の森は不気味だ、時々獣の鳴き声がするし何かに見られている気配もある、だが野営場所は利用したハンター達が毎回魔物避けの薬剤を撒いているからそれが土壌に染み付いて弱い魔物は近寄って来ないらしい、これもユッキィさんから・・・以下略。






「俺達は出発するぜ、お嬢ちゃんも気をつけてな」


こくり・・・


無事に朝になった、流石に怖くてあまり寝られなかったが特に何事も無かった。


4人組のパーティは依頼を終えて森から帰る途中だったらしく、街の方向に歩いて行った、ソロの男は私が起きた時には居なかった、4人組によると夜明け頃に森の奥に入って行ったのだとか。


野営場所に一人残された私は携帯食を食べ、水を飲み、森の奥に進んだ。


2日目も順調だ、次第に襲って来る魔物が凶暴になってきたがまだ何とか対処できる、一つ目の難所である川に架けられたボロボロの橋を渡るのは正直怖かった・・・私はどうやら高いところが苦手らしい、余談だが二つ目の橋は更にボロくて高度もあり死ぬかと思った!、帰りがとても憂鬱だ。


日が傾き始めた頃には森の真ん中あたりまで到達した、近くに野営場所が無いか探しながら歩いていると・・・。


ざわざわ・・・


「ぎゃぁ!・・・」


「・・・ダメだ!、逃げろ!」


森の奥から人の叫び声が聞こえ2人の男が走って来た・・・何?、どうしたの?・・・状況が分からず戸惑っていると私に気付いた男の一人が叫んだ。


「おい逃げろ!、やばいのが来る!、死にたくなけりゃ走れ!」


訳が分からず私は言われるままに2人の後を追いかけるように走り出すと・・・。


グルルルル・・・


ガサッ!・・・


オォォォォン!


とてつもなく大きな咆哮が聞こえ、後ろを振り向くと・・・見上げるほどの巨大な魔物・・・地龍が居た。


大きく裂けた口には昨日一緒に過ごしたソロのハンターさんが咥えられていて、もう死んでいるのか上半身がありえない方向に折れ曲がっている。


「おい!、逃げろって言ってるだろ!、死にたいのか!」


2人組のうちの片方が私に叫び、咄嗟に前に向いて走ろうとしたら・・・。


「あぅ!」


木の根に足が引っかかってこけちゃった!。


その直後私の腰に激痛が走り、身体が宙に浮かび上がるような感覚、・・・地龍が私の腰を咥えて振り回してる!。


「ぎゃぁぁぁ!、痛い!、痛いよぉ!、誰か助けて!」


ザクッ!


ごぷっ・・・


地龍の牙が私のお腹を貫通したみたい・・・口から血の塊が滴り落ちて・・・


「痛い!・・・ごふっ・・・嫌だ・・・やっと自由に・・・なれたのに・・・死にたくない」


ぼとっ・・・


「ひぃっ・・・私・・・いやぁぁぁ!」


地面に落とされ吐き気がするほどの激痛が私を襲った・・・涙で霞んだ目を開いて自分の身体を確認すると・・・。


「嫌だ・・・私のお腹から下が・・・無いの・・・ごほっ・・・げふっ・・・」


ドクン!・・・ドクン!・・・


次第に私の身体から体温が奪われて冷たくなっていく・・・あぁ、もうダメだ、死んじゃうんだ・・・。


そう思っているのにまだ意識はあって・・・私の千切れた下半身を噛み砕く地龍の姿をぼんやりと眺めてた。


・・・胸の奥が熱い・・・身体は冷たいのに燃えるように熱いの・・・あ、私を封じてる足枷、地龍に食べられちゃった・・・。


「あ・・・あぁぁ・・・いやぁぁぁ!」


どん!


ギェェェァァァァ!・・・ギギッ・・・ギャァ・・・


ずずぅぅぅん!・・・ぶしゅっ!、ぐしゃ!・・・


耳がおかしくなるような爆音と共に、身体の中にある魔力が全部外に放出される嫌な感覚・・・私はそこで意識を手放した・・・。






「私の人生、辛い事ばかりだったの・・・まだやりたい事は沢山あったけど、もう楽になりたい・・・あ、ユッキィさんに借金返してない・・・怒られるかも・・・でもいいの、私は死んじゃったのだから・・・」


ぶるっ!


「あぅ・・・寒い・・・」


ガタガタ・・・


「寒い寒い!、何で死んだのにこんなに寒いの・・・あれ・・・背中に何か・・・」


さわさわ・・・


「わぁぁぁぁぁ!」


ばさっ!ばさっ!


「いやぁぁ!背中に羽根ぇ!」


がばっ!


「か・・・下半身裸ぁぁ!」


ぺろり・・・


「ひっ・・・お口の中に牙っぽいのが生えてる・・・」


きょろきょろ・・・


「地龍さん・・・身体が捻じ曲がってお亡くなりになってるし!」


うろうろ・・・


「周りの木が全部折れてるんですけどぉ!・・・って何で夜中なのに・・・真っ暗なのに周りが見えるの・・・」


・・・


「うりゅ・・・ひっく・・・うっく・・・わぁぁん・・・怖いよぉ・・・誰か助けて・・・」

読んでいただきありがとうございます。


初小説です。


諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。


趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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