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Side - 16 - 11 - もるだ -

Side - 16 - 11 - もるだ -



「川崎くん」


「ス・カ・リ!です!」


「・・・スカリくん」


「はいなんでしょう!モルダ博士!」


私の名前は茂留田次郎もるだじろう、国立宇宙生物科学研究所第2生物研究室で働いている、毎朝私とこのような会話をして他の研究員を呆れさせているのは同じ部署の川崎須華莉かわさきすかりだ。


2人は「生物研究室のモルダーとスカリー」などと呼ばれている名物コンビになっている・・・らしい。


「先日言っておいた会議室の予約は出来ているかな?」


「はい、今日の14時からですよね、第3会議室です」


「ありがとう、スカリくんも記録係として出席して欲しい」


「はい分かりました、お客様は確か・・・政府関係の方ですよね」


「そうだね、私も所長から会って話を聞くようにとしか指示されていない、相手が何者なのかもよく分からないから事前準備も出来ないし・・・こんな事は初めてだよ」







トゥルルル・・・


がちゃ


「はい、第2生物研究室です・・・はい・・・え?・・・そうですけど・・・はい・・・分かりました、受付に行くよう伝えます」


「モルダ博士、受付から連絡があってお客様がお見えになったそうです」


「分かった、私が迎えに出よう、スカリくんは先に会議室で待っていてくれるかな」


「はーい」







私は来客を迎えに研究所の正面玄関まで出向いた。


ガチャ・・・


「お待たせしました、第2生物研究室室長の・・・」


挨拶の途中で固まってしまった私を責めないで欲しい。


「し・・・失礼しました、室長の・・・茂留田と申します・・・」


私の目の前には長身で目つきの鋭いスーツ姿の男、ピンクのアロハシャツに金髪ロン毛の中年男、そして外国人と思われる少女が笑顔で立っていた・・・。


何だこの3人組は?、少なくとも私の自宅に訪ねて来たら絶対にドアを開けたく無いし居留守を使うだろう、怪しい宗教にでも勧誘されそうな胡散臭さを感じる。


「お忙しいところ時間を作っていただきありがとうございます、文部科学大臣から話は伝わっていると思うのですが・・・」


金髪ロン毛が私に挨拶をした、見かけによらず礼儀正しいな、だが・・・文部科学大臣?・・・聞いてないぞ。


「あの・・・失礼ですが政府関係者の・・・カッツゥーン様で間違い無いでしょうか?」


「・・・はい、間違いありません」


金髪ロン毛男が苦笑いの後で私にそう答えた。


「か・・・会議室を用意してあります・・・こちらです・・・」







ガチャ・・・


「あ、博士、今お茶を・・・」


スカリくんも3人組を見た途端固まった・・・急須から注いでいるお茶が溢れているね。


「し・・・失礼しましたぁ!、えーと・・・布巾はどこかなぁ・・・」


お客様が怪し過ぎるからって布巾を探すフリをして逃げようとしないでくれ、私一人でこの3人の相手は無理だ。


「このような姿で申し訳ない、驚かせてしまったようだね」


「いえ、お気になさらず・・・」


申し訳ないと思ってるならそんな格好で来ないで欲しいのだが・・・。


金髪アロハ男がサングラスを外した。


「・・・」


「・・・」


「もしかして・・・騨志だし総理・・・ですか?」


「・・・はい」


私の目の前に居る売れないロックミュージシャンのような怪しい男は我が国の総理大臣だった。


「・・・」


新しい総理はイロモノと聞いていたがここまでとは・・・政治の事にはあまり関心の無い私だが日本の将来が不安になってきたな、現実逃避したい気持ちを抑えて視線を逸らすと総理の隣で微笑む少女と目が合った。


「そちらの方は?」


「あぁ、紹介が遅れて申し訳ない、護衛の久露鬼猫介くろきねこすけくんとアメリア様だ」


「・・・アメリア・・・様・・・ですか」


「そう、アメリア様だ」


総理に様付けで呼ばれているアメリア様とやらは何者なのだろう?、ここは機密情報が保管されている研究所だ、得体の知れない人物を入れるわけにはいかない。


「・・・」


「・・・」


「久しぶりだね川崎さん、お姉さんには毎日とてもお世話になっているよ」


「あ、いえ、こちらこそいつも姉がお世話になっております・・・」


スカリくんと総理は知り合いなのか、私は自分の表情が次第にチベットスナギツネのようになっているのを感じ、慌ててスカリくんに話しかけた。


「総理とは知り合いなの?」


「はい、博士、私の姉は総理大臣就任前から騨志先生の秘書をやらせてもらっていて、先生とは何度か事務所でお会いした事があります」


スカリくんが机の上に溢れたお茶を手際よく拭きながら私の質問に答え、新しいお茶を取りに会議室から出て行った。


「・・・」


「・・・」


総理がこんな所まで何の用事だろうな・・・。







「お茶です、どうぞ」


「ありがとう」


スカリ君が戻り、ようやく話を聞く準備が整った、・・・それにしても総理の着ているピンク色のアロハが目に刺さって痛いな。


「さて、お忙しいところ時間をとらせてしまって申し訳ない、今日ここに来た理由をお話しします、だが・・・これは国家機密扱いになるので他言は控えて頂きたいのです」


そう言って総理が話し始めた・・・待ってくれ、そんな大事な話、室長ではあるが私のような窓際管理職にどうしろというのだ!。


「少々お待ちください、そのような重要な話は私ではなく所長を通して頂きたいのですが・・・」


今の状況を客観的に見て私一人で抱えるのはまずいと判断した、つまり私にこんな話を押し付けた所長も巻き込んでやりたいと思った。


「えぇ、私から大臣には宇宙生物の研究をしている責任者と話をしたい、但し茂留田博士には必ず同席して頂きたいと伝えていました、他の方の同席は問題ありませんが可能な限り少数の人間でお願いします」


総理の許可はもらったぞ、だが何故私は指名されたのだろう・・・。


「スカ・・・川崎くん、所長と礼久田室長を呼んで来てもらえるかな」


「はい」







コンコン・・・がちゃ


「お待たせしま・・・」


待つ事数分、所長達が会議室に入ってきた、私と同じように3人の姿を見て入り口で固まっている。


「失礼しました・・・所長の加羅野からのと申します」


うちの所長である加羅野遊星からのゆうせいが挨拶をし、名刺を差し出した、まだ金髪ロン毛男が総理だとは気付いていないようだ。


「第1研究室長の礼久田れくたと申します」


次に挨拶したのは第1生物研究室長の礼久田羽仁春れくたはにはるだ、相変わらず顔が怖い、内臓を喰われそうだ、彼は比較的落ち着いているな。


「あっ・・・名刺がまだでしたね、第2生物研究室の茂留田と申します」


あまりの出来事に名刺を出すのを忘れていた私を責めないで欲しい。


「内閣総理大臣の騨志と申します、今日はこのような姿で申し訳ない、先日の狙撃の事もあり目立たぬように変装をして来たのです」


その姿は総理の趣味という訳ではなくて変装か・・・だが変装の方向性がぶっ飛んでる、何故アロハシャツに金髪なのだ・・・逆に目立つだろう。




一通り挨拶を終え、総理が表情を引き締め、話し始めた。


「今日、私がここに来た理由をお話しします、実は今この研究所で飼育されている動物は異世界の生物なのです、厳密に言えば地球外の惑星に住む生物、宇宙生物となるのだが・・・」


「・・・は?」


「驚くのも無理はないと思う、だが信じて欲しい、あの動植物達は異世界から転移してやって来たのだ、そしてここにいるアメリア様は異世界人だ」


この男は本気で言っている・・・私はそう思った、何故なら目がとても真剣だからだ、ちなみに怪しい宗教の信者も同じような目をしている、私は詳しいのだ・・・。


「・・・あの、失礼ですが総理・・・もしかして心労や疲労が相当溜まっておられるのでは?」


この面子の中で唯一総理とは顔見知りのスカリくんが遠回しに聞いた、つまり彼女は「総理、あなた疲れているのよ」と言っているのだ。


しかも内容が非現実的過ぎるしその姿で言われると胡散臭さが凄い。


「いや、本当だ、今から皆さんに転移魔法をお見せしよう」


待て!、待ってくれ!、これで「転移っ!」などと叫んで何も起きなかったら我々はどんな顔をすればいいのだ!。


「アメリア様、お願いします」


こくり


アメリア様とやらが立ち上がった、その様子はまるで教祖と信者のようだ、私は心の底から関わりたく無いと思った。


ぱぁっ!


「うわ眩しっ!」


彼女が手を上に挙げた直後、会議室は眩しい光に包まれた。


「・・・こ・・・これは!」


「おぉ!・・・」


「なんと・・・」


「わぁ・・・」


そこには銀髪で眼帯をした幼女と、目隠しをして首輪を付けた少女、それからいつも総理の後ろに立っている長身の女性が居た。


「情報量が・・・情報量が多いぞ・・・」


所長が頭を抱えた、そうだな、情報量が多過ぎて思考が追い付かない、私の隣でいつもは冷静沈着な礼久田れくた室長が呆然としている。


「総理に変わって私が説明しよう、ここにいるのはリーゼロッテ・シェルダン、それからリーシャ・ユーキ、2人とも異世界人だが元はこの地球・・・日本で生きていた人間が死んだ後で異世界に転生した転生者なのだ」


「・・・」


「リーゼロッテちゃんは少し前の空港テロ事件で亡くなった田中理世さん、そしてリーシャちゃんは・・・彼女については後で詳しく話すよ」


「・・・」


「さて、どこから話そうかな、まずは理世ちゃんがテロリストによって殺されてから・・・」










「・・・というわけで、リーゼロッテちゃんは山の上に置いたサンプルを宇宙人からと言って皆を騙した事になるけれど、私とはまだ出会ってなかったし、一人の力ではサンプルの解析は無理だ、だから許してあげて欲しい」


「・・・ひぅ・・・ご・・・ごめんなさい」


リーゼロッテと紹介された少女が涙をぽろぽろと溢しながら我々に謝った。


「そんな事が・・・本当に可能なのか」


リーゼロッテちゃんとやらが魔法で浮かせた机の上のお茶菓子入れを横目で見ながら礼久田れくた室長が呟いた・・・この話が本当なら今流行していると言われている異世界小説そのものではないか!、現実離れし過ぎている。


そのような事が出来る訳が無いと思う一方で・・・なら先ほど目の前で見せられた魔法・・・3人が突然会議室に現れた現象や浮いて回転しいるお茶菓子入れはどう受け止めればいいのだ。


ここは国立の研究室、それなりに入退室の管理は厳重だ、部外者である3人が簡単に入れる場所では無い。


「ある程度説明したところで、ここに居るもう一人の異世界転生者、リーシャちゃんの事を説明しようと思う、申し訳ないけど、研究所の男性3人はそこの壁際に立ってもらえるかな」


そう言われて我々は素直に壁際に並んで立った。


「さて、リーシャちゃん、目隠しを取るよ、目の前に3人の男性が居る、誰か知っている人は居るかな?」


ぱらり・・・


リーシャちゃんと呼ばれた女の子が我々の前に立ち、アメリア様が彼女の目隠しを外した。


紫に近い赤い髪、髪色を濃くしたような赤紫の瞳、地球の人間では染めない限りほぼ見かけない色だ、左頬には怪我をしているのか絆創膏が貼ってある、そして首には金属製の首輪が付いている。


着ている服はユノスアイランドと書かれたロゴ入りパーカーとサイドにラインの入った黒のレギンス・・・怯えているのか視線が定まらず身体が震えている。


女の子の様子を眺めていると目が合った、私の顔を見てとても驚いたような表情、そしてゆっくりと近付いて来た・・・少し上目遣いで自信の無さそうな仕草・・・確かに既視感があったが思い出せない、彼女とはどこかで会った事があるのか?。


「うそ・・・まさか・・・」


女の子が何か喋った、可愛い声だ。


「じろうにぃさん?・・・次郎兄ぃさんだぁ!・・・わぁぁぁん!」


どすっ!


「ぐふっ!」


女の子が突然私に泣きながら抱き付いた、妹が・・・行方不明の妹が幼い頃、私を呼ぶ時に使っていた「次郎兄ぃさん」と叫んで・・・胸に頭突きをするように抱き付くから地味に痛い!、これも・・・妹と同じだ。


「その子の今の名前はリーシャ・ユーキ、前世は茂留田莉紗もるだりさという名前だったらしい」


なん・・・だと、この子が莉紗だというのか、いきなりそんな事を信じろと言われても・・・無理だ、そう言い返そうとしていたら・・・。


「とても信じられないだろうね、今から気が済むまで確認するといい、貴方と妹さんしか知らない内容を質問して答えられたら信じてくれるかな?」


「わぁぁ・・・兄ぃさん・・・会いたかったの・・・ぐすっ・・・莉紗ね、今まですごく痛くて辛かったの・・・わぁーん!」


長く異世界に居たからなのか、所々日本語の発音が怪しい・・・いや!、まだだ!、まだ莉紗だと決まった訳ではない!、まさか皆で私を騙そうとしているのか?。


後ろからカメラが現れて「ドッキリでしたぁ!」などと言われたら・・・だがこれはいくら何でも悪趣味過ぎる、もしそうだとしたら私はキレる自信があるぞ。


ドッキリなのか、だが私を騙して何の得がある?・・・そう思って改めて見ると目の前の総理と名乗る男が似ているだけの偽物に見えてきたな・・・。


考えても仕方ないか・・・私は腐っても研究者だ、納得できるまで彼女に質問すればいいじゃないか。


私に抱き付いて涙と鼻水を垂れ流している女の子にハンカチを差し出しながら言った。


「・・・疑う訳ではないがいくつか質問させて欲しい」

読んでいただきありがとうございます。


初小説です。


諸事情により恋愛要素はほとんどありません、女性は平たい胸の人しか出てきません、男性は筋肉モリモリマッチョマン多いです、パロディ要素あり、苦手な人は注意してくださいね。


趣味で空いた時間に書いている小説につき不定期投稿です、ストックがあるうちは頻繁に更新しますが、無くなれば週1投稿になる予定です。


面白いなって思ったら下のお星さまやいいねをポチリと押してもらえると作者が喜びます・・・。

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