第一話 お前を狩りに来た
こんにちは!
一話、ポチっていただき、ありがとうございます。
この物語はすでに完結済みです。エタらないのでご安心を。
二人の復讐の旅を、お楽しみいただけたら幸いです。
時はだいたい江戸くらい。凸凹コンビが旅に足を痛めていた。
「あー疲れた。ねえ、生百合さん。ちょっと休憩しましょうよ」
そう弱音を吐くのは、間久 阿之助。21歳。子供に間違えられるほど小柄な男だ。天パーでボサついた黒髪、顔は美形だが男のくせに大した力もなく、性根も腐りきった偽善者の青年である。
「山頂までもう少しだ。ひ弱が」
そう切り捨てるのは、生百合。19歳。普通の男よりも背が高く、長い黒髪は後ろで一本に結われている。小動物程度であれば睨んだだけで殺せるほど目力が強く、女として生きていくにはいらない剣術、怪力を持つ単細胞な剣士である。
「もう足が痛いんですよ」
生百合は黙って阿之助の荷物を引き受ける。
「ツンデレ生百合さん、マジ愛してます」
「死ね」
そんな調子で二人は山を登っていく。
山頂近くの茶屋にて二人は休憩していた。日はまだ高い。
「お茶を二つと、あとお団子ください」
「あいよー」
注文を終え、待っていると。
「あの、その刀、お侍さんですか?」
二人の隣の席にいた細身の女性が話しかけてきた。生百合は振り返りながら返事をする。
「いや、ただの放浪人だが」
「あら、女性でしたか」
その人は生百合の背中を見て、屈強な侍だと勘違いしたようだった。
「気にするな。そこらの男より腕は立つ」
生百合がそう言うと、女性は少し悩んだが、それじゃあと話し始めた。
「私はこの山の麓にある里の者なのですが、最近、この近くに大きな犬が住み着いて、人を襲うんです。助けていただけないでしょうか?」
「猟師を呼んだらどうですか?刀で斬る獲物じゃないですよ」
阿之助が口を挟んだことにより、女性は詳しい事情を話した。
「それが……」
女性の話によると、その大犬はすでに数人の猟師を食い殺しているらしい。猟師の銃弾を物ともせず、熊のような巨体で襲いかかってくるそうだ。
「生百合さん。僕らが探しているのとは関係ないですよ、きっと」
「でも、困っていた」
二人は女性に地図を描いてもらい、その大犬がいる洞窟へ向かっていた。
「じゃあ、せめて、頭を里に持って行って、倒したことを証明して、報酬たんまりもらわないと。旅の資金だって余裕があるわけじゃないんですから」
返事をせずに生百合は手元の地図を見た。
「二枚岩の洞窟。ここか」
森の中の開けた場所に、二つの平たい岩が重なっている。その下に大きな洞窟があった。
「よーし、じゃあ、火作りますね」
阿之助は荷物から、火打ち石と打ち金、火口、付け木を取り出した。
「お前が火なんか作れるのか?」
「まあまあ、生百合さんは松明構えててくださいよ。速攻で着火させますから」
生百合は木に布を巻いた簡易的な松明を作り、阿之助の着火を待った。火打ち石と火口を重ねて左手に持ち、右手で打ち金を火打ち石にかすめるように振り下ろす。
「セイヤッ!」
石が擦れるざらついた音はするが、火花が出ない。今度は連続して打ちつけるが、非力な阿之助は火花が散らない。ヤケになった阿之助は、これでもかと思い切り振りかぶり、渾身の一撃をぶつけた。
「ファイヤー!!よっしゃっ!」
ようやく火口が赤く光り、火種ができた。阿之助は火勢を強めようと息を吹きかける。
「フー。フー。フー。あ、消えた」
「チッ。ライター使うぞ」
生百合は懐からライターを取り出し、松明に火をつけた。
「生百合さん、時代!」
「お前が遅すぎて、文明が先を越したんだ」
「んなアホな」
「とにかくこれで中に入れるな」
生百合は松明を阿之助に手渡し、腰に携えた刀を構えて洞窟の中に入っていった。そのあとを追って阿之助も洞窟へ足を踏み入れた。
洞窟の中は広く、背の高い生百合がジャンプしても天井には届きそうにない。土と獣と血の匂いが充満して、入る者全ての生物的本能に危機を知らせている。
「生百合さん。これって死臭ですよね」
「だろうな。連れ去られた者もいると言っていた」
「もう、勘弁してよ。服に臭いついちゃうじゃん」
奥へ歩いて行くと、松明の明かりが途切れた暗がりの中に、二つの赤い光が点滅していた。いかにも気性の荒そうな呼吸音、毛が逆立つような殺気。大犬は巣穴へやってきた人間をカモネギだとでも思っているのだろう。
「お前を狩りに来た。弁明があれば述べよ」
生百合が刀を構えるのと同時に、暗がりから白く巨大な犬が、青白い稲妻を毛並みにまとって、牙をむいて飛びかかってきた。
生百合は構えた刀で大犬の頬を水平に薙斬り、そのままの勢いで一回転して、後ろ回し蹴りを大犬の顔にお見舞いする。あまりの怪力に大犬は洞窟の壁に打ちつけられた。
「今日は袴で正解だったな。着物じゃこうは動けない」
「さすが生百合さん、霊長類最強の女」
大犬は少し怯んだものの、すぐさま立ち上がり生百合に向かおうとするが、すでに間合いを詰めていた生百合に、右前足を踏みつけられ、それと同時に刀で左目を貫かれる。
「もう一度聞く。お前を狩りに来た。弁明があれば述べよ」
「人に話す言葉などない」
大犬は濁りきったしゃがれ声で答えた。
「話してんじゃん」
「なら、終わりだ」
生百合は左目の刀を引き抜きながら、するりと懐に潜り込み、下からカチ上げるように刀を振り切って、大犬の首を落とした。
大犬は倒れ、あたりを一瞬だけ稲妻が駆け巡った。
「なんかビリビリしましたね、今」
「そうか?」
二人が洞窟を出る頃には夜になっていて、里についたのは深夜だったが、二人が大犬を退治して、首を持ってきたと知った里の人々は、大喜びで起きてきて、二人は旅にしばらく困らないほど財布が潤った。
のちにわかったことだが、あの大犬はかつて山の守護神として崇められた雷獣だったそうだ。その神が信仰を失い、落ちぶれ獣となり、人を襲っていたのだ。
「神殺しですね、生百合さん」
「あれはもうただの獣だ」
「でもゴッドイーター生百合ってかっこよくないですか?」
「里の者たちが、南に大きな町があると言っていたな。そっちに行ってみるか」
次回から一話完結じゃ無くなります。サーセン。
昼夜どちらも10時に投稿します。