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Side - 16 - 12 - めすがきしょうた -

Side - 16 - 12 - めすがきしょうた -



「・・・疑う訳ではないがいくつか質問させて欲しい」


正直な話、私はまだ疑っている、だが泣いている子にそんな事は言えない・・・私の言葉に女の子が頷いて言った。


「ぐすっ・・・ひっく・・・うん、いいよ」


さて、まずは軽く食べ物関係だ。


「私の嫌いな食べ物は何かな」


「ピーマンとニンジン・・・」


ぷっ・・・


待て、誰だ笑った奴は・・・ってスカリ君か・・・必死で誤魔化そうとしているが・・・どうせ子供みたいだと思ったのだろう。


「正解だね、では・・・私の左膝には傷がある、それはどうやって付いたのか分かるかい?」


「・・・小学生の頃家族と山登りしてて道から落ちそうになった私を兄ぃさんが助けようとして一緒に落ちたの、その時に木の枝が突き刺さって・・・あぅ・・・ごめんなさい、私があの時ふざけて走ったから・・・」


家族しか知らない内容だが正解だ・・・いや、私の家族も一緒になって騙そうとしているのかも!・・・それなら・・・。


「正解だね、何度も謝ってくれたからそれはもういいんだよ、では・・・莉紗が小学校6年の時、私に土下座をして頼んだ事があるよね、それは何かな?」


「ふぇぇ・・・言わないとダメかな・・・だってあれは私と次郎兄ぃだけの秘密・・・」


「私だけに聞こえる声で良い」


そう言って私は耳を差し出した。


ひそひそ・・・


「あのね・・・クラスで好きになった木下君の体操着を盗んだの・・・それを部屋で着てたら兄ぃに見つかってそれ泥棒だろ返して来いって怒られた・・・それでね、夜中に兄ぃが学校に忍び込んで・・・体操着をこっそり返しに行ってくれたの、私は・・・盗んだ事を親に知られるのが怖くて・・・お願いだから誰にも言わないで欲しいって頼んだの」


そうだな・・・誰かに見つかれば私は年下男子の体操着を盗んだ変態になる、あの時は教室から出るまで生きた心地がしなかったぞ・・・、あれは2人だけの秘密だった、どうやら目の前の女の子は本当に莉紗のようだ。


「正解・・・最後に、莉紗が高校生の時、太郎兄が持っているエロ本の隠し場所はどこだったかな?」


「え・・・太郎兄ぃは中学校1年の時に事故で亡くなって・・・でも次郎兄ぃの隠し場所は知ってるよ、高校の時はお部屋の押し入れ・・・」


「莉紗!・・・それ以上いけない」


カマをかけようとして墓穴を掘ってしまった!、だが・・・どうやら本物のようだ!。


「莉紗ぁぁぁ!」


「次郎兄ぃ!、わぁぁぁん・・・!」


私達は人目も気にせず涙と鼻水を垂れ流してしばらく抱き合っていた・・・。







「2人とも落ち着いたようだね」


「はい、お見苦しいところを・・・」


「久しぶりの再会なのだから気にしないで、私達が住む大陸は平和なのだが不幸にもリーシャちゃんが転生した大陸は悪い皇帝が支配する国でね、貴族は全員皇帝陛下への忠誠を示す為に幼い頃から身体に刻印を押されて外れない首輪で命を握られていた、この子も酷い扱いを受けていたのだ」


「・・・」


「他の大陸という事もあって救い出すのが遅くなった事は許して欲しい」


莉紗の受けた仕打ちに私は酷く腹が立ったが目の前の人達に怒りをぶつける事はできない・・・思わず握った手のひらに爪が食い込んだ。


「安心して、私が直接手を出した訳じゃないけど悪い皇帝の一族は全員苦しみながら死んだ」


今恐ろしい言葉がアメリア様の口から出たぞ!。


「それから・・・言い難いのだけどリーシャちゃんは可愛いから悪い奴らに目を付けられて重度の薬物依存状態にされている、その薬は異世界にしか無いから残念だけど日本でずっと暮らす訳にはいかない・・・それに向こうには優しい両親が居るからね」


「そんな・・・」


「彼女は毎日薬を飲まなければいけないのだけど、その薬を地球に持ち込むのは危険なのだ、・・・茂留田博士のご両親は健在かな?」


「えぇ、2人とも故郷・・・岡山県の実家で元気に暮らしています」


「それなら一度会わせてあげてはどうかな?」


アメリア様から提案があった、私の方からお願いしようと思っていたからありがたい。


「はい、可能ならぜひ両親にも会わせたいです」












私の名前は騨志勝雄だしかつお50歳、この国の内閣総理大臣だ。


私は今、国立宇宙生物科学研究所に居て、目の前ではまるで小説のような話が繰り広げられているが冷静を保っている、いや、先日から驚く事が多過ぎてもう慣れたと言った方がいいか・・・。


これで今日ようやくアメリア様からの「お願い」の一つが終わりそうだ、今までに起きた出来事をありのまま話そう。


狙撃された翌日、私はアメリア様に転移させてもらい星噛家別邸で新しい護衛との顔合わせをした、今までは警視庁のSPが交代で護衛していたのだがそれでは不十分だと星噛離伯ほしがみりはく氏が判断したようだ。


「失礼します」


地を這うような低く威圧感のある声がして私とアメリア様、それから星噛紗耶香ほしがみさやかの居る部屋に入ってきたのは30代後半くらいだろうか・・・鋭い眼光を持つ背の高い男だった、仕立ての良いスーツを着こなし、服の上からでも鍛えられている事が分かる。


「本日より総理の警護をさせて頂く久露鬼猫介くろきねこすけ、こちらは補佐の薄刃沙霧うすばさぎりです」


男の後に続いて部屋に入って来たのは黒髪の・・・スーツを着てはいるがまるで日本人形のような女性だ。


「あ!」


私の後ろで星噛紗耶香ほしがみさやかが驚いている、しかも今の「あ!」は何なのだ!。


「沙霧姉さん・・・」


姉さん・・・だと、あの女性は星噛紗耶香ほしがみさやかの姉なのか?、だが今の紹介では薄刃と・・・。


「君のお姉さんなのかい?」


私は振り返り星噛紗耶香ほしがみさやかに尋ねた、やけに顔色が悪いな、それに震えている・・・。


「いえ、彼女とは遠い親戚関係にありますの、星噛と薄刃、両家の関係をご存知ですよね?」


薄刃沙霧うすばさぎりと名乗る女性が私の問いに答えた、星噛紗耶香ほしがみさやかとはまた違った雰囲気の美女だ。


「えぇ、聞いています、気心の知れた人間と一緒なら2人とも仕事がやり易いでしょう」


ピキッ・・・


2人から放たれる空気が凍り付いた・・・待ってくれ!、私は何かまずい事を言ってしまったのか?。


「あらあら・・・紗耶香さん、お久しぶりです、もうお家に引きこもってはいないのですね、それに・・・また少し背が伸びたのではなくて?・・・」


おい!、待ってくれ!、彼女に身長の話は・・・。


フルフル・・・


「さ・・・沙霧姉さん酷い・・・背が高い事気にしてるの知ってて・・・ぐすっ・・・」


「あらごめんなさい、だって貴方背が高いからお話ししていると首が痛くなるんですもの」


確かに・・・彼女は平均的な身長の私より少し高いから目を見て話すとなると見上げる形になるな。


「さ・・・沙霧姉さんこそ・・・その「麗子像」みたいな薄気味の悪い髪型・・・いい加減やめたら?」


麗子像・・・なるほど、そう言われれば確かに見えなくもないか、私的には明菜ちゃんっぽくて可愛いと思ったのだが・・・。


「あ?、言うようになったじゃない紗耶香さん、お料理も出来ない引きこもりニートの癖に身体ばかり大きくなって」


何でこの娘は星噛紗耶香ほしがみさやかを煽るのだ?、まさか2人は仲が悪いのか?、面倒事は勘弁してくれよ・・・。


ぶちっ!


彼女は星噛紗耶香ほしがみさやかの地雷を踏み抜いたようだ、泣きそうだった星噛紗耶香ほしがみさやかの表情が憎しみに歪んだ・・・美女がしちゃいけない顔になっているぞ!。


「さ・・・沙霧姉さん・・・いえ、雌垣翔太めすがきしょうた先生!、こんなところで遊んでいては小説の締め切りに間に合わないのでは?」


「なぁっ・・・紗耶香さん!、それは秘密にしてくれる約束!・・・お金まで払ったのに!」


「あらぁ・・・、BL、百合、おねショタ、ロリ、分からせ、陵辱・・・、幅広い性癖と緻密な描写で今やエロ小説界の超新星、神と呼ばれている雌垣翔太めすがきしょうた先生、そんなに自分のお仕事が恥ずかしいのなら早く引退すればいいのにぃ」


「あぁぁぁぁぁ!」


めすがきしょうた先生?、何だそれは・・・私はスマホを取り出し検索した、私の隣では久露鬼くんも検索しているな、彼も気になるのだろう。


雌垣翔太めすがきしょうた

年齢不詳、性別不詳、日本の小説家、官能小説家

主に18禁アダルト小説を執筆

代表作に「らめぇ・・・私分からせられちゃう!」「百合百合しちゃうぞ!」「マッスル・ワンダホー」などが・・・


私はブラウザをそっと閉じた・・・。


「それに私、知ってるんだぁ・・・人気のコスプレイヤー、アッシュ・アヴァロンちゃんと、沙霧姉さん・・・似てるよね(ニタァ)」


「ひぃっ!・・・なぜそれを!」


「ニートの情報収集能力舐めないで欲しいなぁ、謎の天才エロ作家、雌垣めすがき先生の正体はアッシュちゃんでしたぁ!・・・みたいな感じでSNSを使って拡散したらとっても愉快な事になるかもぉ」


「いやぁぁぁ!」


・・・数分後、薄刃沙霧うすばさぎりさんは星噛紗耶香ほしがみさやかの前で土下座をしていた、私達は何を見せられているのだろうな・・・。


「沙霧姉さん・・・ごめんなさいは?」


「生意気な事を言って申し訳ありませんでしたぁ!」


「謝罪はそれだけ?、私、誠意が無い人って大嫌いなんだぁ」


「ぐっ・・・何でも一つ、・・・欲しいものを買ってあげます」


「わーい!、総理!、聞きましたぁ?、何でも買ってくれるんだって!、ふふっ、何がいいかなぁ」


星噛紗耶香ほしがみさやかは鬼だった・・・っていうか君たち本当は仲が良いのではないか?。


顔合わせが終わった私達はこれからの予定をアメリア様から伝えられた。


「表向きには今回の狙撃で総理は怪我をして数日安静が必要という事になっているのだ、だからその間に私からの「お願い」を聞いてほしい、まずは宇宙船や宇宙生物の件で面倒な事になっているから国立宇宙生物科学研究所に行ってある人物と会う、ちょっとした裏工作だね」


「・・・」


「次に公務復帰のタイミングで暗殺者がまた仕掛けて来るだろうから総理を囮にして捕まえたい、護衛は「薄刃の黒猫」それから私が手配した人物の2人で行うから安全は保証する、逆に暗殺者が気の毒なくらいだね」


「・・・」


囮・・・本当に安全なのか?、その謎の自信は何なのだ・・・。


「もう一人の「護衛」を紹介しよう、私の式神・・・いや、手配した人物で腕は確かだよ、入って来て」


がちゃ・・・


「ひっ!」


「わひゃぁ!・・・あれ、狗神さんかぁ・・・びっくりしたぁ」


部屋に入って来た男は異様だった、長身痩躯で邪気の塊のようなオーラを纏い顔色がひどく悪い、昔見た映画「帝都物語」に出ていた人物に似ているが気のせいだろう、恐怖で声が出た私に続いて星噛紗耶香ほしがみさやかが叫んだが・・・彼とは知り合いのようだ。


「彼の名前は狗神天空いぬがみてんくう、四国を発祥とする古い呪術師の家系なのだ、彼がその気になれば・・・いや、何でもない」


続きが気になるのだが!。


「ほら、狗神くん、総理に挨拶して」


「・・・我を崇めよ」


「よろしくお願いします・・・と言ってるのだ!」


いや言ってないし!。


動揺を抑えつつ彼をよく観察する、黒いスーツの上にコートを羽織っている、何故か黒い五芒星の紋様がある白手袋を嵌めているが・・・それが何なのか恐ろしくて本人には聞けない。


・・・久露鬼猫介くろきねこすけ君とは普通に名刺交換をしているな、どうやら外見が怖いだけの普通の人のようだ。

読んでいただきありがとうございます。


初小説です。


諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。


趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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