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彼方を見る者たちへ  作者: 二立三析
第一章 新しい日々の始まり
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第九話 魔術師の戦い


 ――この辺りで良いだろう。

 今は廃墟となった古城の跡地。周囲を鬱蒼とした木立に囲まれた、広場のようにぽっかりと空いた空間の中心に、ファビオは立って頷きを見せる。ここなら多少派手にやっても被害が少ない。

 ――うん。

 念のため、先ほど感じた視線の有無を今一度確かめる。微かな、しかし間違いようもない不快さは、初めに感じたときから付かず離れずしてここまでやって来ている。

「……いい加減そっちも分かってんでしょ。相手してあげるから、早いとこ出てきなよ」

 紙袋を足元に置き、ポケットから手のひらを広げて見せる。声掛けに対しての返答はなく、風に木立が静かなそよぎを返していくだけ。

 ――またか。

 内心ファビオは嘆息する。支部長という立場を持ち、力量も備わるファビオだが、一つだけ解決することのない悩みがあった。

 容姿は我ながら悪くない。研究したファッションも決まっていて、美青年といってもいい。

 ――しかし、背が低い。

 正確に言えばそれほど低いわけではなく、平均より五、六センチ下かという程度なのだが、ファビオの理想では、あと十センチは欲しいところだった。話していると、常に相手の上背が気になる。

 支部長としてあるべき威厳と威圧感とが足りていないのではないか。敵対者に()められているのではないか、そんな気もしてくる。秋光が訪ねてくるのであれば。

 その辺りについて尋ねてみるのもいいかもしれない。どんな切っ掛けとはいえ、同じ魔術師として最高峰の人物と言葉を交わせる機会は多くない。

 古典系の召喚魔術のエキスパートである秋光と、近代式の属性操作を主とする自分とでは分野が遠いが、四賢者である魔術師というだけで学ぶ箇所は幾らでもあるだろう。……今以上に力をつけ、上を目指して食らいついていく。

 この目で見た永仙の恐ろしさに兜を脱がないためにも、敵方をひれ伏させる威厳をつけるためにも、こんなちんけな連中を相手にしている場合ではないのだ。じりじりしながら数秒だけ待つ。実力のない(やから)(いさぎよ)さに欠ける。

 ばれていることをこちらから指摘してやっても、決まって自分たちからは姿を見せたがらない。わざわざ道を外れてまで気付く機会を与えたのに、なおも単なる鎌掛けと高を(くく)っているのだろうか。理屈を並べ立てても相手が姿を現す気配はない。見切りをつけたファビオが、嘆息して自分から気配の方角に向かおうとしたとき。

「……」

 一人の人物が木陰から踏み出でる。……全身をゆるやかな仕立てのローブで覆い、備え着きのフードを目深に被った姿。

 百八十に近い長身という、ファビオの反感を買う特徴以外、外見からは性別も、年齢さえも窺い知れない。一切の正体を掴ませまいとする姿勢が明白に表れている。――支部長に挑むなどという無謀を冒す割には。

「――気が付くとは流石、支部長と言ったところか」

 随分と慎重なことだ。その小心を挑む前に活かせればなおいい。皮肉気に眺めていたファビオの前で、フードの中から成熟した男性の声が発せられた。

「あんな雑な尾行、気付けない方がおかしいでしょ。支部長嘗めてんの?」

 ――大袈裟なまでに情報を秘匿しておきながら、自分から声を漏らす?

「ふ……強気だな」

 意図の読めない行為。軽く疑問を抱きながら、ファビオは今一度相手を観察する。魔力は感じない。

 纏った布地の裏に隠匿用の術式でも織り込まれているのか、それとも魔力を用いないタイプの技能者か。含みを込めた話しぶりに苛立ちが(つの)ってくる。覇王派との激闘や、九鬼永仙の衝撃を潜り抜けたあとでは――。

「いいからとっととかかってきなよ。ついでに――」

 小物も小物。――面倒なことだ。

「隠れてるもう一人も出て来てくれない? そんなんで気配を消してるつもりになられると、それはそれで鬱陶(うっとう)しいんだよね」

「――ほう」

 この程度の相手に、一々手順を踏まなければならないとは。喜色のこもった反応から一呼吸ほどの間を置いたのち、後ろの木立からもう一人の追跡者が姿を現す。こちらもまた同じようなローブ姿。

「悪くない。支部長になって間もないと聞いていたが、実力の方は足りているらしい」

「それはどうも。で? あんたら二人が僕の相手ってわけ?」

「勘違いしてもらっては困る。お前の相手は私一人。奴は」

「見張り役ってわけね。了解。ならさっさと始めようよ」

 性別から仔細まで一切が不明だ。回りくどい相手の動向を(さえぎ)って、ファビオは戦闘の姿勢に入る。――相手の戯言(ざれごと)を信じるつもりなどない。

 尋常の勝負のようなことを言っておいて、隙を見るか、劣勢になれば参戦してくるに違いない。ファビオの魔力が収束状態に入ったのを感知したのか、応対役だった男が前へ出る。もう一人の方は動かないまま木立の陰に。形の上では言葉を守ることを見て取って、ファビオが用いる術式を選別した。

 ――このとき、ファビオは忘れていた。

 男たちはファビオを支部長と知って尾行していた。仮に支部まで案内させるのが目的であるならば、力の劣る支部員でも一向に構わなかったにもかかわらず。

 道を逸れた時点で逃げることもできたはずだが、男はファビオのあとをつけ続け、誘いにいとも容易く応じてきた。そのことをファビオは彼我の実力差を解しない愚かさ故だと受け取ったが、でなければそれは何を意味したのか。

 ――早く片付けて、明日の準備をしておかなければ――。

 ファビオの胸中に疑念はない。全ての懸念を置き去りにして、魔術師の戦いが幕を開ける。





「〝射れ〟」

 ――一言あれば充分だった。

 力ある小節の始動鍵を受けて、起動した術式が行使者の魔力を吸い上げる。男が異変に気付くより早く、足下に湛える砂地が螺旋を描く凶器となって標的の肉体を串刺しにする。

 ――ファビオ・グスティーノが支部長となったのは、積み重ねた努力の成果ではない。

 魔導の道を進む志を抱いてより、(たゆ)まぬ修練と勉学を重ねたのは事実だが、若干二十一という年齢において、自分より遥かに高齢の術師たちに明確に差をつけられる要素ではなかった。ファビオが魔導協会の支部長に抜擢されたのは、(ひとえ)にその才能。

【砂の支配者】と呼ばれる、破格の適性を彼が宿していたからである。一説によれば属性の加護を受けるとされる支配級の適性は、魔力を通じて当該の属性に働きかけることに関して、法外と言うべきアドバンテージを持つ。

 消費魔力の半減、命令式の効力の増幅、先天的なセンスの獲得に、被害の軽減。技能者界でも稀に見る珠玉の才能を磨き上げ、練達の術師の中でも通じる己の武器へと昇華させることで、ファビオは支部長の座を掴み取ったのだ。

 数ある空き地から砂地のエリアへ誘い込んだのも始めから計算あってのこと。一箇所でも穿(うが)てば大勢は決する。一人目を早々に脱落させる目論見でいたファビオの強襲は――。

「――」

 予想だにしない光景の展開を以て、その帰結を(あらわ)にした。――千切れ、穴の開けられた無地の生地。

 砂杭の洗礼を受けたローブは無残な姿へと変わり、襤褸切(ぼろき)れと言っていい有り様へ成り果ててしまっている。……そう。

「――どうした?」

 ローブだけは(・・・・・・)。渦中に立つ男は無傷。隠匿の役割を半分ほどしか果たさなくなってしまった襤褸切れを纏いながら、息一つ乱さぬ悠然さで砂地を踏み締めている。鋭角に切り裂かれたフードの切れ目から、色素の抜け落ちた長髪が一房(ひとふさ)、外気を求めるように零れ落ちる。

「たかが砂遊びで終わりではあるまい。十四支部支部長、ファビオ・グスティーノ」

 ――何が起きたのか。

 疑問の答えを理解しながらも、ファビオの思考は否定の答えを下さざるを得ないでいた。……あり得ない。

 焼き付いていたのはそれほどまでに慮外(りょがい)の光景。高速の砂杭が繰り出された瞬間、棒立ちだった男は体軸を反転させて三本の杭から身を外すと、手足の一振りで残る二本の凶器を打ち砕いた(・・・・・)のだ。

 ――『魔術』。

 知識のないものからすれば往々(おうおう)にして怪奇とされる技法ではあるが、構造自体はそれほど奇想天外なものではない。行使者の魔力を用いて世界に働きかける技法。

 中核となる構造体は『術式』と呼ばれ、節に分かれた複数の条件式と命令式から成り立っている。近代以降、魔導協会の働きにより詠唱技法や術式の体系が均質化されてからは、この操作は古典の時代より遥かに容易となった。

 複雑で難解な個別原理と絡んだ特異な体系は排除され、ベースとなる既存の術式が新たに制定された。『近代式』と呼ばれるそれらの術式は、シンプルな効力と構造を持ち、使用者による拡張性に長けている。

 ファビオが用いた【砂杭形成】もまた、近代式の【砂礫操作】を素体として構築された術式であり、基礎術式の改変の他に独自の工夫が入れられている。三重の【圧縮】に【高速化】、【螺旋による回転】まで組み込んだ術式は、支部長の扱う実戦用の魔術として不足のない芸当であり。

 それを完璧に対処された。……あり得ない。

 今一度ファビオの脳内にその判断が去来する。ファビオの術式によって錬成される砂の杭は、高密度の鉄塊を容易くえぐり取る。

 格下と判じていた相手にも手を緩めることはしなかった。首、胴、左足首、左右の大腿部。五つの急所に狙いを散らし、回避も防御も許さぬ強襲に仕立て上げている。……特別な技法は用いていない。

 術式以前の原始的な方法であれ、魔力が働いているなら支部長たるファビオにはそれと知れる。魔術による強化法もなしに、コンマ一秒未満で繰り出される砂杭を己が身一つで粉砕する。

「魔導の深淵を志す者が、異なる体系の深みに当てられているのか?」

「……!」

「数十年の昔に連盟が崩壊したとはいえ、積み上げられた技法の息吹は未だ世の中に根付いている」

 そんなことが可能となる道理をファビオは知らない。知るはずもない。事態を処理できずに強張った身体に、フードの奥から余裕を湛えた笑みが贈られる。

「本流から姿を消した技法が、現代においていかなる力を持っているのか」

「――ッ」

「――その身をもって知るがいい、魔術使い」

 刹那。

「――ッ⁉」

 不動でいたはずの男が動く。足下の砂地を爆散させ、踏み込んだそれは愚直なまでの直線移動。

 近接戦に持ち込もうという目論見はあからさま過ぎて、普段のファビオなら一笑に付してあしらっていたに違いない。――コンマ数秒で間合いを三分の一にまで消し飛ばす、人間離れした脚力がなければの話だが。

「ぐゥッ⁉」

 反射的に出現させていた砂の盾。銃弾をも防ぐはずの防御が、大きく陥没する。――蹴り。

 速度と自重を乗せたただの前蹴り(・・・・・・)が、超常たるファビオの障壁を破ろうとしているのだ。瀬戸際まで迫る恐怖と脅威に、思考が我武者羅に記憶を掘り起こす。――覚えがある。

 魔術師と同じく、特殊技能者としてかつて世界に存在した彼ら。原始的かつ単純と言える技法を扱いながらも、近接戦闘における一対一では最強を誇ったとされる逸話。

 母体となる組織が消え、時代に忘れ去られた強者たち。彼らの名は――。

「【砂棘形成】、【乱立】ッッ‼」

 ――武人(・・)。距離の防波堤が破られる寸前、吠えるような詠唱を受けて、地中から突き出した鋭利な針が男の横顔を掠めていく。無数と言える砂棘の林。

 出現する凶器が辺り一面に荒れ狂い、男を突き放してなお彼我の間を執拗なまでに埋め尽くしていく。――近づかせない。

「――」

 相対するこの相手が武人だとするならば、詰め切られた瞬間に勝機は消える。地面全てを射出孔と成し、コンマの速さで余地を削り飛ばしていく砂の鋭利を、男はそれでも躱し切っていく。徹底した回避行動――!

「〝彼の者を焼け〟――」

「――⁉」

 次の手立てへ移行しかけた意識を、唐突な詠唱(・・)が突き破る。(かざ)された手のひらから紅蓮の大炎が生み出され、瞬く間に直径数メートルの赤光に成長する――‼

「ッ〝古きシュメルの王、地を知悉(ちしつ)する導手たる主よ〟‼」

 高密度の魔力を編み込んだ砂棘の林が飲まれる。高熱に散って砂へと分解される景色に未来の自分自身を重ね合わせた刹那、流砂を散らしながら競り上がった弧状の防壁が、眼前に轟く豪炎と激突した。

「〝人倫を救いし賢慮を以て、此度の万難を排さん〟――‼」

 業火の熱気が肌を焼く。止まらぬ炎の供給が砂壁を破ろうとする。焦げ茶に染まる髪の端を、猛る炎の舌先が捉えようとする寸前、

 ――【部分再現】。

「――ッ‼」

 空気の振動に顔面を覆う。術式の完成を受けて慄然(りつぜん)(そび)え立つ黒土の壁に、苛烈な火炎と高熱の一切が遮断され、周囲へ憤怒の如き余波を撒き散らしていく。知恵の神であるエンキが製作を教え、破滅の洪水から人を救ったとされる逸話。

【エンキの箱舟】。伝承される神話より構築された古典高位魔術は、本来なら多大な魔力を消費して内部のもの一切を変質から守る【環境維持】の効力を備えている。ファビオが用いたのはその劣化版。

「……ッ……!」

 知識として蓄えていただけの術式から、本来必要な詠唱の長さと魔力消費の大きさを(かんが)みて、必要な部分だけを土壇場で構築した。百に百とは言えない芸当の達成に喝采を送るが如く、煙をあげる土壁が怒涛を立てて崩れ落ちる。空間に残る熱気と臭気。

「……ふ」

 焦土と化した大地そのものが陽炎(かげろう)の揺らぎを発し、巻き添えを食った周りの樹木が炭化して黒煙を(くすぶ)らせている。あいつ……。

「ごほっ……ッ」

 ――何者だ? 破滅の景色に平然と立ち、笑みを零す男に、ファビオは疑問を禁じ得ない。

 先に用いられた術法は、支部長である自分とて決して鼻であしらえるような魔術ではなかった。――【業の炎(アル・ナール)】。

 罪人を(あくた)へ変える地獄の炎を再現したとされる高位古典魔術(ハイエンシェント)。効力に対して破格と言える工程の短さに加え、同属性内でも上位の威力と突破力を有する強力な術法だが。

 詠唱の単純さ故に制御が難しく、(あやま)てば術者自身をも焼き尽くすリスクを備えている。事故や暴発が多発したことから現代では協会による制限規定が設けられており、扱うには最低でも上級魔導師以上の資格が、戦闘で運用できるとなれば更に実数は限られる。規格化の進んでいない古典の典型と言える、過去の遺物のような術法を……。

「悪くない。支部長になりたての若手とはいえ、(あなど)るものでもないな」

 離れ業染みた回避の最中に、いとも容易く発動してみせた。……武人ではない。

 少なくとも純粋なそれではない。原始的とさえ言える肉体技法に頼みを置く彼らは、練磨した己と己の一部である得物以外の使用を徹頭徹尾嫌ったと聞く。……禁術師でもない。

 古典の知識があるだろうとはいえ、協会から禁忌とされる術法に傾倒する彼らは、己の肉体などという肉塊に信を置くことがない。肉体技法一つで支部長の魔術と渡り合い、同格の古典魔術さえ会得している……。

 ――無理だ(・・・)

 事実を総合して、ファビオは己の判断を転回させる。離れ業染みた動きを披露し、扱いの困難な高位魔術を使ったにもかかわらず。

 相対する男には一切の消耗がない。力量は低く見積って自らと同程度。最悪の場合、控えている一人も同等ということさえあるかもしれない。

 例え片方を相討ちに持ち込んだとしても、次で()られることは必然。二人掛かりになられれば勝ち目はない。この場で打つべき手立ては――。

「ッ‼」

 体勢を低くした男が駆け出す。起こりのない練達の挙動、地を轟かせる駿馬(しゅんば)の如き剛脚だが。

 ――ッ来い‼

 ファビオも此度は用意を整えていた。【エンキの箱舟】に付与した魔力の一部を再構成し、自らを囲む砂地の半径十メートルに触れれば沈む底なしの流砂帯を作り上げる。外見上は普通の地面と変わらぬよう、薄皮一枚を残すことも怠らない。

 男の磨き抜かれた身体技法は脅威とはいえ、見せられたなら対処はできる。踏み込めば確実に絡めとるという、ファビオの意気込みを察したかのように、致死地帯(デッドゾーン)に踏み込む直前で男が突進の軌道を変える。やはり見抜く――‼

「【砂の護盾】、【身体強化・行動支援】――ッ!」

 ――それでも構わない。炎の強襲に備えて左右に二枚の大盾を作り出し、ファビオは支部への道を後ろ足で駆け始める。自分にとって重要なのは、この場の戦いに勝利することではない。

 己の知り得た情報を繋ぐこと。生きてこの場を切り抜けることだ。術式を仕込んだ流砂帯を引き連れつつ、強化の支えを受けて速度を上げる。詰みと言うにはほど遠い。

 支部まで戻れば結界の庇護も、応援も望める。仲間たちの元へ帰らなければならない。

「――っ!」

 帰らなければ。生きて――‼

「〝主は旗を揚げて遠くの民に合図し、口笛を吹いて地の果てから彼らを呼ばれる〟」

 ――幾度となく口にされてきただろう詠唱が、ファビオの思考を途絶させる。

「〝見よ、彼らは速やかに、足も軽く此方へ来る。疲れる者も蹌踉(よろ)めく者もない。微睡(まどろ)むことも眠ることもしない。腰の帯は解かれることがなく、サンダルの紐は切れることがない〟――」

 聞き間違えることなどない。余りに特徴的な、この、文言は。

「――ッ‼」

 弾む息を押さえ込んで反転。心肺機能と脚力の強化をキャンセルし、駆け走る砂の刃を妨害の用途で繰り出す。空振り。

 真空を生み出す速度で突貫する凶器たちを、男は瞬転の歩法で背後へ置き去りにしていく。ローブの内側から星屑の如き煌めきが零れ落ちる。網膜に映る残像が加速していく。――間に合わない。

「ッッ‼‼」

 打開の手を打とうとした刹那に放たれた殺意。五臓を突き抜ける悪寒に首を振り向けた直後、突き出される鋭利な指先をファビオは目にした。


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