第1章 6話 ジョン・ドゥ3世を追え3
「時間ね。」
「さぁ、リーダーのためにも頑張らなくちゃ。」
治療薬の件でジョン・ドゥを呼び出した2人。待ちあわせの時間になり、1人分の足音が近づいてきた。
「失礼します。」
「どうぞ。」
男性の声に答えるセカンド。
「男性のフリを続ける必要は無いわ。ジョン・ドゥ。」
「あら、そう?分かったわ。でも今変装を解くと後が面倒だから喋り方だけにしておくわね。」
呆気なく、正体をバラすジョン・ドゥ。
「何か、アッサリと正体をバラしましたよね〜。」
「母親の件まで掴まれているのだから、今更隠しても無駄よ。そっちには、よほど優れた諜報員がいるのね。弟子入りしたいくらいだわ。」
「えぇ、私達のリーダーはそれだけ優れているのよ。あなたが尻尾を振っている相手と違ってね。」
「ちょっとセカンド?」
いきなりジャブを繰り出したセカンドにフィフスは驚くが
「いかなる理由があっても、ヤツに協力しているのよ?仲良く付き合えるわけないでしょ。」
セカンドは当然とばかりに答える。
「ごめんなさい、ジョン・ドゥ。彼女はリーダーの事だけは我を忘れててしまうから。」
「仕方無いわ。あいつの関係者になるって、そういう事よ。貴方達も分かってるでしょ?」
「理解してもらってるなら問題無いわ。話しを続けましょう。」
すんなり、引き下がるジョン・ドゥ。そして、セカンドが赤い色をした1粒の錠剤を取り出す。
「これが、治療薬よ。」
「本当に?」
ジョン・ドゥは怪しんでいるが
「正直に言うと私も本当に効力があるか怪しいと思っているのよ。」
セカンドも同意した。
「でも、私達のリーダーが調達した物だし、こんな簡単に嘘がバレる真似をするとは思えないわ。」
「ちょっとセカンド?リーダーを疑うの?」
フィフスはイライラしているようだ。
「仕方無いじゃない。見た感じ普通の風邪薬みたいな錠剤を渡されて、あらゆる病気を治療するエリクサーだなんて言われても。」
「そこまで言うなら試してみるわ。」
「えぇ、効果が無ければ当然この話は無しで良いわ。」
「効果があったら?」
「協力してもらうわよ。ゲス部長のスパイになってもらうわ。」
「もし、拒否したら?」
「どうするかはリーダーが決めるわ。」
「あなたの本音は?」
「挽き肉にして家畜のエサにしてやるわ。」
「ふふっ。分かったわ。とりあえず、この錠剤を試してみるわ。」
「えぇ、効果を確認したら、この番号に連絡して。」
こうして、ジョン・ドゥに治療薬を引渡した2人は研究所を後にした。
ーーーーージョン・ドゥ視点ーーーーー
「お母さん、ただいま。今日も新しい治療薬を手に入れたわ。」
ジョン・ドゥは、早速治療薬を母親に飲ませた。
「今度こそ効いて、お願いよ・・・。」
祈るように待つジョン・ドゥ。しかし、無情にも時間は経過し、薬を飲ませて間もなく2時間になるところだった。
「何よ!あんなに勿体ぶらせて、結局効いて無いじゃない!何が挽き肉よ!だったら缶詰にしてやるわ!」
怒り狂ったジョン・ドゥは、セカンドを呼び出し殺害しようと準備を始めるが
「エ……リー……?」
かすかな声が聴こえた気がした。もう一度耳を澄ますと
「エ…リー?いる…の?」
やはり声が聴こえた。
「お母さん?」
「そこにいるのはエリーなの?」
今度は、はっきりと声が聴こえた。
「お母さん!!」
ジョン・ドゥ・・エリーは母親を抱きしめた。
「ちょっと、エリー。離してちょうだい。苦しいわよ。」
「………」
泣きじゃくり、エリーは母親を抱きしめるばかりだった。