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第七節 宇宙、二日目

「エ?」


「今、何て……?」


凍り付く逃隠と主人公。


「悪い、少し残酷な話になるな。死んでいい人間は居ると思うか? と言う問いに関してだが、答えはYESだ。この世から死刑という概念が無くならない限り、YESとしか捉えようがない」


「……!」


「……」


爆破は話を続ける。


「少し話は変わるがいいか? 世の中で収まりを見せない、戦争についてだ。世界の神が戦争を生み、戦争を許し、戦争を続けさせた。神様でさえリジェクトの餌食にしなくてはならないのかな?」


少しだけ冗談を交える爆破。たじたじな様子の主人公。


「それと、戦争とは終戦宣言されてすぐに終わるわけではない。命令や宣言が行き届いていない兵士たちは人を殺し続ける。手を叩いてハイ終わり! というわけにはいかないのだ。この戦いも同じく、ハイ終わりという風にはいきそうにない」


「!」


逃隠も、話に集中し始めた。


「さて、私は様々なゾムビーを倒してきた。時には同胞さえも……しかし、他の方法があったのではないかと、時々、思うんだ」


「あ……」




(回想)


(……本質を見極めろ、爆破スマシよ。そして迷うな、一遍の迷いもなく攻撃しろ。奴はもう、人間じゃない……!)


「バースト‼」






「ボンッ‼ ボンッ‼」






抜刀の刀、次いで右腕が弾け飛んだ。


「! 許せ……」






「ボッ! ボッ! ボン!」






抜刀セツナは木端微塵になっていく。最後は頭が弾け飛び、抜刀の命は尽きた。


(回想終了)




「フ――。さて、今日はこの辺にしておくか? 時差ボケで体内時間を調整するのも大変だろう。そのまま足を固定して眠るといい」


「あっ、ハイ。……お休みなさい」


「寝るんだい」


爆破は静かに言い、暫く虚空を見つめていた。主人公と逃隠は就寝前の挨拶をして、眠りについた。






翌日――、


「皆、朝だ……起きろ」




「ん?」


主人公達は、爆破の一声で目覚めを迎えることとなった。


「これが朝食だ、今から作り方を教える」


爆破はフリーズドライのご飯を用意した。宇宙食のご飯はお湯を加えてからよく混ぜ、出来上がるまで30分程かかる。


「まだなんだい?」


しびれを切らす逃隠。


(これから5日間? くらい宇宙食か……実家のご飯が恋しいよ……)


主人公は心の中で弱音を吐く。






30分後――、


「パクッ」


宇宙食を食べる主人公。


「う……」


一口目で固まる。


「……美味い」


「パクパクパク……おかわりだい!」


逃隠も宇宙食が気に入ったようだ。


「はは、見た目でマズいと思ってたのか? 宇宙食もここ最近、進化してきたのでな栄養はもちろんの事、味もなかなかだぞ? 因みにカレーやラーメン、寿司もメニューにある」




「!」


「‼」




爆破の言葉に極端に反応する主人公と逃隠。




「マジですか⁉」


「まぢスか⁉」




声を揃える二人。


「そんなにがっつくなよ。少し冷静になれ」


朗らかな表情で爆破は話す。


「ご飯だけが楽しみではないぞ? 窓を見てみろ。美しい光景が広がっているし、地球の大きさだって目の当たりにできる」


窓から外の景色を見る主人公と逃隠。


「おっきい……」


「地球は青いんだい」


二人は口々に言う。






「さて!」






爆破が口を開く。


「ご飯が済んだら昨日の続きだ。人生のイロハをお前達に伝授する‼ だが、すぐにとは言わない。宇宙食だが味わって食べるといい」






20分が経過しただろうか。主人公達は朝ごはんを食べ終わった。


「よし! 食って寝るだけでは体力も落ちるしな。始めよう」


爆破が昨日と同じく人生のイロハを教える様だ。


「以前も話したかな? 裏切られたと感じる時に、人は鬼になってしまう。そして愛する人の為にも、人は鬼になってしまうものだ。覚えているか?」


爆破は問う。




「……」


「だい……」




主人公、逃隠の二人は考え込む。


「そうか、その様子だと覚えていないな?」


「ごめんなさい」


「すいませン」


謝る二人。


「いいんだ、中学生の記憶力では、難しい部分も多かったと思う。愛から連想して、それに関連してかしないかは別として、恋愛について少しだけ、話そう」


「!」


爆破の言葉に反応する主人公。


(これだ! この話を基に、尾坦子さんとももっと仲良くなれたら……!)


「恋とは十人十色だ。そして男女間の友情は成立しない。行き過ぎるとムフフな事になるからな」


ずっこける主人公と逃隠。


「自分で言って、よく笑いませんね」


主人公の言葉にも、冷静でいる爆破。


「これは誰かが言っていた言葉だが、男は社会を作り、女は感情を知る、どうやらそういう事らしい。恋愛についての話は以上だ。少々実用性に欠けていたかな?」


(うーん、恋は十人十色で、男女間の友情は成立しない。それと、男は社会を作り、女は感情を知る、か……確かに実用性に欠けているかも……特に最後のは、実践向けではないかな)


「そうだ、お菓子があったな小腹も空いてきた頃だし食べるか?」


「あっ、いただきます」


「いただくんだい!」


爆破の提案に乗って、お菓子を食べ始める主人公と逃隠。


「乾パンというヤツだな。さて、話題を変えるか……私は自分のしている事に疑問を持ち始めたんだ。ここ数年の事になるがな」


爆破はそう言って話を切り出した。


「さて、昨日も話した通り、私は様々なゾムビーを倒してきた。しかし他の方法があったのではないかと、今では時々そう思う。それでも上の人間はゾムビーを殺せ、滅ぼせと指示を出してばかりだ。だから、世界がおかしいのか、自分がおかしいのか分からなくなっている。お菓子おかしだけにな、なんちゃって」


そう言ってお菓子を食べる爆破。主人公達は苦笑いする。


「ホント自分で言ってよく笑いませんね」


と、主人公。


「私は笑いのツボが深いからな」


少しだけ微笑みながら爆破は返した。


「そうだ、ツトム。お前も何か言ってみてはどうだ?」


「何をですか?」


急な爆破の問いかけに、戸惑う主人公。


「何か……ギャグだ……」






「‼ ‼ ‼ ‼」






爆破の発言に驚愕する主人公。


「どうだ? 言ってみないか……?」


「ちょ、ちょっと待って下さい! いきなり過ぎて……」


混乱している主人公。


「何でもいいんだぞ? ほら、言ってみるんだ」


爆破は催促する。




「じゃ、じゃあ……ボク、ぼくねんじん」




「…………」


「…………」




主人公のギャグで静寂に包まれる機内。


「……つまらんな」


「だから言いたくなかったのにぃ!」


爆破の辛辣な言葉に、発狂寸前の主人公。


「もう一度チャンスをやろう、ツトム」


「いいですよ……」


爆破の提案にもむすっとした様子の主人公。


「そうか、それならいい。この事は深入りするな、不快になるからな」


「もうなってます!」


主人公は完全に機嫌を損ねてしまったようだ。


「ハハハ、まぁそう怒るな。人生全てが勉強だ」




「!」




爆破の言葉に主人公は反応した。


(またこの言葉だ……オヤジギャグの様なこの会話にも意味が……勉強になるのだろうか……でもまぁ)


フーと溜息をつく主人公。


(隊長だけは敵に回したくないな、色んな意味で……)


「? ツトム、私の顔に何か付いているのか?」


爆破は問う。






「何でもありませんよ!」






主人公は元気よく言った。

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