最終話 二人の旅
十字郎に銃口を突きつけ、阿之助は微笑んだ。
「来た」
阿之助がそう呟いた瞬間、天守を駆け上がり、襖を蹴り倒して、生百合が部屋に飛び込んできた。
「阿之助!!」
そのままのスピードで、阿之助の喉めがけ刀を突き出すが、阿之助は十字郎をはなして、紙一重でかわし、刀の刃を握り、銃を生百合の顔に向け、容赦なく発砲するが、生百合は銃を掴んで、弾道をそらしてかわす。
「お久しぶりです。生百合さん。ここに来たってことは、戦角を倒したんですね」
阿之助は黒い煙を吹きかけるが、生百合は浴びる前に、刀を握る阿之助の手の平を斬り落として、飛び退く。阿之助は痛がりもせずに銃口を生百合に向ける。生百合は刀をまっすぐに構える。
城下の炎はすでに城に燃え移り、曽根城は炎上していた。避難はおおよそ終わり、逃げ延びた人々は町の外だ。残った生きている人間はこの場にいる四人だけだ。
「どうせ、僕らはこの城から出られない。炎に巻かれて、ラストダンスといきましょうよ、生百合さん」
「望むところだ」
生百合は斬りかかる。阿之助は黒い煙を吹き、生百合は浴びるが痙攣してもなお動き、刀を水平に振るう。阿之助は宙に浮かび上がりかわすが、足を生百合に掴まれ、床に叩き落とされる。まだ浮かび上がる阿之助は、生百合の胸を撃ち抜いたが、生百合は構わず阿之助の腹部に刀を突き刺し、押し込んで壁に叩きつける。
刀を阿之助と壁から引き抜きながら、生百合は阿之助に怪力の蹴りを繰り出す。阿之助は壁を貫通し、天守閣から空へと放り出される。それすらも追いかける生百合は跳躍し、刀で阿之助の心臓を貫き、そのまま地面に突き刺した。二人の旅の思い出が、お互いの頭を駆け抜ける。それと同時に眩い光と爆音が二人を襲う。雷が落ちたのだ。
いつの間にか、外は大雨が降っていて、曽根城や城下町は徐々に鎮火し始めていた。
虫の息の阿之助は、生百合に微笑んだ。
「生百合……さん。愛してます……」
「死ね」
生百合が刀を引き抜き、阿之助は息絶えた。
旅路を共にした相棒の血がついた刀を、生百合は鞘に納め、いままで失ってきたものを数えながら泣いた。
曽根城及び城下町は、大雨が降ったことにより全壊は免れた。復興や幕府から領主が任命され送られてくるまでの間は、一葉が代理の領主となった。しかし、一葉の献身により曽根は凄まじい早さで復興し、民に寄り添い誠実な統治で代理ではなく、正式な領主となる。生涯独身を貫き、夫の阿之助が奪っていったものを、民に返すために一生を費やした。
城下を占拠していた化け物は矢笠が殲滅し、被害が増えることはなかった。この功績により矢笠の名はますます上がり、矢笠新陰流は最強の流派として受け継がれていくことになる。
清水家はキリシタンだとバレているため復権するわけにもいかず、十字郎は目的を失い途方に暮れていた。生百合の無事を確認し、一葉が治める曽根にて、怪我の治療をしたあとに宮野に戻ろうとしていた千沙の誘いで、宮野にて共に暮らすことになった。のちに夫婦となる。
生百合は、千沙と共に怪我の治療をしてから、矢笠の屋敷にもどり、木郎や赤八、牛六と共に暮らした。妖怪の子供達が成長し一人前になると、生百合は曽根へ行き、一葉に仕え、曽根の龍と呼ばれた。
阿之助は自ら悪に徹し、復讐の連鎖を断ったのだ。一葉は阿之助を愛したが、悪人だと認識し、死ぬのは仕方ないと思う。十字郎は命の恩人である生百合への復讐心を捨てる。他全ての恨みを一身に背負い、生百合に殺される。これが阿之助の最後の計画、救いようのない悪魔が企んだ武士道であった。
しかし、それも命を差し出すのでは、生百合が躊躇し後悔する可能性がある。全身全霊、本気で生百合を殺すつもりで戦い、死ななければならなかった。銃を使い、妖術を使い、全力で戦った。どれだけ強い力を使おうと、必ず殺してくれると、阿之助は心の底から生百合のことを信じていたのだ。
こうしていくつもの復讐が絡み合った長い旅が終わった。
武士道復讐行 完
最後までお読みいただきありがとうございました!
戦闘描写もほどほどに、話がまとまるようにストーリーを考えたんですが、どうでしたか?
もっと色々描写すれば、情景が浮かびやすくなるとは思ってたんですが、文字数がえらいことになりそうなので、テンポ重視で、あくまでジャンク読み物の枠から外れないように書きました。
私は阿之助が嫌いです。
クズなんですもん。かなりの序盤から、こいつだけは絶対殺そうと思って書いていました。
気づいてました?生百合って逆から読むと龍なんですよ。阿之助も間久 阿之助で逆から読むと悪魔なんですよ。聡明な読者さんなら気づいてそうですね。
じゃあ、剣士達の名前の由来はどうですか?伊東 剣一は伊東一刀斎から、宮島 武蔵丸は宮本武蔵から、佐伯 小太郎は佐々木小次郎から、矢笠 宗将は柳生宗矩から。ちなみに柳生十兵衛は、眼帯要素を瀬野に、十要素を十字郎に分けているのでさすがに気づかなかったんじゃないですか?
名前なんかどうでもいいですね。最終話が短いのをここで誤魔化しているのがバレそうなので、この辺にしておきます。
では、私の活字が、またあなたの目に映りますように。




