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彼方を見る者たちへ  作者: 二立三析
第五章 試されるもの
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第二十九話 苦闘の中で


「……ッ」

 その事態に立慧(リーフイ)は息を呑む。目の前で繰り広げられている戦闘。

 魔術の門外漢として魔導院に入学し、講義を受けながら技能者としての高みを目指す毎日の中で、彼らのことを何度も立慧は耳にしてきた。『アポカリプスの(まなこ)』を討伐し、世界を危機から救う偉業を成し遂げた英雄。

 肩書や名前だけではない、確かな力量を持つ本物の実力者たち。魔導院の教科書と書庫にてその物語を紐解き、語られる武勇と逸話に素朴な憧れと尊敬を抱きながら、胸に湧き上がる輝きを糧に、自分の腕前を磨いていた。

 支部長としての立場を得、技能者の現実を目にし、一線を退いて保護者となった彼らの姿を目にしても、修行時代に胸に抱いた憧れが完全に失せたとは言い切れない。無法で常軌を逸した修行の振る舞いにも、呆れる一方心のどこかで頼もしさを覚えてもいて――。

 ――だからこそ。

「……嘘でしょ……」

 開かれた薄紅の唇から言葉が零れ落ちる。……『凶王(きょうおう)』。

 魔導(まどう)協会(きょうかい)を始めとする三大組織と唯一対等の力を持つ勢力の長であり、頂点として君臨する技能者たち。協会の一翼を担う支部長として、その恐ろしさと脅威は嫌というほど理解している。

 以前の邂逅で目の当たりにした通り、自分たちとは別格の技能者であるのだとの事実を、肌身に痛感させられてもいて。しかし――。

「《救世(きゅうせい)英雄(えいゆう)》たちでも、無理だって言うの……っ?」

 それでもまさか、これほどまでだったとは。目の前で起きている現実。

「――ッこれは参った」

 決して事実であって欲しくない光景の実現が、見つめるしかない立慧の拳を強く握らせていた。コンバット用に改造された革靴の底を滑らせつつ、修練場の石床を勢いよく後退するレイル。

「もっとも戦闘能力の低い賢王(けんおう)とは言え、流石は凶王と言うべきか」

「――」

「まさかこうまで手も足も出ないとは。腐っても技法の冴えは健在――」

「――誰が腐っていますか」

 数多の摩擦でつけられた腰革(クォーター)の傷。最高基準の耐切性と防弾機能を兼ね備えたスーツには幾筋もの裂け目が走り、本来であれば余るはずのシャツの袖口はジャケットごと斜めにカッティングされている。拳銃とタクティカルナイフによる一銃一剣。

国際特別(こくさいとくべつ)司法(しほう)執行(しっこう)機関(きかん)』に属する特殊技能者――現代兵器の申し子たる『執行者』として基本的(オーソドックス)な戦闘スタイルを披露したレイルが、目にも留まらない速さでの早撃ちを放つ。常人であれば反応することもできない強襲だが――‼

「まったく」

「――!」

「詰まりませんね」

 十メートルにも満たない間合いから撃たれた秒速数百メートルの弾丸をしかし、賢王は悠々たる闊歩の足取りを崩さずに一蹴する。――()

 空中を泳ぐように張られた髪の毛より細い真珠色の操り糸が、予測通りの軌道で飛来した銃弾をバターのように切断したのだ。鉛芯に銅合金を被せたフルメタル・ジャケットの銃弾が、呆気なくその威力を華美な衣装の背後に散らし――。

「大層な大口を叩くと思って見てみれば、まさか何の工夫もない通常弾とは」

「……っ」

「戦士としてはおろか、道化としても三流です。――忘れたのではないでしょうね?」

 背後に伸ばした糸で流れるようにその残骸を回収した賢王が、二つに割れた拳銃弾を整えられた爪の先で(もてあそ)ぶ。明るく澄んだ瞳に射竦められる金属の(かたまり)

「私たちの持つ凶王という名の意味。賢王の号が持つ、重みと歴史を」

「……正直な話、少しは加減してもらえると思っていたくらいだったが……」

「――どの口がそんなことをほざきますか」

 まだ熱い銃弾を高々と指で弾き、溜め息の仕草で放たれた無数の糸による斬撃を、レイルは綱渡りをする曲芸師のようなアクロバティックで(かわ)していく。視認も許されないごく細の凶器。

「操り人形のように大人しく刻まれればいいものを。死にかけの蠅のようにしぶといですね」

「生憎と、しつこさだけが取り柄なものでね」

 一度でもその糸に捕まれば、折り畳まれるように身体を微塵にへし折られる。軌道から安全圏を計算し、身を置き続けるレイルの額を、一筋の熱い汗が流れ落ちた。

「つれない女性に対しても、何度でも粘り強くアタックしてみるものさ。一つくらいは目があるかもしれない」

「不快な相手に与えられる目など、端からありませんがね――」

 なおも後退を続けるレイルに、じりじりと賢王は迫っていく。――修練場の中央。

「――ハァッ‼」

 無防備な自然体で立ち尽くす影に対し、飛び込んだエアリーが気炎を上げる拳を空ぶらせる。圧壊した気圧により吹き飛ぶ一帯の大気。

 攪拌(かくはん)された空気から鼓膜のしびれるような振動が伝播(でんぱ)し、修練場の全域を震わせる。初撃以来変化のない攻防は、もう何度振るったか分からない。

 まともに当たれば鋼鉄の彫像を延べ金へと変え、一撃で相手を天国か地獄へと送るはずの剛拳だが……。

「っまったく……」

「……」

「影法師とは意思疎通が取れなくて困ります。相性自体は悪くないはずなのですが……」

 必中の気迫をもって振るわれるエアリーの拳は、今ここに至るまで一度も、標的たる相手の肉体を捉えることができずにいた。新たに首筋に増えた一筋の切り傷を自認しながら、エアリーは体内にこもる熱い息を吐き出す。――動脈を狙った一手。

 冥王(めいおう)の操る影の凶器は、開始から迷いなく急所を狙ってきている。実体のないはずの影で自らの身を傷つけている原理もさることながら、殺気を含めたあらゆる気配を目の前の相手から感じられないことが、エアリーの戦いをより困難なものにしていた。瞬間を争う技能者同士の戦いとなれば、目で見てからの反応では往々にして対処が遅すぎる。

 攻撃に対しては、殺気や攻撃の気配と言ったものを読み取ることで事前に構えるのが基本であり。その全てが発せられないとなればすなわち、全ての攻撃が不意打ちとして為されるのにも等しい。ここに至るまでの攻防でエアリーの命を繋いでいるのは、技能者として(つちか)われてきた戦いの直観と……。

「目の前にいるのに幽霊みたいな気配。貴方、本当に人間なんですか?」

「……」

「初めの時から何一つ話しませんし。むしろ、喋れるのかどうか疑問――ッ」

聖戦(せいせん)()』の元幹部、番外の『使徒(しと)』として鍛え上げた強靭な抵抗力を持つ肉体が、老いてなお凶器の完全な到達を阻んでいるからでもある。言葉の途中で反射的に身を沈めたエアリーの顔面を、鋭利な凶刃と化した影の刃が掠め裂いていく。薄皮一枚での回避。

 ギリギリで眼球への到達を避けた眼の下の柔らかな肌が裂け、開いた表皮から真新しい血液が顎元(あごもと)へ伝っていく。……致命的な損傷は避けている。

「〝生きている限り、永遠なるものに向かって叫び続ける〟……」

 決定打は打たせていないが、例え一つ一つは軽微と言える傷であっても、積み上がればやがて大きな歪みを生み出すことには変わりない。信徒の信仰を糧とする特殊技法、【聖節(せいせつ)詠唱(えいしょう)】により傷の回復と肉体の強化を維持しつつ。

「……素手の殴りでは(らち)があきませんね」

「……」

「現役時の得物さえあれば、辺り一帯ごと吹き飛ばすことができるんですが。『聖宝(せいほう)()』がないとこうも戦い辛いとは……」

 僅かも気の抜けない苦境に(まなじり)を鋭くするエアリー。足掻いても沈んでいくだけの泥沼にはまり込む神父の側方に――。

「ははははははははッッ‼‼」

「――ちょっ、ちょい。ちょいまっ――‼」

 重力を無視する勢いで天井際を駆け走る、二人の技能者の姿があった。白木造りの長刀を手にし、(きょう)覇者(はしゃ)から逃げ惑っている夜月(やげつ)(あずま)

「どうした⁉ 救世の英雄!」

「――!」

「数度の手合わせ程度で逃走とは! 《異端(いたん)最強(さいきょう)》の名が泣くな‼」

「――んなろッ‼」

 意趣返しと思しき挑発に東が向かい合う。間合いを詰めきられる数瞬に呼吸(いき)を整え。

「――ッ‼」

「クハッ‼」

 裂帛の気息と共に繰り出された剣技たちを、破顔した狂覇者が躍動した猛虎の如き爪撃にて迎え撃つ。石火光の速さで交わされる剣と手指(しゅし)――ッ‼

「……っ!」

「ハハハハハッッ‼‼ 楽しいなァッ‼‼」

 リーチの差、得物としての機能性の違い。手数を追うごとに狂覇者の側には浅手の裂傷が増えていき、東の側への反撃は頬を掠め、はねた髪の端を切り取るだけに終わっていく。剣客として磨き上げた見切りの技量。

 一手の誤りが死となる刀剣での戦いにおいて、攻撃の間合いを違えることは許されない。十年というブランクがあるとはいえ、かつて培った技能は、確かに今も東の側に優位を(もたら)していて――。

「――ッ‼」

「ッおっと! また逃げる気か⁉」

 だというのに、此度も背中を(ひるがえ)したのは東の方だった。――理解できない。

 狂覇者の戦闘技術が高いレベルにあることは確かだが、王として見れば明らかに雑さがあるのもまた事実である。不断に続く鍛錬の果てに結実したような精緻な表情はまるでなく、

 ただ、天性かつ戦いの中で磨かれてきた思しき一線級の運動能力と、視力を始めとした強靭な五感、本能的なセンスの鋭さに身を委ねることで敵方を蹂躙しているだけだ。……技能者と呼んでいいのかさえ分からない。

 今東の前に姿を現しているのは、闘争の中で自らの形を勝ち得てきた獣そのもの。荒々しい一個の野生の塊と言っていい。猛虎の如き強靭さに満ちているとはいえ――。

「あれだけ尊大に挑発してきたというのに! 死にざまが腹ばいでは浮かばれまい!」

「うっせえな! 今色々考えごとしてんだよ‼」

 獣の性質だけで勝利を収められるほど、技能者界の懐は浅くない。反射の鋭さを逆手に取る(から)め手。

 相手の力を利用し、運動能力の不利を(くつがえ)す技法は、東が修得している我流、夜月流の剣術だけでも例がある。現に今までに幾つかそれを用い、負傷の程度では此方が優勢を取っている。

 技量なら間違いなく自らの方が上。これまでの攻防からしても己の感覚からしても、その見立ては明確に確かであり――。

 ……だが。

「――ッ」

 ――何かがおかしい。

 初めの交錯以来、東の内心に、その感覚が絶えず訴えかけてきていた。……腕を切り落とすつもりだった。

〝――ッハハッ‼〟

 勝負を仕掛けるなら初見のうちが必ず有利。初手の交錯で行けると判断した機を逃さず、搦め手に()めて確実にアドバンテージを取るはずだったのだが、直前で気勢を増した狂覇者に、紙一重で狙いを外された。両断を目論んだ一刀は浅く肉を切るに留まり、反撃の爪撃を受けて東は僅かに肌を切らされた。……おかしい。

 始めは獣じみた直観のなせる(わざ)とも思ったが、思い返してみれば、これまでに東が仕掛けた攻勢すべてでその構図が展開している。……何かが妙だ。

 そもそも如何(いか)に素手のみで自分と渡り合えるほどの力量を有するとはいえ、あの凶王派の長が、不全であるとしてもただそれだけで務まるものだろうか? 不服なはずの賢王さえもが、仮号とはいえ覇者を名乗ることを認めている……。

「――チッ」

 上手くは言えないが、これ以上、この相手とまともに向き合ってはマズイ気がする。技能者としての本能が発している警告。

「逃げ足の速さばかりが取り柄とは、まるで臆病なウサギだな! 《異端の最強》‼」

「んなハードボイルドなウサギがどこにいるってんだ! (なます)に刻んでやるから覚悟しやがれ‼」

 その正体が分からない以上、無闇な攻勢を仕掛けるわけにはいかない。久方ぶりの真剣の重みに舌を打ちつつ、形勢の不利を負う東が駆け走る――‼








「――」

「……なるほど」

 苛烈に破壊されたホールの中心。

「先代の魔王(まおう)から伝え聞いてはいたが。現に己の目で確かめるのとでは、明瞭な違いがある」

「……っ」

「ここに来てようやく実感が湧いた。――深い(・・)な」

 術式にて保たれるはずの床は裂け、壁は崩壊し、歪みと陥没ができている。戦いの壮絶さを物語る光景の中で、始まる前と変わらぬ優麗な様相で語るのは、深紅の目を持つ少女、――魔王。

「リア・ファレル。魔術師としてだけではなく、一人の人間として積み重ねてきた歴史」

「……」

「九十年の長きを駆け続けて尽きることのない才気と創意は、凶王派の長たる私からしても目を見張らされるものだ。王として以前に、一人の存在者として敬意を表すべきか」

「……そいつはどうも」

 (ひび)割れた石床に膝を落としていたリアが、ゆっくりと立ち上がる。転移の連続でまつ毛に掛かっていた白い髪。

「齢を取ってあちこちガタが来てるとはいえ、長生きはしてみるもんだね」

「……」

「魔王に褒められるなんざ、これまでの人生で考えもしなかったことだ。あたしらのいる世界ってのはまったく、何が起こるか分かりゃしない」

「――同感だな」

 前髪の先を掻き上げるリアとは対照的に、同じく風の洗礼を受けていたはずの魔王の(おもて)には、わずかの不調和も見受けられない。くすんだ異形(いぎょう)の血を思わせる深紫(ふかむらさき)色の髪筋が、静かに流れ落ちる泰然を保っているだけであり。

「協会の大賢者が凶王派を訪ねてくるなど、先代の頃には思いもよらなかったことだ」

「――」

「世界の情勢は常に移り変わっている。変化に応じた形で己を模索することができなければ、如何な秩序だろうといずれは崩れ落ちていくしかない」

「……手厳しい言い方だね」

 意趣返しを受けたリアが失笑する。揺らぐことのない魔王の眼を見つめ、

「その齢でそこまで実感を込められると頭が下がる。――なんで秋光(あきみつ)を行かせたんだい?」

「……」

永仙(えいせん)の邪魔をすると分かってて。あんたらがここに来た意味が、ふいになるかもしれないってのに」

「ただの時間切れだ」

 端的に魔王が答えを返す。

「奴とは始めから約定(やくじょう)を交わしてあった。奴が今後どれだけの窮地に陥ろうと、これ以上、あの男のために我らが動くことはない」

「……一応同盟を結んだ相手だってのに、連れない態度だね……」

「互いの利を見て交わした協約など、所詮は信用に足らぬものだ。人にとって意義があるのは、どこに自分の名を書き連ねたかではない」

「――」

「その名前を持つ当人が、果たして何者であるのかだ。――甘いな、あの男は」

 一瞬だけきつく細められた深紅の瞳が、消えた人物の姿を追うような遠さを見せる。

「穏健派の旗頭としての経歴は知っていたが、私との戦いの最中においても、明確な殺意を感じることができなかった」

「……」

「あれだけの強大な力を手にし、例え【世界(せかい)構築(こうちく)】を破るほどの研鑽があったとしても、初めの言葉の通りに、異形も敵対者とも、何もかもと分かり合えるはずだと思っているのだろう。全てを対等と見做(みな)し、理想を貫かんとする愚直さには目を見張らされるが……」

 紅玉の如く透き通った瞳が、今一度リアを覗き見る。

「組織の長として要求されるものからは外れている」

「――」

「あれが協会の幹部であり、魔導協会の筆頭にまでなったとするならば。それを支える周りの人間は、さぞかし苦労をしたことだろう」

「……随分と回りくどい言い方をするね」

 手心なく注がれる眼差しに、リアが気勢を込めた視線をぶつける。魔王の放つ威容に劣らぬよう。

「んな可愛らしいなりをして、中身はまるで老獪(ろうかい)な賢者だ。――何が言いたいんだい?」

「強く純粋な理念は、ときに周囲のものに労苦を押し付けることがある」

 挑むようなリアの発言に、魔王はどこまでも静かに答えを返していく。幼さの残る容貌から想像もできないほどの深い落ち着きをもってして。

「光を信じて前を向こうとする余り、背後に伸びた影を意識することがなおざりになる。理想を貫こうとする者がいるならば、その後塵で泥を被るものもいる」

「……」

「片方のみで世界の調和が成り立つことはない。あの男が協会を裏切らざるを得なかったのも頷ける」

「――永仙の動機を知ってるような口ぶりだね」

 思わせぶりな宣告に、リアが腕を組む。

「こんな大掛かりな仕掛けまで打って。あんたらは一体、何を企んでるんだい?」

「信頼とは、どこから生まれてくるものだ?」

 流れるように返された魔王の返答に、正面からリアの問いに答えようとする狙いは込められていない。

「組織の頂点に立てる強大な力でも、共に過ごした半生(はんせい)にも及ぶ歳月でもない」

「……」

「その者が本当はどこを見ようとしているのか。何を足場とし、何を望む者なのかを知ることからだ。今――」

 老女を捉える魔王の瞳が、抜け目のない閃きを放った。

「お前と私が、共に相手に対して行っているように」

「……なんだい」

 確信をもってのその突き付けに、リアが微かに口元を曲げ上げる。肩の力を抜くように、息を吐きながら腰に拳を当て。

「やっぱり承知の上だったってわけかい。分かってて付き合ってくれるとは、随分と気前がいいじゃないか」

「賢者と凶王が顔を合わせる機会など、殺し合いであってもそうあるわけではないからな」

 これまで以上に明け透けに語るようなリアに応じて、魔王もまた、その卓絶した口元の威厳を微かに緩めてみせる。

「腹の底を見せ合う機会としては丁度いい。もっとも――」

「――」

「命のやり取りでないとして手まで抜くようなことがあれば、本当の腹の中身をさらけ出すことになるかもしれないが」

「……やれやれまったく」

 禁術師の王たる少女が、再び底知れない闇を広げるような気配を放ち始める。本山の空気ごと塗り替えていくような強大な存在の威圧感に、リアが苦い笑いを浮かべた。

「若者どもが、年寄りに苦労をさせてくれる。――先達冥利(みょうり)に尽きるってもんさね」





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