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Scarecrowの憂鬱な今日とその終わり

作者: 梓川あづさ

新作連載を書き始めたのでその記念に

僕、どうしてこんな所に突っ立ってるんだっけ?

思い出せないな。

こんな所?どんな所だっけ。

周りを見渡してみようかな。

あれ、見渡せないな。

どうも体が固定されているみたいだ。

それなら、と腕を動かそうとするけどやっぱり固定されている。

どうやら張り付けられているみたいだな。


そんな状況だってのに。

ちっともびっくりしてなくて、ちっとも焦っていなくて。

そんな自分に疑問を持つことも出来ないから今日も星を数えよう。


見える星を全部数えたから今日を終わりにしようと思ったけど、今日に終わりなんてなくて。

目を閉じる事も出来ないから、夢に逃げ込む事も出来ないんだ。

出来ることがそれだけだから、じいっとしていたら夜が明けて。

そうやって今日が続いていくんだ。


もう夜は終わりにしていいかな?ってゆっくりと顔を覗かせた朝陽がとても綺麗だよ。

綺麗?綺麗ってなんだろう。

わからないけど、きっといいものなんだろう。

だって体の真ん中辺りがきゅってするからね。


そんな今日を続けていたら風がぴゅうって一吹きして、それにつられて鳥が飛んできた。

これはこれは懐かしいじゃあないか。

確かずうっと前の今日にやってきた君だね。

僕は相変わらず退屈だから君の話を聞かせておくれよ。

あの北風から逃げおおせた時の話をしておくれよ。


はは、それは傑作だ。

それからそれから?ああ、待っておくれ。

そんなに急いでどこに行くんだい?

そっか、君が逃げた北風がまたここらに帰ってくるんだね。

じゃあ行っておいで。

どこにも行けない僕の代わりに沢山の物を見てきておくれ。

沢山の夢を見てきておくれ。


みんなの今日がまた終わる、終わる、終わる……終わる。

やっぱり僕の今日は終わらない。


どうして?

どうして?

どうして?


僕が何をしたっていうんだ。

もうここには何もないよ。

僕が守るべきものは何もないよ。


そうさ、守っていた麦畑なんてどこにもありはしないんだ。


僕に帽子を被せてくれたあの太っちょのおじさんが来なくなって。

それからはもう何もないんだ。


僕にはするべきことが何もないんだ。


だから僕の体を縛っている、縄の結び目を探してくれないか。

だれか僕の縄を解いてはくれないか。


そう祈っていたら太っちょおじさんと一緒に来ていた子供がまた来たよ。

祈る腕がないから叶わないんだって、そう思っていたよ。

あれれ、子供だった彼はもう太っちょおじさんと同じくらいの大きさになっているけどどういう事かな。

かっちりとした服を着た人間を何人か連れて来てくれたから少しは退屈しなかったし、まぁいいか。

相変わらず太っちょおじさんは来なかったけど、帽子があるから寂しくないしね。


かっちりとした服を着た人が今度は大きいものを連れてきたぞ。

おやおや、これはとうとう鳥さんへしてやれる話が出来そうだ。


地面が震える。

ああ、ああ、あ、あ、あ。


僕の目の前の枯れた草はひとまとめにされて燃えていく。

パチパチって音を鳴らして燃えていく。

それは朝陽と同じ色だったからやっぱり体の真ん中がきゅってなった。


それから誰かが僕の体を引っ張った。

引っ張らなくても縄を解いてくれればいいのにね。

そうしたら僕の目の前が急に青に変わったんだ。

あ、いつも昼の途中でいなくなる太陽さんはそこにいたのか。

ずっと見ていてくれたんだね。

今も僕が動いてるってのに着いてきてくれてる。


さあ、止まったよ。


きっと縄を解いてくれるんだろう。

そうしたらきっと今日が終わって、明日が始まるんだ。


そう思っていたらパチパチってあの時とおんなじ音が聞こえてきて。

僕の周りも僕も全部、全部が朝陽と同じ色になったから。

やっぱり体の真ん中がきゅっとしてきて。


そうしたらさ。


そうしたらやっと今日が終わったんだ。

よろしければ下記リンクから新作も読んでみてください。

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え、男の僕が<魔女>ですか!?
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