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彼方を見る者たちへ  作者: 二立三析
第六章 運命の日
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第二十三話 崩れた現実



 血染め、動かなくなった老人の遺骸。

「……ははっ」

 救世の英雄の一人にして、魔導協会の四賢者筆頭。当代有数の召喚師と呼ばれた(しき)秋光(あきみつ)の死体を前にして、異形(いぎょう)と化した青年――三千(みち)(かぜ)(れい)の喉元から、ざらついた不快な笑い声が上げられる。抑えていた感情。

「はは、ははははははははははははっっ‼ は……ッ」

 喜悦(きえつ)と高揚の入り混じった、泥まみれの心情を己のうちから(あふ)れさせるようにして。狂気にも似た笑い声をあげた零が、気が付いたように、首から上だけを元の青年の姿へと戻す。晴れやかな笑顔のまま。 

「……やった」

「……」

「ついにやったんだ。僕が……!」

 答える者のない清浄の空間のうちで、大役を終えたように深く息を吐く。流れる水の音と、天井から降る柔らかな光の調和に意識を向け。

「救世の英雄を。式秋光を――!」

 放心したように呟きを漏らす。感極まるようにしばし空中を見つめていた細面(ほそおもて)の相貌が、現実の手ごたえを確かめるように、倒れている秋光の遺体へと向けられた。

 ――瞬間。

「――ッッ‼‼」

 水中からの強襲。足元を食い破るようにして出現した巨大な黒蛇の毒牙を、異形の肉体を持つ零は瞬間的な跳躍で上空へ回避する。迫りくる雷撃。

「おっと‼ ッ⁉」

 突風と共に生み出される暴風圏を赤黒(あかぐろ)の両翼をはためかせて突破し、続く炎の洗礼をも(かわ)した零に、狙い済ました鋭い爪の一撃が打ち下ろされる。流星の如き勢いで地に叩き付けられ――‼

「――‼‼」

「――くうッ‼⁉」

 両脚に力を込めて着地した零の頭部に向けて振り下ろされたのは、輝く金色の神剣たる(りゅう)尾剣(おけん)。金剛石をも超える硬度の鱗と、異常に発達した筋肉を持つ赤黒の翼とがぶつかり合い、地に深く断裂を刻む威力の叩きつけに、翼の下に(あて)がった両腕までもが(きし)みを上げる。……っ鮮血が地面に散り落ちる。

「……ッこれはこれは」

「……!」

「驚きですね。術の行使者がいなくなった状態で、まだ己の顕現を保てているとは」

 創傷を負った翼と()し掛かる質量の痛みに耐えながら、全身を硬く締め上げて均衡を保つ零の目前に、四神(しじん)黄龍(おうりゅう)たちが揃い踏んでいる。共に深い傷を負い、

「召喚術の(ことわり)(そむ)く現象だ。――どうやっているんです?」

「……!」

 血を流すその姿は、決して万全と言える状態ではないものの、並みならぬ神獣の威容をもって怨敵(おんてき)の前に立ちはだかっている。邪気のない零の問いかけを睨み付ける瞳と眼差しに、強い怒りの情を滲ませたまま――。

「……なるほど」

 対話を拒絶するように込め続けられる力。死力を振り絞る不退転の決意を(うかが)わせる黄龍たちの気配に、理解した零が笑みを浮かべた。

()位相(いそう)にいる本体――自分たちの力を総動員して、この位相への顕現を保っているんですか」

「――ッ――」

「いくら神獣種とは言え、こちらでの肉体の魂にも等しい、核となる霊符が傷つけられた以上、(とど)まるには並大抵の苦痛と労苦では()かないでしょうに。――っ流石は【盟約】の関係性」

 息吹(いぶき)と共に低く唸りを上げる黄龍の尾の力に、じりじりと零の双腕が押し込まれていく。地面に()り込んだ異形の足が、僅かに後ろに下がり。

「自分がこの世を去ったあとでも、ここまで異形に(した)われるとは。先生の人柄が(しの)ばれます」

「――‼」

「貴方たちと先生とは正に、種族を超えた絆を結んだ盟友と言える。ですが……っ」

 それでも、零の膝をつけるには至らない。緩慢な変貌で相貌を再び異形のものへと成り変わらせた零の肉体が、一際その全身を膨れ上がらせるように、深奥から大きく一つの鼓動を放った。

「――目障(めざわ)りなんですよ、いい加減」

「――」

「どれだけの情念を込めようと、互いの間に交わされた術法の理は変わらない。顕現の維持に多量の力を回した状態で、手負いの肉体のまま、今の僕をどうにかできるとでも?」

 零の込める力に連れて、金色の尾が押し上げられていく。――【憑依(ひょうい)(じゅつ)】を行使する零の力が増大しただけではない。

「――()めるなよ、獣如きが」

「――‼」

 瞳に怒りを湛えつつ、渾身の気迫で込め続けられる黄龍の尾の力が、次第に抜け落ちて行っているのだ。核となる符の崩壊に(ともな)って(あらが)(がた)く異位相へ引き戻されていく自らの存在に対し、黄龍が口惜しそうに瞳を(すが)めた――ッ。

「――ッ‼」

 瞬間に均衡が動く。あえて尾の力を抜き去った黄龍の仕掛けによって、力の空振りにたたらを踏んだ零の身に、頭上から無数の雷撃が降り注がせられる。

「――ハハッッ‼‼」

 このときに向けて力を溜めていた(せい)(りゅう)による強襲。先に比べれば威力の落ちているそれらを竜鬼の混じる外殻で受け止め、本体との距離を詰めようとする零の挙動を、逆巻く紅蓮の業火が牢獄と為して閉じ込めにかかる。己の消耗を(かえり)みずに為された朱雀(すざく)の力。

「――‼」

 傷ついた身では全力となる炎の(いまし)めを強引に突破した零の肉体を、(びゃっ)()による神速の突進が凄まじい勢いで打ち据え、(げん)()の甲殻へと激突させていく。――大質量を打ち合わせての挟み撃ち。

「……――‼‼」

「……残念ですが……ッ」

 剣山の如き体毛と砲弾をも弾く甲殻に挟まれた絶命地で、死力を尽くして力を込め続ける白虎と玄武の身の狭間から、ざらついた青年の声が響き渡った。

「そろそろ、時間切れのようですね」

「――ッ」

(あるじ)がいなくともこれだけの連携ができるとは、流石は神獣種。多少は(ねば)りましたが、符の不完全な状態で出せる力などやはり――」

「――ッ‼」

 質量差をものともしない硬質の抵抗。勢いを増す零の膂力(りょりょく)に押し切られる寸前、示し合わせたかのようなタイミングで両者が拘束を解放する。空中に投げ出された異形の矮躯(わいく)に、機を狙い澄ました黄龍が渾身の力を込めた咬合を放つ――ッッ‼‼

「……ッッ‼‼」

「……っやはり、高が知れている」

 残された力を振り絞っての必殺手。全身を震わせる唸りと、口腔の奥から立ち上る熱気に、ジワジワと己の身に食い込む巨大な牙の感触を味わいながらも、零が頬に皮肉な(わら)いを浮かべた。

「残念です。――では」

 言葉と共に躍動した零の両腕が、己の身に抱え込んだ黄龍の牙を強引に()し折る。

 怒りの咆咻(ほうく)に構わず顔面に蹴りを浴びせ、血肉と歯の破片を飛び散らせながら、金色の龍の(あぎと)から脱出する。――雄叫び。

 怒りと怨讐(おんしゅう)を込めた全霊の叫びと共に、符の崩壊を迎えた黄龍たちの肉体が消えていく。現世との繋がりを保つ最後の(よすが)を失い――。

「――ッッ‼‼」

 友の死を(いた)むこともできぬまま、無念と懺悔(ざんげ)の叫びを残して別位相へと送り返される。強大な神獣の影たちが消えていくそのあとを……。

「……っ」

「――おや」

 硬直した表情で見つめている、一人の人物の姿があった。――(さくら)御門(みかど)(あおい)

「葵さん。随分と遅い登場ですね」

「……ッ……」

「どうしたんです? そんなに(ほう)けたような顔をして」

 零の差し向けた視線の先にいる協会の特別補佐は、血相を変えたまま立ち尽くしている。ここまでの疾走で僅かに乱れた(すみ)(いろ)の長髪を流れ落とし、

「いつも冷静な葵さんらしくない。鬼門(きもん)の処理はきちんとしてきたんでしょう?」

「……!」

「もうしばらく掛かるかと思っていましたが、補佐官の名に(たが)わぬ見事な手際です。お疲れさまでした」

「……零」

 見開かれた黒色の双眸は(ひとえ)に、水の中に斃れた人物の姿を見つめ続けている。普段と変わらぬ挨拶のように掛けられた賢者見習いからの言葉に対し、現実をまだ受け止め切れないと言う風に、葵がゆっくりと視線を動かす。

「その姿。……秋光様は」

「……」

「……零。貴方が……」

「ええ。――苦労しましたよ」

 感情の抜け落ちたような声で問う葵に対し、軽く含み笑いをした零が、人であった時分と変わらぬ素振りで、赤黒く隆起した異形の双腕を広げて見せる。

「【四神】に【黄龍】。先生の主力である五体の神獣を相手取ることを考えて、事前に随分と準備はしてきたんですがね」

「……ッ!」

「単純な召喚の腕では決着をつけられずに、結局この力を使うことになってしまいました。【間接召喚】の弱点は、召喚の核となる媒体が傷つけば、顕現する異形の力が大幅に削られるということ」

 どこまでも真面目な弟子のように、人好きのする(おもて)で微笑みながら語っていく。

「原理自体は理解していたんですが、先生の術法は、そこらにいる凡百の術師たちとはわけが違う」

「――」

「核となる【分け身の霊符】にしても、彼らの肉体の一部を用いて作成されているために、まるで本物の肉体のように溶け込んでいましたし。素の状態で見分けることはできませんでしたが、術者としての知識を持ったまま異形の感覚を得ることで、体内を移動している異物が分かるようになった」

 手のひらを差し上げて浮かべたのは、ひときわ凄惨な笑み。――【憑依術】。

 協会の特別補佐として、秋光の(そば)(づか)えとして練磨に(はげ)んだ人間として、今の自分の目にしているものが、葵には未だに信じられずにいた。異形の隷属が主流だった昔、飽くなき力のみを求めた者たちによって研究と追求の行われた、禁断の所業(しょぎょう)

 対象となる異形を術式で統御し、戦力として操るのではなく、己自身の肉体へと定着させる。術者の意識をそのままに、強大な異形の力だけを我がものにしようとして行われた(こころ)みだが――。

「この力の初披露となる場面で神獣たちの核を傷つけ、抵抗の力を失わせた」

「――ッ」

「あとは消えかけの防壁に守られた先生の生命(いのち)を奪い取るだけ。瀬戸際まで追い込まれたうえでの、作戦勝ちと言ったところですかね?」

 僅かでも制御を(あやま)てば己の心身を喪失するリスクが、リターンを遥かに上回るために研究が途絶え、遥か以前に協会から禁術として指定されているはずの術法だ。僅かの罪悪感もなく告げられるその台詞に――ッ。

「――ッッ‼‼」

 葵の身体を、激情が駆け巡り。想いのままに放った不可視の水流による高圧斬撃が、空間そのものを分割するかのように瞬時に視界のうちを駆け走る。――【水刃(すいじん)(せん)乱舞(らんぶ)】。

「――流石は葵さん」

「……ッ……⁉」

「日ごろ先生の元で顔を合わせる間柄であるにもかかわらず、躊躇(ためら)いなく僕を殺そうとしてきた」

 極限まで圧縮した透明の水の刃で標的の死角を()い、対象を刹那に物言わぬ肉片へと刻むはずの葵の術法を、零は事も無げにその肉体自身で受け止めてきている。……ッ無傷。

「あの平和ボケした護衛たちと違い、情に(とら)われないことは評価しますが。この程度の水芸で、僕は殺せませんよ」

「……!」

「すでに僕は、貴方たちとは次元の違う力を手に入れたんですから。葵さんと言い、神獣たちと言い、どうしてその辺りの理屈が分からないんですかね」

 金剛石をも両断するはずの水の刃が、異形の中でも最高位に近い霊格を備える(りゅう)(りん)と、鬼神と竜とが凝縮された慮外(りょがい)の密度を持つ赤黒い肉の強度を前に、僅かに表皮を削ることしかできずにいるのだ。凝視する葵の目の前で、微かに残る水流の痕跡すら埋めるように、異形の肉が(いびつ)(うごめ)きを見せていく。

「協会の現四賢者筆頭である先生を殺した僕を、補佐官の葵さん如きがどうにかできるはずがないじゃないですか」

「――」

「子どもでも分かるような単純な計算です。例えどれほどの怒りを覚えていたとしても――」

 鬼神の特性を受けた再生の動きの上で、言葉の間隙(かんげき)に眼球を穿(うが)とうとした葵の高圧水流が、(かざ)された異形の手のひらに呆気なく弾き散らされる。――消える。

「ただこうして、無様に踏み潰されるだけでしかないというのに」

「――ッッ‼‼」

 蹴り。怪物の速度で繰り出されたただの蹴り脚が、固められた水の障壁を弾き飛ばして葵の胴体を一蹴する。砲弾に跳ね飛ばされたかのごとき凄まじい勢いで地を転がり――ッ‼

「――ッ‼‼ ゲホ……ッッッ‼‼」

「――あれ?」

 壁際の樹木たちをへし折って静止する。血を吐きながら苦悶の(うめ)き声を上げた葵の姿を、零が意外な光景を目にしたように見つめ遣った。

「ああ。そう言えば葵さん、鉄扇(てっせん)(じゅつ)の名手でもあったんでしたっけ?」

「……‼」

「日頃目にする機会がないので忘れてました。――苦労しますね」

 人である頃と変わらぬようにポン、と手を叩く仕草をして見せる零。地に付いた葵の手のひらのうちから、形状を支える中骨(なかぼね)を割り砕かれた、無残な鉄扇の残骸が滑り落ちる。――そう。

「才能と力に恵まれない人間は、どうあってもそうした手先の小技に頼るしかない」

「ッ……‼」

「いくら工夫を()らしたところで、圧倒的な力の前には結局、成すすべなく蹴散らされてしまうだけだというのに。いたずらに苦痛を伸ばすだけの行為だ」

 攻撃を受ける瞬間の反射的な所作。生家にて幼少の頃より(つちか)われてきた流しの技法が、受ければ即死となる蹴りの威力を重傷の域にまで抑え込んだ。……ッ竜種と鬼神の力を集約させた蹴り。

 内臓の数個を容易(たやす)く破裂させる威力が、練達の技量の流しをもってなお、葵の身を芯まで震盪(しんとう)させている。首を振りながら近づいてくる異形の姿に、応手を取れない己の状態を自覚した、葵の身に逃れ得ぬ死の直感が走った――。

「――っ」

「――おや」

 直後。零の足元に、見慣れぬ術式の組みこまれた複雑な文様陣が浮かび上がる。微かな驚きに眉をあげ、

「時間ですか。いいところだったというのに」

「……⁉」

「目的の達成とあれば仕方ありませんが。――残念でしたね、葵さん」

 あからさまな落胆の色を浮かべた零が、術法にて成されていた自らの変貌を解除する。僅かに血の滲む傷だけを残した、賢者見習いの姿に立ち戻り。

「もう少しで先生と同じ場所に()けたのに。機会を逃してしまった」

「……‼」

「また会う機会があるかも分かりませんが。――次会えたときには、綺麗に殺してあげますよ」

 端整な面立ちをした青年が流暢に微笑む。共に顔を合わせていた時と変わらない瞳に、冷酷な慇懃(いんぎん)さを浮かべたまま。

「補佐する賢者と、協会の次代を担う賢者見習いがいなくなって大変でしょうが。後始末を精々頑張ってください」

「――」

「蔭ながら応援しています。――では」

 偽らざる侮蔑(ぶべつ)の嘲笑いをあとに――発光した法陣の輝きに連れて、三千風零の姿が本山から消え失せた。……静寂。

「……っ」

 気配と魔力の完全なる消失。襲撃者の撤退を確かめて、簡易的な治癒の術法を作動させつつ、葵は地面に横たわる己の肉体を再び揺り起こしにかかる。……っ骨に異常はない。

 もらった一撃のダメージは大きいが、流しのお陰か、どうにか立つことはできる。ふらつく意識と肉体の痛みに顔を(しか)めつつ、壁の助けを借りながら立ち上がり……。

「――」

 目を凝らした葵の視線の先。水の中に浮かぶようにして倒れ伏している、一つの人影が見えている。その周辺だけが赤く染められた水の流れ。

「……」

 徐々に清流と混じり合っていく淡いその色を確かめて、見据えた光景との距離を、葵はゆっくりと縮めていく。……一歩、一歩。

 踏み出すたびに走る痛みの一つ一つが、軋る自らの心の叫びのように受け止められる。(かたわら)にまで近付いた葵の瞳に、うつ伏せになった遺体の全容が映り込んだ。

「……っ」

 ……身体の中心から流れ出ている血。

 老年に達してなお、威風と精力を抱いていた肉体は今、己の理想と歴史に対する全ての熱を失ってしまったかのように白く冷えている。胸元に黒々と開いた穴。

 臓腑(ぞうふ)と骨肉の色を覗かせるその穴が、自分の知る相手を決定的に遠いどこかへと連れ去ってしまったようで。(ほう)けたようにその穴を見つめ。

「……秋光、さま」

 名前を呼んだ葵の行為に、答えは返ってこない。……静寂。

「秋光、さま……っ」

 血の流れる水流に衣服が(ひた)るのも構わず(かが)みこみ、倒れ伏した賢者の遺体を赤子のように抱き起こそうとする。崩れ落ちた(うつぶ)せの姿勢から――。

「――っ‼」

 己の腕の中で眠るように仰向けになったその表情に、顕わにされた情念を葵は見て取る。克明に浮かびあがっている、深い苦悩の色。

 (よわい)を一息に増したように強く()り込まれたしわと、これ以上ないほど固く閉じられた(まぶた)に刻み付けられているのは、耐えがたい喪失と――無念。輝いていたその瞳は二度と前を見据えることはなく……。

 しわがれた手のひらは、二度と自分の手を握り返してくることはない。永遠の眠りについた賢者の遺体を抱いたまま。

「……ッ……――‼‼」

 声もなく。嚙み殺した悲痛と共に涙を流す葵の慟哭(どうこく)が、清浄なる空間の内部に無限の苦痛の如く取り残されていった。


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