誰がどう見ても私の勝ちです
「エルベーヌ・フォン・エステラリア!」
「…」
「聞いたぞ貴様の悪行の数々!婚約は破棄だ!」
(第三皇子グリーテル=ド=ライオ)
フッ
「殿下。それは本気で仰っているのですよね?もう取り返しはつきませんよ?」
「私はいつだって本気だ!お前のような悪女と結婚なんてできるか!それに私が真に心を寄せているのはここにいるリリエラだ!」
「そうですよね!ですが殿下、これは王家と公爵家との契約なのです。ですからちゃんと私たちの両親もお呼びしなくてはと思いません?」
「え?いや、父上と母上は忙し「もうお呼びしてます」
「なっ!?えっ!?」
コツコツコツ
「「皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶申し上げます」」
「エルベーヌ公爵令嬢、約束通り私達はこちらで見守らせてもらう。後は好きにしてよい。」
さて、陛下の言質はとった。ショータイムと行きましょう。
「殿下。婚約破棄の件は私も賛成です。ですが私の悪行とは一体どのような事で?」
「お、お前はリリエラに嫉妬して彼女を虐めたそうだな。無視をしたりものを隠したり壊したり、さらには実習中も怪我をさせたり階段から突き落としたそうじゃないか」
ざわっ
周りの方々はもうとっくに気づいてたのに。
今ので墓穴を掘るとは。
「殿下、言いたいことは山程あります。まず第一に彼女とは今日この場で初対面です。」
「「…え?」」
「爵位の上のものから下のものへ声を掛けるのが貴族のルール。ですが知らない方に一々声をおかけします?誰かの紹介で面識があるならまだしも一度も挨拶したことない相手ですよ?それを無視と言われると学園の半分くらいの方を無視してることになりますわ。」
ヒソヒソ
(確かに笑)(知らない相手に話しかけないわよね笑)
(無視されたって自意識過剰なのでは?笑)
「う、うるさいぞ!周りの者は口を挟むな!虐めに関してはどう説明するのだ!」
「だから初対面だって言ってるでしょうに、はぁ」
「ゔっ」
「実習中に怪我、でしたか?そもそも私はSクラスなので場所も違いますしSクラスの演習場にはあらゆる攻撃を無効化するバリアが張ってありますので攻撃が外に出る事はあり得ませんが?」
「Sクラス!?」
もしかしてコイツ、私がSクラスであることを知らなかったのか?バカなのは知ってたけど。
「階段から落としたのはいつ、どのように、ですか?私は王妃教育でそんな時間なかったのだけれど。常に見られる存在がそんなことをすると思って?」
「他の人に…やらせたのよ!」
「あら?貴女は私に落とされたと証言したのではなくて?
それに何度も言うけど、今日まで貴女の存在をしらなかったのよ?(皇子がどこぞの男爵令嬢に夢中なのは聞いてたけど)そして私には常に王家の護衛がついて記録されてるからそんな行動とれやしないわ。」
「…」
「ものが隠されて壊された、でしたっけ?よかったら探索魔法をおかけしましょうか?私にはエルベーヌ公爵家の家系魔法である"記憶を見る力"がありますので犯人の特定も出来ますわ。」
「いや…えっと…壊されたものはすぐに捨てちゃったので」
「あ!そういえば君が盗られたと言ったブローチがここに」
本当バカだな。ラッキーだけど。
ービジョンー
"これ…正直趣味じゃないのよね…そーだ!あの女に取られたことにしよう!ポイッ"
「リリエラ…」
「ちっちがっ…これは!」
「さてと、いじめの件はこれで冤罪だとわかりましたね。
でも私、まだ納得できてないことがありますわ!」
「な…んだろうか?」
「誰が誰に嫉妬したですって?」ギロッ
「「ひっ」」
「身分、容姿、成績、社交、どれをとっても負けるところが思い浮かびませんの。」
公爵令嬢、容姿端麗、成績トップ、社交界の華
「あ、2人の仲にも、もちろん嫉妬してませんよ?元々私殿下のこと好きじゃないですし。幼い頃に殿下の方から勝手に求婚されただけなので婚約破棄を心待ちにしてましたの」
「そ…そんな」
周りからの呆れた視線。皇帝陛下、皇后陛下の怒りの視線。
そして満足げな私の両親。
「さてと、覚悟はできていますよね?大勢の前で侮辱された上に冤罪なんですもの。陛下も好きにしていいとおっしゃいましたし。誰がどう見ても私の勝ちです。」
「まっ…まってくれ」
「ごっ…ごめんなさい!つい出来心で!」
「ごめんで済んだら警察いらないわ!」
「「ケーサツ?…ぎゃー!!!!」」
重力魔法でブンブンぐるぐるバンバン無重力スパイラル!
「ほらほら、出来るものなら反撃してくださ〜い!全部お返ししますけど!積年の恨み〜!アハハハハ!」
〜20分後〜
「さて、気を失ってしまったのでもういいです!ちょっとだけスッキリしましたわ!」
「愚息が本当にすまない。」
「いいえ、お気になさらず、正直なところ殿下の婚約者となってからの8年を返してほしいとは思いますけど、破棄できたので満足です!」
「出来る限りの償いをすると約束しよう。後日王宮に来てくれないだろうか。」
「はい、是非」
こうして婚約破棄騒動は幕を閉じた。
第三皇子は身分剥奪の上国外追放。皇帝陛下が近隣諸国にも絶対に手助けしないように伝令を送ったらしい。
男爵令嬢ならびにその一族は身分剥奪、令嬢は決して逃げることの出来ない海底牢獄に送られたらしい。
長かった。小説の悪役令嬢として転生してから18年、
"彼"と出会ってから13年。
私よく頑張ったわ。やっと願いが叶う。
ー王宮ー
「エルベーヌ・フォン・エステラリア公爵令嬢。改めて我が愚息の非礼を詫びよう。本当に申し訳ない。」
「貴女へ償いがしたいの、望みはある?」
「はい。私は殿下と婚約する前からずっと、お慕いしている方がいるのです。ですがその方は貴族ではないので、法律だと結婚できません。どうか、その方と結婚できるようにして頂けませんか?」
この国の法律では貴族同士、平民同士でしか結婚できない。
たかだか1人の小娘のために法律を変えるなんて普通はできないだろう。けど私は知っている。彼らがどれだけ私のことを大切に思っているかを。
「…本当にごめんなさいね。私達は貴女が息子を好きでないことも、他の者が心にいることも知っていた。公爵からも猛反対を受けたわ。それでも貴女を娘にしたかった。私達の我儘に今まで付き合ってくれてありがとう。エステラリア」
「もうこれ以上、君を縛る事など出来ないな。法律を変えよう。今この瞬間から身分を問わず、この帝国の民は好きなものと結ばれることができることとする。」
「ふふっ!ありがとうございます!皇帝陛下!皇后陛下!急ぎますので、失礼します!」
瞬間移動
王宮中央にある女神の噴水。
そこで主人を待つ1人の従者。彼こそ私の大好きな人。
「ルーファス!」
「お嬢!」
大好きな彼の腕の中、どれだけこの日を待ち侘びたことか。
「やっと…やっと言える。エルベーヌ・フォン・エステラリア様。無礼を承知で申し上げます。私と一生を共にしてくれますか?」
「えぇ、もちろん!」
殿下との婚約が決まった時、両親は私がルーファスのことを好きなのを知っていたので泣いて謝ってくれた。
普通は貴族の娘と従者の恋なんて決して結ばれないのだから反対するだろうに、むしろ応援してくれていたのだ。
どうにか婚約破棄ができないか考え、いくつか条件を付けることでとりあえず納得した。
それから8年。
物語の世界はだいぶ変わってしまった。
この先何が起こるか想像もつかないけれど。
大好きなこの人と一緒なら絶対、大丈夫。
数ヶ月後、公爵令嬢と従者の前代未聞の結婚は帝国に大きな衝撃をもたらした。
従者との結婚のために法律までも変えた令嬢と話題となりそれは物語として全世界へと広がった。
他国の人々がその令嬢を一目見ようと集まり、結果帝国は様々な国との交流が盛んになったという。
そしてそれもまた令嬢の物語として広まったらしい。
〜END〜




